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青い脂 の商品レビュー

3.9

22件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

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  3. 3つ

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2023/09/11

禍々しいものを受け取った。 さてこれはどんな風に転がっていくのだろうと読み進めたが、いわゆる「物語」を期待していると、壁に投げつけたくなる作品じゃないかなと思った。 わたしはあまりにもソ連の歴史や政治、ロシアのそれに対する知識に欠けており、もうそれでいいやと解像度粗く読んでみたら...

禍々しいものを受け取った。 さてこれはどんな風に転がっていくのだろうと読み進めたが、いわゆる「物語」を期待していると、壁に投げつけたくなる作品じゃないかなと思った。 わたしはあまりにもソ連の歴史や政治、ロシアのそれに対する知識に欠けており、もうそれでいいやと解像度粗く読んでみたら、やっぱりおかしかった。笑うしかない。 クローン作家たちが苦しんで生み出した作品の副産物である青脂。よくは分からないけど、確かにその見た目は、人の気を惹くものなのかも。かくして、手から手に、流転していくことになる。面白かったのは、それが(望んでないことがほとんどだと思うが)引き継がれる瞬間、それまで青脂の持ち主だった者が客観的に描写されるのがやけにおかしかった。 過去のロシア文学といえば、チェーホフやゴーゴリをいくつか読んだ程度であまり知識が無い。ましてや、詩など! しかし、ここに出てくるアフマートワの描かれ方を見ると、詩というものがロシアでは深く親しまれていて、詩人は少なくとも一部の人達には熱狂的に愛されていたことが伺える。非常に不潔で怪物のような見た目の(あくまでもこの作品の中では、だけれど)彼女の歩いたあとをキスをする人々。彼女が生んだものを受け継ぐ者が、次から次へと候補者は来るのになかなか現れないのを見ても、その世界の豊穣さが感じられる。 見た目でいえば、特にスターリンのパートに出てくる人々は実在の人物が多く、でも検索してみるその肖像とは大きく乖離しているように見受けられたりして、この辺も文章で表現することの面白さを感じることができた。 いろんな層で楽しむことができるので、あまり肩肘張らずに飛び込んでみるといいんじゃないかな。

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2023/03/26

 面白い部分もあったけれど、多分、あまりロシア文学への造詣が深くない人間や、コンテンツ(≒物語)を受け取ることに比重を置いた読み方をしていると、100%は楽しめないのかなあ、という感じ。自分はそういう人間だと思う。  IFの歴史が紡がれるところや、青脂の実態が(全貌ではないにして...

 面白い部分もあったけれど、多分、あまりロシア文学への造詣が深くない人間や、コンテンツ(≒物語)を受け取ることに比重を置いた読み方をしていると、100%は楽しめないのかなあ、という感じ。自分はそういう人間だと思う。  IFの歴史が紡がれるところや、青脂の実態が(全貌ではないにしても)明かされる辺りなんかは、面白く読めた。  全体として、説明が(意図的に)不十分で、何にも結実していかない感じがあって、彼らは、これは一体どうなったのか、というのが何遍も続く。出てきたものの帰結が最後まで書かれないもどかしさは、ずーっとあった。  IFの歴史については、かなり細かい部分まで注釈が(訳注だと思われる)が入るお陰で、それなりに理解しながら享受することができる。ただ、ロシア文学の代表作の文体をパロディしているだとか、ロシア文学の流れをなぞるような話の展開は、楽しむために知識ではない、感覚的・経験的な理解が必要になる部分だと感じた。  (補足があって大分分かりやすいとは言え)コンテクストに多くを任せる小説がそもそもあまり好きではないのだけれど、こういうものもちゃんと楽しめるようになりたいな、と思う自分もいる。  筆者(ないし文学の)辿ってきた歴史・変遷を踏まえた上で、そのある種のカウンターのように書かれたと思われる本作は、なんというか、先行作品の把握が求められるという意味合いで、極めてアカデミックな感じがする。

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2018/10/30

混乱した言語世界。生半可なものじゃない。理解という概念は持たないことにした。 エロとグロとSFです。なんて簡単にまとめることは口が裂けてもいいたくない。 翻訳した事がすごい。文章という宇宙に放り出されて訳もわからず陵辱された私でした。 模写。造語。やりたい放題だよ。ぶっ飛んだ...

混乱した言語世界。生半可なものじゃない。理解という概念は持たないことにした。 エロとグロとSFです。なんて簡単にまとめることは口が裂けてもいいたくない。 翻訳した事がすごい。文章という宇宙に放り出されて訳もわからず陵辱された私でした。 模写。造語。やりたい放題だよ。ぶっ飛んだ狂気だよ。文学の破壊だこんなもん。 もっとやれ!!といえない作品は初めてだ。この衝撃は墓場まで忘れて支障なし。笑 星なんてつけてもね。

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2016/02/01

[珍にして変]ロシア人作家のクローンが執筆するたびに、少量のみ入手できる物質「青脂」。構成から利用方法に到るまで、すべてが謎に包まれたこの物質を巡り、欧州を支配下に収めたスターリンやヒトラーらの壮絶な物語が繰り広げられる......。類い稀なる言語表現とそのストーリー展開で反響を...

