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ブラウン神父の無心 の商品レビュー

4.5

11件のお客様レビュー

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2023/12/01

冴えない風采ながらも鋭い観察眼と無限の想像力を持ち鮮やか推理で事件を解決していくブラウン神父の活躍を描いた短編集第1作目。 第1話の『青い十字架』から神父のキャラクターと不可思議な出来事と現実的な真実という構成は完成されている。第2話にして禁じ手みたいな意外性を持ってくる辺り江戸...

冴えない風采ながらも鋭い観察眼と無限の想像力を持ち鮮やか推理で事件を解決していくブラウン神父の活躍を描いた短編集第1作目。 第1話の『青い十字架』から神父のキャラクターと不可思議な出来事と現実的な真実という構成は完成されている。第2話にして禁じ手みたいな意外性を持ってくる辺り江戸川乱歩曰くトリックの宝庫というのも頷ける。 映像化するとバレバレと思われるトリックが多いが作者の玄妙なる文章により小説ならではとして楽しめる。ミステリーではあるが各話の読後感は独特の味わい深さがあると思う。特に『飛ぶ星』の終盤フラウボーに呼びかける場面は自分の心に深い感動を残した。

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2022/09/04

 ブラウン神父シリーズ、初読み!  神父が探偵、という設定故の面白みと、このブラウン神父の、一見隙だらけに見えるのに実は冴えてるというキャラクターの魅力。これが第一作『青い十字架』ですでに炸裂していたが、その後のどの作品でも余すところなく発揮されていて、さすがホームズと並び称され...

 ブラウン神父シリーズ、初読み!  神父が探偵、という設定故の面白みと、このブラウン神父の、一見隙だらけに見えるのに実は冴えてるというキャラクターの魅力。これが第一作『青い十字架』ですでに炸裂していたが、その後のどの作品でも余すところなく発揮されていて、さすがホームズと並び称される名探偵二大巨頭の一人、遅ればせながらたいへん楽しく読むことができた。  隙だらけに見える系としては、コロンボさんや古畑さんの元祖という感じもするが、ブラウンは神父なので、犯人を突き止めたのちに行うことは逮捕ではなく説教。そして求めるのは悔悛。ここが最高に独自性があって面白い。推理小説の締めくくりにおける犯人の状態って、「絶対悪のまま」「同情を禁じ得ない」「改心する」「自殺する」などいくつかパターンがあるが、ブラウン神父の場合、聖職者ならではの人間への向かい方で犯人さんにも向き合ってくれるので、他の推理小説にはない優しさや救いが感じられた。  そんなわけで、「神父にして探偵役のブラウン」「芸術家肌でスポーツマンの大泥棒フランボー」「ヨーロッパ屈指の知能を誇るパリ警察の長官ヴァランタン」、この三つ巴をお楽しみあれという感じで始まったシリーズが、あの人がああなってこの人もこうなって、意外な形でトリオが解体していく様が、なんといっても見ものだった。  神学の話が出てきたり、フランス人がどうとかスコットランド人がどうとかカルヴァン主義者がどうとかいうような発言があったりと、ヨーロッパやキリスト教文化の知識がないといまいちピンとこない箇所は多かった。もっと若い時に読んでいたら、小難しい印象で楽しめなかったかもしれない。今の私はそういう知識が増えたから読めたというよりは、「ここは薄目で読んじゃえ」と適当に流す、とにかく楽しく読むための読書スキル(?)が、昔より身に付いたなあと感じた。

Posted byブクログ

2021/11/23

うう…なんとなく説教くさい。 だって神父さんだから、仕方ないか。 伝説のネタを直接味わえたのは、楽しかった。 「木の葉は森に隠せ」とか 見ているのに見えない犯人とか。 12話の短編で構成されていますが 2話目の真相にびっくりよ! 警察関係者ではないので、直接捜査はできないし ...

