カデナ の商品レビュー
沖縄が舞台、というだけで買った、入道雲が印象的な本。 しばらく積読になっていましたが、ぺらっとめくってみたものの、内容が掴めない。100ページを過ぎた辺りで、別の登場人物の視点であるはずなのに、冒頭の人物の見た景色が映される。 なんか、これ。「クラウドアトラス」っぽいぞ。 ...
沖縄が舞台、というだけで買った、入道雲が印象的な本。 しばらく積読になっていましたが、ぺらっとめくってみたものの、内容が掴めない。100ページを過ぎた辺りで、別の登場人物の視点であるはずなのに、冒頭の人物の見た景色が映される。 なんか、これ。「クラウドアトラス」っぽいぞ。 そう思って読み進めていくと、細々とした一対一の人間関係から、国同士の対立関係に進み、絆し絆された者たちが、次第に引き返せなくなる世界線を辿る、常軌を逸した物語に豹変しました。 信じる者が願うのは平和、暗躍する者がまとうのは猜疑心、不毛な争いを終わらせたい者が決行するのは、果たして。 沖縄の言葉で「うちあたい」という言葉があります。作中でも語られていますが「こころの打撲」みたいなもので、普段は衣服で隠れたところにできた、内出血のような傷は、ふとした時に何かが触れると、その存在を思い出します。それが、心で起こることを「うちあたい」と言い、本作中で語り手になる人物たちは、皆「うちあたい」をして悶え苦しみます。 しかし、何かを手に入れるためには、見たくないものを見て、聞きたくないことを聞き、知りたくないことを知らなくてはならない。 ーー癒えない傷は、痛みを庇って身じろぎするたびに、どこかにぶつかって新たな傷を作る。 なんだか、この時代の作品群って、ハッピーエンドに絶対ならない作品多い気がするけど、それがまた、フィクションのいいところなんだと思いました。
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カデナ 1968年沖縄。ベトナム戦争でB29による北爆が頻繁に行われていた頃。 世界のいろいろなところで反戦運動が行われていた頃。 生い立ちも国籍も違う4人の男女が北爆の計画をスパイする物語。 各人にはそれぞれの生い立ち、体験、そして今の暮らしがある中、異なる想いから活動に関わっていく様子が緻密に、そしてリアルに描かれています。 竹蔵が特に本書で考えさせられたことは、民主主義を守るためにはどんなことが大切か?ということ。 米兵の脱走を補助する活動を行っている大学の先生が、”いつでも活動をぬけることを容認する。それが活動を健全にする方法だから”といった主旨のことを活動に関わる人に話します。組織の目的が固定されることが不幸のはじまりであるということに強く共感しました。 目的指向の活動とそれに合った形で組織やコミュニケーションの方法を変化させていく。その目的への想いが活動をうまくドライブできなくなったらあっさりと活動をやめる。そういった方法論が今後の民主主義や組織を考える際に不可欠なことになるのではないかと思ったりしています。 434ページを感じさせない、池澤氏の文章力にも感服です。 竹蔵の書いている小難しいこととは別に、4人のスパイの人間関係と葛藤や、スパイという心理的な冒険も十分堪能できると思います。 竹蔵
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大学生の頃に好きだったのに、一度離れてからはなかなか再会できずにいた作家。 約10年前に「アトミック・ボックス」を読んで、意外と娯楽小説も行けるんじゃんと少し驚いた。 それからまた縁遠くなってしまっていたが、せっかく縁のある土地の小説なのだからと、まさにコザで読んだ。 で、やっぱ...
