婚礼、葬礼、その他 の商品レビュー
《故人が本当にそうだったのかは、なつみの言葉のみから判断するのは難しいが、今はここで話しているというしがらみがあるぶん、なつみの気持ちを尊重すべきだ、とヨシノは思った》(P40) 《すみませんすみません、この御恩は一生忘れません、と勢いであるにしても大きく出て》(P57) 《...
《故人が本当にそうだったのかは、なつみの言葉のみから判断するのは難しいが、今はここで話しているというしがらみがあるぶん、なつみの気持ちを尊重すべきだ、とヨシノは思った》(P40) 《すみませんすみません、この御恩は一生忘れません、と勢いであるにしても大きく出て》(P57) 《うちの子がご迷惑をおかけいたしまして、と特にそういったことはなかったにもかかわらず、常套句として言った》(P76-77) 大変な混乱に巻き込まれているにもかかわらず頭のどこかは冷たく冴え渡っているヨシノの思考の流れが面白すぎて、一行も読み飛ばせない。密度の高い文章。 陣野俊史氏の解説にもある通り、津村作品では登場人物の細かいプロフィールは説明されないものの、こうした個々人の価値観や思考プロセス、言葉遣いを細やかに描写することで彼らがどんな人間かがくっきり浮かび上がるようになっている。津村マジックだ。 表題作もだし、もう一遍の「冷たい十字架」もそう。語り手が何人も現れるけど、高校生セキメがミネラルウォーターを《口のみした》とか、やはりこの語り手だからこそという言葉選びが多くてしびれた。口のみって高校生男子ならではの語彙だと思う。
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冷たい十字路 「ん?…ってことは!?」の構成。 登場する全部の関係性やその後が明示されるわけではないので、人々の生活の一部を切り取ってきたような印象の中編。
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ヨシノの話はとにかくにやにやがとまらないくらい好きな話。 友だちの結婚式に幹事として行ったのにその最中に会社全員参加型の葬式に呼ばれる 空腹の中、全く知らない人の葬式にでてる心中が面白くて。津村さんの言葉選びが好き。 ただ2話目の話は主人公が短い間に何人もでてきて、、そして1話目の話が面白かった分すこしスピードダウンしてしまった。 自転車で事故ったカップルの2人乗りの女の子が気になる存在だった。。
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ヨシノさん、大変! 色々と呼びつけられて アタフタしている彼女と一緒にワタワタしました お疲れさまでした お腹すいたねえ 目指す人生、きっと送れる気がします ヨシノさんなら 二編目の「冷たい十字路」 視点が面白いです ただカタカナの名前について行けませんでした 津村記久子さん 好きです ≪ 婚礼と 葬礼どっち? てんやわんや ≫
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同僚が結婚式を挙げた。 わたしは出席していない。 友人が亡くなって一年が経った。 わたしは彼女に会いに、地元に帰れていない。 結婚式は、事前に出席者の予定を空けておくように告知がなされる。その時点で、最重要案件である。一方で、葬儀は突然告知される。当然だが、突如として最重要案...
