婚礼、葬礼、その他 の商品レビュー
感覚が、特に笑いのツボがあう作品だった。真面目なのにちょっとおかしいところ、婚礼と葬式を続けざまに描くところなど、好きな作品。
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表題作が特に面白かった。 津村さんの小説の中でも好きなタイプの話。 友人の結婚式の当日に、上司の父親の通夜に行かなくてはならなくなり結婚式をキャンセルして……というストーリー。小さな会社に勤める立場の会社員のままならなさが、真面目なんだけれどユーモア混じりに描かれている。 通常、身内でもなければ「結婚式>葬式」だろうと思うが、社員18人しかいなくて、しかも全員参加が余儀なくされている状況なら断れるのかどうか……、と本人でなくても真剣に悩むところだろうと、フィクションながら気の毒に思う。 参列した通夜での人間関係や、キャンセルした結婚式に出席している大学時代の友人達が、それぞれ個性的なキャラクターで、当人たちは皆真面目にやっているであろうからこその面白みがある。 津村さんの描く登場人物は、語りが堅実なのか、どこか他人のような気がしない。友人の話を聞いているようで面白い。よくよく状況を考えると、まあ現実にはあまりないようなことなのだけれど。その辺、本当にありそうな感じに書けるのがさすが。 最後にラーメンを食べるシーンが印象的で、のどかでぽっかり明るい感じがして、明日に希望を持てるラストなのが好きだ。
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結婚することと、誰かが死ぬということを、同時に深く考えさせられる一作でした。私も葬式って亡くなった方のためではないと思う。 もう一つの中編も良かったです。自転車毎日乗ってた時期があったんで、危険性とかよく考えてたなぁ。
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婚礼、葬礼、その他。 この小説は、その他にあたる、婚礼、葬礼の列席者にスポットライトをあてた小説だ。 婚礼を挙げるひと、葬礼されるひと、するひと、どれでもなく、なかば『巻き込まれた感』のある主人公は、そもそも旅行にいくはずだった。それが結婚式がはいり、その途中で会社の上司のお父さ...
婚礼、葬礼、その他。 この小説は、その他にあたる、婚礼、葬礼の列席者にスポットライトをあてた小説だ。 婚礼を挙げるひと、葬礼されるひと、するひと、どれでもなく、なかば『巻き込まれた感』のある主人公は、そもそも旅行にいくはずだった。それが結婚式がはいり、その途中で会社の上司のお父さんが死んだと葬礼に呼び出される。 小説っぽい展開の中にも、日常のそこかしこに忍び込むリアリティ、その面白みがちょろちょろと顔を出す。 お腹かがすごく空いてしまったとか、代打を頼んだ結婚式の幹事が使い物にならないとか、葬礼にきていた身内の高校生とのなんか近い距離感とか。 短いお話でここまでドラマ性のあることをドラマ性のないように書けるのはすごいなぁ。 同時収録の『冷たい十字路』もたくさん登場人物が交錯し、著者の得意とするユーモア面は封印している。 小学校と高校の通学路に位置する横断歩道で起きた自転車事故。 思わぬ人間関係のつながりと錯綜。 著者特有のカタカナ表記の名前が、この作品ではじゃっかん仇になっている。わたしの集中力の問題だろうか。 ラストは続編があるかのような突然の膨らみを見せてくれて面白かった。
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芥川賞受賞作は読んだような、でもほとんど記憶がないので、初対面の気持ちで読んだ。「どたばた」というほど表面に汗をかいているようすはなく、帯に書いてあるとおり「てんやわんや」という感じがフィットしている。外に出る汗と言うよりは脂汗がふさわしい。面白く読ませていただきました。
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祝福したい気持ちはある。心から。 しかし、服やら靴やら髪型はどうしよう? お祝儀…。 メッセージビデオを作るのか。 あぁ面倒臭い。 そんなことを感じちゃ駄目だ、と思う。 でも憂鬱。 幸い幹事を頼まれたことはないし(頼まれるような人徳がない)、結婚式の途中でお通夜に呼び出されたこ...
