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2050年の世界地図 の商品レビュー

3.8

11件のお客様レビュー

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2021/03/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

巨大潮流(メガトレンド)をテーマに据え、未来の開発と発展の舞台として着目すべきNew North(北緯45度以北の全ての陸と海)の将来像を考える、という思考実験の本。 邦訳が出たのが2012年で、思考実験を展開するにあたり前提をいくつか置いているのだが、そのうち「死に至る病気の大流行は無い」というものがあり、この前提はコロナで崩れてしまっている、というところについては、2021年の今から読む場合には注意すべき。 第1部は、現在の世界の課題と今後の展望について触れている。高齢化社会では外国人熟練労働者を惹きつけられる国が成功していくことになる、という論点には納得。また、「飲料水確保のためには広範な地域で少額ずつの投資や支援をする必要があるが、世銀やIMFは1カ所で10億ドルを使う方法は知っていても100万カ所で1000ドルずつ使う方法を知らない」という視点は、痛快な皮肉である。 第2部は、New Northで起きている課題について。 気候変動により北の高緯度地方により大きな影響を与え、農業が大変動する可能性があること、ロシア以外の極北地では2050年までに人口が増加する見込みが高いこと、先住民たちが政治的影響力を持って気候変動に自らの力で立ち向かう兆しが見えていることなど、いくつか面白い情報が述べられている。このあたり、2012年時点の実情と今後の展望を、2021年の今の立場で再検証してみるのも面白そう。それだけで大学の卒論か修論が一本、書けるのではないか。 第3部は、今後の発展に向けた結束や展望について。 ここでも気候変動は大きなテーマであるとしているが、凍っている炭素が解凍されることが必ずしも温暖化を助長するわけでもなく、急成長した植物が炭素を貯蔵するようになるかもしれない、という、他ではあまり見られない可能性についても触れている。 最終章では、新たな文明の発展要因を挙げており、これをジャレド・ダイヤモンド(著者の大学の同僚とのこと)が挙げている文明崩壊の要因と対比している。ここを見ると、確かにNew Northには発展できるだけの要素がある程度、揃っていることが分かる。 著者の主張から10年近くが過ぎ、New Northとして挙げられているアメリカ、カナダ、アイスランド、グリーンランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、ロシアのそれぞれの北緯45度以北の地域がどのようになっているのか、少し興味がわいてきた。少なくとも、ロシア以外は住んでみたいかな、と思える国ばかりである。New Northの「今」を教えてくれる本がないものか、気になりつつ読了。

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2013/05/28

第一部~二部すべて、キーワードだけでしか、ニュースで知ることができなかったことについて、詳細に説明や、データがあります。真実味をもって問題を考えることができると思います。 丁度、カリフォルニア州にいます。自然の部分は、乾季で緑が消えているのに、会社や住宅地の周りは緑に保たれてい...

第一部~二部すべて、キーワードだけでしか、ニュースで知ることができなかったことについて、詳細に説明や、データがあります。真実味をもって問題を考えることができると思います。 丁度、カリフォルニア州にいます。自然の部分は、乾季で緑が消えているのに、会社や住宅地の周りは緑に保たれているのを、考え直させられます。”都市の水”という意味は、飲み水だけではなく、こういった資源も含まれるんですね。 第三部は、学者さんらしく、"結末"にいろいろな可能性を加味し、また確度別に述べているのも面白いと思いました。

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2013/03/15

気候変動により、2050年には、「ニューノース」(北緯45度以北)の時代が来る…。 地下資源、労働人口…。 そんな時代が来ることを予感、実感させる。

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2013/01/28

温暖化によって変わる北緯45度以上の地域-ニューノース-を巡る未来予測系のお話。 が、半分ぐらいはニューノースに関係なく、人口構成、資源の需要、グローバル化、気候変動がもたらす未来の話をしている。水資源とエネルギー資源の話が多め。 温暖化と北極圏というと北方航路が思い浮かぶが、温...

