快感回路 の商品レビュー
性欲とはなんなのか。自分なりの答えを出したくて『オルガズムの科学』を読んでいたのだが、長いし専門的なワードが多く出てきて挫折。表紙に官能的なお姉さんがでかでかと印刷されていて外で読みづらいし……。 そんなこんなでこちらの本にたどり着いて、無事読破した。一部『オルガズムの科学』に出...
性欲とはなんなのか。自分なりの答えを出したくて『オルガズムの科学』を読んでいたのだが、長いし専門的なワードが多く出てきて挫折。表紙に官能的なお姉さんがでかでかと印刷されていて外で読みづらいし……。 そんなこんなでこちらの本にたどり着いて、無事読破した。一部『オルガズムの科学』に出てきた単語もあったのでやはり似ている分野の書籍は集中して色々読んでみるとスムーズだ。 性欲とは何かを探っていったさらに大きな問い、「快感とは何か」にまで踏み込んでしまったわけだが、(素人からしては)専門的なところもありつつ読みやすくてよかった。でも全体として思ったことは、まだまだ快感についてはわからないことが多いんだなと。 同じ著者のほかの書籍も読んでもっと自分の思考を深めたい。
Posted by
リンデンの叙述は非常に専門的でそれ相応の知的理解を求められる。 それゆえ快感という人間の原初的かつ不可分の概念を、現代科学が分かっていることとまだ分からないことを明確に区別させ、その発見の数々を辿る本著は見事な知的冒険に我々を導いてくれる。 報酬系の長期増強と長期抑制が人間にもた...
リンデンの叙述は非常に専門的でそれ相応の知的理解を求められる。 それゆえ快感という人間の原初的かつ不可分の概念を、現代科学が分かっていることとまだ分からないことを明確に区別させ、その発見の数々を辿る本著は見事な知的冒険に我々を導いてくれる。 報酬系の長期増強と長期抑制が人間にもたらす光と闇の面。 快楽が苦痛の反語ではないというのは、学者ならではの達見。 「生きている感覚」という漠とした人間の捉え方も、突き詰めれば快楽や苦痛の増減に思えてくるし、要はどれほど脳が感じ取られるかに帰着しそう。
Posted by
著者はデイヴィッド・J.リンデン氏。ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授、神経科学者。主に記憶のメカニズムの研究に取り組まれているようだ。 第1章 快感ボタンを押し続けるネズミ 第2章 やめられない薬 第3章 もっと食べたい 第4章 性的な脳 第5章 ギャンブル依存症 第6章 悪徳...
著者はデイヴィッド・J.リンデン氏。ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授、神経科学者。主に記憶のメカニズムの研究に取り組まれているようだ。 第1章 快感ボタンを押し続けるネズミ 第2章 やめられない薬 第3章 もっと食べたい 第4章 性的な脳 第5章 ギャンブル依存症 第6章 悪徳ばかりが快感ではない 第7章 快感の未来 脳内でどのように快を感じるのかと言ったメカニズム、薬剤名称、病症名などの専門用語が多く出ているため、その分野の通でないと、やや専門的すぎる感じを受けた。 しかしそれは飛ばし読み、動物が本能として持っている欲は、実は快を感じるが故のなせる業と言うことを、漠として読み進めていけば面白い。 各章のタイトルからも想像できるよう、ドラッグ、アルコール、高カロリー食、セックス、ギャンブル、更にはエクササイズや慈善行為に至るまで様々な刺激がもたらす快感に目を向ける。ある経験が、VTA(腹側被蓋野)のドーパミン・ニューロンを活動させ、その結果投射標的にドーパミンが放出されるときに、その経験は快いと感じられるようだ。 どのような刺激であろうと、またそれが美徳であれ悪徳であれ、人を依存的にさせる反復的行動に駆り立てるメカニズムは、神経学的には同じだと。 依存症の発症は本人の責任ではないかもしれないが、依存症からの回復は本人の責任と言う。意思の力ではどうにもならないことがあるが、どうにかなることもあるとも。 最後の章は未来はどのようになっているかについて考察している。 本書は2012年に発行されたため、既に未来の一部が過去になっている状態だが、相当先にはデバイスを使って快感をコントロール出来るようになるのではないかと述べる。コントロール出来たとしても、それが幸福につながるのか と思ってしまうのだが。 所詮、人間もネズミ等の動物も同じようなメカニズムで快感を受けると言うことは、やはり進化という糸で繋がっていることを示唆しているのだろうな。 色々と考えさせてくれた。
Posted by
人間の原理を解き明かす本。 本著で紹介される実験の一つに、内側前脳快感回路脳に電極が繋がれたラットは、それを作動させるスイッチを押し続ける。食事よりも優先し、それを求め続け、死に至る。ラットに留まらず、人間の男女に対しても、こうした実験が行われている。男性は同性愛者で、女性の映...
