人質 の商品レビュー
映画も、連ドラ化されると薄味となる。それでも月9(ゲツク)くらいならいいが、火サスの二時間ドラマあたりになると、使い回しの役者に頼った高齢者狙いの場当たり的視聴率狙いが見え見えで、なおのこと興が削がれる。小説もシリーズ化してゆく中で、肝に命じねばならぬ注意点はそうした馴れ合いに...
映画も、連ドラ化されると薄味となる。それでも月9(ゲツク)くらいならいいが、火サスの二時間ドラマあたりになると、使い回しの役者に頼った高齢者狙いの場当たり的視聴率狙いが見え見えで、なおのこと興が削がれる。小説もシリーズ化してゆく中で、肝に命じねばならぬ注意点はそうした馴れ合いに陥らぬことだと思う。その意味で、危うく奈落に落ちそうになり、ぎりぎり土俵際で「残った」と言わせているのが、この道警シリーズの現在の姿なのかな。 『歌う警官』で好評を博した本シリーズの刑事たちは、その後道警シリーズと呼ばれることで、飛躍を繰り返し、読者たちにはシリーズ続編が待たれるようになった。そもそもが本当にあった道警裏金疑惑の内部告発事件を題材とした硬派の警察小説シリーズである。そのまま87分署の後釜を標榜してもいいくらいの刑事たちの存在感だってあったのだ。 しかし、ここのところ目先を変え、犯罪者の側にポイントを当てたシリーズとして、大きくツイストしたもので、エンターテインメントの土俵にとにかく載せてしまおうという作者の意図が、そろそろ鼻についてきてはいないだろうか。本作も、立てこもり事件という、最初から最後まで緊迫感の伝わる舞台装置を用意し、そこに前作同様、またもプライベート・タイムを活用しようとした小島百合刑事が居合わせてしまい、これでは最近は、彼女はほぼ独立系の主人公ではないいのかと思えてくるほど重用視されている。 横山秀夫であれば短編で書いてしまいそうな内容を、少し薄味にして、無理やり長くした印象のあるのが本書である。少なくとも中編小説(100ページくらい?)の長さに収めれば、より締まりがあったかなと思える。本書では犯人側の要求の反復がやたら多い上に、登場人物をあちこちにバラ撒き、同時制を示しながらのフラッシュバックを多用することで一種のリズムを与えながらも全体としては語りすぎてスピード感を失っている印象を否めない感覚が、どうしても残る。 エキセントリックでツイストされたよいプロットだし、籠城小説としては、新機軸のアイディアとなろうかと思われる。舞台装置としての札幌伏見<N43><ハイグロウンカフェ>あたりをモデルにした夜景の美しいカフェという設定も、小説設定としてはあまり前例が思い当たらず、面白いところだと思う。 だからこそ、この作品こそは、薄めず、エッセンスの部分だけで、よりスピーディ&スリリングに語ってしまうコンパクトな形が生きたかな? と思われてならない。 この作品程度の厚さというものは、読む側にとってはとても楽だし取っつききやすいのだけれども、その弊害としてのあっさり感は作品にとって、必ずしも得とばかりは言い切れない。多少の引っかかりがあっても、無駄なきプロットは、より高みを目指す読者を獲得するためのいい武器になるのではないかと、ぼくは思うのだが。 批判的に見えるレビューと思われるかもしれないが、それほどこの物語で取り上げられたものは面白い題材であり、良いプロットであると感じたゆえ、敢えて言わせてもらったものである。ぼくとしては、佐々木譲と道警シリーズの果て無き継続を、ただただ祈るばかりである。
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『3億円を貸してほしい。現金があることは知っている。お願いが聞いてもらえないと・・・・。返事はツイートで・・・』こんな脅迫文ではじまるプロローグの次には、札幌の住宅街での自動車盗難現場に大通署の佐伯警部補と新宮巡査が“ちょっと首を傾げる”現場は南15条西14丁目付近。 そして、小...
『3億円を貸してほしい。現金があることは知っている。お願いが聞いてもらえないと・・・・。返事はツイートで・・・』こんな脅迫文ではじまるプロローグの次には、札幌の住宅街での自動車盗難現場に大通署の佐伯警部補と新宮巡査が“ちょっと首を傾げる”現場は南15条西14丁目付近。 そして、小島百合巡査部長は欲しかったスマホを買って友達とプライベートピアノコンサート会場のワインバーへ・・・・。 これらの面々が登場すると言わずと知れた「笑う警官」や「警察庁から来た男」などで知られている「北海道警察シリーズ」である。 北海道出身の佐々木譲最新作【人質】のストーリーが進展する人質現場は“藻岩山”中腹の札幌夜景ビューポイントにあるワインバー。客と店のオーナー、ピアノ発表者など数名が人質として監禁される。偶然に居合わせた小島百合巡査長もその一人だ。監禁犯人“冤罪で4年間の刑務所服役から解放された男とその支援者・・・。要求は「冤罪事件の当時の県警本部長の謝罪要求」。一般市民からみれば、「冤罪だったのだから素直に謝罪せれば」と思うが、官僚の上層部になるとそうもいかない。なぜ謝罪要求に人質監禁が・・・。 そして、プロローグの脅迫文と人質監禁がどのように関連していくのか?。そして、冒頭に書いた“ツイートやスマホ”が事件解決にどんな役割を・・・・と、書けないが、最新作らしい今のメディアを使いながら進む。 いつも期待を裏切らない道警シリーズであった。 監禁現場となる藻岩山中腹からの夜景は素晴らしい。数年前に行った「カフェバー」からの夜景を思い出しながら一気に読み終わった。
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おなじみ北海道警シリーズ最新作。つまらんわけがない!相変わらず登場人物それぞれの立場で見た同じ出来事を、違った視点で捉えながら話を進める手腕が素晴らしい。めくる度、こんな残り少ないページで収束するの?とハラハラしながらも最後にはキチンとシロクロが付き、そして余韻も残る。また新作が...
