TRIP TRAP の商品レビュー
憂鬱たち、オートフィクションと金原作品を読み続けているのだがここにきて、もうこの著者はいいかなと感じつつある。憂鬱たちの鬱の世界のブラックユーモア、別世界の滑稽な行動。オートフィクションの斬新な表現力など2作品ともに若者向けというか読み出したら一気読みできるくらいどっぷりと金原作...
憂鬱たち、オートフィクションと金原作品を読み続けているのだがここにきて、もうこの著者はいいかなと感じつつある。憂鬱たちの鬱の世界のブラックユーモア、別世界の滑稽な行動。オートフィクションの斬新な表現力など2作品ともに若者向けというか読み出したら一気読みできるくらいどっぷりと金原作品に浸ってしまうのに、今回は最初の2作品は面白かったのだが、パリからはもうページをめくるのがしんどくなっていた。とりたてて面白い表現、行動もなく平行線のまま話が進んでいく。 特に最後の2作品はおそらく著者の実体験をそのままに書いているだけでただのエッセイか日記のように感じた。
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金原ひとみ作品は初めて読んだ。 文体自体は読みやすく、流れも入りやすかった。 ただ、女性視点の旅に関する話だったため、 内容としてはイマイチ。 他の作品も読んでみたい。
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当たり前のことなんやろうけど、この人の小説を読むたびにいつも才能を感じる。ほえ〜ってなる。 好きな内容でも好きやない内容でも、 ほえ〜ってなる。
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金原ひとみの書く「わたし」に圧倒される。もうわたしわたしわたしわたしでこの人の世界にはわたししかない。わたしとわたしのことを好きといってくれる男。たまにわたしの子供。それも結局わたし。なんかもうほんとうに凄い。ここまで清々しくわたしなら、もうわたしだけでいいじゃん、なんにも迷うこ...
金原ひとみの書く「わたし」に圧倒される。もうわたしわたしわたしわたしでこの人の世界にはわたししかない。わたしとわたしのことを好きといってくれる男。たまにわたしの子供。それも結局わたし。なんかもうほんとうに凄い。ここまで清々しくわたしなら、もうわたしだけでいいじゃん、なんにも迷うことも心配することもないよ、って感じだけれども、わたしがわたしだからこそ、イライラしまくってるわけで。なんだか「わたし」がゲシュタルト崩壊しそうだけれども、そのくらい「わたし」が全開だったし全面に出ていた。ちょっとアンバランスさも感じて(ただの自分大好き女の小説ではない)、この人もなにかと色々いきるの大変そうだな、と思った。
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旅は時々、自分時間と自分のいる空間の殻を破ってくれる。「女の過程」「沼津」では帰る場所のないままの旅だったが、母となり帰る場所に制約される現実を受け入れていく。 金原ひとみの作品があまり好きになれないのは、動物的感覚の強さかもしれない。危うい均衡さでズブズブと堕落しながらも、最後はつま先で踏ん張ってしまうような、そんな感覚がある。 「女の過程内」の「可愛い」という言葉に含んだ軽蔑のニアンスにはニヤリとしてしまった。便利な「可愛い」と言う言葉の多様性を見せてくれた。 期待していた「沼津」が拍子抜けした。沼津は潮の香りが強烈な町だよ。ただこの作中で、四人がサークルになって手をつなぐ4次元旅行の体験遊びが、祈りにもにた精神状態から現実にもどり、一番旅らしく思った。 社会に迎合しない強さが不気味で、読了後、不快感になってしまうのかもしれない。
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金原瑞人の娘?ということは何となく知っていたが、この人の本は全く読んだことがなかった。たまたま文庫棚にあって、借りてみた。 マユという子が主人公。15の中学生だったマユは、パチンコ屋で働く年上の男の寮に潜むように同棲していて、学校には行ってない。男に縛られ、自分も縛りつけている...