[珍にして変]ロシア人作家のクローンが執筆するたびに、少量のみ入手できる物質「青脂」。構成から利用方法に到るまで、すべてが謎に包まれたこの物質を巡り、欧州を支配下に収めたスターリンやヒトラーらの壮絶な物語が繰り広げられる......。類い稀なる言語表現とそのストーリー展開で反響を巻き起こした作品です。著者は、「コンセプチュアリズム」と呼ばれる芸術運動に関わったウラジーミル・ソローキン。訳者は、本書の翻訳には苦労したと語る望月哲男と松下隆志。 まず翻訳家の両名に心からお疲れさまでしたと頭を下げたいです。とんでもない言語表現の連続に、一ページ目、というよりは一行目から「なんだこれ......」とフックを喰らいっぱなし。しかもそのフックが止むことなく繰り出されてくるんですから、よくぞここまで日本語に置き換えてくれたなと、最後には畏敬の念すら覚えていました。 コンセプチュアリズムの小説についてはあまり知識がないのですが、とにかくその言語表現やあり得ない発想からほとばしる衝撃と快感に身を委ねてしまうのが、本書の楽しみ方の一つなのではないかと思います。読むために膨大なエネルギーを消費した感がありますが、読み終えたときの達成感もまた格別でした。 〜私の重たい坊や、優しいごろつきくん、神々しく忌わしいトップ=ディレクトよ。お前のことを思い出すのは地獄の苦しみだ、リプス・老外、それは文字通り重いのだ。〜 改めてになりますが翻訳家の両名は本当にスゴい☆5つ

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2015/12/06

SF的な数々の「冒険」が楽しい。スターリンやヒットラーのことをこんなに書いて大丈夫かと心配した。トルストイやドストエフスキーなどに触れられるのも面白かった。2段組みで400ページ近い作品である程度の忍耐は必要であった。

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2014/08/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

数日かけて一気読み。 リプス・ニーマーダ、などの言葉づかいや、クローン作家の執筆の果てに躰に蓄積される、というわけのわからない設定や、青い脂を巡る争奪戦、時空を超えた展開、フル×スタの場面や、ヒットラー、全編を彩るスカトロジー、などなど、面白く読むことはできたが、十分にすべてを味わいつくすのは、まず、無理だろう。 それだけ分厚くジューシーな小説。

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2013/10/13

歴史を持つ、というのは豊かさの指標である。それが文化的なものなら教養の土台となるし、血塗られた経験なら現代を照らす指標となる。その両方を併せ持つ地・ロシア出身のソローキンはそんな自国の歴史感覚を玩具の様に換骨奪胎することで、とんでもない作品を作り出した。『時計じかけのオレンジ』を...

歴史を持つ、というのは豊かさの指標である。それが文化的なものなら教養の土台となるし、血塗られた経験なら現代を照らす指標となる。その両方を併せ持つ地・ロシア出身のソローキンはそんな自国の歴史感覚を玩具の様に換骨奪胎することで、とんでもない作品を作り出した。『時計じかけのオレンジ』を彷彿とさせる造語文化によるSF風味からロシア文豪のパロディ、ラブレー的お下劣描写をまぶして果てはスターリンとフルシチョフがくんずほぐれつ。おぉ、おそロシア。全く以て意味不明なのに吸引力だけは凄まじいという、何とも扱いに困る一冊。

Posted byブクログ

2013/10/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

なんだ,これは,というのが正直な感想で,恥ずかしながらこれを語る言葉を持ちません.決して万人にはお勧めできない. 帯に書いてある本書の説明は全く破壊的でアナーキーで,どんな話なのかがさっぱり理解できなかったのだけれど,実はこの帯に書かれていた説明が本書の内容の全てであるとしか言いようがない. 前半の,クローン達によって書かれた,微妙に壊れた「再現小説」には笑ったが,そこをつなぐ手紙の内容は付いていくのが精一杯.その内容を理解しよう,としてはだめなんだな.あきらめて流れに身をゆだねて下さい.途中のカルト教団のくだりは何の伏線となることもなく,何と部隊はスターリンとヒトラーが世界を二分するパラレルワールドへ.最後の10ページは唖然. これが文学というものだなあ.

Posted byブクログ

2013/09/14

ホモ本? 小説内にでてくるロシア巨匠クローンのパロディ下手うま小説にニヤリとしてしまった。作者も翻訳者も凄いなあ。ゴーレムのなんじゃこりゃ感を凌駕してる。 リプス

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2013/06/19

歴史改変物SF、という言葉だけでは説明できない作品。2068年のシベリアで文学クローンを使って精製された物質を、とあるカルト教団が手に入れ、1954年のモスクワに送る、という話(大まかに言えば)。 卑猥な表現や直接的な性描写(男性同士も)があるので苦手な方は注意。最初は意味が分か...

歴史改変物SF、という言葉だけでは説明できない作品。2068年のシベリアで文学クローンを使って精製された物質を、とあるカルト教団が手に入れ、1954年のモスクワに送る、という話(大まかに言えば)。 卑猥な表現や直接的な性描写(男性同士も)があるので苦手な方は注意。最初は意味が分からないけど途中から面白くなった。結末は賛否両論あるかも。

Posted byブクログ