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一四一七年、その一冊がすべてを変えた の商品レビュー

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36件のお客様レビュー

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2019/02/07

スピノザ、アインシュタイン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ホーキング博士、トマス・ジェファーソン、言い方は違えど知識人は皆この死生観にたどり着くようです。 全ての物は原子からできており、人間の魂などもそうだということです。つまり死んだらバラバラの原子に戻る(宇宙に還る)だけで、魂だ...

スピノザ、アインシュタイン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ホーキング博士、トマス・ジェファーソン、言い方は違えど知識人は皆この死生観にたどり着くようです。 全ての物は原子からできており、人間の魂などもそうだということです。つまり死んだらバラバラの原子に戻る(宇宙に還る)だけで、魂だけは残るとか死後の世界があるとか、そういうことはないですよ、ということです。 エピクロスの哲学を継承した、紀元前の哲学者ルクレティウスはこのことを綺麗な言葉で言いました。 「入ってきた時と同じように。それはあなたが死から生へと辿ったのと同じ道である。何も感じず、何も恐れず、再び生から死へと進んでいくのだ。あなたの死は宇宙の秩序の一部であり世界の生命の一部なのだ。我々の生命はお互いから借りたもの。そして人は走者のように生命のたいまつを引き継いでいく。」 この考え方からルネサンスが始まり、現代社会を創りました。 最後の章に書かれているトマスジェファーソンについて。 宗教国アメリカの創始者であるトマスジェファーソンが本当は無神論者であったことは驚いた。 ※ただ、国家の結束のために公言はしていない。

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2018/12/28

原子論など現代的な世界理解の基本原理について述べられたローマ時代の書物であるルクレティウスの『物の本質について』が、15世紀に「発見」されたことを、ルネッサンスの勃興や近代科学の発展の重要な契機として捉え、その顛末を丹念に説き明かしている。 正直、ルクレティウスの『物の本質につい...

原子論など現代的な世界理解の基本原理について述べられたローマ時代の書物であるルクレティウスの『物の本質について』が、15世紀に「発見」されたことを、ルネッサンスの勃興や近代科学の発展の重要な契機として捉え、その顛末を丹念に説き明かしている。 正直、ルクレティウスの『物の本質について』の「発見」が、「1417年、その一冊がすべてを変えた」と言えるほどのものなのかについては、本書を読み終えても、あまり実感が湧かなかったが、「へぇ、そういうことがあったのか」という知的な面白さは感じた。また、読み物としても非常に優れており、15世紀のポッジョ・ブランテョリーニという一人のブックハンターの人生を追体験するような面白さがあった。

Posted byブクログ

2018/07/12

ルクレティウスは、一種の解放感と、以前はとても恐ろしく見えたものを正面から見据えることのできる力を、人々にあたえた。ルクレティウスは書いている。人類ができること、なすべきことは、恐怖に打ち勝つこと、自分自身も、出会うすべてのものも、いつかは消えゆく存在だという事実を受け入れること...

ルクレティウスは、一種の解放感と、以前はとても恐ろしく見えたものを正面から見据えることのできる力を、人々にあたえた。ルクレティウスは書いている。人類ができること、なすべきことは、恐怖に打ち勝つこと、自分自身も、出会うすべてのものも、いつかは消えゆく存在だという事実を受け入れること、そして、この世の美と愉悦を享受することだ、と。 人間は、社会的動物である、とアリストテレスは書いている。人間としての本性を実現するには、集団的な活動に参加しなければならなかった。 著者は本の売り上げからはまったく利益を得ていなかった。彼らは著書を捧げた裕福な後援者から利益を得ていたのだ。(このような取り決め―献呈の手紙がどの過ぎたお世辞だらけになる理由がよくわかる―は現代のわれわれには奇妙に思えるが、これはびっくりするほど安定した制度で、18世紀に著作権が発明されるまで続いた)

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2017/10/29

原子論という概念がどれたけ人を解放したか。それが大きなテーマ。宗教的な束縛からの解放。神話や盲信に捉われることなく。人は宇宙の一部であり、ほかの生物や物資と変わりなく、生きては死んでいく無常の存在。死んだら原子に分解されて、宇宙に還っていく。ゆえに今生きていることを楽しむこと。原...

