生きていく民俗 の商品レビュー
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物々交換〜行商が、この国の商売のルーツであり、各地の営みと生業(なりわい)が丹念に綴られる。 『芸事』も、施しを受けて来た“流浪の民”が、生きていく為の『売り物』として成り立って来たという説も興味深い。 夏休みの自由研究的に、民俗学を“かじり知った”一冊。
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人々の生活の歴史が詳細に描かれている。 杉は近世になると桶や樽の材料として利用されるようになり、都市で酒が作られるようになると、吉野熊野で大量の樽材が求められた(樽の記述は水の文化史にもあり)。
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宮本常一は相変わらず、とにかく平易で読みやすい。この本は民間のさまざまな「職業」にスポットライトを当てており、中身も興味深く、宮本民俗学の中でも特に面白い一冊と言えるのではないだろうか。 宮本常一や柳田国男を読んでいて気になるのは、「昔は○○だった」と書かれているとき、その「昔」...
宮本常一は相変わらず、とにかく平易で読みやすい。この本は民間のさまざまな「職業」にスポットライトを当てており、中身も興味深く、宮本民俗学の中でも特に面白い一冊と言えるのではないだろうか。 宮本常一や柳田国男を読んでいて気になるのは、「昔は○○だった」と書かれているとき、その「昔」とはどのくらい昔のことを指しているのだろう、ということだった。 私の推測ではほとんどの場合、「昔」と呼ばれているのはせいぜい江戸時代なのではないか。ただ、農業に関しては、農機具や生活状況は室町時代からほとんど変わっていない、と何かの本で読んだことがある。 民俗学はこのように、しばしば正確な「とき」を明記しない場合があるが、かといって民俗学者は歴史を知らないなんてことは全くなくて、実に様々な史料を手にしているはずだ。 山口昌男さん辺りを参考にすると、おそらく、こういうことだろう。 近代西欧を支配してきた<直線的な歴史観>に対して、近代化以前の日本民俗の宇宙は<円環的な時間>の世界であり、営々とつむがれてきた<庶民>が住まってきたのは、たとえばヘーゲル的な進歩史観とは全く隔絶した空間なのである。 そこには終わりも始まりもなく、人々は喜怒哀楽、生老病死を無限に繰り返しては後代へとバトンタッチしていく。 これはきっと、南方熊楠の<森の生活>に通じるものがあるのだろう。 本書によると、近代的な意味での貨幣経済体制が本格的に動き始めたのもやっと江戸時代である。ただし網野善彦さんあたりはそうは見ていないので、考え方によるところだろう。 貨幣経済が本格的に僻地の<ムラ>にまで届いたのは、きっと江戸時代後期から明治にかけてのことだろう。 その頃、私たちの生活圏は<円環する時間>を永遠に失ってしまったのである。
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青春18切符で旅行中、移動の電車の中で読みました。 地域に生きた人の生業が地域をつくってきて、その軌跡を思い浮かべながらの電車旅。旅行に持っていってよかった。 企業に雇われ働くようになったのはたったここ1世紀の話。 常に貧困と隣り合わせの中で、必死に働き、仕事をつくり日本人は...
青春18切符で旅行中、移動の電車の中で読みました。 地域に生きた人の生業が地域をつくってきて、その軌跡を思い浮かべながらの電車旅。旅行に持っていってよかった。 企業に雇われ働くようになったのはたったここ1世紀の話。 常に貧困と隣り合わせの中で、必死に働き、仕事をつくり日本人は生きてきた。どのような地域で、どのような自然の中で暮らしているかによって、仕事のあり方は違った。仕事×民俗学。地理的、歴史的に俯瞰する本。 面白かったーーー。
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江戸時代以前は、藩や国の単位で往来が制限されていた、、というのは武家社会の話で、農民や商人といった一般層はかなり自由に行き来していました。街道とは別に赤線と呼ばれる山間の道を通って、博労や女衒といった人身売買も盛んに行なわれていました。 人身売買というと物騒な雰囲気ですが、戸籍...
江戸時代以前は、藩や国の単位で往来が制限されていた、、というのは武家社会の話で、農民や商人といった一般層はかなり自由に行き来していました。街道とは別に赤線と呼ばれる山間の道を通って、博労や女衒といった人身売買も盛んに行なわれていました。 人身売買というと物騒な雰囲気ですが、戸籍制度が整備される以前には丁稚奉公や養子縁組といった形で子どもにより良い暮らしをさせる選択肢は普通にありました。 たとえば富山の薬売りは有名ですが、それは日本海沿岸で塩づくりをしていた製塩業が、瀬戸内海などでの効率的な入浜との競争に負けて下火になっていったところに浄土真宗の毒消しの製法が広まり、手の余った若い娘が売り歩くようになったのが起源と言われています。 このように労働力の伝播に従って、文化や習慣、そして生業もバリエーションが増えていきます。上流から下流に行くに従って分業制が生まれたり、専業者の村ができたりといった形で専門職がつくられていき、技術が高度化していったのです。 民俗とはこのように、人々の交流と時代の要請に従って移り変わっていくものなのでしょう。まさしく生き物のような生業の変遷を、もっと追いかけていきたいものです。
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日本の村と町の様々な仕事の変遷を描いている。山、村、海辺、町での様々な職業をその起源から説き起こし、更に著者が各地を旅した時の見聞を散りばめているので説得力が有る。ちょっと前のほとんどの日本人が、色々な生業に携わり、ぎりぎりの生活をしていたというのに驚かされる。明治以降の新しい産...
日本の村と町の様々な仕事の変遷を描いている。山、村、海辺、町での様々な職業をその起源から説き起こし、更に著者が各地を旅した時の見聞を散りばめているので説得力が有る。ちょっと前のほとんどの日本人が、色々な生業に携わり、ぎりぎりの生活をしていたというのに驚かされる。明治以降の新しい産業の担い手が、農村に居場所が無い次三男たちと農村を積極的に離れた女性達で有ったというのも興味深い。今後の日本を支える生業が何なのか考えさせられた。
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