リトル・シスター の商品レビュー
チャンドラーのほかの作品と同様。ミステリとしてはさほどではない。話が妙にこみいっているわりに、驚きの真相や、ハラハラの展開もない。本書の読み所は、そこじゃない。 疲れている。いつになく、ふてくされて、毒づいて、空虚で。そういう、疲弊したマーロウ=チャンドラーが実に味わい深い。 ...
チャンドラーのほかの作品と同様。ミステリとしてはさほどではない。話が妙にこみいっているわりに、驚きの真相や、ハラハラの展開もない。本書の読み所は、そこじゃない。 疲れている。いつになく、ふてくされて、毒づいて、空虚で。そういう、疲弊したマーロウ=チャンドラーが実に味わい深い。 例えば以下のようなところ。 ‘ ”ふん、映画スターがなんだ。ベッドを渡り歩く達人というだけじゃないか。おい、もうよせ、マーロウ、今夜のお前はどうかしているぞ。” (p138) ハードボイルドだ。村上春樹や、原リョウさんへの影響を与えたのは、「長い別れ」より本書かもしれない。本書の先に、この2人の日本作家を感じた。
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オーファメイが兄を思う気持ち、20ドル分をマーロウに託す・・例の様にもっさりと引き受けた感じで始まるドラマ。 簡単なようで、のっけからの走り出しがとてつもない。 あれよあれよという間に謎めく女やら、死体やら、ヤク入りの煙草やら。。。 何れにもアイスピックが。 原題「かわいい女」...
オーファメイが兄を思う気持ち、20ドル分をマーロウに託す・・例の様にもっさりと引き受けた感じで始まるドラマ。 簡単なようで、のっけからの走り出しがとてつもない。 あれよあれよという間に謎めく女やら、死体やら、ヤク入りの煙草やら。。。 何れにもアイスピックが。 原題「かわいい女」を「リトルシスター」としたハルキ氏の想いが何となく伝わった・・後書きでの解説がないとちょっとプロットの細かな点の疑問が理解し辛く、結構読了まで時間がかかった。 田舎でのパッとしない、それでいて向こうっ気の強いオーファメイ(後半で判明していく複雑なクエスト家の構成)兄オリンとオーファメイの間に存するリーラの立ち位置が見えて、何となくストンといった。 執筆は第二次大戦終結後すぐ、食うためにハリウッドでの下積みを必死に生きるメイヴィスとドロレス。 日本で言えば小股の切れ上がった姐さんに様な感じだろうけど・・やっぱりマーロウは温かい視線。 動きや気持ちが1行で済むところを、どうかするとくだくだしいまでの表現があちこちにあり、うっかりうとうとすると、読み手が置いて行かれる感じがあちこちに。 そこをハルキ氏が更なる巧みな言葉の駆使でよどみない流れに変えていく・・絶品です。 最初から最後まで何となくけだるい感触が漂うなと思ったのは他の方のレヴューにもあって納得。 いささか疲弊気味のチャンドラーに事情があったようで・・また意を決し、ハリウッドの脚本に熱い気持ちで取り組んでいったのは頷ける。20世紀真ん中、ほどなくこの世を去ることになった・・ロスを斜めに見た感じの作品だった。
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普通なら一行にも満たないような何気ない一場面が、ここまで(くどい程に)表現できるのか、というくらい描かれていて、それが優雅に流れるように読めるのは、著者の力に村上春樹の翻訳の力があるからでしょうか。 内容的にすぱっとした明瞭さが無いのだけど、急がず、ゆっくり味わうミステリーとして...
普通なら一行にも満たないような何気ない一場面が、ここまで(くどい程に)表現できるのか、というくらい描かれていて、それが優雅に流れるように読めるのは、著者の力に村上春樹の翻訳の力があるからでしょうか。 内容的にすぱっとした明瞭さが無いのだけど、急がず、ゆっくり味わうミステリーとして堪能しました。女性陣も皆、我が儘なのにそこがとても魅力的です。
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登場人物のつながりが最後までなかなかわからなかった。 さらに、一気に読めなかったため、登場人物の名前が分からなくなり、最後の方はよくわからないまま読み終えてしまった。 一気に読むか、何回か読まないと理解できないのがチャンドラーなのだろう。 次はどうかな?