原子論という概念がどれたけ人を解放したか。それが大きなテーマ。宗教的な束縛からの解放。神話や盲信に捉われることなく。人は宇宙の一部であり、ほかの生物や物資と変わりなく、生きては死んでいく無常の存在。死んだら原子に分解されて、宇宙に還っていく。ゆえに今生きていることを楽しむこと。原罪を押し付けられ、生の喜びを否定する宗教の教義に束縛されていた人たちを、ある意味、救済した。腐敗した宗教vsなんてお話。

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2017/09/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 ルクレチウスが『物の本質について』を書いたのは,紀元前のことらしい。そのルクレチウスは,さらに前の時代に生きたエピクロスから影響を受けたという。  紀元前の時代から生きていた「原子論」の考え方,それが,キリスト教の時代に一度は葬り去られたのだ。  本書のタイトルにある1417年というのは,まだまだキリスト教全盛期である。そんなときに,ある人文学者が修道院の図書室から『物の本質について』を発見し筆写する…。その人文学者の名前はポッジョ。この物語はポッジョを主人公として進められるが,時代が時代なだけになかなかスリリングな展開を見せるのだ。  私は,ルクレチウスやエピクロスに興味があって本書を手に取ったが,そうじゃないひとたちにも,十分楽しめる内容になっている。  中世のいろいろな哲学者の名前(教科書で習った人たち)も,キリスト教やルクレチウスと絡み合いながら出てくる。  最終章にはトマス・ジェファーソンまで登場するという壮大なノンフィクションである。

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2016/08/24

本作品はローマ教皇庁の書記官であるポッジョ・ブラッチョリーニがルクレティウス『物の本質について』に出会いルネサンスへ静かに伝播し思想のDNAを書き換え転回をもたらす物語である。 中世の西洋人が生涯に得る情報量は新聞一日分であった。1445年にグーテンベルクが活版印刷技術を発明す...

本作品はローマ教皇庁の書記官であるポッジョ・ブラッチョリーニがルクレティウス『物の本質について』に出会いルネサンスへ静かに伝播し思想のDNAを書き換え転回をもたらす物語である。 中世の西洋人が生涯に得る情報量は新聞一日分であった。1445年にグーテンベルクが活版印刷技術を発明するまで、本は非常に貴重であった。ゆえに知識欲に飢えた者たちは貪る様に読み、それだけに本には世界を変える力があった。 当時のキリスト教の影響力は絶大で、情報寡少は思想統制につながり、修道士や教皇庁は権力を謳歌していた。自身は酒池肉林に溺れながら魂は滅せず永久の平穏のため受難こそ信仰の真髄と謳う者にとって、エピクロス主義の喜びを高め苦痛を減ずる、魂は滅びる、物質は原子から成り立つ、という思想は危険極まるものであった。本来は焚書となりかねないが、ここで興味深いのは『物の本質について』の思想的拡がり方だ。ポッジョ含め人々は本の内容ではなくラテン語の詩的美しさに魅かれたのである。写本や熟読するうちに血肉となり静かに淡々と染み入り科学革命の一助を担うこととなる。この芸術性に気付いた者だけが『物の本質について』の価値を認め、本髄の思想的価値を得ることができた。ゆえにルネサンス文化に広まった。ゆえにカトリックの禁書とはならなかった。 Before Christに生まれた一冊の本が1500年のときを超え人々に新しい価値観をもたらす。リチャード・ルーベンスタイン『中世の覚醒』ではイスラム文化を通じたアリストテレスの再輸入が語られていたが、また別の形でキリスト教的思想の転回を生み出した。言葉の持つ力はなんと大きいことか感じさせられる物語である。

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2016/01/18

ルネサンスの話。切り口が、鮮やかだが、とりたてて、新しい驚きがある訳ではない。翻訳は、ひどくはないが、上手ではない。日本語として、こなれていない。 タイトルもどうかと思う。

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2016/01/04

[逸れて、乗る]時は1417年。イタリアの教皇秘書を務めたこともあるブックハンターにより「発見」された古代ギリシアの作品『物の本質について』は、写本の形を経て次第に中世キリスト教社会に影響を及ぼし始める。無神論や現世主義を先取りしたようなその一冊は、ついに価値観の劇的な変換への導...

