冥土めぐり の商品レビュー
私が未熟なんだろうけど、この作品においての『冥土』がなにか、よく分からなかった。(私が今まで読んだ)この人の作品には母と娘の関係が必ず出てきて、自分と娘を分離できない(別の人間だと認識できない)母親と、そんな母親から離れたいのに離れられない娘の関係がこの人のテーマなんだろうな、と...
私が未熟なんだろうけど、この作品においての『冥土』がなにか、よく分からなかった。(私が今まで読んだ)この人の作品には母と娘の関係が必ず出てきて、自分と娘を分離できない(別の人間だと認識できない)母親と、そんな母親から離れたいのに離れられない娘の関係がこの人のテーマなんだろうな、と思った。
Posted by
表題作が芥川賞受賞作品だということで読んでみました。2作品収録されていて、どちらも人間の奥底を見事に描写しています。どちらも女性から見た物語を綴っており、男性の私にとってはなかなか気がつかないというか知りようがない気持ちの動きを描写しています。少し寒気がするからほど上手いです。表...
表題作が芥川賞受賞作品だということで読んでみました。2作品収録されていて、どちらも人間の奥底を見事に描写しています。どちらも女性から見た物語を綴っており、男性の私にとってはなかなか気がつかないというか知りようがない気持ちの動きを描写しています。少し寒気がするからほど上手いです。表題作の「冥土めぐり」はまだほんわかするのですが、「99の接吻」は背筋が凍るほどの恐怖を感じました。男性が理解できない女性のことに対する無知からくるものなんでしょうね。 以下、個別作品の感想です。 ◎冥土めぐり 若干上から目線の主人公である奈津子。母親や弟どれもあまりうまくいってない現実を悲観している。夫は脳に疾患がある身体障害者の太一。ある日、奈津子と太一は旅行に出かける。旅行を楽しむ太一とは逆に夫以外の家族について結局考えてしまってあまり楽しくなさそう。でも、最終的には夫の言動によって救われる。温かい感じがして読んでいて幸せな気分になる。ほんとうの幸せの1つを示してくれたように思える。 ◎99の接吻 男性の私にとっては恐怖しか感じなかった。女性の核心を垣間見たような気がする。きっと世の中の女性は、物語に登場する5人のパターンに分類できるのかもと思ってしまった。だとしたら、女性は怖いという結論しか出ないわけで、女性不信になってしまいそうだ。知らなくともいい秘密を知ってしまった感じなので、読んでしまったことに少し後悔している。いや、自分が経験できないこと、実感できないことを知らしめてくれた作者に感謝すべきなのかもしれない。
Posted by
表題作は過去に例を見ないくらい、障がい者の世界を比較的正確に描けているように思いました。と同時に障がい者の立ち位置には一つの視点を示せていると思います。 もう一作は、女の性というモノの泥々した感じを否定することなくさらっと書ききっている清々しさを感じました。
Posted by
99の接吻を立ち読みして気に入って購入。どろっとしているけれど地に足の着いていない感じ、これを描くには女ばかりの方が好ましい。冥土めぐりの方は嫌いではないがうまく言語化できない。斜陽を思い出すけれど、斜陽よりももっと卑近でぐちゃっとした感じ、というか。
Posted by
冥土めぐり」過去にあまりに縛られている母と弟から逃れたくても、自分も「家」に縛られ疲れているときの夫の突然の脳の病気。それは主人公にとって不幸が重なったようにも見えるが、旅を通じ、逆に何にも縛られない夫の姿を見て、自分も過去を清算し自由という選択肢を見つける。しかし、母親と弟があ...
冥土めぐり」過去にあまりに縛られている母と弟から逃れたくても、自分も「家」に縛られ疲れているときの夫の突然の脳の病気。それは主人公にとって不幸が重なったようにも見えるが、旅を通じ、逆に何にも縛られない夫の姿を見て、自分も過去を清算し自由という選択肢を見つける。しかし、母親と弟があまりに最低な人間で勘弁。「99の接吻」四女から見た3人の姉、母の話。四女はシスコンで、姉に対するこのグロテスクな妄執に自分はついていけない。久しぶりに読んで疲れが出た。
Posted by
実母や実弟に常に振り回され翻弄され詐取され続けてきた奈津子の「あんな生活」。逃れるように結婚したその先に待っていた現実は、脳の病気によって身体が不自由になってしまった夫・太一の介護。しかも太一はとても無神経で図太い性格。理不尽や不条理だらけの自分の人生になかば諦めに似たような醒め...