大学生の頃に好きだったのに、一度離れてからはなかなか再会できずにいた作家。 約10年前に「アトミック・ボックス」を読んで、意外と娯楽小説も行けるんじゃんと少し驚いた。 それからまた縁遠くなってしまっていたが、せっかく縁のある土地の小説なのだからと、まさにコザで読んだ。 で、やっぱり読んでよかった。 まずは時代背景。 1968年夏……まだ復帰前で、ベトナム戦争の時代。 1968年11月19日のB52大爆発事故や、 1970年12月20日のコザ暴動も描かれる。 (沖縄県の日本復帰は、1972年5月15日) それらのど真ん中ではなく、傍流にいる人々の視点で語られる。 みなマージナルな状況にある人で、しかもそれを恥じたり鬱屈したりしない、割とカラッとした造詣で、これもよかった。 もちろん地獄を体験している、一皮むけば……なところもあるのだけれど。 個人的には嘉手苅朝栄の、自分と世界に線を引いている生き方や姿勢が、とても好もしく感じられた。 東大全共闘(1969年)や 三島由紀夫の事件(1970年)や 連合赤軍のあさま山荘事件(1972年)……、あるいは、 高野悦子「ニ十歳の原点」(1969年6月)、 森田童子、 大江健三郎とか中上健次の若書き「日本語について」、 などなど思い出し、 本作がハブになって立体化してくれた。 @ ■007 フリーダ=ジェイン ■038 フリーダ=ジェイン ■074 嘉手苅朝栄(かでかるちょーえー) ■106 嘉手苅朝栄 ■141 フリーダ=ジェイン ■173 フリーダ=ジェイン ■208 タカ ■243 タカ ■277 タカ ■301 フリーダ=ジェイン ■334 嘉手苅朝栄 ■364 タカ ■401 フリーダ=ジェイン ■434 タカ ■466 フリーダ=ジェイン ■502 タカ ■536 嘉手苅朝栄 ◇解説 佐々木譲
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タイトルのカデナは「嘉手納」、現在も米軍基地がある町。終戦からベトナム戦争の期間、戦争や差別を目の当たりにする市井の人々が、危険な反抗に取り組む状況が展開する。池澤夏樹さんらしい、ちょっと遠い世界の出来事のような進め方なのに、なぜか近所の人の話を聞いているような感覚。国籍、家族、...
タイトルのカデナは「嘉手納」、現在も米軍基地がある町。終戦からベトナム戦争の期間、戦争や差別を目の当たりにする市井の人々が、危険な反抗に取り組む状況が展開する。池澤夏樹さんらしい、ちょっと遠い世界の出来事のような進め方なのに、なぜか近所の人の話を聞いているような感覚。国籍、家族、恋人や友人、信仰など、何か一つだけに立脚している人はなく、それが主義主張を複雑にすることになるが、どこかでつながることもある訳で、それが救いなのかと思う。
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「宝島」が評判になって、大いに喜んでいますが、これもあります。ネタバレとかも含めて、ブログに書きました。覗いてみてください。 https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201905150000/
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ベトナム戦争中の沖縄、嘉手納。 そこには、米軍基地があり、そこには、米軍で働くフィリピンとアメリカのハーフ・フリーダ、米軍基地にも出入りするロックバンドのドラマー・タカ、太平洋戦争時のサイパンで家族をなくし一人で戦後の沖縄に暮らした朝栄、がいた。 ある日、朝栄はサイパンでの知り...
ベトナム戦争中の沖縄、嘉手納。 そこには、米軍基地があり、そこには、米軍で働くフィリピンとアメリカのハーフ・フリーダ、米軍基地にも出入りするロックバンドのドラマー・タカ、太平洋戦争時のサイパンで家族をなくし一人で戦後の沖縄に暮らした朝栄、がいた。 ある日、朝栄はサイパンでの知り合いであるベトナム人安南さんに出会い、ベトナムに住む人々のためにスパイをしてみないかと持ちかけられる。 それは米軍の爆撃計画を入手し、ベトナムへ知らせると言うものだった... 戦時中の沖縄についての小説はいくつか読んだが、戦後の米軍基地ができ、そこから各地の戦地へ出撃もする沖縄については、知らないことが多かった。 戦争は全体ではなく、一人一人の行為や恐怖、悲しみに繋がってしまう。そんな状況でどうやって生きていくかが大切。
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池澤夏樹氏の中で初めて読んだ作品。 読み応えがあり、スピード感もあって、最後まで飽きさせなかった。
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舞台は、1960年代後半、B52が配備された沖縄。米軍高官の秘書のフィリピン人女性、模型屋の店主、そしてドラマーの少年。アメリカ施政権下の沖縄で、それぞれが戦う”戦争”。それぞれが遠い彼の国を思い繫ぐそれぞれの闘い。そして最後に訪れた出来事――。 置かれた環境に安住しながらも抱え...
