資本主義という謎 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
2013年刊。著者水野は埼玉大学大学院経済科学研究科客員教授、大澤はフリーの社会学者。「100年デフレ」刊行時より注目する水野氏の論は個人的に新奇でないが、一貫した論に安心感。一方、主著未読の大澤氏は、水野と専攻は違うが、資本主義黎明期に相当する中世⇒近代への移行期、1970年頃の資本主義の変容期に造詣が深い。2人の論を切り結ばせる本書は、現代と将来の資本主義につき多面的把握を可能にするものと言えるだろう。◇ただ、大澤の、現代を不可能性の時代とする意味内容は本書では舌足らずか。◇日本の再分配機能は不全。 その意味は、課税の累進性につき所得1億円が負担比率の頂点。以上は比率が下落するらしい。「タックス・ヘイブン」でも同様の指摘あるので多分間違いない。この点は、もっと怒るべきだと思う。◇1000兆円の国家債務を民間の1000兆円弱の資産が担保しているのが日本の信用の源泉。だが、これをもし互いに打ち消し合うような事態になれば、国家による民間資産の収奪ではないか。という意味で脆弱な状況。◇単年度の財政均衡が継続して実現できていないのは、既存システムが経済・社会構造に適合していない証左というのは目から鱗。 ◇その他諸々の視座・情報を貰えた良書である。◇EUあるいはその域内国の利子率の変遷は見てみたいところ。水野氏が重要視する指標であり、日米はともかく、EUに関してみれば、本書はそのさわりを述べるにとどまるからだ。
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インデックス投資家として、世界の成長ってのがどこまで続くのかが気になって手に取った一冊。正直なところ半分も理解出来なかったが、資本主義における経済成長ってのは、永遠に続くものではないのかな、という風には理解しました。 まあ当面は大丈夫かなとも思いますが、「桐島、部活やめるってよ」...
インデックス投資家として、世界の成長ってのがどこまで続くのかが気になって手に取った一冊。正直なところ半分も理解出来なかったが、資本主義における経済成長ってのは、永遠に続くものではないのかな、という風には理解しました。 まあ当面は大丈夫かなとも思いますが、「桐島、部活やめるってよ」の引用話のところで、破綻は突如訪れるものというような話もあって、油断はならないのかも知れません。素人にタイミングが判断出来るわけありませんが、、、
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水野和夫氏の言説が読みたくて手に取った。後半は完全に大澤真幸氏のペース(「食っちゃった」という感すら)。でも知的刺激に富んだまれに見る好対談と言える。
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とても(めちゃくちゃ)いい本でした。ラストのほうでは、桐島、部活やめるってよの高校生たちと社会が対応させられていたりして、対談の結論にもぐっときて、泣いてしまいそうでした。「アメリカ、覇権やめるってよ」には噴き出してしまいました(笑)。 石原千秋さんの『打倒!センター試験国語』で...
とても(めちゃくちゃ)いい本でした。ラストのほうでは、桐島、部活やめるってよの高校生たちと社会が対応させられていたりして、対談の結論にもぐっときて、泣いてしまいそうでした。「アメリカ、覇権やめるってよ」には噴き出してしまいました(笑)。 石原千秋さんの『打倒!センター試験国語』で資本主義についてはこちらの本を、とあったので手に取りました。 人類学、人類史的な視点で資本主義(西洋史における近代)が語られていて、かつ、対談はつねに人間への真摯な思いで満ちていて、非常に救われました。私は資本主義のもたらしたものの大半は嫌いで、どうもこのやり方には救いはないのではないかと、昔から懐疑的で、近年の社会状況ではその思いはどんどん強くなっていました。しかし、その資本主義に深く関わる人たち(大澤さんは社会学者ですが)も、資本主義は終わるとはっきり言われていて、そして逃げずにその先をどうするのかということを専門的に考えてくださっていて、すごく勇気が持てました。経済学者の方、エコノミストの方、ぜひこうしたことを考えて、行動に移すのは難しくとも、ともかく考えていってくださればと思いました。もちろん私達市民の一人ひとりも考え、逃げずにぶつかっていかなければならない問題です。猶予はおそらくあと十年ほどということですので、自分も、この十年で、みんながこの後の世界を生きられるような社会作りの下準備を、少なくとも自分のできる範囲ではきちんと終わらせなければならないと感じました。 非正規雇用者をこれだけかかえている日本ですが、非正規雇用の労働者がはたしてどれだけの貧困に実際にさらされているのかということは、それぞれの方にそれぞれの事情と状況があると思うので、全体像としてどうなるかということは私はイメージできません。しかし、正規雇用の若い労働者が、体や命を犠牲にして働いているのを非常に多く目にし、非正規雇用でも正規雇用でも、つらい人はつらい目にあっているのだろうという、全体として若い人の労働に対しては暗い気持ちがあります。 これからの時代(資本主義が終わってから)のシステムは、「自分の命や心を大切にしながら、可能な範囲で一生懸命働く」という生き方を、どうやったら多くの人が実現できるかということに深く関わってくると思います。今の時代は、人々、とくに若い人々が、あまりにも健康を犠牲にして働かされすぎています。 私自身(27才)は現在、非正規雇用で働いていて、疾病者で、嗜好品などはほとんど購入できない状態ですが、しかし、全く絶望感や不安感とは無縁で、幸せに生きさせて頂いています。