やし酒飲み の商品レビュー
自分からは逆立ちしても絶対に出てこない物語や世界観、言語、時間感覚を浴びまくれる。ジャングルの恐怖やアフリカ土着の神話的世界観に満たされているかと思えば長さやお金の単位はイギリス風だったり、様々な要素が混ざり合う。行動原理はシンプルでやし酒造りと会うという初志を貫く以外は割と受動...
自分からは逆立ちしても絶対に出てこない物語や世界観、言語、時間感覚を浴びまくれる。ジャングルの恐怖やアフリカ土着の神話的世界観に満たされているかと思えば長さやお金の単位はイギリス風だったり、様々な要素が混ざり合う。行動原理はシンプルでやし酒造りと会うという初志を貫く以外は割と受動的、時間をかけること、とどまること、繰り返すことをあまり恐れない。この点は西洋の合理的な物語とは違うと思う。 あらゆる存在に対して対等にがっぷり四つで組み合ったかと思えば、次の瞬間には熱が冷めたかのようにさらりとかわしたりする自由さも面白い。
Posted by
神秘的で、アフリカの土や森の匂いを感じる素敵な情緒のある小説だった。予定調和なところも逆に御伽噺さを際立たせていて面白い。
Posted by
読書会の終わりがけこの本をおすすめされた。 神話的であって、比喩的であったけど、どこからがオリジナルでどこまでが神話のオマージュなのか、どれが何の比喩なのか、知識不足で読みきれてない気がした。ただ描写が簡素で淡々と話が展開されていくので詰まるとこなく読めた。幻の人質の話が色々想像...
読書会の終わりがけこの本をおすすめされた。 神話的であって、比喩的であったけど、どこからがオリジナルでどこまでが神話のオマージュなのか、どれが何の比喩なのか、知識不足で読みきれてない気がした。ただ描写が簡素で淡々と話が展開されていくので詰まるとこなく読めた。幻の人質の話が色々想像が膨らんで楽しく読めた。
Posted by
自分専属のやし酒作り夫が死んでしまった。 大好きなやし酒が飲めなくなるどころか、毎日の様に訪ねて来ていた仲間達も来なくなってしまった。 死んだやし酒作り夫を探しに行こう。 一歩村を出れば、そこは怪しげな危険な魑魅魍魎が跋扈する世界。 不可思議な冒険譚が始まるー。 その何でもありの...
自分専属のやし酒作り夫が死んでしまった。 大好きなやし酒が飲めなくなるどころか、毎日の様に訪ねて来ていた仲間達も来なくなってしまった。 死んだやし酒作り夫を探しに行こう。 一歩村を出れば、そこは怪しげな危険な魑魅魍魎が跋扈する世界。 不可思議な冒険譚が始まるー。 その何でもありの世界観に慣れてしまえば、一気にドライブがかかる。
Posted by
唯一で最強のアイデンティティ、やし酒をめっちゃ飲めるという主人公 それだけで惹かれるものがあるが、とにかくいろんな恐怖やいろんな最強パワーがどんどん出てくる、そしてそれらが全然われらの常識とちがう。 これが森が近くにあるひとたちの感覚か… 英語の使い方があえてネイティブっぽくな...
唯一で最強のアイデンティティ、やし酒をめっちゃ飲めるという主人公 それだけで惹かれるものがあるが、とにかくいろんな恐怖やいろんな最強パワーがどんどん出てくる、そしてそれらが全然われらの常識とちがう。 これが森が近くにあるひとたちの感覚か… 英語の使い方があえてネイティブっぽくなくてそれも相まっていいらしいので、そういうつよみもあるんか~とあとがきを読んでしる
Posted by
読みながら私はハンターハンターを思い出していた。 ハンターハンター作中で「世界地図によって自分たちが「世界」と思っているものはその実、暗黒大陸の中央にある巨大な湖、メビウスの中に浮かぶ島々でしかなく、外には未開の地が広がっている。」とある。 「やし酒飲み」で言えば、 これまでの...
読みながら私はハンターハンターを思い出していた。 ハンターハンター作中で「世界地図によって自分たちが「世界」と思っているものはその実、暗黒大陸の中央にある巨大な湖、メビウスの中に浮かぶ島々でしかなく、外には未開の地が広がっている。」とある。 「やし酒飲み」で言えば、 これまでの経験から自分たちが「小説」と思っているものはその実、小説全体の一部でしかない。 「やし酒飲み」は我々の認識の外側にある小説であり、それゆえ読むとびっくりするが、「これは小説ではない」というようなことは思わなかったし、面白かった。
Posted by
アフリカ文学。死んでしまった専属のやし酒造り名人。彼を連れ戻すべく「死者の町」まで旅する主人公(やし酒飲み)の神話的冒険譚。死神やら頭蓋骨やらと対峙したり妻を得たり。けっこうひどい目に遭いながらも、ときには良い待遇の町で長逗留して過ごすなど、アフリカ文化の知識がない私には荒唐無稽...
