ルリボシカミキリの青 の商品レビュー
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では、たとえば、一流ハンマー投げ選手の子が再び一流ハンマー投げ選手に、不世出の名騎手の子がまた不世出の騎手になっている。あれは遺伝ではないのか。遺伝ではないと福岡ハカセは思う。一流プロの子弟が同じ道の一流プロとなっている数多くの例は、一見、DNAが伝わっているように見えるけれど、実はプロを育てる「環境」が伝えられているのだ。 それに関してこんな調査がある。一流と呼ばれる人々は、それがどんな分野であれ、例外なくある特殊な時間を共有している。幼少時を起点としてそのことだけに集中し専心したゆまぬ努力をしている時間。それが少なくとも一万時間ある。一日三時間練習をするとして、一年に一千時間、それを十年にわたってやすまず継続するということである。その極限的な努力の上にプロフェッショナルという形質が獲得される。それをあえて強要する環境が、親から子へ伝わっているのだ。
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面白かった。 でも、「センス・オブ・ワンダーをさがして」や「動的平衡」に出てきた話もいくつもあって、少し既読感が。 それから、大学で理系を学んだ者にとっては物足りないかも。 日常生活の科学に興味のある人は面白いかと。
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NHKスペシャル「ボクの自学ノート」の中で、こちらの本のまえがきの一節が紹介され、気になったので手に取ってみました。 とても惹きつけられる文章で、これから読むのが楽しみです。 福岡先生の「動的平衡」も読んでみたいと思っているところです。
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「ハカセになるために必要なことはたったひとつ。何か好きなものがあること、そしてその好きなことがずっと好きであり続けられること。」「平衡はほんとうの平衡ではない。たえず新しい平衡を求めてさまよう非平衡として動的な平衡はある。それは完全さを求めながらも、その内部に不可避的な不完全性を...
「ハカセになるために必要なことはたったひとつ。何か好きなものがあること、そしてその好きなことがずっと好きであり続けられること。」「平衡はほんとうの平衡ではない。たえず新しい平衡を求めてさまよう非平衡として動的な平衡はある。それは完全さを求めながらも、その内部に不可避的な不完全性を含んだものとしてある。そんな生命のありよう、それが限りなく美しいと思える」
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生物学者だけれど、非常にわかりやすく時に詩的な魅力ある文体に引き込まれる。 好きなことがずっと好きであり続けられることの旅程が、驚くほど豊かで、君を一瞬たりともあきさせることがないということ。そしてそれは静かに君を励ましつづける。最後の最後まで励ましつづける。 こんな先生に教...
生物学者だけれど、非常にわかりやすく時に詩的な魅力ある文体に引き込まれる。 好きなことがずっと好きであり続けられることの旅程が、驚くほど豊かで、君を一瞬たりともあきさせることがないということ。そしてそれは静かに君を励ましつづける。最後の最後まで励ましつづける。 こんな先生に教わったら楽しいだろうなあ。
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中学生とか、高校生が読めばいいかもしれない。この人のことを、コラムの文章家として扱うメディアが信じられない。 日高敏隆や、今西錦司、養老孟司にあって、この人にないものはないか、それは多分、学問や趣味、ひいては人生に対する思想性のようなものだ。読んだ本の向こう側、あるいは、その奥...
中学生とか、高校生が読めばいいかもしれない。この人のことを、コラムの文章家として扱うメディアが信じられない。 日高敏隆や、今西錦司、養老孟司にあって、この人にないものはないか、それは多分、学問や趣味、ひいては人生に対する思想性のようなものだ。読んだ本の向こう側、あるいは、その奥にある扉を開けても何もない。そういう薄っぺらな印象の文章が並んでいる。すぐ読めて、すぐ忘れる。 身過ぎ、世過ぎを批判するつもりはないが、金を出して買う読者もいるのだということを忘れないでほしい。
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タイトルからルリボシカミキリの生態の話かと思ったら、全然そんなことはなかった生物博士エッセイ。だがしかし、思いがけず良書だった。なんてことない大学の講義の話、日常の話、思い出の話。いつのまにか科学の話になる時もあれば、逆に科学の話から始まり思い出で終わる話もある。興味深く読み進め...