おなじみ北海道警シリーズ最新作。つまらんわけがない!相変わらず登場人物それぞれの立場で見た同じ出来事を、違った視点で捉えながら話を進める手腕が素晴らしい。めくる度、こんな残り少ないページで収束するの?とハラハラしながらも最後にはキチンとシロクロが付き、そして余韻も残る。また新作が気になるという寸法。道警シリーズは一作目からオススメです。
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北海道警察シリーズ第6弾長編。6年前の冤罪事件。当時の県警本部長への謝罪請求に隠された真実とは……?5月下旬のある日。札幌大通署・窃盗犯係の佐伯警部補と新宮巡査は、札幌で起きた自動車窃盗事件に駆けつけ対応していた。一方、生活安全課の小島百合巡査部長は痴漢被害を訴える女子高生の監視を朝から済ませ、その晩は、以前ストーカー犯罪から守った、村瀬香里との約束でピアノのミニ・コンサートへ行くことになっていた。会場となるのは市街地の藻岩山中腹にあるワイン・バー「ラ・ローズ・ソバージュ」。 香里より先に店に到着していた小島は、客たちと店の雰囲気を窺いながらひと息ついていた。しかし、少しずつ客が集まって来た頃、帽子を被った二人の男が突然店内に入って来た。「強姦殺人の冤罪で服役していたが、無罪になり釈放された。その当時の県警本部長に謝ってほしい」という要求を突き付ける男たち。そのコンサートの主役は、来見田牧子、当時の県警本部長の実の娘だった……。小島百合と連絡を取れた香里から事情を聞いた佐伯は事件現場へ向かい、機動捜査隊の長正寺たちと合流したのだが……。 マドンナ小島が巻き込まれた怪しげな監禁事件、チーム佐伯の連携で事件の背景を解明していく。登場人物の安定したシリーズ、面白く読めましたが、解決はあっさりでチームの活躍もなく簡単すぎか。小島の再度の活躍!新しいアイテム「スマホ」もさりげなく活用。客だったキャリヤ官僚、子供の次に家族を捨てて逃走。冤罪事件を指揮した警察官僚も謝らず逃げてばかり。次巻はチーム佐伯じゃなければ、解決しない事件解決を期待したい。
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5月-7。3.5点。 道警シリーズ。小島百合がプライベートで コンサートへ行くが、二人組が乱入し、 警察キャリアの謝罪を要求。 読ませるが、あっけない。 キャリアをマイナスにする感が、強い。 このシリーズ、そろそろ大きな動きがほしい。
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道警シリーズ第6弾。 ほとんど道警婦警の小島百合が主人公のシリーズの様相を呈してきています。 冤罪から派生した監禁事件と政治事件のリンクが今回のミステリー部分です。 監禁された百合の活躍(今回はアクションではない)がすごすぎます。 どこの部署でも欲しがる人材なのは当然の結果だと思います。
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藻岩山…懐かしい地名でした。 全体的にあっさりしてるカンジでした。前半はなかなか読みが進まず、まどろっこしく感じました。 中盤以降、有力国会議員の言えないお金の件あたりから比較的面白く読めました。ストーリーのメインは有力国会議員の汚職の話だったらよかったのに…なんて思いました。 何度か出てきた記述で疑問に思ったのが、「今日中」を、ひらがなで「きょうじゅう」と書かれていて…、どうしてだったの?何か作者の意図があったのかな?私、わかんなかったので…。 秀也さん、いくら急病人を抱えて外に出る役目を仰せつかったからって、結局妻と義母を置いて自分だけ逃げ出してしまうなんて、男らしくないなぁ〜。
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さすがの安定感。道警シリーズ最新刊。短い時間の狭い範囲内での事件なのでダイナミックさはないけれど、いつものメンバーがそれぞれの立場で絶妙に連携して活躍する。最後、解決に向かって畳み掛けるように展開していくスピード感が気持ちよかった。
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道警シリーズとしては、あっけない幕切れ。同時に進行している事件が関係があることは分かっていたし、結果も想定内だった。
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#読了。道警シリーズ第6弾。二人組の男が冤罪に対する謝罪を求め、ワインバーに人質を取り立て篭もる。人質の一人は小島巡査部長。犯人の真の狙いは?シリーズものとしての人物の流れは面白かったが、単体で見ると残念ながら今一つ感。唐突な展開による犯人探し(動機)も少しあさっりしすぎかと。
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