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一人ひとりの個性、個性がないという個性も描いている。特に印象的なのは「名前がわからなかった警官」の描写。現実だったのか幻覚なのか。全体を漂う投げやりな雰囲気。解説を読んで理解できた。それにしても犯人は誰なのか。推理小説にはおさまらない表現方法だ。
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「行方不明の兄オリンを探してほしい」私立探偵フィリップ・マーロウの事務所を訪れたオーファメイと名乗る若い娘は、二十ドルを握りしめてそう告げた。マーロウは娘のいわくありげな態度に惹かれて依頼を引き受ける。しかし、調査をはじめた彼の行く先々で、アイスピックで首のうしろをひと刺しされた...
「行方不明の兄オリンを探してほしい」私立探偵フィリップ・マーロウの事務所を訪れたオーファメイと名乗る若い娘は、二十ドルを握りしめてそう告げた。マーロウは娘のいわくありげな態度に惹かれて依頼を引き受ける。しかし、調査をはじめた彼の行く先々で、アイスピックで首のうしろをひと刺しされた死体が…。謎が謎を呼ぶ殺人事件は、やがてマーロウを欲望渦巻くハリウッドの裏通りへと誘う。『かわいい女』新訳版。
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女は怖いと思ったけど…思い違いだった。 男と女その間には埋まらない溝があるのかもしれない… そして、それはそれでいい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
兄を探して欲しいという女の言動に「あれ?」と思ったマーロウ。結果として、それは正しかった訳だが。 絡んで複雑になっていく話に、どんどんのめり込んでいった。プロットが素晴らしいなこれは。シリーズで一番ミステリ色が強かったのは、水底の女だと思うが、これは女たちの心情が一番素晴らしかったと思う。 ここで漸く気付いたのだが…シリーズを通して、どんな形にせよ、女の愛がどの作品にも色濃く漂っていて、それが事件に大きな関わりを持っているのが、とても面白い。殺してしまえば、永遠に自分のものになるとか、愛した男でも自分の過去を知っていれば、口封じに殺してしまうとか、愛とは… そして、美しいと思える表現の数々。私が、所謂"村上主義者"だと言うことを差し引いても、読む価値はあると思う。
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「誰かの夢が失われたようだね」そして身を屈め彼女の目を閉じてやった。好きだった割にはうろ覚えのチャンドラーを村上春樹版で読み直す。兄を探して欲しいという生真面目な小娘オーファメイの依頼を受け、兄の住んでいたアパートで見つけたアイスピックで首を刺された死体。そこに映画女優やギャング...
「誰かの夢が失われたようだね」そして身を屈め彼女の目を閉じてやった。好きだった割にはうろ覚えのチャンドラーを村上春樹版で読み直す。兄を探して欲しいという生真面目な小娘オーファメイの依頼を受け、兄の住んでいたアパートで見つけたアイスピックで首を刺された死体。そこに映画女優やギャング、裏通りの人たちが絡んでいく。チャンドラーが自作の中で最も嫌いと言明するリトルシスターは意外とファンが多い。モノクロ映画のようなゆったりとしたドキドキ感がある。フィリップマーロウの印象が他作品と少し違う。他の作品より登場人物が危険なくらい魅力的なのだ。村上春樹は女性の書き方が生き生きしてて他作と違うと言ってるがまあ、そんなところだ。
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リトル・シスター (和書)2011年02月02日 20:38 レイモンド チャンドラー 早川書房 2010年12月 村上春樹さんの翻訳しか読んでいないけどフィリップ・マーロウ作品で今まで一番良かった。 読み易く、内容も比較的分かり易い。 登場人物の描写も魅力的で、村上作品...
リトル・シスター (和書)2011年02月02日 20:38 レイモンド チャンドラー 早川書房 2010年12月 村上春樹さんの翻訳しか読んでいないけどフィリップ・マーロウ作品で今まで一番良かった。 読み易く、内容も比較的分かり易い。 登場人物の描写も魅力的で、村上作品への影響も伺えると思う。 本人が翻訳して種明かししているようにも見えて、そういう部分で誠実さも感じる。
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