戦友の恋 の商品レビュー
読み終わってすぐ、もう一度読んだ。 淡々と語られる、大島真寿美の文章は心地よい。 1行目にして“生前”という単語が出てくる、亡き友を偲ぶ物語だ。 親友の玖美子の他にも、別れや、別れの予感のようなものに満ちている。 元彼、すなわち、既に別れた人との食事。 親友との思い出の場所の...
読み終わってすぐ、もう一度読んだ。 淡々と語られる、大島真寿美の文章は心地よい。 1行目にして“生前”という単語が出てくる、亡き友を偲ぶ物語だ。 親友の玖美子の他にも、別れや、別れの予感のようなものに満ちている。 元彼、すなわち、既に別れた人との食事。 親友との思い出の場所のオーナーは、病に倒れ、入退院を繰り返し、確実に弱っているように思われる。 それに伴い、想い出のその店も、なんとなくもう潮時を迎えていそうな… 逆に、死んだと思っていた音信不通の人がひょっこり現れたり、偶然、幼なじみに再会したり。 平凡な一日は、しかし健やかな一日でもあり、友の死につづける世界の中で、ヒロインは毎日生き続ける。 毎日が繰り返されるという事は、今日が終わり、明日が再生されること。 輪廻転生のように、新しい若い人たちに、かつての自分と戦友を見る。 喪失と再生の物語だ。 ちょっと気の毒だったのが、玖美子の後を引き継いで、担当になった編集者、君津。 ちょっと、この作品の中では場違いに元気が良く、感情もはっきりしている。 ある意味、異端分子? 良いアクセントを添えているのだが、しかし完全なつなぎの立場だった(笑) そんな君津も成長した。 良い作品でした。 あと、佐紀が食べる、漬物やお魚といった和風ご飯が何気にとても美味しそう。 リズのぺペロンチーノもにんにくの香り立つようで食欲をそそる。
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漫画原作者である佐紀(あかね)はデビューより共に戦ってきた編集者の玖美子を突然の死により失う。喪失した中でスランプにおちいり、淡々と日々をこなす佐紀が、幼馴染、新しい編集者、元彼などと接し、何気ない穏やかな毎日をすごすことで、徐々に緩やかに立ち直っていくお話。喪失やスランプがあっ...
漫画原作者である佐紀(あかね)はデビューより共に戦ってきた編集者の玖美子を突然の死により失う。喪失した中でスランプにおちいり、淡々と日々をこなす佐紀が、幼馴染、新しい編集者、元彼などと接し、何気ない穏やかな毎日をすごすことで、徐々に緩やかに立ち直っていくお話。喪失やスランプがあったとしても人間は生き続ける。立ち直るのに、特別なことがあるわけではなくて。何気ない日々の生活を描かせたら、大島さんに勝る人はいないのではないだろうか。酸いも甘いも知った年だからこそ、その中であきらめの心境もあり、複雑なんだけど、これが大人というものなのかなと思う作品でした。連作短編集。
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変わってしまったかつて行きつけのライブハウスで、自分の歴史を知らない若い女子の横に座り、変わってしまった味のペペロンチーノを食べながら、昔の思い出に耽る。この年取った感がいい。戦友のような友人を突然亡くしてからの日々が淡々と綴られる本書。生きてる彼女は年を取るのだ。優本!
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巻末に添えられた北上次郎さんの解説の一行が物語る…完璧で美しく、静かで力強く、、の見事な時間の経過、時の流れ、、玖美子と一緒に年を重ねる佐紀と単独のあかね。頁内の幾つかの言葉が突き刺ささってくる作品と違い、こんなに頁毎にしんなりと溶け込んでくる作品も珍しい。ほんのり軽いエッセイ感...
巻末に添えられた北上次郎さんの解説の一行が物語る…完璧で美しく、静かで力強く、、の見事な時間の経過、時の流れ、、玖美子と一緒に年を重ねる佐紀と単独のあかね。頁内の幾つかの言葉が突き刺ささってくる作品と違い、こんなに頁毎にしんなりと溶け込んでくる作品も珍しい。ほんのり軽いエッセイ感も漂わせながら…リズに行きたくなる♪
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ある女性が、大切な人を失った喪失感から、立ち直っていくお話なんだけど、その大切な人が、恋人ではなく肉親でもなく、友人でもない。そう、戦友なんである。 この表現、距離感。心得てるな~。 立ち直っていく過程も、劇的なことがおきるのではなく、どちらかというと、地味に淡々と日々を過ごして...
