資本主義という謎 の商品レビュー
高校生の娘が、ある日「模試の国語の問題文が面白かった」と言って見せてくれたのが、大澤真幸の文章だった。人が未来のために、あるいは他人のために努力するのはなぜか、というテーマの文章だった。それではと、大澤真幸の本を買ってみたのであった。 しかし、読んでみて気付いたのだが、僕は経済...
高校生の娘が、ある日「模試の国語の問題文が面白かった」と言って見せてくれたのが、大澤真幸の文章だった。人が未来のために、あるいは他人のために努力するのはなぜか、というテーマの文章だった。それではと、大澤真幸の本を買ってみたのであった。 しかし、読んでみて気付いたのだが、僕は経済にとんと興味がなく、内容にはなかなか夢中になれなかった(買う前に気付け)。 それでも、グッとくる部分はあった。 あるパラグラフのタイトルが、「桐島なき世界をいかに生きるか」だったのだ。 もちろん、桐島とは、映画「桐島、部活やめるってよ」の、桐島である。 運動神経抜群で、勝ち組の代表だった桐島が、突如僕たちの世界から姿を消す。あんなに頑張っていた部活も辞めるという。親しい友人の誰ひとり、桐島から直接事情を聞いたものはいない。そのことで、桐島の彼女や友達だけでなく、あまり親しくなかった者たちまで、それも、桐島とは正反対の負け組の者にまで、広く動揺が広がっていく。 つまるところ、全ての人たちが、多かれ少なかれ、桐島の存在に勇気づけられ、むしろ依存していたのだ。 桐島に近しい者たちは、桐島に近しいことで自分の優位性を確認したし、桐島から遠い者たちは、自分が桐島に近づけないにも関わらず、少なくとも「成功」というものがこの世に存在することを確認した。 その桐島が、姿を消したのである。 いや、別に映画の感想を書いているのではない。 つまり、アメリカが、桐島なのだという話だ。 資本主義の限界は、早晩やってくる。 資本主義社会における桐島は、姿を消す。 その時、桐島に憧れた友人(子分?)は、どうするのか。 映画ではその時、誰が、なにをしたのか。 僕は見てないので、知らないのである。(知らんのかい)
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「資本主義」の根源的な発生にまで遡って対談する本書の内容には、ちょっと衝撃を覚えた。果たして「資本主義の終焉」が来るのだろうか。 本書は歴史解釈の本かとも思うが、こう言う視点もあるのかと新鮮に思える。 「資本主義は限られた割合の人にしか成立し得ない」「15%対85%」とは驚きつつ...
「資本主義」の根源的な発生にまで遡って対談する本書の内容には、ちょっと衝撃を覚えた。果たして「資本主義の終焉」が来るのだろうか。 本書は歴史解釈の本かとも思うが、こう言う視点もあるのかと新鮮に思える。 「資本主義は限られた割合の人にしか成立し得ない」「15%対85%」とは驚きつつも納得の思いも持つ。確かに世界中のすべての国が先進国に到達する風景は想像し難い。そもそもエネルギーも環境も持たないだろう。 16世紀のイギリスの歴史から「新興国が先進国に追いつくとデフレが始まる」とは衝撃、これは法則として成立するのだろうか。いろいろと考えさせられた。 本書は2013年の発行だが、時が過ぎた現在でこそ説得力をもつ内容だと思えた。
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資本主義という謎 (NHK出版新書 400) (和書)2013年10月14日 00:37 水野 和夫, 大澤 真幸 NHK出版 2013年2月7日 格差を絶えず付け続ける運動が資本主義である。 それに対し格差を解消することを目指す平等と平和の哲学がある。 資本主義の中から...
資本主義という謎 (NHK出版新書 400) (和書)2013年10月14日 00:37 水野 和夫, 大澤 真幸 NHK出版 2013年2月7日 格差を絶えず付け続ける運動が資本主義である。 それに対し格差を解消することを目指す平等と平和の哲学がある。 資本主義の中から格差を解消する対抗運動が生まれることは考えづらい。それは資本主義自体が格差をつくる永久運動としてしか存在意義がないからである。やはり理念を明確に持つことが不可欠であると思う。 〈理念)=〈格差の解消としての平等と平和の運動又はシステム〉 柄谷行人さんの交換様式がカール・ポランニーから来ていることを知った。互酬性、再分配、商品交換である。第四象限は格差の解消を目指すものである。そしてこういった象限による様式はプルードンから来ていることは知っていた。柄谷さんはこういったことを踏まえた上で格差の論理である〈資本主義=国家=ネーション〉に対し明確にそれらのつくる格差を解消しようとする平等であり平和の理念を示している。 この本の資本主義への対抗運動の論理には物足りなさを感じたがそれを補う意味でノーム・チョムスキーや柄谷行人が有益でした。
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資本主義の来歴と、それが現在陥っている問題、そして資本主義の後にやってくる時代の展望について、エコノミストの水野和夫と社会学者の大澤真幸が語っています。 おおむね大澤がみずからの立場を示しながら水野の考えをたずねるというかたちで議論が進められており、とくに後半ではそうした傾向を...
