わたしの名は赤(上) の商品レビュー
「盲目とは悪魔や過ちが入り得ない至福の境地なのだ」 「巨匠たちは、細密画への情熱や色彩、そして視覚が神の闇から生じたことをよく心得ていて、色彩をもって神の闇へと回帰しようとしたのだ。記憶を持たない者には、神もその闇も思い出すことができない。名人たちの作品はどれも、時の流れからは外...
「盲目とは悪魔や過ちが入り得ない至福の境地なのだ」 「巨匠たちは、細密画への情熱や色彩、そして視覚が神の闇から生じたことをよく心得ていて、色彩をもって神の闇へと回帰しようとしたのだ。記憶を持たない者には、神もその闇も思い出すことができない。名人たちの作品はどれも、時の流れからは外れたあの色鮮やかな漆黒の闇を志向している」 「細密画とは知性の静寂であり、目の音楽である」
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イスタンブールに行きたくなる。 表紙の鮮やかさどおり、作品も極彩色。 翻訳も秀逸。 (2012.8)
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冒頭で殺人事件がおこり、犯人探しが主題になっているので、ミステリーだが、16世紀末のオスマン=トルコの情勢、細密画の絵師の世界が細かく描かれていて、歴史小説に分類。しかし、恋愛の駆け引きがその背景に絡まり、男たちが美しい女性にひきずり回される恋愛小説ともいえる。
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オルハン・パムク。 イスラム圏発のノーベル賞作家です。 殺人事件を下地にしていますが、なにより美しい文章でつづられる細密画の傑作と細密画師の言い伝えが素晴らしい。 海外文学はこういったまったく異なる文化や世界を見せてくれるのがとても好きです。 イスラム圏の文化にあまり馴染み...
オルハン・パムク。 イスラム圏発のノーベル賞作家です。 殺人事件を下地にしていますが、なにより美しい文章でつづられる細密画の傑作と細密画師の言い伝えが素晴らしい。 海外文学はこういったまったく異なる文化や世界を見せてくれるのがとても好きです。 イスラム圏の文化にあまり馴染みがないので、絵と偶像崇拝禁止の関係も興味深かったです。
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綺麗な装丁、ノーベル文学賞受賞作家による名作、などのキーワードが気になって購入。時代設定は江戸時代のちょっと前くらいの16世紀後半。あまりなじみの無いイスラム世界の時代小説なので、下巻の解説を先に読むと理解の助けになるかもしれないです。偶像崇拝が禁じられているイスタンブルで、皇帝...
綺麗な装丁、ノーベル文学賞受賞作家による名作、などのキーワードが気になって購入。時代設定は江戸時代のちょっと前くらいの16世紀後半。あまりなじみの無いイスラム世界の時代小説なので、下巻の解説を先に読むと理解の助けになるかもしれないです。偶像崇拝が禁じられているイスタンブルで、皇帝に仕える細密画の絵師たちをめぐるお話に、これまたイスラム世界ならではの倫理感・社会性の中での恋愛事情だったり、未亡人の身の振り方だったりがサブストーリーとして展開。独特の世界観・人生観の社会で、人々が本音と建前、社会に受け入れられるための通りの良いストーリーと事実とを上手に使い分けるさま、父親や夫、その親族など、後見人となる男性が居ないと事実上社会的に自分の意志で行動することが一切できなかった女性の生きざまなど、いろいろなテーマで、読むことができます。禁じられている西洋の遠近法などの技巧を用い、物語の挿絵・装飾の域を超えて偶像崇拝の禁忌すれすれの絵画そのものとして成立してしまいかねない、秘密の写本を皇帝直々の命令で描いていた名人の職人が、ある日殺され屍となって発見されます。その死を招いたのがほかでもない皇帝の秘密の写本であり、犯人は同じ写本制作に関わっていた名人なのでは、、、というフーダニットを横軸に、めくるめくエキゾジックな世界が描かれます。各章の語り手を名乗ったタイトルも印象的。抽象化された概念が一人称で語るという、不思議な章もあります。日本人にはあまり馴染みがないものの、実在の人や史実があちこちちりばめられているそうです。読み終わって、あぁぁぁそうだったのか!と、ハっとしました。なんとなく、今はもう無い浮世絵の職人とか、実在したけれど謎の人物である写楽とかを、思い出しました。読解力が足りなかった感があって若干不完全燃焼ですが、堪能して読了しました。面白かったです。
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ノーベル賞受賞の時にいくつか書評を読んで、気になっていた作家さん。初めて手にとってみたけど思った以上に読みやすくて面白い‼ ある装飾写本に関わる人々や物がかわるがわる一人称で語っていくのだけどどれも個性豊かで、イスラム世界の濃密な妖しさもふんだんでうっとり。 下巻も気になると...
ノーベル賞受賞の時にいくつか書評を読んで、気になっていた作家さん。初めて手にとってみたけど思った以上に読みやすくて面白い‼ ある装飾写本に関わる人々や物がかわるがわる一人称で語っていくのだけどどれも個性豊かで、イスラム世界の濃密な妖しさもふんだんでうっとり。 下巻も気になるところ、ゆっくり味わって読みます。
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