卵をめぐる祖父の戦争 の商品レビュー
煉瓦本に近い、頁数、2段組み。 読み応えありすぎ。 だが、本人はもとより、当初から相棒としてメインキャストになっているコーリャのキャラの濃さ、下ネタ満載の語りが引っ張る。 全米30万部を超える大ベストセラーだそうな・・日本人としてはそう面白いとは思えなかったのが正直なところ。やっ...
煉瓦本に近い、頁数、2段組み。 読み応えありすぎ。 だが、本人はもとより、当初から相棒としてメインキャストになっているコーリャのキャラの濃さ、下ネタ満載の語りが引っ張る。 全米30万部を超える大ベストセラーだそうな・・日本人としてはそう面白いとは思えなかったのが正直なところ。やっぱり、国民性の違いだろうね。 とはいえ、舞台となっている時代背景が独ソ攻防で歴史に名を遺すレニングラードである。 映画で見た事しか知識がない私に取り、底流に流れるユダヤ系ロシア人の考え、生活、周囲を取り巻く「他」民族と摩擦などは面白い。 巻末の解説を読まなくあ分からないのが「当作品は全くのフィクション」という事。 もっとも史的事実を踏まえての事だが、筆者の祖父はアメリカ生まれだし、筆者と語り合う前に早逝しているとか・・笑えるとはいえ、ノベライズの才能は認めてしまう。 伝えんとしたメッセは【戦争の愚かさ】 そして若さの持つ無限の可能性・・悪へも善へも走り得る存在。 ナチスもソ連(のちのロシアも)大義名分を掲げ、理想に邁進する姿は「虚構」であるのかもしれないが、多くの命が踏み砕かれて行ったのは事実だもの。
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「心配するな、友よ。きみを死なせはしない」 まだ十七だった。愚かだった。だから彼を信じた。 ナチス包囲下のレニングラード。ドイツ兵の死体からナイフを盗んで捕まったレフは、脱走兵コーリャとともに大佐の娘のために卵の調達を命じられる。 美形で饒舌なコーリャと、神経質なレフのコンビが面白いものの、あまりにも下ネタが多すぎるのと、17歳主人公の一人称が“わし”なのが気になる。パルチザンと行動を共にしてドイツ兵に捕まる展開はわくわくしたし、卵も無事手に入れたけど、コーリャとの別れがあっさりしていて残念。もう会えないと思っていたヴィカと再会し、冒頭に出てくるパワフルな祖母だとわかるラストはとても良い。
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悲惨な戦争の描写もあるが比較的読みやすい。 過酷な状況の中で生きていく当時の人々の様子が思い浮かぶような作品でした。
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祖父の戦時中の体験を取材し回想として語られる。 第二次世界大戦の戦時下。 ナチス包囲下のレニングラードに暮らしていた17歳の頃の祖父。 ことの発端はある日、撃墜されたドイツ爆撃機から落下傘で脱出したドイツ兵が落ちてくるのを発見する。 しかし、ドイツ兵は既に死んでいた。 その...
祖父の戦時中の体験を取材し回想として語られる。 第二次世界大戦の戦時下。 ナチス包囲下のレニングラードに暮らしていた17歳の頃の祖父。 ことの発端はある日、撃墜されたドイツ爆撃機から落下傘で脱出したドイツ兵が落ちてくるのを発見する。 しかし、ドイツ兵は既に死んでいた。 そのドイツ兵が身に付けているものを漁っているとソ連軍に捕まる。 秘密警察の大佐に呼び出されると、翌週に控えた娘の結婚式で作るウェディングケーキを作るために卵が足りないという。 飢餓が続く状況下で卵を探す旅が始まると。 戦時中の狂った地獄の描写が実に惨たらしいが、陰鬱さよりも淡々とした印象が強い。 戦争の愚かさが行間から滲み出る一冊でした。
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読んでよかった。タイトルはダサいがピッタリとハマったタイトルでもある。詩的な部分も感じるがとても読みやすい
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語り手のレフが17歳の時、独ソ戦の最中に親友と出会い、卵を調達する特別任務を大佐から与えられ、その先で彼女に出会った時の話。 独ソ戦という悲惨な戦争の描写の中にも、ユーモアや生命力(下ネタ)をふんだんにちりばめ、人間の愚かさと強さという真逆の要素がストーリのコントラストになって...
語り手のレフが17歳の時、独ソ戦の最中に親友と出会い、卵を調達する特別任務を大佐から与えられ、その先で彼女に出会った時の話。 独ソ戦という悲惨な戦争の描写の中にも、ユーモアや生命力(下ネタ)をふんだんにちりばめ、人間の愚かさと強さという真逆の要素がストーリのコントラストになっている。
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第二次世界大戦中のロシアで、 おしゃべりな脱走兵と卵1ダースを探す話。 あらかじめ言っておくんだけど、 これは褒め言葉なんだけど、理解に苦しむ。 想像を絶する飢餓や残酷な仕打ちも、 娘の結婚式のために卵を調達せよという任務も、 たった数ヶ月で何もかも変わってしまうのも、 1秒...