金原瑞人の娘?ということは何となく知っていたが、この人の本は全く読んだことがなかった。たまたま文庫棚にあって、借りてみた。 マユという子が主人公。15の中学生だったマユは、パチンコ屋で働く年上の男の寮に潜むように同棲していて、学校には行ってない。男に縛られ、自分も縛りつけているような。そんなマユの生活は、あとの章で、少しずつ年齢が上がっても、あまりかわらない。携帯をいじって、タバコを吸って、酒を飲んで、男をひっかけているのか、ひっかけられているのか。何かに依存することで、やっと生きているようにも感じられる。 マユが夫とパリに行く章、ハワイへ行く章、そして子どもができたマユが子連れでイタリアへ行く章…男への依存、エキセントリックな行動、そういうのを読んでて、加藤和彦と結婚したあとの安井かずみが、こんな感じやったんかなーと、かってに想像した。依存というのか、加藤を縛り、自分を縛りつけるように結婚後を生きた(ように読める)安井かずみ。 マユの姿は、それに似てる気がした。 パリでのマユは、夫に「フランスにいる間、片時も私から離れないでね」などと言う。 ▼…とにかく一人で何かしなければならない状況が私は嫌で、いつも彼と二人で共同責任でなければ嫌だった。私は彼の保護下にあって、私の責任は私ではなく渠にあるという状態でなければ真っ当ではいられなかった。 …(略)依存している私を責める彼に、依存させた責任はそっちにある、と私は苛立っている。あなたがスポイルしてくれると言ったから、私は一人で生きていけなくなったのに、今更自立だの何だのと言われたところで、そんなのは受け入れられない。(p.130) マユは、そうして依存して、男を自分に縛りつけるようにして、でも、そのなかで、自分が何を見て何を感じているかを省みてもいる。 ▼彼といると、他の人が色々な面を持っている事が分かる。決して自分の感じた事が全てではないのだと分かる。彼と知りあって、そうして二人で色々な経験をしてきたのに、どうしてだろう私は彼の事を偏見にまみれた目でしか見れない。彼が女と話していると気が狂いそうになるし、彼は私の事を大切にしてないと思い込むし、彼が携帯で話しているのを見ると女じゃないかと疑うし、一緒にいない時は浮気か浮気でなくとも何か私の事を裏切っているんじゃないかと不安になる。彼と一緒にいると、色々なものが見えてくるのに、私の目から見える彼という生き物は、どんどん現実の彼とはかけ離れていって、歪んでいっているような気がする。(pp.163-164) 子連れで初めて出た旅がヨーロッパで、その行きの道中の十数時間で、もうマユはへとへとになっている。子どもをなんとか泣かせまいとし、泣き出す子どもに泣きそうになり、ずっとずっとずっと、腱鞘炎になりそうなほど子どもを抱っこし続けている。そこに、マユの変化が垣間見える。 ▼…生まれてこの方自立を拒み続けていた私が、とうとう何かを出来る人間になりたいと思うようになった。何も出来ない女でいたい、いつも誰かに何でもしてもらえる人間でありたい、そう望み続けていたのに、もうそういう女であり続ける事が出来なくなってしまった。…(p.223) 子どもをもって、多くのものを得て、多くのものを失ったと思うマユ。「少なくともあらゆるものを捨て去って、女は母になる」(p.215)と思うマユ。マユがぶるぶるとするほど抱っこを続けているあいだに、隣の席で夫は本を読んだりもして、それにストレスを感じるマユ。 ▼…この21世紀に於いても母親が育児の90パーセントを受け持つ風潮が生き残っている現実への憤りを皮肉に笑ってやり過ごすために、私は出産してから何度も頭の中で繰り広げてきたバカみたいな押し問答を繰り返していた。(pp.207-208) これは、マユの自立だろうかと、思いながら読んだ。一人の男に自分を縛りつけていたマユの関係のとり方が、少しずつ変わっていく。ほとんど目の前の男のことしか見ていない(見えていない)かのようだったマユが、変わっていく。 その変わっていくマユに、私はちょっとほっとしたのだ。 (6/7了)
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普通に真面目に学生時代を過ごし、 普通に結婚し、子を育ててる自分からみると、 なんだコイツは… が感想。 子供の頃に変に大人びていて、大人になったら変に子供じみていて。 フワフワ、地に足がついてなくてイライラ。 そんな気持ちにさせる、文章力は流石。
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『蛇にピアス』以来10年ぶりくらいにこの人の文章を読む。 何せ2冊目なのでこれまでの過程は知らないが 平凡なことを書けるようになったんだなぁという印象。 毎日同じようなことをして退屈で窮屈でそれなのに忙しく目まぐるしくて、生きているってそれだけで大変ですごいこと。そういうことを書...
『蛇にピアス』以来10年ぶりくらいにこの人の文章を読む。 何せ2冊目なのでこれまでの過程は知らないが 平凡なことを書けるようになったんだなぁという印象。 毎日同じようなことをして退屈で窮屈でそれなのに忙しく目まぐるしくて、生きているってそれだけで大変ですごいこと。そういうことを書くのって、インパクトで勝負するよりずっと難しいんじゃないかな。 途中から、マユの付き合ってる男の名前が出てこなくなったのがおもしろかった。男に依存して生きたい、そうしないと自分が分からないと言っていたけどそんなことはなかった。だって名前の分からないどの男と付き合っていても、彼女はいつもしっかり彼女だった。 人生のいろんな段階で、女は変わる。 変わることでそれまでの自分が分からなくなろうと、他の何かに依存していようと、自分は自分でしかあり得ない。
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主人公マユの中学生時代から母になるまでの各過程を描いた短編集。 でも私は、5つの短編全てがマユのことを描いていると、解説を読むまで気付かなかったのです、あり得ない。。 >彼といると、他の人が色々な面を持っている事が分かる。 >決して自分の感じた事が全てではないのだと分かる。
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"私たちは、サラダスピナーの中に放り込まれた菜っ葉のように ぐるぐると回され、遠心力で壁にへばりつき、 運命という力に抗えないまま身動きが取れなくなっているようだ。" 刹那主義、破滅願望、男性依存、作家。 著者の作品に共通するいつもの「私」 今作の「私」も「Hawaii de Aloha」の中盤から一度落ちる。 しかし「フリウリ」の彼女はマユに戻っていて、 むしろ彼女は「母性」を身につけている。 「夏旅」の「私」もTRIPすることもになく旅行から戻ってきており、 「マユ」のままで終わる。 ドロドロとしたものを抱えて終わることが多い著者だが、 今作の終わりは割と意外。 ”大抵、人と人との関係は、相手が伝えようとすることを悪意からであったり 保身からであったり、理由は色々あるだろうけど、誤解してみせたり、 勘ぐってみたり、ねじ曲げて捉えたり、他の話にすり替えたりして、 結局相手の伝えたい事は分かっていても分からない振りをしたり、 本当に伝えたい事とは別の事を主張してみたり、 そういう回りくどい事をするばかりで結局話も関係も何一つ進まない”
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