凍原 の商品レビュー
自分のルーツを探るうち、殺された 青い目の男性。 弟が湿原で行方不明になって以来、家族がばらばらになってしまい、どこか希薄な人間関係しか築けないでいる女性刑事ヒロ。 肝心の、男性が殺害された理由が無理やりだったような。
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釧路湿原で20年近く前に起きた少年行方不明事件、戦後のシベリア、そして現代の釧路、小樽、室蘭、札幌を舞台に物語が進みます。
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桜木紫乃が釧路の作家であることを武器にして書く小説とは何だろうと、考えたとき、やはり釧路という風土の特異性を生かした作品ということを考える。そしてそれが成功してゆくからこそ、この作家は直木賞に辿り着いてゆくのだろうと思う。 そればかりか、この作家は北海道らしさを作風にとても...
桜木紫乃が釧路の作家であることを武器にして書く小説とは何だろうと、考えたとき、やはり釧路という風土の特異性を生かした作品ということを考える。そしてそれが成功してゆくからこそ、この作家は直木賞に辿り着いてゆくのだろうと思う。 そればかりか、この作家は北海道らしさを作風にとても色濃く出しているように思える。釧路が彼女のセンターポジションであるとすれば、遊撃地点としてのどこか別の場所が選択される。本書の場合、それは樺太であり、留萌である。 本書には地図がいくつも巻頭に添付されている。殺人事件の現場となった塘路湖付近、小児行方不明事件の起こった釧路町付近、そして釧路全体図、さらには過去の終戦間際の脱出ドラマが展開される樺太半島の図。こうしてみると、桜木紫乃という作家の作品に地図、土地、風土、そしてその特性たる地の果ての歴史を生きた人々の相関図、というようなものが、非常に重要な要素となって示されている気がする。 単なる舞台設定といういう以上に、風土そのものが作品を構成する重要要素であるばかりか、時には土地こそが人間に成り代わって主役の座を奪うといったぎりぎりのところまで、土地・季節・時代が物語を捻じ曲げる極大の影響力を持つ。 本書は樺太で始まり、釧路で終わる。一人のタフな女の叙事詩を読み取る釧路の女性捜査官。しかし樺太から逃げ延び、札幌、小樽、室蘭、留萌と展開する女性の踪跡を辿っているうちに、不思議な矛盾に気付いてゆく。死んだ男は明らかに日本人の顔かたちだったのに、その瞳の色は澄んだブルーだったという事実に端を発した不可解さは、次第に過去の歴史の中ですり替えられてきた真実に近づいてゆく。 刑事ものという体裁を取りながら、実は一つの過酷な時代を生き延びた女たちの人生を描くビルディングス・ロマンであり、冒険小説のエキスもたっぷり滴り落ちているこの一冊。短い文章ながら、その稠密さに呼吸さえ苦しさを覚えるほどの圧倒的ストーリーテリングとその仕掛けの巧みさに、この作家のスケール感を修正せねばならなかったほどの、これまた桜木紫乃ならではの渾身の力作である。
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目の青い、一人の男性の遺体。他殺と判定されたその事件をおう内に浮かび上がる一人の女の生涯。 この作家さんの得意なジャンルですね。 キクの生涯、もっと深く読みたかった。そっちをメインにして書いてほしいくらい。子供を捨ててからの軌跡は、現代のインタビューから浮かんでくるけど、常々でキクがどんな心境だったかとか、見てみたいよねえ。映像にしても面白いかもねえ。 あと男性が殺された動機は「は?」て感じでした。 主人公はキクです。
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現代北海道の事件からと、戦時中の樺太からの引揚者の事件からの2つの話が交差しながらすすんで行く。 作者が北海道出身なので、北海道の事が詳しく書かれている。 我が母は、士族47代も続く家に生まれたと、小さい時から話してくれていたが、私は、その長い年月を考えたことも無かった。 トル...