同僚が結婚式を挙げた。 わたしは出席していない。 友人が亡くなって一年が経った。 わたしは彼女に会いに、地元に帰れていない。 結婚式は、事前に出席者の予定を空けておくように告知がなされる。その時点で、最重要案件である。一方で、葬儀は突然告知される。当然だが、突如として最重要案件となる。 では、そんな結婚式と葬儀が重なった場合。あなたならどうするか。 この作品では、主人公ヨシノがその重なった最重要案件に立ち向かっていくお話。 まるで、そんな日常を一挙手一投足で描いたエッセイのような作品でした。 本作品でも、津村さん持ち前のユーモアが冴えわたっている。そして、主人公の正義感の強さとなめらかに吐き出される愚痴の数々。 津村作品の素晴らしいところは、この毒のような愚痴が、ポップに、心地よいリズム感でもって描かれているので、全く不快ではなく、ブラックユーモアとして冴えわたっている点にある。そして、不快にならないのはもう一点、登場人物それぞれみんな、ちょっとどうしようもないのになぜか魅力的なのである。 そして、解説でわかりやすく描かれているが、「与えられる情報は実は最低限」なのである。 先ほど「登場人物それぞれみんな、ちょっとどうしょうもないのになぜか魅力的」と書いたけれど、津村作品では、登場人物に関する情報があまりないまま物語が進み、会話や過去・現在の出来事から、読者側がその人物像を構築していく作業が必要になるのだ。外見や設定がかなり控えめに描かれているからこそ、そのキャラクターに俄然興味がわき、どんな人物なんだろうと想像力をかきたてられる。そこをほとんど描かなくてもこんなにも生き生きと描き、読者に印象を残し、魅力を伝えることができる。この描き方はすごい。 表題作と一緒に収録されている「冷たい十字路」。 この作品は、人物像が分かっても、その人物像の背景が分からないまま物語が進み、十字路に関する人々が代わる代わる主人公となって語られていくうちに、全体像が見えていくというものである。主人公が変わりながら進んでいく物語は数多くあるけれど、津村さんの毒がこんな風に、ある種ミステリ作品のように描かれるのは非常に珍しい。 そしてたぶん、間柄にもよるけれど、わたしは主人公と同じ立場なら、結婚式の方を優先するだろう。
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津村さんの描く「怒り」が好き。この人の世界観が好き。 この作品は表題通り、冠婚葬祭に翻弄される主人公の話です。「行かなければ・・・」と思いながら参加するそれらは、まさに“召喚”という表現がぴったり。所々、毒づいてはみるけれど、その毒に共感するし、結局「イイヤツ」な主人公が好き。...
津村さんの描く「怒り」が好き。この人の世界観が好き。 この作品は表題通り、冠婚葬祭に翻弄される主人公の話です。「行かなければ・・・」と思いながら参加するそれらは、まさに“召喚”という表現がぴったり。所々、毒づいてはみるけれど、その毒に共感するし、結局「イイヤツ」な主人公が好き。 ブログにて詳しいレビューしています* https://happybooks.fun/entry/2015/05/15/000000
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津村記久子作品の映像化ブーム来てほしい。津村記久子さんの会話劇を映像で見たいと強く思う。なんなら津村記久子さんが脚本を書いても良いのでは。現代の向田邦子だ。どこか企画してほしい。
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「旅行より結婚式が強くて結婚式より強いのはお通夜……」 「トレーディングカードみたいに言いなさんな。それはまあそうなんだけど」 皮肉怒りユーモア満載だけど空腹で腹を鳴らしながら他人の葬式で自分の身内のことを回想して号泣してしまうあたり、常識ありそうにみえて天然なヨシノに好感持て...
「旅行より結婚式が強くて結婚式より強いのはお通夜……」 「トレーディングカードみたいに言いなさんな。それはまあそうなんだけど」 皮肉怒りユーモア満載だけど空腹で腹を鳴らしながら他人の葬式で自分の身内のことを回想して号泣してしまうあたり、常識ありそうにみえて天然なヨシノに好感持てる。 タイトルの「その他」は生理現象を含んでそう。タイトルのザックリした感じ好き。 《それにしても、他の社員の付き合いのよさ、というか社会人作法の卓越に、何か筋違いな怒りのようなものも覚える。》
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全く興味も関心もない部長の父親の葬式に行かなくてはならない話。そういう義理系の会社あるあるだ。 自分だったら絶対顔も知らない部長の父親の葬式なんていかないなー。
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うまい。やっぱり津村記久子はうまい。 表題作は、笑えながら、ドラマがいくつも起こる!ものの、それがドタバタなのに、なんとなく現実的。 二作目は、どんどん語り部が変わりながら、話が進んで行く。 本当にうまい。引き込まれる。 2017.05.04
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