[逸れて、乗る]時は1417年。イタリアの教皇秘書を務めたこともあるブックハンターにより「発見」された古代ギリシアの作品『物の本質について』は、写本の形を経て次第に中世キリスト教社会に影響を及ぼし始める。無神論や現世主義を先取りしたようなその一冊は、ついに価値観の劇的な変換への導き手となり......。中世と近代を分けた偶然をスリリングに記し、ピューリッツァー賞を受賞したノンフィクション作品。著者は、シェイクスピア研究の第一人者でハーバード大学で教鞭を取るスティーヴン・グリーンブラット。訳者は、ノンフィクションの快作の翻訳を多く手がけている河野純治。原題は、『Swerve: How the World Became Modern』。 知そのものに焦点を当てた異色の一冊として高く評価できるかと。本書中の主役とも言える『物の本質について』が書かれ、読まれた背景、さらにはそれが及ぼした影響を縦糸で紡いでいくと、見事に中世から近代へ"Swerve(逸脱)"が果たされた足跡がわかり、知的興味が絶えず刺激された読書体験でした。 ルネサンスの幕開け前の中世キリスト教社会、特にローマの教皇庁を中心とするそれがどのような世界であったかを覗くことができるのも本書の魅力の一つ。現実とここにはないどこかとの葛藤に悩みながら、それでも否応なくそのどこかの方へと惹かれてしまう人間の、雄々しくも切ない感情がブックハンターであるポッジョの歩みによく表れており、一人の人間をめぐる作品としても十二分に楽しめました。 〜ここで言う自由は、政治的自由とか権利の概念、言いたいことをなんでも言える許可、好きな場所へ移動できる能力などとは関係がない。むしろ世間の重圧を逃れて内向し-ポッジョ自身は野心を持って世間にかかわっていたが-別個の空間にすっぽりと身を潜ませる経験のことである。ポッジョにとっての自由は、古代の本に没頭することだった。「私には本を読む自由がある」〜 私もその自由を奪われない一年にしたい☆5つ

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2015/09/20

ルクレティウスのDe Rerum Naturaが1417年に発見されたことを巡るドキュメンタリー。 当時の社会の様子などが伝わってきた。

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2014/12/21

わくわくさせられる歴史物語。 古代ローマの詩人ルクレティウスのエピクロス主義の唯物論的な世界観を示す詩『物の本質について』が、長い中世の間、顧みられることなく修道院の書庫に眠っていた。ブックハンターのポッジョ・ブラッチョリーニがこれを見出し、写本をつくって15世紀のルネサンス世...

わくわくさせられる歴史物語。 古代ローマの詩人ルクレティウスのエピクロス主義の唯物論的な世界観を示す詩『物の本質について』が、長い中世の間、顧みられることなく修道院の書庫に眠っていた。ブックハンターのポッジョ・ブラッチョリーニがこれを見出し、写本をつくって15世紀のルネサンス世界に届けた。 この原子論の思想はもちろん異端であり迫害される物だが、様々な人々の様々な読みを促し、新しい世界像、近代を用意していった。 だがこれが「大事件」として認識されることはない。解説で、池上俊一は、つぎのようにいう。 「 その思想はかならずしもつねに同一の命題によって表現されたのではなく、時代と環境に応じて変異・進化していった。だから「地動説の発見」のような大文字の出来事ではなくて、まるで誰も知らないうちに遺伝子情報が書き換えられたかのように、それと気づかないまま、ある時代以降、皆が別様な「考え方」をするようになり、その後の人類の歴史が一変してしまっていた、というような塩梅なのである。 」pp.331-332 マキャヴェッリ、トマス・モア、シェイクスピア、モンテーニュ、ガリレオ、ニュートン……本書を手に取り、世界を変える思想を示すことになる人々が次々と現れる終2章は圧巻で、ラストは、トマス・ジェファーソン。 グーテンベルク以前の、メディアとしての書物、写本のつくりかた、流通されかたなどについての記述も興味深い。 原題は the swerve。文中もキーワードとなっている「逸脱」だ。

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