一番の理由は、本書でも言及されていた「寂しさ」を感じずにすんでいるからだと思います。そして、周りの非正規雇用者たちを見回しても、絶望を感じて貧困のなかで生きている人がいるか、といえば、少なくとも私の周りではそうではありません。大人たちの、非正規雇用=不幸のような図式は、私達の世代には肌感覚としてはそこまで馴染んでいないかな、という印象も持っています。正社員として一生を過ごしたことがないために、非正規雇用で一生を過ごすとそれに比べてどうなるのか、ということが、まだあまりよくわかっていないからかもしれません(出産や育児など、多額の費用が必要となる人生のイベントを経験するのは、今の収入ではものすごく難しいのかもしれません)。しかしともかく、雇用は保証されていなくとも、職場での信頼関係があり、家族や友人との絆を感じられている限り、人はそこまで「不幸」になることは、できないのではないかと感じます。 しかし、私自身が今のように幸せな状態で社会に参加することができるようになるまでには、資本主義社会の生んだ様々な構造によって奪われた沢山のものと、それを取り返すためのあまりにも長い戦いの時間がありました。親世代と比べて、自分たちの世代のほうが多くのものを奪われている、という実感はあります。それはほとんどが、人間性や人との繋がりに関わる問題です。資本主義が終わって次のシステムが来たとき、私達若い世代が思うことはおそらく一つだと思います。人と人とがばらばらにならずに、きちんと他人を信頼し、信頼される関係を誰もがもてる社会、その実現が目指されると思います。
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資本主義の「終わり」を大きな観点から論じた対談。目先のこまごました事象は気になるが,こうした大局的な見方を自分のものにしておくのは大事。
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前のボスが勧めてたので、読んでみた。経済学者の水野和夫と社会学者の大澤真幸の対談。正直よくわからないところも多いのだけど、対談形式なのでわりとすんなり読めた。
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水野和夫と大澤真幸の顔合わせは意外だったが、以前より知り合いだったらしい。2人の対談を通じて、経済学的な観点と社会学的な観点から、いまにも崩れそうな資本主義について、歴史的なスパンでとらえ直している。 近代とともに発展した資本主義は、現代に至ってかつてないレベルでグローバル化した...
水野和夫と大澤真幸の顔合わせは意外だったが、以前より知り合いだったらしい。2人の対談を通じて、経済学的な観点と社会学的な観点から、いまにも崩れそうな資本主義について、歴史的なスパンでとらえ直している。 近代とともに発展した資本主義は、現代に至ってかつてないレベルでグローバル化した。この帰結として、搾取できるフロンティアは消滅し、「成長」する余地がなくなっている。このことが、さまざまな問題として露呈している。きわめて低い金利の状態が続くというのは、歴史的に見ても経済システムが成長しきった状態で、大きな社会的な変化がなければ解決しない。 資本主義に代わる最適な経済システムの想定があるわけでもない。 成長戦略や単なるイノベーションといった、小手先の解決策で通用するというわけでもない。 例えば、ドラッカーが知識社会と呼んだような、まったく現代と異なった社会が、今後何十年か後に出現しているのかもしれない。 それらについて、イメージし形成できるのは、最終章でふれられているように、我々とは違った価値観を持つ、今の、これからの若者たちなのかもしれない。
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資本主義という社会・経済システムが機能不全に陥るのはもはや時間の問題であり、それに代わる新しいシステムが必要になるという水野氏の考え方を社会学者の大澤氏との対談で整理・説明していく内容の本。 このまま行けば大きな不幸が待っている。確かにそのように思える。では、どうすればいい?
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「(株)貧困大国アメリカ」を読むと、資本主義は強欲な金融資本主義へと進み、グローバル化し、政府への影響も強めているという。そこで手に取ったのが、タイトルもピッタリな「資本主義という謎」です。金利が2%を割る状態とは、投資すべき“理想”がない状態だそうな。現在、利子率革命が起こって...
「(株)貧困大国アメリカ」を読むと、資本主義は強欲な金融資本主義へと進み、グローバル化し、政府への影響も強めているという。そこで手に取ったのが、タイトルもピッタリな「資本主義という謎」です。金利が2%を割る状態とは、投資すべき“理想”がない状態だそうな。現在、利子率革命が起こっていて、資本主義は大きな転換点にあると指摘します。また、資本主義が内包する「蒐集」という動機は、辺境がなくなった時に果てるといいます。推奨される成長なき安寧秩序の世界では、限りある食料・エネルギーは上手く配分できるのでしょうか?まだまだ、先は見えませんね。
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地球規模で拡大する資本主義は一見普遍的な様相を持ちつつも、実は特殊な地域の宗教的・地理的バックボーンの上に成立した概念である。そうした資本主義が持つ不可思議さを歴史的に解きほぐす本。勉強になりました。
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