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バナナの世界史 の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2012/05/18

バナナの歴史、とりわけ生産国に対してアメリカ企業がやったあり得ない悪事の数々、そしてバナナという種の危機についての話。 チョコレートもそうだけど、この手の途上国の大規模プランテーションは、黒歴史過ぎて唖然としてしまう。バナナ会社が、生産国の政治に関与し、気に食わないことがあれば軍...

バナナの歴史、とりわけ生産国に対してアメリカ企業がやったあり得ない悪事の数々、そしてバナナという種の危機についての話。 チョコレートもそうだけど、この手の途上国の大規模プランテーションは、黒歴史過ぎて唖然としてしまう。バナナ会社が、生産国の政治に関与し、気に食わないことがあれば軍隊を出し、意に沿わない大統領はお得意のPR作戦で失脚させ、労働者を奴隷のように働かせ、不当に安く仕入れてきた。 一方、実はバナナに危機が迫っているというのは初耳だった。 バナナには種がない。クローンで増えるが故に、遺伝子の多様性が失われ、病気に滅法弱い。 実際、戦前売られていたグロスミッチェルという種は、病気にやられて全滅した。 では、バナナはどのうように品種改良されるのか?ごく稀にできる種を、膨大なバナナの中から探すのだ!信じ難く辛抱強い作業だ。 我々デザートバナナの消費者にとっては、バナナなんて、なくなって淋しいかもしれないが、困らない。 ところがバナナは、米より小麦より、多くの人を支える食糧なのだとか!特にアフリカでは、バナナの病気が飢饉に直結する程の事態を引き起こす。 だから、バナナの品種改良は、とても重要なミッションなのだ。これも全然知らなかった。 たかがバナナ、と思えること自体が、贅沢の象徴なのだ。 我々贅沢側の人間が、遺伝子組み換えが気持ち悪いから嫌、と思ってしまうその根拠についても、深く考えさせられた。

Posted byブクログ

2012/08/09

<甘いバナナが辿ってきた、甘いばかりではない歴史> 手軽に食べられる人気の果物、バナナ。アメリカ人の年間消費量は何と1人あたり100本なんだそうだ。 ここまで驚異的に広まった陰には、大量生産と輸送の仕組み作りがあり、黒い歴史があった。 そしてバナナは今、病気による消滅の危機にも...

<甘いバナナが辿ってきた、甘いばかりではない歴史> 手軽に食べられる人気の果物、バナナ。アメリカ人の年間消費量は何と1人あたり100本なんだそうだ。 ここまで驚異的に広まった陰には、大量生産と輸送の仕組み作りがあり、黒い歴史があった。 そしてバナナは今、病気による消滅の危機にも瀕している。 歴史的・政治的な見地とともに遺伝学的な解説も紹介し、バナナのこれまで、そしてこれからを、多角的に探る。 大まかには時系列で綴られるが、大きな章の中に、トピックスごとにまとめられた数ページの小さいセクションがあり、読みやすい作りになっている。 筆致は落ち着いている一方、雑学的な知識もちりばめられ、飽きることなくバナナの歴史を俯瞰できる。 聖書の「禁断の実」は、一般にはリンゴということになっているが、実はバナナだったという説もあるという。エデンの園が中東にあったとするならば、バナナの生育には適しており、逆にリンゴは滅多に見られない。バナナとイチジクの呼称の混乱などの話も興味深く、「禁断の実=バナナ説」、個人的には説得力を感じた。 バナナの黒い歴史の最たるものは、「バナナ共和国」とも呼ばれた中南米の国々と巨大企業の関わりだろう。 バナナには料理用のものとデザート用のものがあるが、栽培が爆発的に広まったのはデザート用のものの人気が高まったためだ。 バナナ・プランテーションの労働環境は劣悪で、農薬散布による健康被害も甚大だった。バナナの病気が発生すると、大量に農薬を撒き、手に負えなくなると別の地に移動する、といったことを繰り返したため、土地の荒廃も進んだ。 『百年の孤独』中に出てくる虐殺事件は、バナナ労働者のストライキに対する実際の事件をモデルとしているのだそうだ。グアテマラの政変の陰でチキータ・ブランドのユナイテッド・フルーツ社が何らかの役割を果たしたのも確かなようだ。 バナナが食べやすい理由の1つは、種子がないことだ。だが、種子がない=不稔性である=品種改良が困難であることを意味する。掛け合わせて種子を取り、さらに好ましい性質のものを選び取るという通常の品種改良の手段が使えない、もしくは非常に時間が掛かる。 現在市場に出回っているのはキャベンディッシュと呼ばれる種だ。かつて人気だったグロスミッチェルが姿を消したのは病気のせいだが、このキャベンディッシュもまた病害に晒されている。絶滅まではさほど長くないと見る専門家もいる。 伝統的な品種改良の試みが成される一方、遺伝子操作で病気に強いバナナを作ろうとする研究者もいる。だが、遺伝子組換え作物に対する嫌悪感はなお強い。 バナナの辿った負の歴史を繰り返すことなく、人々に愛される新たなバナナの品種は生まれるのだろうか。 巻末のバナナ年表が本書をよく総括していて秀逸。 *「バナナ・リパブリック」というファッションブランド、昔、友人が好きだったのだが、「バナナ共和国」にこんなきな臭い意味があったとは。 *アフリカ難民キャンプへの継続的な食糧支援として、その風土にあったバナナを植えようという、ベルギー研究者のスウェンネンの話が印象に残る。 *訳者の略歴中の主な訳書に、ジョナサン・サフラン・フォアの『イーティング・アニマル-アメリカ工場式畜産の難題(ジレンマ)』が挙げられている。サフラン・フォアと言えば、『ものすごくうるさくてありえないほど近い』の著者。題名からすると、アメリカの食糧問題についての本みたいだが、こんな本も書いていたのか。 *バナナゲノムが解読されたとのこと Nature Volume:488, Pages:213–217 Date published: (09 August 2012) The banana (Musa acuminata) genome and the evolution of monocotyledonous plants