温暖化によって変わる北緯45度以上の地域-ニューノース-を巡る未来予測系のお話。 が、半分ぐらいはニューノースに関係なく、人口構成、資源の需要、グローバル化、気候変動がもたらす未来の話をしている。水資源とエネルギー資源の話が多め。 温暖化と北極圏というと北方航路が思い浮かぶが、温暖化しても夏の間しか使えないため、国際貿易路の劇的な変化はないだろうとしている。 また本書では太陽光発電について悲観的であり、2050年でも石油と石炭、ガスがエネルギーの大部分を占めるとしている。 そのなかで北極海やその周辺には多くの海底ガス田や油田が眠っていることから、海氷の減少と相まって、資源開発競争が始まりつつあると指摘する。 陸上については水の増加や温暖化に支えられ農業が発達するとみているが、永久凍土の解凍による建物や交通インフラの破損が続いており、必ずしも良くなっているわけではない。 先住民によるカナダのヌナプト準州の創設やグリーンランドの独立の動きなど先住民の活動や、移民の流入によりニューノースの人口は増加するともしており、今後「ホット」になりそうな地域である。 もっとも、北極海の海氷についてはモデルの予測よりかなり速く消失が進んでいるらしく、今後の動向によっては温暖化と海面上昇が加速する可能性もある模様。

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2012/11/29

2050年の世界地図を、北極海を中心に描いた書籍です。 予測の前提として突然変異は考慮に入れず、妥当性の高い予測から未来を検討したと言うことになっています。著者がUCLAの水文学専門教授なので、そちらにかなりフォーカスされた書籍となっています。 基本は4つのグローバルな力、人...

2050年の世界地図を、北極海を中心に描いた書籍です。 予測の前提として突然変異は考慮に入れず、妥当性の高い予測から未来を検討したと言うことになっています。著者がUCLAの水文学専門教授なので、そちらにかなりフォーカスされた書籍となっています。 基本は4つのグローバルな力、人口構造の変化、天然資源、グローバル化、気候変動から未来の予測を行なっている、と言っていますが、根本的に気候変動による地学変化から予測を行なっています。 一章、しのびよる異変 予測の前提条件のおはなし 二章、過密都市 都市の過密化と高齢化について 三章、鉄、石油、風 在来型燃料の埋蔵量や大体エネルギーの有用性、フリー電力としての風量くや太陽光について 四章、干上がるカリフォルニア 水の搾取の結果としての水不足、温暖化による湾岸都市の沈没の可能性、水の輸出入について 五章、北の生態系 温暖化による生態系の変化、シベリアの呪い(冷凍地域)の解呪、野生動物の異動、寒冷地域での農作物の生育可能性の拡大、 六章、北極の地下資源は誰のもの 多大な地下資源、石油やガスを含む北極海の支配権について、国連海洋法の批准、氷の縮小と北極海航路の拡大、永久凍土の誘拐による陸上交通(ウィンターロード)の瓦解、 七章、肝北極圏の人口とグローバル移民 寒さのばらつき、ロシアで人口減、その他の国では人口拡大、タールサンドの需要大、環境汚染、移民の受け入れ(アメリカ、カナダ)と移民に馴染めない地域 八章、先住民問題 グリーンダンド自治法に代表される先住民の自治権と発展、国ごとの政策の違い 九章、不確実要素 気候モデルの真価、ペンダゴンレポート、永久凍土瓦解による炭素堆積物の温暖化への影響と科学的エビデンス、世界の水プロジェクト という感じで、やはり北極海地域を中心に、温暖化の影響によるそれらの可能性の拡大と赤道熱帯地域以外の凋落と合わせて予測している本で、中々興味深い反面かなりバイアスを感じる書籍と言えるでしょう。 あとやはり冗長な部分を後半は感じましたかね。合わせてコンパクトにまとめても良かったかなと。全体としては面白い本です。

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2012/08/26

温暖化による気候変動。 人口爆発。 資源の逼迫。 人類の未来には様々な問題が待ち構えています。 本書はこれらの影響により「将来、世界情勢がどの様になっているのか」を、カリフォルニア大学ロサンゼルス校地理学教授の著者が自らの専門知識などを駆使しながら予測している本です。 未来予...