うう…なんとなく説教くさい。 だって神父さんだから、仕方ないか。 伝説のネタを直接味わえたのは、楽しかった。 「木の葉は森に隠せ」とか 見ているのに見えない犯人とか。 12話の短編で構成されていますが 2話目の真相にびっくりよ! 警察関係者ではないので、直接捜査はできないし 犯人がわかっても裁くことができないのが もどかしいところです。 (宗教的、倫理的に追い詰めてるけど)

Posted byブクログ

2015/04/21

それこそ学生か高校生の頃、創元推理文庫で読みましたが、ちくまの新訳で再読です。 ホームズやポワロなんかと並び称されるブラウン神父の最初の短篇集です。 まあ、あまりにも有名な短篇集ですが、非常に独特な探偵術が展開されます。そこにはホームズのような科学分析もないし、ポアロのような出生...

それこそ学生か高校生の頃、創元推理文庫で読みましたが、ちくまの新訳で再読です。 ホームズやポワロなんかと並び称されるブラウン神父の最初の短篇集です。 まあ、あまりにも有名な短篇集ですが、非常に独特な探偵術が展開されます。そこにはホームズのような科学分析もないし、ポアロのような出生にまつわる複雑な秘密も存在しません。ある意味、学習雑誌の付録にあるような推理ゲームのような謎解きが続きます。 そこにあるのは、一種の美学に基づく可能性の陳列です。 印象深いのは推理よりも、情景描写の巧みさだったりするわけで、特に思うのは、登場人物のほとんどすべてに宗教的バックボーンが明らかにされている点です。誰は無神論者だとか、長老派だとか、といった感じ。そして、神父は決して犯人を直接捕えないことです。彼は犯人と長時間にわたって話し合ったりして、要は懺悔を受け入れるわけですね。 このあたり、この作品のあと、英国教会からカトリックに改宗するチェスタトンの思想的背景を感じます。 いずれにせよ、短篇なのですぐ読めるし、推理も素晴らしく楽しめますよ。

Posted byブクログ

2015/01/13

奇想ありきの探偵小説。 もしくは探偵小説風の奇想。 探偵小説やミステリという枠に対して読者が当然のように期待してしまう犯罪にいたる動機や心理描写とか、トリックの必然性などのいわゆるリアリティがありそうでない。枠はきっちり守っているけど、何かが足りない。あるのは、結末がきちんと用...

奇想ありきの探偵小説。 もしくは探偵小説風の奇想。 探偵小説やミステリという枠に対して読者が当然のように期待してしまう犯罪にいたる動機や心理描写とか、トリックの必然性などのいわゆるリアリティがありそうでない。枠はきっちり守っているけど、何かが足りない。あるのは、結末がきちんと用意された奇妙なお話。 だいたい、ブラウン神父が登場して謎を解くからブラウン神父すげーてなるけど、もしかするとブラウン神父いなくても、警察がちゃんと時間かけて捜査したら自然と事件が解決するようなトリックだったりするし。 探偵小説である必要がそもそもあるのかね?なんてことすら思っちゃうくらいだけど、これはこういうもの、と思ってチェスタトンの奇想に身を委ねて、独特でいささか強引な論理を受け入れてみると、箱庭的な世界を眺めているみたいでなんだかとっても心地よい。 移動中の手持ち無沙汰の時にいつでも手に取れるようにカバンに一冊チェスタトン。

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2014/10/01

◆この本は、創元推理文庫から1982年に出版された「ブラウン神父の童心 (http://booklog.jp/item/1/4488110010)」の新訳です。その出で立ちは無垢な子どものように、誰にでもすぐに騙されてしまいそうなブラウン神父。ところが神父は、鋭い観察眼と推理によ...