資本主義の来歴と、それが現在陥っている問題、そして資本主義の後にやってくる時代の展望について、エコノミストの水野和夫と社会学者の大澤真幸が語っています。 おおむね大澤がみずからの立場を示しながら水野の考えをたずねるというかたちで議論が進められており、とくに後半ではそうした傾向を強く感じました。ただし資本主義の形成について語りあっているところでは、「蒐集」というキーワードを用いて資本主義の形成から現代の状況までをつらぬく本質を見ようとする水野に対して、大澤が資本主義の形成が世界史において逆説的な性格をもっていることを強調するなど、意見の対立が見られます。ただし、両者ともみずからの立場を提示するにとどまっており、対決にいたることは回避されています。本書の目的が、サブタイトルの示すように「「成長なき時代」をどう生きるか」ということであり、あまりこうした対立点にこだわってもしかたがないという判断なのかもしれませんが、個人的には大澤の世界史のとらえかたを実証的な観点から検証するような試みがあってもよいのではないかという気がします。 大澤独自の世界史の見方は興味深いものですが、こうして水野の議論と対照させてみると、やはりアクロバティックなもののように見えてしまいます。理論社会学の観点に立つ大澤と、文明論的な視座から資本主義を理解しようとする水野の観点のちがいが闡明に現われているように感じました。
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ざざざざーっとみただけだが、やはり対談本でお勉強するのは難しいという印象。ファン向けではないだろうか。
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資本主義の定義、歴史、現代での位置付け ・長い16世紀 利子、法人の概念の発展と宗教の役割(キリスト教の抵抗) 法人の概念により複数世代に渡る永続的な投資が可能に→イギリスの海洋権益拡大 スペインが陸を支配しようとしたのに対してイギリスは海(貿易)を支配→資本主義的支配 中国の明...
資本主義の定義、歴史、現代での位置付け ・長い16世紀 利子、法人の概念の発展と宗教の役割(キリスト教の抵抗) 法人の概念により複数世代に渡る永続的な投資が可能に→イギリスの海洋権益拡大 スペインが陸を支配しようとしたのに対してイギリスは海(貿易)を支配→資本主義的支配 中国の明も航海を行ったが資本主義がなかったためアフリカ等の支配には至らなかった オランダは固定資本で海洋拡大したがイギリスは事業ごとの資本調達→永続性 ・現代 現代における資本主義の限界と永続可能性 ゼロ成長社会が示唆すること、その捉え方 「桐島部活やめるってよ」が現代社会において意味すること
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p.21 水野:古代・中世・近代を通じての普遍的原理は蒐集(コレクション)であり、そのうち最も効率的なのが資本主義だと理解している。 p.38 水野:16世紀イタリアでのジェノヴァで金利2%を下回る時代が11年続いた。利子率革命と言っている。超低金利のもとで投資機会がもはやない。山の上までワイン畑とか、建築物とか。 p.65 水野:不足する食糧を獲得するための土地を「新大陸」に求めたというのが一番納得のいく説明。 p.84 大澤:煉獄とは、地獄行きが猶予される待合室。金貸しが死ぬと、煉獄に送られ、その間に遺族が教会に寄付などの善行を積むと、罪が浄化される。安心して利子を取ることができるようになった。 途中まではおもしろいが、やはり、どう生きるかは中途半端な対談に終わっている。
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【由来】 ・「プーチン最後の聖戦」からの「グリーンスパン」からのイギリス関連本からの「グローバリズム掲載」からの水野和夫検索@amazon。 【期待したもの】 ・ 【要約】 ・ 【ノート】 ・
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チャーチル『資本主義は最悪のシステムだが、これ以上のものはない』 限界収益低減の法則、 数を重ねると満足度が下がる。→満足度のシェアをすれば、解決するのでは?パイをどんどん大きくすればよいのでは? サモア 最後通帳ゲームは3割を切ると拒否されやすい。 利子率革命 ウェストファリア条約 三十年戦争を終結させた世界最初の大規模講和条約 →17世紀のドイツを中心として起こった宗教戦争です。 荒廃するドイツにおいて、争いの渦中にいなかったプロイセンが台頭してきた。 →家康? 1618年から1648年まで、三十年間にわたって繰り広げられたため、こう呼ばれています。 中世ヨーロッパ 利子悪いのは神の時間に利子をつけるから。高利貸し ウスラ 金利はラテン語で「ウスラ(USURA)」と言う。もともとはあらゆる金利を含む概念だったが、中世の教父たちや教会法が「与える以上に受け取ること」と定義したことで、「正当でない」金利という意味を持った
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【書きかけ】 書名と著者名で拒否反応を起こす人も(特に近代経済学を一通り学んだ人には)いると思うし私自身はちょっとしたきっかけで読んでみたが、一度考えてみてもよい問題ではある。博識とイメージで押し切るトンデモな面はあるだろうから気をつけたほうがいいが、そういう面を全く含まずに考え...
【書きかけ】 書名と著者名で拒否反応を起こす人も(特に近代経済学を一通り学んだ人には)いると思うし私自身はちょっとしたきっかけで読んでみたが、一度考えてみてもよい問題ではある。博識とイメージで押し切るトンデモな面はあるだろうから気をつけたほうがいいが、そういう面を全く含まずに考えるのは難しい話だと思う。トンデモ本としての価値しかないと思う人は逐一説得的な反論を試みるべき。”正統な”経済学者も百家争鳴のなか大衆感覚では結局のところ長期停滞のままであるのは事実なのだから。
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