タダイマトビラ の商品レビュー
色彩を強調する文章の中で、主人公の目に映る世界は極端に色数が少ない。子供の頃は特に、世界はもっと色鮮やかに見えていたように記憶しているし、多くの子供たちは、自由な発想で色を操り、色を楽しむ。限られた色味の単調な世界は、自分の常識に捉われ、家族のカタチに固執する、主人公の視野の狭さ...
色彩を強調する文章の中で、主人公の目に映る世界は極端に色数が少ない。子供の頃は特に、世界はもっと色鮮やかに見えていたように記憶しているし、多くの子供たちは、自由な発想で色を操り、色を楽しむ。限られた色味の単調な世界は、自分の常識に捉われ、家族のカタチに固執する、主人公の視野の狭さということかしら。 渚さんにとってのアリスという存在が著者の『殺人出産』に繋がる。わたしという個は、特別なものではない。代わりなんていくらでもいるものよ。 ならば家族以外の幸せを探せば良い。夢見るお姫さまじゃない男にだってそのうち出会える。もっと他の色にも目を向けて見ようじゃないか。わたしが変われば世界は変わる〜♪ という前向きな結末を村田沙耶香に期待するはずもないが、さすがにこんなヨナニーを見せられるのは予想外。この発想力。やいやいやい。 ナニモノでもない、ただのホモ・サピエンス、ホモ・サピエンス・サピエンスになったところで、彼女が見る世界はきっと変わらないだろう。
Posted by
トビラの先には何が待っているんだろう。 家族のシステム、形から脱却して次のトビラを開けていく。それが正しいとかは抜きにして一つの答えではあると思った。 騙し絵のような小説だと思いました。
Posted by
もしかしたら今まで読んだ村田沙耶香さんの作品の中でも、一二を争うほどラストが難解だったかもしれない。 いや、物語を終始漂っている不穏な空気感からシンプルにそうなるであろう方向に進んで行った気がしているのだけれど、ラストの方で途中から世界がバグったような感覚があって、血生臭さも凄惨...
もしかしたら今まで読んだ村田沙耶香さんの作品の中でも、一二を争うほどラストが難解だったかもしれない。 いや、物語を終始漂っている不穏な空気感からシンプルにそうなるであろう方向に進んで行った気がしているのだけれど、ラストの方で途中から世界がバグったような感覚があって、血生臭さも凄惨さもなく、グロくもショッキングでもない。でもそうなったのであろう結末は全く見えてこなかった。歪んだまま始まって、もっと歪んで潰れて終わった感じ。 家族という"システム"が完全に破綻していてそれぞれが方向を見失っているような状態。 家族について悩んだことがある人ならどこかしらで(共感したら負けな感じがするけど)心にグサグサと刺される感覚はあると思う。 表紙を見れば思い出せるなぁって思うくらいこの作品もまたジャケがとても良い。 作中に出てくるというかキーポイントでもあるカーテンをイマジナリーフレンドのように扱ってる話って、短編集でその話の種みたいなのを読んだような覚えがある。 村田さんの作品の世界観って結構似てるというか、共通の部分がいくつもあったりするから、どこかで繋がってる同一世界線上にあるようなそんな気がする。 それにしても「カゾクヨナニー」って相変わらず秀逸なワードセンスしてる。 カーテンのニナオとカゾクヨナニーって笑 村田さんの作品を読んでいると、とんでもない読書体験をしている感覚がある。でもそれを気軽に他人にオススメ出来るかというとそうではない。 ある人には全く理解されないだろうし、ある人にとっては救われる作品だとも思う。 日常に感じている違和感を言語化してくれていることへの共感であり、自分の中の"当たり前"とは何だったのかという振り返りであり気づきでもある。 つまるところの心の開放であり、哲学であるのかもしれない。
Posted by
この本の内容は自分にとってとても強烈な印象を残しました。 特に最後は、頭の中が?でいっぱいになる感覚でなんとも言えない感情になりました。 「家族欲」という斬新な概念やそれを満たそうとする主人公の行動には共感できるものがありました。 主人公が最後に辿り着いた結論は理解し難いと感じる...
