屍者の帝国 の商品レビュー
【由来】 ・アテネの最終日に購入 【ノート】 ・伊藤計劃はデビュー作の「虐殺器官」という小説で鮮烈なデビューを果たしたが、癌のため34歳で夭折した。僕も大好きな「メタルギア」というゲーム、正確には監督の小島秀夫の大ファンで、親交もあった。また、メタルギア4のノベライズも伊藤が担...
【由来】 ・アテネの最終日に購入 【ノート】 ・伊藤計劃はデビュー作の「虐殺器官」という小説で鮮烈なデビューを果たしたが、癌のため34歳で夭折した。僕も大好きな「メタルギア」というゲーム、正確には監督の小島秀夫の大ファンで、親交もあった。また、メタルギア4のノベライズも伊藤が担当した。 ・本作は、伊藤の遺稿をもとに、円城塔が完成させたという作品。ベースプロットは、あの古典的小説、フランケンシュタイン。 ・メアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」は人造人間だが、これが死体をもとにウィルスで制御されるとバイオハザードのゾンビ。そんな「死兵」ならぬ「屍兵」をネクロウェアなるソフトウェアで制御する蒸気時代の世界、1800年代後半が舞台。イギリスの諜報員である主人公ワトソンに、アメリカのグラント将軍やヴァン・ヘルシングなどが登場して繰り広げる、スチームパンクSFスパイものといったところ。 ・円城塔は知らないので伊藤計劃に惹かれて読み始めたが、正直な読後感としては今ひとつな印象。伊藤計劃の「虐殺器官」の続編である「ハーモニー」で色濃く感じた、伊藤計劃の死への視線。迫り来る死(とその恐怖)に戸惑ったり抗ったりしながら対峙する過程で獲得したと思われる自意識への姿勢。そこに感じた伊藤の恐れや絶望を感じることができなかった。執筆している人間が違うのだから当たり前かも知れないが、伊藤計劃なら、屍者側からの視線をもっと説得力を持って描いたのではないかと感じた。 ・それでも「全員が絶望を感じることができなくなるのは、至福の実現ではないかね(P382)」という記述に、伊藤が観ていたものに通底するものを円城が認識していることは感じられたし、「ハーモニー」の終わらせ方を止揚したとも捉えられる結末に、ちょっとした目まいにも似た感覚を味わわせてもらえたのはよかった。 ・総じて、自分にとっては、「虐殺器官」や「ハーモニー」を超えるSF作品とはならなかった。
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第1部は比較的入っていけたけど,第2部は今一つ入っていけなかったな.背景となる知識がそれなりにないと難しい.
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77:ようやく読めました。伊藤さんとの共著で死者もの、ということで、際どいジョークだと思っていたのですが、円城さんへのインタビュー記事(毎日jp http://mainichi.jp/feature/news/20120906mog00m040001000c.html)を読んで...
77:ようやく読めました。伊藤さんとの共著で死者もの、ということで、際どいジョークだと思っていたのですが、円城さんへのインタビュー記事(毎日jp http://mainichi.jp/feature/news/20120906mog00m040001000c.html)を読んで、これは素直に楽しんで読めばいいのだと、胸のつかえが取れた気分です。 伊藤さんのプロローグ、そしてそれを発展させ、小説(物語)、言葉、意識、と深みへ迫り、エピローグへと「戻る」大作を書きあげた円城さんへの感謝がつきません。「ありがとう」と何度言っても足りないくらいです。 作中に登場する小ネタ(?)にニヤニヤするのも楽しいし、純粋にSFとして読むのも楽しい。待った甲斐がありました。面白かった……!
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★設定がうますぎて★科学が異なる方向に発展した19世紀末、死者が屍者として甦る世界の冒険譚。もったいぶった語り口、キャラクターの設定、各地を巡る舞台など、アニメにぴったりな感じ。そのなかで人間を人間たらしめているものが何かを探るテーマ設定は興味深いが、ややどちらにも振り切れていな...
★設定がうますぎて★科学が異なる方向に発展した19世紀末、死者が屍者として甦る世界の冒険譚。もったいぶった語り口、キャラクターの設定、各地を巡る舞台など、アニメにぴったりな感じ。そのなかで人間を人間たらしめているものが何かを探るテーマ設定は興味深いが、ややどちらにも振り切れていないように思えた。どうしても現実につながってこない。円城塔はこんな物語調の文章も書くことに驚いたが、短編の方が切れ味が生きるかも。
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途中まで何とも言えぬ憤慨、苛立ち、諦観をもって、それでもページを繰っていた。伊藤計劃という稀代の、早逝した天才の、プロローグを受け継ぐという歴史的な業に期待したハードルは当然とてつもなく高かった。死者としての伊藤計劃の頭脳をそのままインストールされた屍者=円城塔がつづる物語、つま...