Posted byブクログ

2012/02/12

現在、自分たちが気軽に食べられ、世界中の人々が食している作物がどのような経緯・企業のエゴ・問題と絡んでいるかを知り得た良い書籍だと思う。 この書籍に記述されている歴史を軽視することは過去のバナナに関わった方々や現在研究中で苦しい思いをしている人々に対して比例当たるのではないだろ...

現在、自分たちが気軽に食べられ、世界中の人々が食している作物がどのような経緯・企業のエゴ・問題と絡んでいるかを知り得た良い書籍だと思う。 この書籍に記述されている歴史を軽視することは過去のバナナに関わった方々や現在研究中で苦しい思いをしている人々に対して比例当たるのではないだろうか。 バナナに限らず、自分たちの口に入るものは裏で誰かが苦心惨憺な思いをしていることを念頭に入れるべきであろう。

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2012/01/25

 ジャガイモより消費量が多く、世界でもっとも食べられている果物=バナナと、人類の知られざる関係を明らかにした大作。大のバナナ好きの著者が、現在私たちが口にしている「キャベンディッシュ」という品種のバナナが絶滅の危機に瀕していると知り、世界中を取材して歩くうちに出会った、知られざる...

 ジャガイモより消費量が多く、世界でもっとも食べられている果物=バナナと、人類の知られざる関係を明らかにした大作。大のバナナ好きの著者が、現在私たちが口にしている「キャベンディッシュ」という品種のバナナが絶滅の危機に瀕していると知り、世界中を取材して歩くうちに出会った、知られざるバナナの歴史と世界に導くノンフィクションが登場した。  バナナは、人類初の農村が栽培していた果物で、人間とは1万年以上の共生を保ってきた、文字通りなくてはならない果物。しかしながら、19世紀のアメリカでバナナの人気に火が点いてからは、中米には大規模なバナナ農園が誕生し、その産業に依存する形で、文化が変えられ、内戦が起き、多くの血が流れた。中米の国を「バナナ・リパブリック」=バナナに依存する国、と呼ぶのはそうした歴史があるため。つまり、バナナの発展と、企業のエゴに満ちたアメリカのグローバリズムは切っても切れない関係にあるのだ。  人類の歴史を変えた果物・バナナの数奇な物語を、「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」や「ナショナル・ジオグラフィック」に寄稿する科学・自然ライターの著者が、精緻な歴史的考察と多彩なフィールドワークとをもとに鮮やかに記す。バナナという身近な食べ物の歴史と生態を通して、人間の進化とグローバリズムのエゴイズムを描き出し、新種開発に挑む科学者たちの必死の攻防をスリリングに描いた、歴史ファン、バナナファン必読の書。

Posted byブクログ