現代北海道の事件からと、戦時中の樺太からの引揚者の事件からの2つの話が交差しながらすすんで行く。 作者が北海道出身なので、北海道の事が詳しく書かれている。 我が母は、士族47代も続く家に生まれたと、小さい時から話してくれていたが、私は、その長い年月を考えたことも無かった。 トルコ人に、その話をしたら、「凄い!そんな歴史ある家柄なんだ!」と、我子は、びっくりしたように言われたと。 欧州等、陸続きの国々は、戦争で、10代も続かないと、、、、2代、3代まえでさえ、自分のルートを知らないと。 この本を、読んで、樺太からの引揚者が、どんなに苦労したか? 又、顔のない女の一生が、事件に関連して来る。 自分の2代前の人が誰なのか? 湿原で他殺事件の被害者は、青い目を隠すためにカラーコンタクトで、その事を隠していた。 自分の祖先は誰?と、追究して行った哀しい結果であった。 釧路の刑事第一課の松崎比呂も、17年前に、弟を湿原の谷地眼(やちまなこ)で、行方不明になっている。 この2つの事件が、重々しい、鈍色の北海道の冬の空のように、物語が、進む。 少し、重たい本であった。
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数日前に読んだのに中身を忘れた そのくらいの内容だったってことだ あ、思い出してきた オチは、最初の方で読めた
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二つの時代が交互に語られ、それがやがて繋がってくるという形式がとられている。 ちょっと複雑過ぎるというか、繋がりがいまいちわかりにくいというか、そこが巧さなのかな? 2015.9.8
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相変わらず 桜木紫乃作品。 今までの中では、ちょっと満足いかない。 初期作品らしく、文章は上手いが、読み応えは ちょっと… 最後までよんで、消化不良みたいな。 今までの作品がかなり上手いし面白いから、期待が大きすぎたかな… でも、こういう作品から、すごく成長されたんですね。 ただ...
相変わらず 桜木紫乃作品。 今までの中では、ちょっと満足いかない。 初期作品らしく、文章は上手いが、読み応えは ちょっと… 最後までよんで、消化不良みたいな。 今までの作品がかなり上手いし面白いから、期待が大きすぎたかな… でも、こういう作品から、すごく成長されたんですね。 ただ、「ホテルローヤル」で直木賞をとった人の作品だから、おすすめ…とは言えない。 次に読む作品「ワン·モア」に期待しよう。
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入りやすい文章なのに、冷やっとする文章を入れてくるのが桜木さんだなと思う。 キクが私、好き。何回、心をころされても生きているという所が好き。そういう強さを持たなければ生き残れない気がして。 人を騙すのは最低だけど。最後に読んだ名前、彼女にも愛があったのかと想像してしまう。 通じ合う物が流れていると思ったからこそ彼の裏切りが許せなかった。非常時に男が女を虐げるのを見てきて理解しているけど、「あなたまで私をそんな風に扱うのか」と。だから発砲した。キクの心の描写が少ないので想像でしかないんだけど。 ここまで書いて思ったんだけど、同じ思いをキクはつや子にさせてしまったんだろうなぁと思う。だからこその結果。 ヒロではなく、キクの目線で読み進めていったのでじっくり読めた。 平和に染まった地で、樺太や満州から逃げてきた人はどう生きたのか気になった。数十年たって、土地や本州の人々が平和に笑っている姿をみたら、私なら「そうじゃないよ」と言いたくなるから。平和は嬉しいけど何もないような顔で笑われると戦中に感じた心の痛みはどうなるんだろうと思ってしまいそう。
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桜木紫乃の作品を何か読んでみたいと思っていて・・・。 まぁ悪くない。 --- 一九九二年七月、北海道釧路市内の小学校に通う水谷貢という少年が行方不明になった。湿原の谷地眼(やちまなこ)に落ちたと思われる少年が、帰ってくることはなかった。それから十七年、貢の姉、松崎比呂は刑事として道警釧路方面本部に着任し、湿原で発見された他殺死体の現場に臨場する。被害者の会社員は自身の青い目を隠すため、常にカラーコンタクトをしていた。札幌、小樽、室蘭、留萌。捜査行の果てに、樺太から流れ、激流の時代を生き抜いた顔のない女の一生が、浮かび上がる! 文庫化に際し完全改稿を行った、新・直木賞作家唯一の長編ミステリー!
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