途中まで何とも言えぬ憤慨、苛立ち、諦観をもって、それでもページを繰っていた。伊藤計劃という稀代の、早逝した天才の、プロローグを受け継ぐという歴史的な業に期待したハードルは当然とてつもなく高かった。死者としての伊藤計劃の頭脳をそのままインストールされた屍者=円城塔がつづる物語、つまり作者たち自体がメタ構造になっていることに興奮が高まらないほうがどうかしている。大変な企画だと思ったのだ。円城塔の知能の容積ならば必ず成し遂げられると確信してもいたのだ。 正直に言おう。まず、文章がへたくそだ。自身の観念世界の描写、つまり自作においてはそれは個性だし、作風として許されてもいいし、好みでもある。しかし、無理によせた特にアクションシーン、平場の人物の描写力不足はどうだ。伊藤を継ぐのならまずはここを抑えなくてはだめだろう。 次に、物語が絶望的につまらない。構成やプロットなどの問題ではなく、伊藤の物語の紡ぎ方は凡百のそれと一線を画す、まさに唯一無二であった。それを衒学的にこね回し、不要で笑えないパスティーシュに塗れさせ、平凡な、隔離されたSF界でのみ内輪受けするものとなってしまった。 単純に伊藤計劃が偉大なのは、「分かりやすく面白く。かつ前人未到で、テーマが深い」ことではなかったか。 それでも企画に満点をつけたい。上記のリスクをあえて受け立つことは称えてしかるべきであるのだから。
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プロローグからエピローグまでに何度息継ぎをしたことか。そして本を閉じた時に何かから解放された気になる。充実感と共にジワジワと。圧巻だった。
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これ、プロローグだけ 伊藤計劃が書いて、他の全部は 円城塔が書いたってことなんですよね。まあ、誰が書いたのであってもいいんですけど。どちらの作家の作品も読んだことないので、これがはじめてです。 なんだか読みにくいなあ、乗っていけないなあ、と感じていたのは読む前のイメージと作品の...
これ、プロローグだけ 伊藤計劃が書いて、他の全部は 円城塔が書いたってことなんですよね。まあ、誰が書いたのであってもいいんですけど。どちらの作家の作品も読んだことないので、これがはじめてです。 なんだか読みにくいなあ、乗っていけないなあ、と感じていたのは読む前のイメージと作品のトーンがどこか違っていたからでした。ああ、これは字で書かれた漫画なんだ、と割り切った時点でものすごく読みやすくなりました。要するに、本の装丁が悪い(笑)。 映像化されていることはまるで知らなくて、黒字に十字架が浮かんでるような表紙から察するにもっと重厚な内容だと・・・、あ、失礼。十分ディレッタントでしたよ。 19世紀末、「屍者」、早い話がゾンビが産業化された世界では単純な労役や軍隊は生ける屍たちに取って代わられているんだけれど、その技術を巡って世界各国の諜報機関や秘密結社が暗闘を繰り広げている。主人公は、ジョン・ワトソン。そう、シャーロック・ホームズの相棒のワトソン博士が、まだ医学生だった頃、というべきか。その成績優秀、頭脳明晰さに目をつけられ、英国の諜報員として「フランケンシュタインの怪物」ザ・ワンの行方を追うことになる―――というのが、ざっくりとしたお話。 相棒は脳筋バカの怪力巨漢バーナビー大尉。まったく気の合わない二人だが、ここぞというときには助け合って・・・、というのもまたお約束。その他、ヴァン・ヘルシング教授、アレクセイ・カラマーゾフ、レット・バトラーなどなど実在や架空の人物が入り乱れて、舞台もロンドン、中央アジアの奥地、日本から北米へと世界一周。なかなか楽しめます。 さて、主人公のワトソン博士ですが、後年ホームズとコンビを組む同一人物とは思えないくらいのキレッキレの若者なので、これだとホームズいらんやん、と思いながら読んでました。まあ、その謎は最後に解き明かされるんですけど。 ベースにあるのは、スチームパンクなバイオハザードかなあ、と思ってましたが、最後の最後で「生命とは」「魂とは」「意識とは」という深遠なテーマに、いささか無理矢理切り込んでいった感は否めません。もっと、痛快な冒険活劇でよかったのに、というのが正直な感想。 というのも、やはり「屍者」多すぎでしょ。そんなに、使える死体が調達できるもんですかね(冒頭で「死体がたりない」みたいな話は出るにしても)。それに、耐用年数が20年というのも、コストパフォーマンス良すぎ。いくらニセモノの魂をインストールして死体を生き返らせることが出来ても、代謝のない細胞は、どう考えても腐って朽ちていくんじゃないでしょうか。そのあたりの疑問に答える合理的な説明は一切なかったので、わざと無視したんでしょうね。なので、この小説をSFと認定するのは、ちょっとなあ、というところです。だから、スチームパンク冒険活劇。 テッド・チャンの短編「七十二文字」を読んだあとなので、なおさらそう感じるのかも。同じく19世紀末ロンドンを舞台にした、こちらは「自律するオートマタ」の開発を巡る陰謀に巻き込まれる若い技術者の、人類の未来を賭けた決断をぎゅっとコンパクトに描ききって、心に残るものがあっただけに、感情を揺さぶるところまで到達しなかった本作品は、ちょっと残念。 そういう点以外は、まあまあ良かったです。筋肉大将のバーナビー大尉が意外にかわいい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
正直に言えば、本に書いてあった内容を理解したとは言い難い。難しい。読書後に本についての解説をしているサイトを探し、納得をした感じ。(感想とは関係ないけれど、こういう物語の詳細を詳しく描ける人って単純に「スゴイ」と思います)。作品の設定は読んでいて「おおっ!」と感心するぐらい良い。詳しく調べてみるとアニメ映画化されているようなので、映像で見て再度読むと自分には分かりやすいのかな。機会があれば円城塔さんの作品も手にしたいと思います。感想はこんなところです。
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晦渋ではあるものの、設定は面白く引き込まれた。別で文庫版のあとがきを読んでみたが、円城氏の思いが伝わって良かった。概ね満足できる作品。
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201705 途中まで伊藤計劃かと思ったら、プロローグだけだったのね。 2章ぐらいまでは眠気と戦いながらだった。 慣れてくると世界観に浸りながら読めた感じ。
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