人間の原理を解き明かす本。 本著で紹介される実験の一つに、内側前脳快感回路脳に電極が繋がれたラットは、それを作動させるスイッチを押し続ける。食事よりも優先し、それを求め続け、死に至る。ラットに留まらず、人間の男女に対しても、こうした実験が行われている。男性は同性愛者で、女性の映像を見せながら快楽中枢を電気刺激した後、売春婦との異性愛に成功したというのだ。実験はチューレーン大学、ルイジアナ州検事の承認を得ている。脳は作り変えられ、性的指向は変える事ができた。 こうした快楽中枢を刺激し、脳を作り変える作用は、薬物やアルコールにも見られる。ランナーズハイ、過食、ギャンブル、性行為なども類似現象だ。つまり、快楽体験により脳が作り変えられ、程度の差はあれど、依存を引き起こす。程度の差が、それぞれの生活で与えられる個別の報酬、遺伝子的影響も受けながら、個々の行動を規定していく。 著者は神経科学者であり、数々の興味深い論文が紹介される。中には、男女の生殖器に測定器具を装着し、どのような性的映像に反応を示すかという、橘玲が『女と男 なぜわかりあえないのか』で紹介していた例の実験だ。女性が男性よりも幅広い映像に肉体的反応を示しながら脳が興奮を示さなかったのかは、映像のせいではなく、プレチスモグラフィのような器具を膣内に挿入される物理的刺激を受ける状況下にあるからだという考察や、同意せぬ性体験から身体を守るための作用だという見解付きだ。似たような論文紹介に対し、橘玲より、著者デイヴィッドの方が考察が深い。 遺伝子と環境がそれぞれに人格、人生を決定付けるとして、それらが複合的に、結局は快楽中枢の刺激経験を齎し、人はその刺激を求めて行動を繰り返す一面があるという事を、興味深く読んだ。人間は遺伝子や本能に操作される側面も確かにあるが、それらは単に我々が快楽中枢の奴隷である事の成立要件であり、そう考えると、快楽中枢を操るデータアルゴリズムは、脅威である。
Posted by
「依存は脳の問題」という、既にみんなが知っている事実について、快感経路にフォーカスしながら淡々と専門用語を使って述べていた…という印象です。「依存は脳の問題。では、どうすれば依存を抜けられるか?」という問いかけには、私が読んだ中では「依存性ビジネスのつくられかた」という本が一番参...
「依存は脳の問題」という、既にみんなが知っている事実について、快感経路にフォーカスしながら淡々と専門用語を使って述べていた…という印象です。「依存は脳の問題。では、どうすれば依存を抜けられるか?」という問いかけには、私が読んだ中では「依存性ビジネスのつくられかた」という本が一番参考になりました。
Posted by
原題は、『THE COMPASS OF PLEASURE』快感の羅針盤(方位磁石)とでも訳されるのだろう。”気持ちよさ”を感じるメカニズムを知ることができる本。薬物、摂食、性的な行動、ギャンブル、瞑想等、様々な快感について興味深い解説が得られるとても刺激的な本。 依存症のメカニズ...
原題は、『THE COMPASS OF PLEASURE』快感の羅針盤(方位磁石)とでも訳されるのだろう。”気持ちよさ”を感じるメカニズムを知ることができる本。薬物、摂食、性的な行動、ギャンブル、瞑想等、様々な快感について興味深い解説が得られるとても刺激的な本。 依存症のメカニズムも興味深く、誰もが依存症になる可能性があるという。つまり、依存症になるのは意志の強弱という自分の落ち度ではなく、ある条件が揃えば誰でもなり得るものだということ。そして、依存症からの脱却は本人の意志で行うことなのだそうだ。 実験から得られたデータをもとに、快楽の仕組みを解き明かしてきた著者は最後に未来を想像している。体内にナノボットを注入したり、光学的な働きを取り入れニューロンを操作して、快感を意図的に生み出せる社会が来るかもしれないと。 人間を生物学的に観察したとき、快感と感じるときに何をしていたかを、観察することで明確になる。その快感の報酬を得られたものが何かがわかれば、日々の習慣を変えることが、できるようになる。生物として、長い歴史の中で進化してきた本能を理解することは、とても有意義なことのように思える。
Posted by
来ると信じていた期待が外れた時の気分の落ち込み、棚からぼたもちの喜び、1か0か結果が出るまでわからない時の高揚感、その時私たちのからだの中では何が起こっているのか。とても興味深く面白い話でした。
Posted by
脳科学者が解説する脳内の快感回路(報酬回路)のメカニズム。 やや事例紹介に重きをおいた構成で、今後の展望などの論旨展開が乏しいと感じた。 もちろん、事例はどれも大変興味深い(ギャンブルに快感回路が発火するサルの実験など)。 多くの方が興味を惹かれるであろう「性的な脳」では、前段...
脳科学者が解説する脳内の快感回路(報酬回路)のメカニズム。 やや事例紹介に重きをおいた構成で、今後の展望などの論旨展開が乏しいと感じた。 もちろん、事例はどれも大変興味深い(ギャンブルに快感回路が発火するサルの実験など)。 多くの方が興味を惹かれるであろう「性的な脳」では、前段のヒトだけが特殊ではなく動物も様々な性癖(同性婚、意趣婚、死姦まで)を持っていることに驚かされた。 人間だけが、罪深い存在ではないのですね。
Posted by
★科学道100 / まるで魔法 【所在・貸出状況を見る】 http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=11200298
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
2012年刊。◆薬物(煙草、アルコール等も含む)、SEX、肥満、ギャンブル。人が嗜癖するものは多数あるが、その嗜癖の脳内機序を明らかにし、さらに直近の知見をも付加する本書。◆SEXやギャンブル、薬物に惹かれ、あるいは依存する機序は、多くの既刊の関連書籍があって目新しくはない。が、「有用性が…なく、抽象的な、知識のための知識…が快感/報酬回路を働かせる」「観念…は依存的薬物と似たところがある」「生来の快感は、経験によってもっと複雑な現象へと変容させられる」等、興味深い新知見も紹介する。一読の価値は高い。 加えて、将来像の中で、社会経済、法的システムと快感回路の調査・検討・抑制のテクノロジーとの関係が触れられている点も興味深い(本書で結論は出していないが)。依存症を疾病的なものと見るか、自己責任逸脱・堕落と見るかが問われていのだろうが、慎重な考察が必要なのは間違いない。
Posted by