祝福したい気持ちはある。心から。 しかし、服やら靴やら髪型はどうしよう? お祝儀…。 メッセージビデオを作るのか。 あぁ面倒臭い。 そんなことを感じちゃ駄目だ、と思う。 でも憂鬱。 幸い幹事を頼まれたことはないし(頼まれるような人徳がない)、結婚式の途中でお通夜に呼び出されたこともないのですが。 この冠婚葬祭のテンパった苛々する感じを追体験してしまいました。 本人は必死なのに客観視するとひどく滑稽ですね。 人生って面倒臭いことだらけだ。 でも過ぎてしまえば、それも愛しき日々…なのかな?
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もっと大人になって会社に入って人間関係が広がっていったら、私も一日に複数の式に出るようなことがあるだろうか。死者というだけで良く言うことが多々あるが、そうではないなつみの言動には好感が持てた。
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2つの中編を収録。表題作の「婚礼、葬礼、その他」は、タイトルがパッとしないけれど、小説としての完成度は高いし、この作家らしい個性にも溢れている。日頃は、ほとんど無意識のうちに都市生活を営んでいる主人公のヨシノ(我々も)だが、こと冠婚葬祭となると、俄かに旧態依然とした村落共同体的な...
2つの中編を収録。表題作の「婚礼、葬礼、その他」は、タイトルがパッとしないけれど、小説としての完成度は高いし、この作家らしい個性にも溢れている。日頃は、ほとんど無意識のうちに都市生活を営んでいる主人公のヨシノ(我々も)だが、こと冠婚葬祭となると、俄かに旧態依然とした村落共同体的な因習に囲まれることになる。ヨシノという、ちょっと古風な名前もそうしたことを反映しているのだろう。また、後半の「冷たい十字路」は一転して、共同体の紐帯を喪った都市生活の孤独を、1つの事故を通して、これも実に巧みに描きだしてみせた。
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文字通り、婚礼、葬礼、その他に振り回され、思わず「旅行より結婚式が強くて、結婚式より強いのはお通夜…」とつぶやく主人公の1日を描いた表題作。 毎朝、自転車の往来が激しい交差点で事故が起きたことで、そこを行き交う人々に微妙なつながりが生まれる『冷たい十字路』。 津村さんの働く女性の...
文字通り、婚礼、葬礼、その他に振り回され、思わず「旅行より結婚式が強くて、結婚式より強いのはお通夜…」とつぶやく主人公の1日を描いた表題作。 毎朝、自転車の往来が激しい交差点で事故が起きたことで、そこを行き交う人々に微妙なつながりが生まれる『冷たい十字路』。 津村さんの働く女性の作品は好きだが、この2つの短編はお仕事色と微笑ましさが控えめ、かつ文句や愚痴が多く目につき、とりわけ「泣きたくなる」という文言が繰り返し出てきたところがどうも苦手だった。残念。
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本書には、「婚礼、葬礼、その他」と「冷たい十字路」の短編2作品が所収されている。 「婚礼、葬礼、その他」は、1日の間に、友人の婚礼(2次会の幹事を依頼されている)と会社の上司の父の葬儀が重なってしまって、さあ大変、という状況での主人公の行動や、人間観察、人間関係の機微、そこでの...
本書には、「婚礼、葬礼、その他」と「冷たい十字路」の短編2作品が所収されている。 「婚礼、葬礼、その他」は、1日の間に、友人の婚礼(2次会の幹事を依頼されている)と会社の上司の父の葬儀が重なってしまって、さあ大変、という状況での主人公の行動や、人間観察、人間関係の機微、そこでの主人公の心の移ろいが描写されている。 一方、「冷たい十字路」では、自転車通学の高校生達による傍若無人な自転車の乗り方から起こるべくして起こった事故を題材に、その事故の周辺の人びとの生活や思いなどが粛々と綴られた作品。 いままで、津村さんの作品では、どちらかというと20歳代後半から30歳代の働いている女性達を主人公に設定し、彼女たちが日々悩み、悶々としながら、それでも頑張って働いている姿が描かれることが多かった。 本書は、そうしたイメージが完全には払拭されたわけではないけれど、それでも今までとは違った感じがする2作品。こういう津村作品も、イイ!
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