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日本思想史新論 の商品レビュー

3.9

23件のお客様レビュー

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2024/04/28

TPP亡国論で一気に有名となった中野さんの日本思想史研究。これまでナショナリズム・国粋主義として注目度が下がっていた伊藤仁斎・荻生徂徠・会沢正志・福沢諭吉を読み直す。その革新はこれらの思想家の思想はたしかに皇統の存続による国民統合を意識していたが、行き過ぎたナショナリズムの危険性...

TPP亡国論で一気に有名となった中野さんの日本思想史研究。これまでナショナリズム・国粋主義として注目度が下がっていた伊藤仁斎・荻生徂徠・会沢正志・福沢諭吉を読み直す。その革新はこれらの思想家の思想はたしかに皇統の存続による国民統合を意識していたが、行き過ぎたナショナリズムの危険性も十分認識しており、巨大な理論に依拠するのではなく、状況に応じて適切な対応をきめるプラグマティズムが共通項であるというもの。

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2020/08/28

朱子学と古学を合理論と経験論へと類比した上で、後者をプラグマティズムとして解釈し、「健全な」近代ナショナリズムへと発展していったと論じている。その結論として、福沢諭吉は尊皇攘夷論者であるとしているのは通説を覆す論考ではあるが、尊皇攘夷の定義次第ではそう解釈できないと言えなくもない...

朱子学と古学を合理論と経験論へと類比した上で、後者をプラグマティズムとして解釈し、「健全な」近代ナショナリズムへと発展していったと論じている。その結論として、福沢諭吉は尊皇攘夷論者であるとしているのは通説を覆す論考ではあるが、尊皇攘夷の定義次第ではそう解釈できないと言えなくもない(一般的にはかなり無理があると思うが・・・)。 著者は思想史の専門家ではないし、全体的には著者の保守思想に合致するように牽強付会の説をなしていると言えなくもないが、読み物としては面白い。

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2019/05/04

消された系譜◆伊藤仁斎の生の哲学◆荻生徂徠の保守思想◆金沢正志斎の自由主義◆福沢諭吉の尊王攘夷 著者:中野剛志(1971-)〈経済ナショナリズム〉[東京大学教養学部→エディンバラ大学]京都大学大学院工学研究科准教授

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2017/05/08

面白かった。やはり歴史は単純ではないと確認した。色々な考えがあって良いと思う。他の本も読んでみたい。

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2017/11/29

伊藤仁斎、荻生徂徠、会沢正志斎、福沢諭吉の4人の思想を、プラグマティズムという観点から読みなおす試みです。 著者のプラグマティズムは、源了圓による近世思想史のうちに「実学」を見いだす試みを継承しています。ただし著者の専門は日本思想史ではなく国民経済なので、そうした側面から近世に...

伊藤仁斎、荻生徂徠、会沢正志斎、福沢諭吉の4人の思想を、プラグマティズムという観点から読みなおす試みです。 著者のプラグマティズムは、源了圓による近世思想史のうちに「実学」を見いだす試みを継承しています。ただし著者の専門は日本思想史ではなく国民経済なので、そうした側面から近世における経綸的実学思想を再発見しようとしています。 ふつう、こうした関心から近世思想史にアプローチするのであれば、鈴木正三や石田梅岩、あるいは本多利明や海保青陵といった思想家たちをとりあげるのが定石だと思われるのですが、著者はあえて丸山眞男の解釈に対抗するかたちで、古学と水戸学の内的なつながりを明らかにしていきます。仁斎については、彼の思想を「生の哲学」として読み解き、徂徠については伝統を重視する政治哲学を引き出してきます。そして狂信的な排外主義と見られがちな正志斎の『新論』を、当時の国際政治状況を踏まえたプラグマティックな政策論として読み解き、同じ思想が啓蒙思想家の福沢諭吉にも引き継がれていると論じています。 新書サイズの本なので、それぞれの思想家についてそれほどくわしい検討がなされているわけではないのですが、丸山の「つくる」と「なる」を対比する枠組みからの徂徠解釈や、子安宣邦の脱構築的な福沢解釈に対する著者の批判は、興味深いと感じました。また、プラグマティズムの観点から大胆な再解釈をおこない、日本近世思想史のアクチュアルな可能性を切り開くという本書の試みに、非常に刺激を受けました。もっとも、かつて山本七平や谷沢永一による日本近世思想史の当時アクチュアルなものとして受け取られた解釈が、今となってみれば村上泰亮や公文俊平らの文明論や日本的経営論の流行のもとで出てきたあだ花にすぎないことがはっきりしてしまったということもあったので、本書の解釈もあるいは反TPP陣営の恣意的解釈にすぎないという審判がくだされるということも、ないとは言いきれないのですが。

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2015/02/15

 幾度となく日本の危機的状況の時に語られてきた、「積極的に開国を行い、体制改革を行うべきだ」とする、所謂『開国物語』。ただし、開国物語のように実際には幾度となく惨憺たる結果を生み出してきたと著者は批判する。つまり、日本は開国物語なる呪縛に苛まれている状態だ。  このような呪縛を断...