実母や実弟に常に振り回され翻弄され詐取され続けてきた奈津子の「あんな生活」。逃れるように結婚したその先に待っていた現実は、脳の病気によって身体が不自由になってしまった夫・太一の介護。しかも太一はとても無神経で図太い性格。理不尽や不条理だらけの自分の人生になかば諦めに似たような醒めた感情を抱きながらも、従順に世話をする奈津子。 思いつきで奈津子は想い出の場所に太一と旅に出て、今よりももっと不幸だった「あんな生活」時代を皮肉混じりに思い返す。 矛盾だらけで、理不尽で、不条理で、不公平な人生に嘆き、生きる気力すら失われていた奈津子だったけれど、最後にふと、太一の前向きさに救われていることに気付かされる。 太一は自分の身に起きた不幸を嘆いたりしない。矛盾も理不尽も不条理も不公平もすべて、呑み込んでたやすく受け容れてしまう。ただ、人生は海のような潮の満ち引きがあるだけで、変化を怖れることはないのだと。 改めて、私自身の夫の良さに気付いた。まさに太一のような人で、その良さは、こんな風に文章にしないと正確に伝わらないのかもしれない。
Posted by
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
冥土めぐり 太宰治の『斜陽』では、過去に囚われる人間を虚しくも美しい人達と感じることができたが、この作品ではそれは痛々しく醜いものにみえた。 『自分が絵の前を移動するのではなく、絵が、奈津子たちの前を流れているようだった』 辛いことや悲しいことを捉える時、このように考えることは最良の策だと思う。 夫の太一の性質をもっと清らかに描写出来たはずなのに、しなかったのはやはり人間らしさや生々しさを出したかったからなのだろうか。個人的にはもっと無知で優しく、穢れたこととは全く無縁の存在であって欲しかった気もする。 99の接吻 突拍子もないことだけれど、これは叙述トリックなのだろうかと疑ってしまった。(例えばこの四姉妹は実は人間ではないとか)それくらい、不自然で不気味だった。いい意味で。 こちらも、この四姉妹をただただ美しく描くこともできたはずなのに、そうしなかった。四人それぞれに女性の嫌な性質が設定されており、Sに振り回される四姉妹の滑稽さをとても虚しく描いている。 ふわふわ地に足がつかない登場人物やストーリーはもともと好きだが、その中に生々しさや現実味がプラスされている文章もいいなと感じた。
Posted by
メモ 幽霊たちに囲まれてきた。そこからの再生にはドラマはいらない。安心と日常の繰り返しのみがカウンセリング可能。 本当は死んだのに、成仏できない幽霊たちとの生活。そのことに気がつかない人たちと暮らす わあわあ泣く 被害者。想像力の欠如。責任の喪失。 失われた栄光の時間を、生き...
メモ 幽霊たちに囲まれてきた。そこからの再生にはドラマはいらない。安心と日常の繰り返しのみがカウンセリング可能。 本当は死んだのに、成仏できない幽霊たちとの生活。そのことに気がつかない人たちと暮らす わあわあ泣く 被害者。想像力の欠如。責任の喪失。 失われた栄光の時間を、生きる。夢見るのではなく、すぐ目前に存在している。 不幸、とおもうこと。 金、という幸福の象徴。すべてを金に責任転嫁して生きること。 醜さを凝縮。 固いセメントのような海
Posted by
「冥土めぐり」 自分の不幸と他人の悪意にからめとられて動けない家族の殻に、不幸にも悪意にも鈍感な人間が穴をあけられたのか。母弟が人としてだめすぎて苛々する。 「99の接吻」 下町で暮らす4姉妹の話。優雅で艶っぽい。浮世離れした感じで進むのだけど、姉妹の話というのはちょいちょい共感...
「冥土めぐり」 自分の不幸と他人の悪意にからめとられて動けない家族の殻に、不幸にも悪意にも鈍感な人間が穴をあけられたのか。母弟が人としてだめすぎて苛々する。 「99の接吻」 下町で暮らす4姉妹の話。優雅で艶っぽい。浮世離れした感じで進むのだけど、姉妹の話というのはちょいちょい共感がもてる。
Posted by