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いちばん長い夜に の商品レビュー

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75件のお客様レビュー

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2013/03/10

+++ わたしは、まだやり直せるのだろうか? 幸せになって、いいのだろうか? 刑務所で知合った前科持ちの芭子と綾香は、東京下町で肩を寄せ合うように暮らし始めたが――。健気に生きる彼女たちのサスペンスフルな日常は、やがて大震災によって激しく変化していく。二人は、新しい人生の扉を見つ...

+++ わたしは、まだやり直せるのだろうか? 幸せになって、いいのだろうか? 刑務所で知合った前科持ちの芭子と綾香は、東京下町で肩を寄せ合うように暮らし始めたが――。健気に生きる彼女たちのサスペンスフルな日常は、やがて大震災によって激しく変化していく。二人は、新しい人生の扉を見つけられるのだろうか? +++ 前半と後半でがらっと様相が変わる。前半は前作『いつか陽のあたる場所で』に引き続き、芭子と綾香が身を寄せ合ってひっそりと生きている日々の出来事が、それぞれの性格や境遇のの違いを織り込みながら描かれている。家族のことをかたくなに語ろうとしなかった綾香が手放さざるを得なかった我が子のことを胸の中でこれ以上ないほど大切にしていると気づいた芭子が、綾香の故郷仙台に子どものその後を調べに出かけたまさにその日、あの大地震に遭い、大変な思いをして東京に戻ってからの後半は、ふたりの――ことに綾香の――心の持ちようや生き方がこれまでとはがらっと変わり、生命の尊さや償うということと真正面から向き合うことになるのである。芭子が思い描いた未来とは違うが、綾香も芭子もそれぞれが、前向きに生きていくだろうということがうかがい知れるラストで救われる思いになった。震災の描写は、偶然にも著者の実体験ということで、より生々しく圧倒的である。どんな暮らしをしようと、芭子と綾香の絆は切れることはないだろう、いつまでも姉妹のようにいてほしい、と思わされる一冊である。

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2013/02/21

服役し出所した二人の女性の生活を描いた小説で、ドラマ化(「いつか陽のあたる場所で」)もされているシリーズの完結編。 罪を償ったからといって罪が消えるわけではないけれど、でも、犯した罪を悔い背負いながらもひっそりと真剣に生きていこうとする彼女たちの幸せを願わずにはいられません。

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2013/02/08

大好きなシリーズの完結編と聞いて、じっくりと読みたかったので休日まで寝かせてありました。 ラストになるにつれてどんどん重たくなる空気。 そして私自身も思い出すあの日のこと。 まさにいまを生きる女性二人の、それぞれの強さ、明るさに助けられる作品。 罪を犯した自分は幸せになって...

大好きなシリーズの完結編と聞いて、じっくりと読みたかったので休日まで寝かせてありました。 ラストになるにつれてどんどん重たくなる空気。 そして私自身も思い出すあの日のこと。 まさにいまを生きる女性二人の、それぞれの強さ、明るさに助けられる作品。 罪を犯した自分は幸せになってはいけないと思う彼女たちの、しあわせを願ってやみません。 芭子ちゃんも綾さんも、どうかどうかしあわせに。

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2013/02/18

陽のあたる場所からいちばん長い夜にまでシリーズを読みました。 前2作は読み終わったあと、ほのぼのとしたことを覚えています。 今回は読み終わったあと、前2作品とはちがい、ほのぼのとした気分ではなく、なんとも言えない気分になりした。悪い意味ではなく。。。。 今回で前もちシリーズが終わ...

陽のあたる場所からいちばん長い夜にまでシリーズを読みました。 前2作は読み終わったあと、ほのぼのとしたことを覚えています。 今回は読み終わったあと、前2作品とはちがい、ほのぼのとした気分ではなく、なんとも言えない気分になりした。悪い意味ではなく。。。。 今回で前もちシリーズが終わってしまうのでは悲しいけれど、やはりこのようね終わり方でよかったとも思えました。

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2013/01/31

読み終わって言葉を失った。なんて壮絶な終わりなんだろう。 途中までは「yom yom」で読んでいた。たぶん「その日にかぎって」も読んだはずだ。 あらあら、芭子ちゃん、あの震災に巻き込まれちゃったんだ、なんて軽く考えていた。やっぱり作家としては、書かずにはいられないんだろうかとも思...

読み終わって言葉を失った。なんて壮絶な終わりなんだろう。 途中までは「yom yom」で読んでいた。たぶん「その日にかぎって」も読んだはずだ。 あらあら、芭子ちゃん、あの震災に巻き込まれちゃったんだ、なんて軽く考えていた。やっぱり作家としては、書かずにはいられないんだろうかとも思った。 ところが、1冊にまとまった本作を読んで、ぶん殴られたような衝撃を受けた。巻き込まれちゃったどころではない、その後の芭子の生活も、綾香の生活も、何もかもが全部変わってしまっていったのだ。 連載開始のころの予定では、綾香の過去もいずれなんらかの形で精算する予定だったという。そのための取材で作者は実際に仙台を訪れていたそうだ。そしてその時の体験がほぼそのまま、小説の中に落とし込まれている。あとがきでそれを知った。 読んでいるときに感じた異様なまでの臨場感は、すべて作者が実際に体験したことであり、感じたことだったのだ。それを作中人物のこととして再編成されたことで、いっそうの真実味を帯びている。読みながら息が苦しくなった。 あれからまもなく3年がたとうとしている。表面上は沈静化したようにも見えるが、実際にはまだまだたくさんの問題を抱えたままだ。そしてあの震災は日本の人たちをバラバラにした。 体験の差、経験の差、居住地の差、被害の差、そういったもので分断されてしまっている。 綾香の気持ち、芭子の気持ちがずれていったのは無理もないことだったのだろう。ましてや、犯した罪に決定的な差がある。綾香の、絞りだすような告白が胸に刺さった。 「取り返しの付かないこと」という言葉の本当の意味がここにある。 それでも、生きているのなら、生きていくしかないのだ。重い十字架を背負いつつ、苦しみにのたうちまわりながらでも、それでも時に笑い、時に泣き、時に喜び、ほんの少しでも人の役にたてるように力を尽くす。 それが生きるということなのだろう。 私はいまだにあの時の記録をまともに見ることができない。まともに考えることもできない。なんの被害も受けず、なんの苦労もしていないことが後ろめたくてたまらなくなる。後ろめたいと思うことすら申し訳なくて、ただひたすら目をそらすことしかできない。そんな私にとってこの作品はあまりに重い。

Posted byブクログ