◆この本は、創元推理文庫から1982年に出版された「ブラウン神父の童心 (http://booklog.jp/item/1/4488110010)」の新訳です。その出で立ちは無垢な子どものように、誰にでもすぐに騙されてしまいそうなブラウン神父。ところが神父は、鋭い観察眼と推理によって次々と難事件を解決してゆきます。なぜ無垢な神父が、世界中に名をとどろかせる大犯罪者をも出し抜く悪知恵をもっているのか。ブラウン神父シリーズ第一作にして、面白い傑作ぞろいだと思います。 ◆しかし、この表紙の「神父」の絵はイメージと少し違いましたね。神父はもっとまん丸で、無垢な赤ちゃんのような見た目だと思っていました……容姿について試しに読み返してみると「顔はノーフォークの茹で団子のように真ん丸くて間が抜けており、眼は北海のごとく虚ろだった (p. 11)」、「小柄な神父は短く刈った茶色い髪に、まん丸い鈍そうな顔をしていて、見たところ興味を惹く人物ではなかった (p. 200)」などとあります。その点、やはり創元推理文庫の”神父”のほうがそれっぽいかな? あ! もしかして、フランボウ……? いやいや。 * メモ * ◆ぼくが「童心」に書いたレビューともいえないメモと比べると、新訳で読み直すことでいっそう神父の考え方が分かった気がします。◆具体的には2つありますが、第一に、宗教と理性が対立しないという著者(チェスタトン)の考え方が示されていることです。この本の「青い十字架」で大犯罪者フランボウは、人間の理性の上に素晴らしい宇宙、本当の理性の世界があるのだという考え方を示していますが、ブラウン神父は「教会のみが理性を真に至高なものにする」と反論します (pp. 31-32)。一見して違和感を覚えた部分なのですが、そこにこそブラウン神父の「無心 (innocence)」があり、神父の推理の秘密があるのだと思います。 ◆第二に、神父の役割は罪を裁くことではないということです。この大切なことに関する記述をいくつも見落としていました! たとえば一か所取り出すと、ブラウン神父は「神の鉄槌」で、殺人者に対してこう呼びかけます。「人殺しにそういう光明を見つけるのが、私の仕事でしてね。それでは村へ下りて行って、風のように自由にご自分の道を進みなさい。わたしから言うことは、何もありません(「神の鉄槌」, p. 279)」。苦しむことのない狂人(阿呆)に罪をかぶせたところから、神父は光明を見出しています。神父の考え方がはっきりわかる一文でした。 ◆神父は罪の裁きを法の手に委ねるわけではなく、罪を犯した人自身に委ねます。事件が解決して終わりのように見えて、描かれていない部分にこそ神父の本質があるのではないでしょうか。それは人間の心に寄り添う神父の態度なのだと思いました。

Posted byブクログ

2013/07/04

『「魂のただ一つの病を治せるかね?」ブラウン神父は、本気で好奇心をそそられたように訊ねた。 「魂のただ一つの病って、何です?」フランボーはにやにやして聞き返した。 「自分がまったく健康だと考えることさ」と彼の友人は言った。』

Posted byブクログ

2013/07/03

ブラウン神父ものは大体読んだけど、私にはイマイチかな~っと思っていたが新訳ということで再読。えっこんなに面白かったの!?と再発見。これだから新訳はあなどれない。

Posted byブクログ

2013/01/04

新訳。創元のタイトル「~童心」をこちらでは「~無心」と訳されてます。 いやぁ、格段に読みやすくなった。物語前半の禅問答のような、ちんぷんかんぷんだった部分が新訳により読みやすくなったのと、プラス特殊な名詞や地名に、ニュアンスの補助のための注釈が入るようになって、何を表現したいのか...

新訳。創元のタイトル「~童心」をこちらでは「~無心」と訳されてます。 いやぁ、格段に読みやすくなった。物語前半の禅問答のような、ちんぷんかんぷんだった部分が新訳により読みやすくなったのと、プラス特殊な名詞や地名に、ニュアンスの補助のための注釈が入るようになって、何を表現したいのかが判るようになりました。 旧訳の宗教問答的なノリも嫌いではないですが、こちらの方がオススメしやすいモノになりましたね。 木を隠すなら森、見えない男、など後の推理小説で引用されるネタが盛り沢山。逆説の世界、面白かった。