温暖化による気候変動。 人口爆発。 資源の逼迫。 人類の未来には様々な問題が待ち構えています。 本書はこれらの影響により「将来、世界情勢がどの様になっているのか」を、カリフォルニア大学ロサンゼルス校地理学教授の著者が自らの専門知識などを駆使しながら予測している本です。 未来予測はその難しさにより、云わば外れて当然な代物ですが、本書執筆に際して著者は確度の高い予測を行うため、以下4つのルールに基づき分析を行っています。 ・全ての問題を一気に解決するようなスーパーテクノロジーは登場しない ・第三次世界大戦が無い ・世界的第不況、パンデミック、突然の気候変動等、突然の大きな出来事が発生しない ・気候の理論モデルが信用できる これらの分析を通して、著者はこれまで酷寒により開発が妨げられていた環北極圏(NORCs:Northern Rim Countries;アメリカ、カナダ、アイスランド、グリーンランド(デンマーク)、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシア)が発展していく一方で、これまで快適な生存空間であった低緯度地域が厳しい状況におかれる様になると結論づけています。 では以下で簡単に内容紹介を。 本書は3部構成の全10章からなり、第一部(1章から4章)では ・人口爆発 ・人口の都市部への集中 ・資源問題 ・水問題 等が取り上げられ、第2部(5章から8章)では気候変動によりNORCsがどの様に変わっていくかを ・生態系 ・北極の地下資源の分配 ・世界中からのNORCsへの移民 ・先住民問題 等の視点から解説。 そして最後の第3部ではこれまでとは打って変わって(著者の表現を借りれば安全地帯から抜け出して)より大胆な未来予想を述べています。 ・人口爆発や北極圏の地下資源を巡る各国の動き。 ・自ら主導権を握って気候変動にたち向かおうとするカナダの先住民 ・その一方で先住民自身に自分たちの問題を解決する力を与えず、代わりに彼らのこれまで通りの生活や文化の保護を行おうとする北欧諸国。 この様な普段ニュースに接しているだけでは目にする機会も少ない情報が詳しく解説されており、読み応え充分な内容でした。 「重要なのはキャパシティよりも何を望むかだ。私たちはどんな世界を望むだろうか」 と言う著者の言葉で締められている本書。 未来がこの様になるのではと言う将来の見通しだけでなく、現在の世界の状況を理解するのにとても役立つ一冊となっていますので、お時間のある時にでもお読みになられては如何でしょうか。

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2012/07/16

北極海の海底に眠る化石燃料の支配権をめぐって、世紀の「争奪戦」が始まった。今、厳寒の地で何が起こっているのか、極北の出来事が世界にどう影響を及ぼすのか。未来は、ニュー・ノースなしには語れない。 ※ニュー・ノース  アイスランド、グリーンランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンラ...

北極海の海底に眠る化石燃料の支配権をめぐって、世紀の「争奪戦」が始まった。今、厳寒の地で何が起こっているのか、極北の出来事が世界にどう影響を及ぼすのか。未来は、ニュー・ノースなしには語れない。 ※ニュー・ノース  アイスランド、グリーンランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシア、カナダ、アメリカが保有する、北緯45度以北の地域

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2012/06/22

レビューはブログにて http://ameblo.jp/w92-3/entry-11280929549.html

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2012/05/31

資源の枯渇と循環 エネルギー、水、環境変化と種の負け組、勝ち組生物、多様性ホットスポットへの影響 2050年の地球の姿を4つの切り口の変化から予想する。約40年先を見据えた行動を。現代への警鐘。楽しく読めた。

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2012/05/26

少し前に読んだマーセル・セローの『極北』の舞台がシベリアの永久凍土だった。近未来を描いた小説が極北を舞台に採用していることが新鮮だったが、この本を読んで、作家がなぜ北の土地を選んだかがよく解かった。未来予測をテーマにした本は多いが、わずかばかりのデータをもとにして、描き出す終末論...