ある女性が、大切な人を失った喪失感から、立ち直っていくお話なんだけど、その大切な人が、恋人ではなく肉親でもなく、友人でもない。そう、戦友なんである。 この表現、距離感。心得てるな~。 立ち直っていく過程も、劇的なことがおきるのではなく、どちらかというと、地味に淡々と日々を過ごしている。このリアルさなんですよねー。 ピエタの慎とした、凛とした感じも好きだけど、本作の方がより身近な印象を受けた。 が、ラストが??な終わり方。
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仕事の、そして私生活でも、 かけがえのない友達を喪ったところから 始まる。 友達が「死につづけている世界」で「生き続ける」私の 物語。 かけがえのない人がいなくなった世界でも、 忙しかったり、スランプになったり、 その底辺に流れる日常の生活、出会い、再会、 変わっていく気持ち、育...
仕事の、そして私生活でも、 かけがえのない友達を喪ったところから 始まる。 友達が「死につづけている世界」で「生き続ける」私の 物語。 かけがえのない人がいなくなった世界でも、 忙しかったり、スランプになったり、 その底辺に流れる日常の生活、出会い、再会、 変わっていく気持ち、育っていく感情・・・。 生きてゆく・・・ということは、大変だけれど、 美しくて、愛しいことだなぁ・・・と ラストを読んでしみじみと思った。 ふつうの生活を、もっと愛したくなる 好きな作品が、またひとつ増えた。
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”完璧な小説だ。”とは北上次郎さんの文庫解説の冒頭の文。 これは単行本の時の感想で、装丁・挿画・造本等はこの原稿を書いている文庫版がどうなるかは判らない。と書いている訳だが、この文庫は「北上さんの解説まで含めて完璧」だ。 漫画原作者の主人公佐紀と同年齢の編集者玖未子との関係を描い...
”完璧な小説だ。”とは北上次郎さんの文庫解説の冒頭の文。 これは単行本の時の感想で、装丁・挿画・造本等はこの原稿を書いている文庫版がどうなるかは判らない。と書いている訳だが、この文庫は「北上さんの解説まで含めて完璧」だ。 漫画原作者の主人公佐紀と同年齢の編集者玖未子との関係を描いた小説だが、実は冒頭から仕掛けが施されている。 六話の連作短編の中で時間は過ぎ行き、あっというまの20年前後を描いている。 話の終らせ方が実に巧みで、短編にありがちな「それからどうなった?」と思わせないところがいい。それでいて、解説によれば「それから」が描かれた小説もあるらしいからニクイな。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
人から見たら、いや自分でだって、なんてことない毎日を送っている だけど、知らない間に、頑張っていたりして、疲れちゃうこともある それでも、1日1日すこやかに生活をしている佐紀の姿がいとおしい 連作短編で、1章づつが短く、読みやすい文章で とても好きな小説でした
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大島真寿美さんは本当に素敵。「ピエタ」とは違う着地点で、この作品があったから、「ピエタ」が生まれたのだと思う。大島さんが描く女性というのは、喪失感やコンプレックスを持っていて、けれど、それがすべてではなくて、きちんとそういう「人生の重み」というものを持っている上で、時に明るく、時...
大島真寿美さんは本当に素敵。「ピエタ」とは違う着地点で、この作品があったから、「ピエタ」が生まれたのだと思う。大島さんが描く女性というのは、喪失感やコンプレックスを持っていて、けれど、それがすべてではなくて、きちんとそういう「人生の重み」というものを持っている上で、時に明るく、時に真面目に生きている。だから尊敬できる。人生ってそんなもんだよなって頷ける。 小説と料理とは似ていて、どうにも僕も、こういう出汁の効いた作品が好きになるだけの歳月を、それなりに過ごしてきたみたいだ。
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23歳、漫画原作者の佐紀にとって大事なパートナーだった同い年の編集者、石堂玖美子が急逝した。「新人同士一緒に頑張ろう。一泡吹かせてやろうよ」。打ち合わせと称して二人で酒をぐだぐだと飲んだり、恋の悩みを打ち明けたり。仕事が順調で、これからさあ駆け上がっていくぞという時の悲しい出来事...
23歳、漫画原作者の佐紀にとって大事なパートナーだった同い年の編集者、石堂玖美子が急逝した。「新人同士一緒に頑張ろう。一泡吹かせてやろうよ」。打ち合わせと称して二人で酒をぐだぐだと飲んだり、恋の悩みを打ち明けたり。仕事が順調で、これからさあ駆け上がっていくぞという時の悲しい出来事。スランプに陥る早紀。そんななか、幼馴染の木山達貴と20年ぶりに偶然再会する。再会を心から喜ぶ彼女は思う。「悪いことばかりじゃないんだから、いいことだってあるんだから」。悲しみを乗り越えてゆっくりと前へ進んでいく。 『青いリボン』もそうだったけど今回もう~んって感じでした。『虹色天気雨』のような大勢の人を巻き込んでわちゃわちゃするにぎやかな作品のほうが僕は好きなようです。
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