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婚礼、葬礼、その他 の商品レビュー

3.8

41件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2017/05/10

招待客の旅行の日程など関係なく人は結婚するし、結婚式の日取りに関係なく人は死ぬ。本作の主人公ヨシノは、ひとり旅でもしようと旅行会社に申し込んだその日に、しばらく疎遠だった学生時代の友人から連絡があり、結婚式と披露宴への出席ばかりかスピーチと二次会の幹事まで頼まれる。断れなくて、段...

招待客の旅行の日程など関係なく人は結婚するし、結婚式の日取りに関係なく人は死ぬ。本作の主人公ヨシノは、ひとり旅でもしようと旅行会社に申し込んだその日に、しばらく疎遠だった学生時代の友人から連絡があり、結婚式と披露宴への出席ばかりかスピーチと二次会の幹事まで頼まれる。断れなくて、段取りに奔走。ついに当日を迎えたら、これから披露宴というときに会社の常務から電話。ヨシノの上司の父親が亡くなったから、直ちに来いと。社員18名の会社は良くも悪くも家族的で、誰かが亡くなれば必ず全員で通夜の手伝い。なぜ本葬ではないのかといえば、18名の会社は平日昼間に会社を閉めるわけにいかないから。 表題作の『婚礼、葬礼、その他』は、これまで人を呼びつけた記憶がない、常に腰の低いOLヨシノが、こんなふうに踏んだり蹴ったりな目に遭います。婚礼葬礼両方の様子も面白ければ、その他の部分はもっと面白い。当日の朝に寝坊して食事できなかった。だけど披露宴でご馳走にありつけるからいいやと思っていたのに、飲まず食わずで通夜の手伝いに行かねばならなくなり、ヨシノは腹ペコ。人が幸せでも不幸でも腹は減るもの。 もうひとつ収録されている『冷たい十字路』は、地下鉄の駅に降りる道に面した十字路が舞台。通勤通学の自転車が無尽蔵に走るこの十字路は危険なことこの上ない。ある日起きた高校生同士の衝突事故。その目撃者や、この十字路を校区に持つ学校の教師、十字路前にあるスーパーで働くパート女性などの話で構成されています。人間模様の描き方が丁寧でこれまた面白い。 どちらの話も幸せとはいえないのに、最後はちょっぴり優しさを感じてほっとします。長い夜と心の隙間を埋めるのは、結婚式よりもめでたくはなく、葬式よりも重要ではないものかもしれないけれど、それでいいというヨシノの言葉が響いてきます。 しかしこれから披露宴というときに訃報が届いたら、結婚式<葬式は致し方のないことなのか。故人は一面識もない人だというのに。

Posted byブクログ

2017/04/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

旅行する予定が、友人の結婚式の二次会幹事に選ばれ奮闘するものの、 当日になって会社の上司の親族のお葬式に駆り出されるヨシノ。 空腹に耐えるヨシノ、 お葬式会場のトイレのなかで、故人の愛人同士の罵り合いを聞きながら、電話で結婚式のスピーチを語るヨシノ。 他短編。 二つの高校と小学校がある町での 高校生同士の自転車事故。 小学校教師と事故を起こした高校生との過去の関係。 事故を起こした高校生に助けられたことがある小学生。 その小学生を娘に持つ働く母親。 自転車事故を目撃したOL。 事故についての手紙を作成することになった男子高生。 津村さんの登場人物たちは、みんな真面目だな。

Posted byブクログ

2016/09/26

「とにかくうちに帰ります」を楽しく読んだ思い出が蘇った。人を呼び出す才能がないことに悲観してなくて、受け入れてるところが津村さんらしくてよい。冷たい十字路のほうもいい。朝交差点で起きた自転車事故を複数の視点で書く。周りの人の視点。いろいろ思うんよね。人がいろいろ思う小説が好きなの...

「とにかくうちに帰ります」を楽しく読んだ思い出が蘇った。人を呼び出す才能がないことに悲観してなくて、受け入れてるところが津村さんらしくてよい。冷たい十字路のほうもいい。朝交差点で起きた自転車事故を複数の視点で書く。周りの人の視点。いろいろ思うんよね。人がいろいろ思う小説が好きなので、冷たくても笑えなくてもいい。

Posted byブクログ

2016/04/30

不幸な人間とバカな人間しか存在しない世界。 前半は主人公がお人好し故の気苦労が共感できないこともなかったが、 後半の登場人物は母子家庭の親子を除けば、揃いも揃って人間のクズばかり。 クズ達が自分のことを棚に上げて偉そうに世の中を語る。その滑稽さを笑うのが正しい読み方だろうか?...