この本の内容は自分にとってとても強烈な印象を残しました。 特に最後は、頭の中が?でいっぱいになる感覚でなんとも言えない感情になりました。 「家族欲」という斬新な概念やそれを満たそうとする主人公の行動には共感できるものがありました。 主人公が最後に辿り着いた結論は理解し難いと感じる一方で、概念を超越した狂気のようなものを感じ、圧倒されました。 この作家さんの本をもっと読んでみたいと思いました。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
自分の家庭に希望がもてずに、早くここから抜け出して自分の家族をもちたいと望む恵奈。 好きになった浩平と同棲して、ここが〝自分の帰る場所〟になるという願いが叶うはずだったが。 笑う浩平の印象を最初は目尻の綺麗な皺にフォーカスしていた恵奈が、一緒に過ごす中で、黄ばんだ歯にフォーカスしていた時に、弟が予想した「失敗者」の姿が見えた。 『失敗』と言われる家庭で育つと、このようなルートを辿りやすいのだろうか。 結婚をする時、人は自分の理想をもつ。 理想の家庭を作るために『カゾクヨナニー』なるものをしていると言う発想がおもしろかった。 『失敗』と言われる家庭で育っていなくても、どんなに好き同士でも、相手は自分とは違うのだから、『カゾクヨナニー』を継続すると言うことは楽なことではないし、嫌な部分や受け入れられないところが出てくる。結婚は理想であり、忍耐なんだなと感じた。 話を読み始めた時は、恵奈の母にゆがみを感じた。恵奈はその母のもとで育ち、恵奈という人間の生命体に考えや人格が形成されていったのだと思う。 〝今まで不思議の国にいて、脳がかけた魔法の中をさまよっていた〟と認識した恵奈。 それが、恵奈が家族や人間という言葉が生まれる前の生命体、ホモ・サピエンス・サピエンスに戻った時に、母が恵奈に異常を感じて心配している。 言葉を話して新しいシステムの世界の中で暮らす者とホモ・サピエンス・サピエンス。正常と異常と言われる相反する者との間では、お互いが理解できないほど、埋められないほどの精神の隔たりを感じるのだと思った。 どちらも同じ人間なんだけど。 恵奈がアリスを指で潰した時に、人間と同じ生命体の命の儚さを実感した。生き物はこんなにも簡単に潰れてなくなってしまう。 ラスト。突然誰が来たのか⁈人間として生きることを望む家族までもが皆ホモ・サピエンス・サピエンスに⁈ ちょっと理解が及ばなかった。 全体として、意外な発想と独特な世界観がおもしろいなと思いました。 あと、恵奈は家族にこだわっているけど、人間としての価値はたくさんある。家族に苦しめられているのなら、家族がしんどいのなら、そこから思考を外せなかったのかな…。ホモ・サピエンス・サピエンスに帰る前に。
Posted by
子どもは大人の作った世界の中でしか生きられない。恵奈が生きていくために工夫を重ねる時、自分で自分を抱きしめる時、とてつもなく切なくなった。母もまた必死に生きている。どこかでこの鎖を断ち切れたら良かったのに。最後は断ち切れて自由になれたのだろうか。一気に読んだ。
Posted by
帰っていく場所は。 家族ごっこを上手くできたらいいが、どこか少しでも違和感を感じてしまったら一瞬で崩壊してしまうだろうな。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
今回もまた村田沙耶香ワールドに引き込まれる気満々で読みました。 自分自身が今まで感じていた「家族だから」「血」という括りで必ず、助け合わないといけない、仲良くしないといけないといけないと言われ納得がいかずに生きてきたところがあったので、この家族の不調和は潔さや気持ちよさも感じれました。 後半になるにつれ、村田ワールドが強くなりすぎてついていけなさそうになるところも多々ありましたが、それでこそこの作家さんの良さかなぁと思っています。
Posted by
最後の方はもう何が何だか分からなくなったけれど、それでもページを捲る手は止まらなかったです。 最初は普通に読めていたのに終わりに向かうにつれてあれ?と思い始めて急になんだか分からなくなったような感覚。 まだまだ読んでいない村田沙耶香さんの作品はあるので読みたいと思います。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
主人公も弟も、痛いほどに家族というものを求めている。 母親ならばこうあるべき、という社会に違和感を覚える主人公自身が、実はもっともその幻想に縛られ、家族を神聖視しているという皮肉。 家族を家族たらしめるものは血縁でも愛情でもなく、生活への工夫と現実(=日常)の共有という感覚はまっとうとも思えるが、やはりそれだけでは足りないようにも思う。 それは、主人公がいうところの、恋の麻酔が効いているうちの手術であっても、敬意であっても、立場であってもいいとは思うが、感情や家柄の縛りなしに、システムだけで家族を成立させるのは非常に困難。 そこに気付かず、神聖化された、家族というシステムだけを追い求めた結果、感情が取り残され、ラストの破綻まで突き進んだのではないか。
Posted by