アフリカ文学。死んでしまった専属のやし酒造り名人。彼を連れ戻すべく「死者の町」まで旅する主人公(やし酒飲み)の神話的冒険譚。死神やら頭蓋骨やらと対峙したり妻を得たり。けっこうひどい目に遭いながらも、ときには良い待遇の町で長逗留して過ごすなど、アフリカ文化の知識がない私には荒唐無稽な展開に思えたが、解説を読むと、隠された背景を知らず読みとばした部分に目が向けられ、作品の奥深さに触れることができた。
Posted by
全然意味が分からない。行動に思考がない(ことはないんだけど、あまりにも普段私たちが行動の根拠としてるものと違いすぎて、ないように思えてしまう)ことに慣れなくて、最初どう理解していいのか戸惑っていたのだけど、この小説(なのか部族)の法則に則って生きる生に馴染んでいけば、めちゃくちゃ...
全然意味が分からない。行動に思考がない(ことはないんだけど、あまりにも普段私たちが行動の根拠としてるものと違いすぎて、ないように思えてしまう)ことに慣れなくて、最初どう理解していいのか戸惑っていたのだけど、この小説(なのか部族)の法則に則って生きる生に馴染んでいけば、めちゃくちゃ面白くなってきて、もう読み終わるのが嫌で、毎日寝る前にひとつだけ森を抜ける決まりにして、ちまちまと読み進めました。 とはいえ、小説という西洋様式を借りているのだから、彼らの生を描ききれない限界はあるんだと思うけど、様式に無理やり詰め込むことで逆に浮き立つ部分が沢山あって、借りる、なんてところにとどまらず、小説ってこんなことも出来るんだ、という新しい可能性が開けてさえいる。 とにかくめちゃくちゃ面白くて、読み終わってしまったのが悲しい。
Posted by
最高の文体。癖になる。頭蓋骨は意思を持って転がるし、街は赤いし、魚は喋るし、「生き物」はいつまでたっても何の説明もない「生き物」だし、人探しの旅なのに一所に長々と滞在するし、全知全能の神のくせにできないことは多いし。実はそれを恥じてもいるし。 わからないものを「わからないまま」読...
最高の文体。癖になる。頭蓋骨は意思を持って転がるし、街は赤いし、魚は喋るし、「生き物」はいつまでたっても何の説明もない「生き物」だし、人探しの旅なのに一所に長々と滞在するし、全知全能の神のくせにできないことは多いし。実はそれを恥じてもいるし。 わからないものを「わからないまま」読むことに慣れておかないと先に進めない。でもそれがいい。これほど原作のおかしさを顕著に押し出す翻訳文学もなかなかないだろう。一展開ごとに疑問は尽きないけれど、一々立ち止まって「なんで?」を考えていたらキリがない。
Posted by
10歳の頃からやし酒を飲むしか能がない男には、父が雇った専属のやし酒作り職人がいたのだが、ある日やしの木から落っこちて死んでしまう。途方に暮れた男は「死んだ人はすぐには天国へ行かず、この世のどこかに住んでいる」という古老の言葉を思い出し、死んだやし酒作りを探す旅へと出発する。 ...
10歳の頃からやし酒を飲むしか能がない男には、父が雇った専属のやし酒作り職人がいたのだが、ある日やしの木から落っこちて死んでしまう。途方に暮れた男は「死んだ人はすぐには天国へ行かず、この世のどこかに住んでいる」という古老の言葉を思い出し、死んだやし酒作りを探す旅へと出発する。 1ページ目から文体の酩酊感がすごい。「神である彼の家に、人間が、わたしのように気軽に入ってはならないのだが、わたし自身も神でありジュジュマンだったので、この点は問題なかった」とかいう一文が、主人公が神である説明一切なく急に出てくるので困惑するが、読むほうもアルコールを入れるとだんだんチューニングが合ってくる(笑)。 飲んだくれの語り手はどこも勇敢なところがないけれど、予言能力を持つ娘を娶ることになったり、訪れた村の人びとが全滅するなか自分たちだけ生き残り、あるいは生き返るような、古来の英雄譚を思わせる道程を辿る。魔物に追いかけられ、それを魔法で退治しながら新しい村に入り、その村のしきたりによる洗礼を受ける、というパターンの繰り返しはRPGゲーム的でもある。 ディネセンの『アフリカの日々』と続けて読んだら、池澤夏樹個人編集の河出世界文学全集と同じ組み合わせだった。
Posted by