少し前に読んだマーセル・セローの『極北』の舞台がシベリアの永久凍土だった。近未来を描いた小説が極北を舞台に採用していることが新鮮だったが、この本を読んで、作家がなぜ北の土地を選んだかがよく解かった。未来予測をテーマにした本は多いが、わずかばかりのデータをもとにして、描き出す終末論的世界を、さもそれが現実の近未来であるかのように騒ぎたてるものがほとんどだ。この本は、そうしたものとは一味ちがう。 著者のローレンス・C・スミスはUCLAの地理学教授で、最近再び話題になっている『銃・病原菌・鉄』を書いたジャレド・ダイアモンドは、同僚である。北半球北部の河川の水文学、氷河・氷床、永久凍土の融解が土壌炭素や湖に及ぼす影響、最先端の探査・観測システムなどを専門に研究し、フィールドワークにも積極的に出かけている。コンピュータに打ち込んだ膨大なデータの解析によるシミュレーションが本論の中心だが、実際に足を運んだ「環北極圏」(Northern Rim Countries略してNORCs)の姿を伝える筆は、学者というよりノンフィクションライターのそれで、学者たちの実態や先住民の生活をありのままに描き出し、読み物としても楽しい。 さて、未来予測には隕石の衝突やら第三次世界大戦がつき物だが、スミスはあらかじめ四つの約束を決めて解析を行う。いわく1.「打ち出の小槌」はない(技術の進歩はゆるやかだと仮定する)。2.第三次位世界大戦は起こらない。3.隠れた魔物はいない(隕石の衝突など可能性が低く、影響が大きい出来事は想定しない)。4.モデルが信用できる(気候や経済のコンピュータモデルの実験)。きわめて保守的な思考実験であり、「売らんかな」の精神からは最も遠い。そのぶん、読み物としては少々硬い感じを受ける。 著者が着目する四つのテーマがある。その第一は、人口構成。第二は、資源の需要。第三は、グローバル化。第四は、気候変動である。この四つのグローバルな力が未来を方向づけている。その結論が2050年、人口増加に伴い、資源を求めた世界は、未開発の石油や天然ガス等の資源を多く蔵しているニュー・ノースに軸足を置くというものである。ただ、地域によって相違はあるものの、北半球においては地球温暖化が進み、氷塊や永久凍土が融けだすことにより、交通手段や都市の建設に様々な影響が出てくる。 来年のことを言えば鬼が笑うというが、昨年、未曾有の洪水と人災ともいえる原発事故に見舞われたわれわれ日本人にとって、30年先のことなどわからないといって、笑ってすますことなどできない。2010年に出たこの本の中には、チェルノブイリやスリーマイル島の事故が風化し、世界が再び原子力発電の方を向いていることを説明し、日本やフランスで「今のところ大きな惨事は起きていない」としつつも、廃棄物の処理や安全性の問題について注意を喚起している。3.11以降、ドイツをはじめ、反原発へと舵を切った国が増えたのは知ってのとおりだ。最大の被害を被った当事国である日本がまだ原発にしがみついているのは、皮肉としか言いようがないが。政治家たちは、どれくらいのタイムスパンで事態を見ているのだろうか。彼らにこそ、ぜひ熟読玩味してもらいたい本である。 科学者らしく、客観的な視点で公平な筆致に好感が持てる。評者の歳では、2050年まで生きているとは到底思えないが、世界の動きをただ眺めているというのでなく、一つの視点を持って見つめていこうと考える向きには、必携の参考書かもしれない。

Posted byブクログ