床屋さんへちょっと の商品レビュー
『「働く」ことでつながる、父と娘の物語』 という素敵な帯広告。 中身は割と淡々としていて、感動!とか、エキサイティング!すっきり!とかいうわけじゃない。 だけど、嫌いじゃない。 特に、アジアへの出張を描く『マスターと呼ばれた男』『丈夫な藁』『床屋さんへちょっと』がいい。 父さんの...
『「働く」ことでつながる、父と娘の物語』 という素敵な帯広告。 中身は割と淡々としていて、感動!とか、エキサイティング!すっきり!とかいうわけじゃない。 だけど、嫌いじゃない。 特に、アジアへの出張を描く『マスターと呼ばれた男』『丈夫な藁』『床屋さんへちょっと』がいい。 父さんの真摯さや、個性がないんじゃない、誠実な、真っ直ぐな、真摯な人なんだ、ってのか、人間味溢れて、苦悩の中の幸せな感じが、温かくて、リアルで、良かった。 時代の移り変わりも、よく描けてて、面白い。
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9つの連作短編。 最初の7編は、主人公の老年から遡りながら描くというちょっと変わった構成です。8編目(単行本では最後)は主人公の死後を、9編目は文庫本で追加されたものだそうです。 主人公の宍倉勲はカリスマ経営者であった父親の中堅製菓会社を引き継いだ二世経営者。しかしその会社を若い...
9つの連作短編。 最初の7編は、主人公の老年から遡りながら描くというちょっと変わった構成です。8編目(単行本では最後)は主人公の死後を、9編目は文庫本で追加されたものだそうです。 主人公の宍倉勲はカリスマ経営者であった父親の中堅製菓会社を引き継いだ二世経営者。しかしその会社を若い頃に潰してしまい、その後、繊維会社に最初は平社員として勤めた人物です。最初の印象は坊ちゃん育ちの無能力者。しかし読み進むにつれ、(人並み優れている訳ではないものの)非常に誠実でしっかりした人物であることが判ってきます。目立ちはしないが多くの知人から、そして家族から信頼された人物。そんな姿が見えてきます。 サラリと描かれていますが、考えてみれば実に苦難の話なのです。 しかし、そこを大上段の物語にせず軽く描き、暖かな家族の信頼感を出す。そのあたりが持ち味ですね。 床屋さんの使い方もうまいな。
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