 幾度となく日本の危機的状況の時に語られてきた、「積極的に開国を行い、体制改革を行うべきだ」とする、所謂『開国物語』。ただし、開国物語のように実際には幾度となく惨憺たる結果を生み出してきたと著者は批判する。つまり、日本は開国物語なる呪縛に苛まれている状態だ。  このような呪縛を断ち切るために必要な処方箋を、著者は会沢正志斎に代表される水戸学に求める。つまり尊王攘夷思想を単なる排外主義思想として見るのではなく、極めて周囲の情勢に現実的に対応すべく編み出されたプラグマティズムを見出そうとする。議論を追うための朱子学、古学(伊藤仁斎、荻生徂徠)、福沢諭吉の議論も概説しつつ、水戸学を読み解いていく、極めてスリリングな一冊。

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2014/11/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] 幕末の危機に際して、優れた国家戦略を構想した会沢正志斎。 尊王攘夷を唱えつつ、抜本的な内政改革を訴えた彼の『新論』はけっして無謀な排外主義ではなかった。 むしろそのプラグマティックで健全なナショナリズムに学ぶべきところは大きい。 正志斎の思想の秘められたルーツを伊藤仁斎、荻生徂徠の古学に探り、やがてその実学の精神が福沢諭吉の戦略思想に引き継がれていることを解明。 隠された思想の系譜を掘り起こし、現代日本人が求めてやまない国家戦略の封印を解き放つ。 [ 目次 ] 第1章 消された系譜―古学・実学・水戸学(開国イデオロギーの呪縛;開国までの歴史 ほか) 第2章 伊藤仁斎の生の哲学(尊王攘夷論の導火線;解釈学 ほか) 第3章 荻生徂徠の保守思想(徹底したプラグマティスト;方法論 ほか) 第4章 会沢正志斎の自由主義(古学が生んだ戦略家;古学と水戸学 ほか) 第5章 福沢諭吉の尊王攘夷(実学を重んじたナショナリスト;福沢諭吉の国体論 ほか) [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2014/09/10

―――――――――――――――――――――――――――――― 一般に誤解されているように、ペリーが何の前触れもなく浦賀沖に現れて、情報に疎く不用意な幕府を慌てさせたのではなかったのである。29 ―――――――――――――――――――――――――――――― 定信は、開国を覚悟してい...

―――――――――――――――――――――――――――――― 一般に誤解されているように、ペリーが何の前触れもなく浦賀沖に現れて、情報に疎く不用意な幕府を慌てさせたのではなかったのである。29 ―――――――――――――――――――――――――――――― 定信は、開国を覚悟していたのである。23 「主義」としては鎖国だが、「政策」としては開国というわけで、主義と政策が葛藤しているのである。24 「避戦か、攘夷か」であり、「開国か、鎖国か」はその目的のための手段に過ぎない。31 徳川幕府の基本政策が「避戦・開国」で、明治維新が「攘夷・開国」の具現化であるならば、敗戦後の日本が進んだ方向は、徳川幕府の「避戦・開国」に近いものであろうからだ。32 ―――――――――――――――――――――――――――――― 福沢が批判しているのは、日本の国体が「金甌無欠」であるという状態に満足し、その状態をもたらしている「働き」を看過するようなタイプの国体論者なのだ。 この「働き」こそ。福沢の文明論の最大のテーマである国民の独立心なのである。191 国体が失われるということは、国民が独立を失い、他国の支配を受けるということである。 裏を返せば、皇統の連続性が途絶したとしたら、それは国民が独立心を完全に失ったということの兆候である。 大事なのは国家の独立であり、それを支える国民の独立の意識である。そして、国民の独立心に支えられた国体は「金甌無欠」であり、その結果として、皇統は連続性を保つ。199 ―――――――――――――――――――――――――――――― 自由民主主義だけでは、自らの社会統合を実現することができない。 社会統合は、自由民主政治の前提として必要なのである。209 福沢の尊王論は、彼の自由主義と矛盾しない。それどころか、自由主義の前提条件として尊王が必要なのである。211 ――――――――――――――――――――――――――――――

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2017/10/25

タイトルからしてとっつきにくい印象を受けるが、本当はシンプルな内容。 保守が実用主義的な側面をもち、ひるがえって本書に直接的な言及はないものの 革新が理想(空想)主義的な側面を持っていることを確認したにすぎないように思った。 しかしそれを江戸期の思想史のレベルで行うことに意義があ...

タイトルからしてとっつきにくい印象を受けるが、本当はシンプルな内容。 保守が実用主義的な側面をもち、ひるがえって本書に直接的な言及はないものの 革新が理想(空想)主義的な側面を持っていることを確認したにすぎないように思った。 しかしそれを江戸期の思想史のレベルで行うことに意義がある。本書を読むために、仁斎のコトバを借りるのであれば血脈を理解する必要がある。それはあとがきにあるような筆者の国についての肌触り。 共感するかしないかによって、この本の好き嫌いがはっきりわかれるのだろう。 ただナショナリズムはプラグマティズムというか、現実世界に対する処方を起源とするのでれば、健全なナショナリズムこそが地に足をついた思想だという主張となりうることを思う。 ちなみに、私ならその場の過半が挙手をしたあとに、嫌だと思いながら手を挙げるタイプです。そして後で挙手したことを自分の中で一生懸命に正当化します。これが健全なナショナリズムかどうか、いつまでだっても自分では判断できないのです。

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2013/07/15

TPP問題を始めとした、昨今のグローバル化=幕末期の開国問題と定義。著者は当時を「避戦=開国」とした現代認識を批判。「攘夷=開国」→「古学」→「プラグマティズム」→健全な「ナショナリズム」を四人の思想家から見い出す。少し強引な気もするが、主張自体はとても面白い。

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