タイトルからルリボシカミキリの生態の話かと思ったら、全然そんなことはなかった生物博士エッセイ。だがしかし、思いがけず良書だった。なんてことない大学の講義の話、日常の話、思い出の話。いつのまにか科学の話になる時もあれば、逆に科学の話から始まり思い出で終わる話もある。興味深く読み進めていたかと思えば、ハッと心揺さぶられる時もある。分解すれば”文章が上手い”とか”語り口が優しい”とか”知識が圧縮されている”とかになるのだろうが、本文中にもあるように、全体は部分の総和以上のものになりえる。空の青、海の青、そしてルリボシカミキリの青のように、取り出したり、切り取ってくることのできない部分の集合で成り立つ本書は、タイトルどおり、青色だ。
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2017/8/20 Amazonより届く。 2018/12/3〜12/7 福岡先生の週刊文春に連載しているエッセイをまとめたもの。ちょっとした歴史のウンチクは参考になる。が、先生お得意の「動的平衡」という用語にはひっかかるなぁ。
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『週刊文春』の連載(2008年5月~)70篇をまとめたエッセイ集。 生物学者・科学者の書いたエッセイ集は多数あるが、専門分野で著名な学者が書いた多くのものと比べ、著者の作品は格段に面白い。 分子生物学者としての専門の知識を持ちながら、エッセイの視点・材料が、一般の人々の日常生活や...
『週刊文春』の連載(2008年5月~)70篇をまとめたエッセイ集。 生物学者・科学者の書いたエッセイ集は多数あるが、専門分野で著名な学者が書いた多くのものと比べ、著者の作品は格段に面白い。 分子生物学者としての専門の知識を持ちながら、エッセイの視点・材料が、一般の人々の日常生活や、専門外の分野にあるからなのだろう。また、ベストセラー『生物と無生物のあいだ』や『世界は分けてもわからない』で証明済みの、科学者とは思えない、読み手を掴んで離さない著述力にあることも間違いない。 「いわゆる「コラーゲン食品」を食べることは、じつは美容と健康にとってほとんど何の意味もない。・・・他の動物から採取したコラーゲン食品を食べた場合、それがダイレクトに吸収されて、細胞のスキマや関節に達し、コラーゲンの不足を補うなどということは決して、ない。・・・プラセボ効果もまた立派な効果である。売る人と買う人にそれぞれ納得がもたらされるのであれば何の問題もない。」目から鱗である。 解説で阿川佐和子が言う通り、『ひょっこりひょうたん島』の物知りの博士そのものの著者による、楽しいエッセイである。 (2013年3月了)
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立ち食いでは私は必ずそばを食べる。ときどき食券を買い損なって(あるいは店員がまちがえて)うどんが出てくるととても残念な気がする。うどんを食べるのはカレーうどんぐらいだろうか。ところで、うどんとそばは値段が同じだ。けれど、原料(小麦粉とそば粉)ではそば粉の方が圧倒的に高い。なのにな...
立ち食いでは私は必ずそばを食べる。ときどき食券を買い損なって(あるいは店員がまちがえて)うどんが出てくるととても残念な気がする。うどんを食べるのはカレーうどんぐらいだろうか。ところで、うどんとそばは値段が同じだ。けれど、原料(小麦粉とそば粉)ではそば粉の方が圧倒的に高い。なのになぜ同じ値段で食べられるのか。どうやらそばには混ざりものがあるらしい。納得。福岡ハカセの文章がH大学の入試問題に出た。狂牛病の話の中の羊に傍線。設問「羊といえば『羊たちの冒険』を書いた作者を選べ」。何たる問い。他につくりようがなかったのか。しかも、正しくは『羊をめぐる冒険』。そんなことがあっていいのか。Hていったいどこのことだ。と、本書読みながら憤慨してしまった。福岡ハカセ同様、私もまた村上春樹ファンだから。ところで、本書は副題「福岡ハカセのできるまで」にだまされて買ってしまった。自伝が大好きなので、福岡少年や福岡青年はどんなだったかを知りたくて読み始めたのだけれど、当てが外れた。
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