舞台は、1960年代後半、B52が配備された沖縄。米軍高官の秘書のフィリピン人女性、模型屋の店主、そしてドラマーの少年。アメリカ施政権下の沖縄で、それぞれが戦う”戦争”。それぞれが遠い彼の国を思い繫ぐそれぞれの闘い。そして最後に訪れた出来事――。 置かれた環境に安住しながらも抱えるジレンマと、それに合抗い生きる術を見つけた彼らの闘い。当時の沖縄に、静かながらも、でも確かに存在したと思う意識感情。自分がその時代を生きてたら、どう生きてただろうか。そして変わらぬ沖縄。どう生きるか、は不変のテーマだと感じた本。ありがとう!
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限りなく☆5に近い☆4。池澤夏樹のある方面における最高傑作だと思う。 沖縄人から語られた話というのは読んだことがない。でも、沖縄人の感覚は沖縄人にしか分からないし、本土の人間はそれを知る術がない。伝え聞くことはできるが、感じることはできない。なぜなら、自分たちは沖縄人じゃないか...
限りなく☆5に近い☆4。池澤夏樹のある方面における最高傑作だと思う。 沖縄人から語られた話というのは読んだことがない。でも、沖縄人の感覚は沖縄人にしか分からないし、本土の人間はそれを知る術がない。伝え聞くことはできるが、感じることはできない。なぜなら、自分たちは沖縄人じゃないから。そういう意味ではすごく濃密に沖縄の目線で書かれた話だった。 昨年、沖縄に行った。きっかけはcoyoteの沖縄号と探検バクモンとCocco。 coyoteは、沖縄とアメリカの関係を深く切り取った上、沖縄人のアイデンティティにも切り込んでいた。 探検バクモンでは、嘉手納基地の中にあるアメリカタウンを取材していた。小波津という沖縄の芸人がこんなことを言っていた。「沖縄人は基地をなくしたいと思ってる。でも、沖縄は米軍による収入が多くを占めていて、アメリカは生活の中にある。基地をなくしたいと思いながらも、若者は基地の中で働くことをステータスのように感じることもある。アメリカはすぐ傍にあって、沖縄人はいつも矛盾の中に生きている」 あとはCocco。慰霊の日に出演したNews23での筑紫哲也との会談や、めざましテレビのインタビュー。「沖縄人はいつも自分たちの願いは叶わないものだと思ってきた。ずーっとなんくるないさと言い続けてきた。でも、基地移設の話が挙がったとき、いままでなんくるないさーと言い続けていた沖縄人が、初めて自分たちの願いが叶うかもしれないってことを信じた。でも、最後にはやっぱりダメだった。」 ずっと負け続けてきた沖縄。自己矛盾の沖縄。アメリカの沖縄。そんな沖縄に触れたくて、去年生まれて初めて沖縄に行った。
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小説としての出来はそんなに良いとは思わない。池澤夏樹はもっともっと良い小説をほかに書いている。だけど、わたしはこれをコザで読んだ。コザ十字路を歩いた日に、プラザ・ハウスをバスの中から眺めた日に、米軍基地で機械工として働くおっちゃんと話した日に、沖縄民謡を三線で弾き語りしてもらった...
小説としての出来はそんなに良いとは思わない。池澤夏樹はもっともっと良い小説をほかに書いている。だけど、わたしはこれをコザで読んだ。コザ十字路を歩いた日に、プラザ・ハウスをバスの中から眺めた日に、米軍基地で機械工として働くおっちゃんと話した日に、沖縄民謡を三線で弾き語りしてもらった日に、この小説を読んでいた。体験知と、小説から得たものが自分のなかで一体化していく実感を生々しく感じながら読めたこと。この小説を読むうえで最上の読み方だったと思います。一度あたまに入れた知識を、歩いて食べて話して聞いて得た体験を、大事にかかえて考えていかなければならない。
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