Posted byブクログ

2012/12/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『青い十字架』 フランスの刑事ヴァランタンが追う犯罪者・フランボウ。砂糖と塩の壺が入れ替わる謎。ヴァランタンが気になった2人の聖職者。小柄なグズの神父の行動。壁にスープをかける、窓ガラスを割る、大事な包みを忘れ店の主人に友人に届けるように依頼する。正体を現したフランボウ。 『秘密の庭』 パリ警視総監ヴァランタンの屋敷で行われたパーティに招待されたブラウン神父。侵入できない庭で発見された謎の人物の遺体。首を切り落とされた遺体。消えたアメリカの富豪ブレイン氏。近くの池で発見されたブレイン氏の首。 『奇妙な足音』 「真の漁師十二人会」の会合が行われているホテルの給仕の突然の死。懺悔のために呼ばれたブラウン神父。彼の死を知らせる手紙を書いてる途中聞こえてきた足音に疑問を持ったブラウン神父。何者かに盗まれた会合で使われる銀の食器の謎。フランボウとブラウン神父。 『飛ぶ星』 アダムス大佐のパーティに参加したブラウン神父。盗まれた「飛ぶ星」と呼ばれるダイヤモンド。飛び入りで参加したフィッシャーの催した演劇。警官役の見事さに喝采を受けるが・・・。殴られた本物の警官。木の上に隠れるフランボウとブラウン神父の会話。 『透明人間』 酒場ので働くローラ・ホープに恋をした2人の男。彼女を物にするために自分で生活の力を得る仕事に就く2人。彼女に会いに戻ってきた小男のスマイズ。彼女に近づくと殺すと脅しの手紙を送り付けるウェルキン。誰にも気がつかれないように届く手紙の謎。話を聞いたアダムズがフランボウに相談に行く。心理的に見えない男の謎。 『イズレイル・ガウの信義』 グレンガイル伯爵家の所有する城を訪れたフランボウとブラウン神父。死んだグレンガイル伯爵の残した謎かけ。掘り起こされた遺体を持ち出された頭がい骨。城の守番として残るイズレイル・ガウ。 『間違った形』 寝たきりのクイントン氏を訪れたブラウン神父とフランボウ。彼の主治医ハリス。クイントン氏に金をせびるの義弟アトキンソン。クイントン邸に住み着くインド人の占い師。寝室から聞こえた声。死んだクイントン氏が残した書きおき。「自分の手で死ぬが、殺された」の謎。 『サラディン公の罪』 サラディン公に招かれたフランボウに同行したブラウン神父。評判の悪いサラディン公の弟。サラディン公の執事ポールの態度の謎。サラディン公に対し恨みを持つアントネッリの決闘申し込み。決闘の結果とサラディン公、ポールの正体。 『神の鉄槌』 鍛冶屋の妻との浮気に出かけたノーマン・ブーン大佐。彼の弟で副牧師のウィルフレット・ブーン。大きな何かで殴られ殺害されブーン大佐。凶器と思われる小さな金槌。金槌に加えられた力の秘密。 『アポロンの目』 新しい事務所にブラウン神父を招いたフランボウ。1つ上の階に住む新興宗教団体の教祖カロン。1つ下の階に住む金持ちのポーリン・ステイシーのエレベーターシャフト内の転落死。残された書きかけの遺言の謎。カロンと対立するポーリンの妹ジョーン。ポーリンの眼に隠された秘密。 『折れた剣の招牌』 ブラジルでの戦争で戦死したセントクレア将軍の記念碑を見るブラウン神父とフランボウ。捕虜として捕えられ首をくくられ折れた剣を吊るされて死んだセントクレア将軍。木を隠すのは森の中、死体を隠すには?セントクレア将軍の死の真相と副官の死。突撃直前に抜きかけたセントクレア将軍の剣の秘密。ブラジル軍に情報を漏らしていたスパイの正体。 『三つの凶器』 転落死したアームストロング伯爵。現場に残された3つの凶器。自分が彼を殺害したと名乗り出る3人の容疑者。縛れたアームストロングの謎。

Posted byブクログ