不幸な人間とバカな人間しか存在しない世界。 前半は主人公がお人好し故の気苦労が共感できないこともなかったが、 後半の登場人物は母子家庭の親子を除けば、揃いも揃って人間のクズばかり。 クズ達が自分のことを棚に上げて偉そうに世の中を語る。その滑稽さを笑うのが正しい読み方だろうか? 全く嘘くさいとまでは言わないが、いくら何でも現実はここまで愚かではないと信じたい。

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2015/12/24

 それぞれがはっきりとはしてないけど確かな不満を抱えていて、でもそれを抑えて社会で足並みを揃えて生きているのだけど、ちょっとした拍子にその膿が表面化してしまう怖さ。そういう意味では、実は非常に脆い日々を送っているんだなと思った。他人の地雷がどこにあるのかも分からないし、どれだけ憂...

 それぞれがはっきりとはしてないけど確かな不満を抱えていて、でもそれを抑えて社会で足並みを揃えて生きているのだけど、ちょっとした拍子にその膿が表面化してしまう怖さ。そういう意味では、実は非常に脆い日々を送っているんだなと思った。他人の地雷がどこにあるのかも分からないし、どれだけ憂鬱でも社会的に生きていくことから簡単に逃れられないから、だからみんな何とか折り合いをつけている、その閉塞感が本当に晴れることはないのだろうけど、悪いことばかりでもないとぼんやり思える津村さんの仕事描写がとても好き。

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2015/07/25

祖父母のことを、ふと思い出した。彼らと過ごした日曜の午後は永久に続くことのように思えた。なぜか今もそれが終わったことのようには感じられず、しかしそれは幸いな事だと考えるに至った。

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2015/06/04

「婚礼葬礼、その他」は、こんなことあらんやろと思いつつも面白く読めた。「冷たい十字路」は、ミドリバシ先生が気持ち悪くて仕方なかった。

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2015/01/09

以前に図書館で借りましたが、また読みたくなったので文庫で買いました。 この人は才能あるな、と思う。 なんかいいんだよなあ。 「婚礼、祭礼、その他」は最初はユーモアあっておもしろいんだけど、後半、お通夜が始まってヨシノがいろいろ考え始めてからがすごい。 みんな一度は考えたことが...

以前に図書館で借りましたが、また読みたくなったので文庫で買いました。 この人は才能あるな、と思う。 なんかいいんだよなあ。 「婚礼、祭礼、その他」は最初はユーモアあっておもしろいんだけど、後半、お通夜が始まってヨシノがいろいろ考え始めてからがすごい。 みんな一度は考えたことがあるんじゃないかと思う、「死のこと」。 それが怒涛のように出てきて、ヨシノじゃないけど怖くて泣きたくなる。 以前に読んだときは、ただただおもしろいだけだったのになあ。 もう一つの「冷たい十字路」。 こっちも怖かった。 確かに自転車って危ない。 特に高校生の自転車は。 何をそんなに急ぐのだ、ってくらいスピード出したり、広がったり。 「誰にもメーワクかけてねーじゃん」じゃないんだよ、迷惑なんですよ。

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2014/09/10

【今もっとも勢いのある女性作家の傑作中篇!】友人の結婚式に出席中、上司の親の通夜に呼び出されたОLヨシノの、てんやわんやな一日を軽妙に描く。芥川賞作家の傑作中篇集。

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2014/06/15

津村さんの小説は淡々としたイメージが強いけど、 「婚礼、葬礼、その他」は珍しくばたばたした感じで テンションもいつもよりやや高め。 旅行<結婚式<葬式に“召喚”される様に同情しつつも 笑ってしまう。終わり方も気持ちいい。 併録の「冷たい十字路」は題名通り殺伐とした雰囲気。 朝は...

津村さんの小説は淡々としたイメージが強いけど、 「婚礼、葬礼、その他」は珍しくばたばたした感じで テンションもいつもよりやや高め。 旅行<結婚式<葬式に“召喚”される様に同情しつつも 笑ってしまう。終わり方も気持ちいい。 併録の「冷たい十字路」は題名通り殺伐とした雰囲気。 朝は特に自分の都合しか見えなくなってしまうよね。

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