The Indifference Engine の商品レビュー
引用した『The Indifference Engine』以外にも 伊藤計劃氏の小説には 書き出しが印象的なものが多い。 ” まず、わたしの仕事から説明せねばなるまい。 必要なのは、何をおいてもまず、屍体だ。 ~『屍者の帝国』~” ” 泥に深く穿たれたトラックの轍に、ちい...
引用した『The Indifference Engine』以外にも 伊藤計劃氏の小説には 書き出しが印象的なものが多い。 ” まず、わたしの仕事から説明せねばなるまい。 必要なのは、何をおいてもまず、屍体だ。 ~『屍者の帝国』~” ” 泥に深く穿たれたトラックの轍に、ちいさな女の子が顔を突っこんでいるのが見えた。 まるでアリスのように、轍のなかに広がる不思議の国へ入っていこうとしているふうにも見えたけれど、その後頭部はぱっくりと紅く花ひらいて、頭蓋の中身を空に曝している。 それから十フィートと離れていないところに、こんどは少年が横たわっていた。背中から入った弾丸は、少年の体内でさんざん跳ね回ったあと、へその近くから出ていこうと決めたようだった。ぱっくりひらいた腹からはみ出た腸が、二時間前まで降っていた雨に洗われて、ピンク色にてらてらと光っている。かすかに開いたくちびるから、少しつき出た可愛らしい前歯がのぞいていた。まるでなにか言い残したことがあるとでもいうように。 ~長編『虐殺器官』の基となった『Heavenscape』~” 長編を読んでからになると 今作は寄せ集めの習作(デッサン)に近い。 漫画も書く多才な人だとは知らなかった。 お約束の、繰り返しは嫌い。 そんな自分でも 007を観てないことが悔やみたくなる。 新しい発見。けれども もう新作が読むことができないのは悲しい。
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Project Itohの最終作。なかなかにやりたい放題の短編集で楽しかった。最後の『From nothing, with love』が実にいい味を出している。死や意識といったものがテーマとなっていたのは、これが遺作であることと無関係ではあるまい。これでもう読めないというのが惜しい。本当に。
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気になってた作家さん。 なんという才能か、と圧倒的な筆力の前にひれ伏す思いです。 シュールで現実的で冷徹でありながらユニーク。ミニマムかつマキシム。 大風呂敷広げた書き出しから個人の内面まで掘り下げる書き方が得意なようですが、その手法にはちっとも無駄がなく、昨今ありきたりにあふれ...
気になってた作家さん。 なんという才能か、と圧倒的な筆力の前にひれ伏す思いです。 シュールで現実的で冷徹でありながらユニーク。ミニマムかつマキシム。 大風呂敷広げた書き出しから個人の内面まで掘り下げる書き方が得意なようですが、その手法にはちっとも無駄がなく、昨今ありきたりにあふれまくっている安直な外連味がなく、普遍的であり、でも異端でもあり、と…なんだろう。通常成り立たないはずの両極端の形容詞が成立してしまう不思議さ。 こんな人が夭逝してしまうなんて…惜しいという一言だけでは言い切れないくらい惜しい。 本の感想にはなってないですが、読み終わった今混乱してます。ほんとにすごい。
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From the Nothing, With Love. がイイネ。007シリーズが好きだから面白く感じたのかも知れないけれど。 屍者の帝国は実に楽しそうな、あぁそう来るんだと聞いちゃうような設定。 虐殺器官、ハーモニーときて次の解が提示されるかもという期待を持ってしまう。未完...
From the Nothing, With Love. がイイネ。007シリーズが好きだから面白く感じたのかも知れないけれど。 屍者の帝国は実に楽しそうな、あぁそう来るんだと聞いちゃうような設定。 虐殺器官、ハーモニーときて次の解が提示されるかもという期待を持ってしまう。未完で絶筆というのが残念。 引き継いだ円城塔の屍者の帝国を買って読むべきかなぁ
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9編もの短編が詰まった本書。 表題作 Indifference Engine は例によって暗鬱たる気分になるが、現代の問題を切り取った佳作。 個人的なお気に入りは、虐殺器官やハーモニーへの流れを汲む、ただまた違った世界観を描いた「女王陛下の所有物」〜「From the Nothi...
9編もの短編が詰まった本書。 表題作 Indifference Engine は例によって暗鬱たる気分になるが、現代の問題を切り取った佳作。 個人的なお気に入りは、虐殺器官やハーモニーへの流れを汲む、ただまた違った世界観を描いた「女王陛下の所有物」〜「From the Nothing, with Love」へと続くSFスパイもの。ワクテカがとまらない。
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伊藤氏の初期短編を中心とした作品集です。膨大なバックグランドがあって初めてあれほどの完成品が現れるのだということが当たり前のことながらわかりますσ(^_^;)
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「意識とは何か、自我とは何か」 という表題が作品を貫く。 私たちが今現在認識している世界は意識が創造した夢にすぎないかもしれないのだ。 円城塔が「死者の帝国」を引き継ぎ書き上げると宣言したが、 私にとっては彼の難解な文体は少し苦手なので読みたいか微妙なところ。 伊藤計劃の...
「意識とは何か、自我とは何か」 という表題が作品を貫く。 私たちが今現在認識している世界は意識が創造した夢にすぎないかもしれないのだ。 円城塔が「死者の帝国」を引き継ぎ書き上げると宣言したが、 私にとっては彼の難解な文体は少し苦手なので読みたいか微妙なところ。 伊藤計劃の作品は、彼よりはやわらかめな文学的表現もしつつ、論理的哲学的に構築された表現もあり、文章を呑みこめるか呑みこめないかの絶妙なラインをついてくるところがよい。 科学と哲学は表裏一体。SF作品を咀嚼しているとよく感じる。 この2つの思想は記っても切り離すことができない。
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短編集。屍者の帝国を読むにあたり予習も兼ねて読んでみた。 自己とか無意識とか、そういう思想に挑戦する姿勢が好き。円城さんもにた感じの姿勢を感じるのだけど、得意な手法は違う気がしていて、解説でやっぱりそう 思ったけど、果たして「帝国」はどうか。楽しみになってきた。 オマージュからの...
短編集。屍者の帝国を読むにあたり予習も兼ねて読んでみた。 自己とか無意識とか、そういう思想に挑戦する姿勢が好き。円城さんもにた感じの姿勢を感じるのだけど、得意な手法は違う気がしていて、解説でやっぱりそう 思ったけど、果たして「帝国」はどうか。楽しみになってきた。 オマージュからのファン・フィクションは芸術の母か。
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短編&コミック。 寄せ集め感は否めないが、表題作とFrom the Nothing,With Loveは面白かった。内面への切込み方や主人公の思考などが堪らなく面白い。ハーモニーでも描かれていた「意識」、そしてリベットの実験で証明された無意識の行動。この作品だけでも読む理由がある...
短編&コミック。 寄せ集め感は否めないが、表題作とFrom the Nothing,With Loveは面白かった。内面への切込み方や主人公の思考などが堪らなく面白い。ハーモニーでも描かれていた「意識」、そしてリベットの実験で証明された無意識の行動。この作品だけでも読む理由がある。 屍者の帝国は冒頭部のみの未完作。円城塔が仕上げた作品を是非読んでみたい。
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読み応え有る短編&コミック。 また繰り返し読みたくなるモノばかり。 007て余り見た事が無いのですが、これを機に 色々見てみようと。
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