第二次世界大戦中のロシアで、 おしゃべりな脱走兵と卵1ダースを探す話。 あらかじめ言っておくんだけど、 これは褒め言葉なんだけど、理解に苦しむ。 想像を絶する飢餓や残酷な仕打ちも、 娘の結婚式のために卵を調達せよという任務も、 たった数ヶ月で何もかも変わってしまうのも、 1秒で、右手の人差し指だけで、 ひとつの未来が永遠に失われてしまうのも、 とんでもない不平等も、 そんな状況下でかわされる軽口も、 平和な日本で暮らしている我々には 意味がわからない。 でも、理屈で説明できない不条理の集合体、 それが戦争なのかもしれない。 でも、決して暗い話ではないのだ。 読者みんなが求めていたあたたかい結末のおかげで 失ったものは大きかったけど脅威は去って、 ほっとする読了感。 そして、登場人物が“被害者”ではなく“人間”として 描かれているからというのもあると思った。 恋したり、喜んだり、どうでもいいこと考えたり。 主人公レフの考え事は、なんていうか平凡で、 ちょっと、かなり、チェスがうまいけど、 特別なThe主人公じゃないから、 同じ人間だって強く感じる。 少年と青年の狭間の、等身大の悩みとか、 背伸びしたい気持ちとか、戦争っての抜きにして、 年下の男の子をみるほほえましさを感じる。 コミカルな相棒、魅力的な狙撃手、 登場人物みんな素敵だ。 個人的には読書って、 何も得られなくってもよくって、 楽しければそれでよくって、 そういうエンターテイメントの目線でも 十二分に楽しめた。 戦争の話って、 「こんな可哀想な目にあってる哀れな被害者がいるんです」 「国家や軍人って酷いですね、悪ですね」みたいな 政治的立場(?)を明確にしたものが 多い気がするんだけど、 この作品ではもっとドライに、 ひとりの人間の人生の一部分(たった1週間)を シンプルで個人的な事実として書いているから、 ましてリアルだと感じた。 飢餓も恐怖も死もただ一種類の日常で、 そういう日常が事実存在してて、 その種類の日常に身を置いている 同じ人間がいましたって、 たんたんと書くからなおのことささった。 この本を今読んだのは全くの偶然なんだけど、 意味があるように感じた。 ひとつのありうる出来事として ニュートラルに戦争を考えてみても、 やっぱり喜ばしくないよなあ。 勝ったって負けたって関係なく嫌だよなあ。 明日、いや、今日この瞬間、 自分や大事な人が死ぬかもしれないなんて。 世界のみんなの幸せの総量が多くなる方がいい。 だとしたら戦争は悪手だ。 みんながそうやって選択してくれればいいのに。 難しいのかな。そうであればいいのにな。
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レニングラード、スターリングラード、「ソビエト連邦」を作った「革命家と独裁者」の名前を付けた二つの町と、革命、その後の戦争。 レニングラードはロシア帝国時代ピョートル大帝(一世)により建設された帝都で文学や音楽の豊かな文化都市。 大帝にちなんでサンクトペテルブルグと呼ばれていた...
レニングラード、スターリングラード、「ソビエト連邦」を作った「革命家と独裁者」の名前を付けた二つの町と、革命、その後の戦争。 レニングラードはロシア帝国時代ピョートル大帝(一世)により建設された帝都で文学や音楽の豊かな文化都市。 大帝にちなんでサンクトペテルブルグと呼ばれていたが、革命時に首都のモスクワ移転とともに革命家レーニンの名がつけられた。 第2次世界大戦では2年半にわたるドイツ軍による徹底した包囲網と砲撃でロシア市民を含めた死者は100万人ともいわれるが、その大半が“餓死”という。 「市を消滅せよ」というヒトラーの命令と、市民を「人間の盾」として監視し弾圧を強める赤軍とのはざまで、なすすべもなくさまよう人々。 作中でも、市民の悲惨な状態がストレートに描かれている。 戦争をじかに体験した世代から薄れゆく世代への語り継ぎの物語として、こうした“聞くもおぞましい”現実を、若者二人の「ロードムービー」として描くことでバランスよく読者に語りかけてくる。 そこで「卵をめぐる祖父の戦争」というタイトル……優れた邦題である。 いっぽうのスターリングラード、ロシア帝国時代は南のタタールに備える要塞都市のひとつであったが革命戦争時に大きな戦いがあり、その後社会主義の象徴として工業化を進めた都市で、当時の独裁者の名がつけられている。 1942年8月から約6か月にわたる激しい攻防戦が繰り広げられ、同名の映画にもなっているが、この物語には関係ない。 ソビエト崩壊後の現在、スターリングラードは消滅(一部ヴォルゴグラードとして残る)し、レニングラードはふたたび「サンクトペテルブルグ」として生き残った。 ……文明は滅びても文化は残る。
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どういうわけか、タイトルだけ見て遺伝子操作に絡むSFだと勝手に思い込んでいて、数ページ読んでビックリ!全く違うお話みたい。 ただお話し自体はストレートで分かりやすく、類型的ではあるが楽しめます。 もっともらしく書けば戦争の悲惨さやら、人間の業の深さやらとシリアスなことも書ける...
どういうわけか、タイトルだけ見て遺伝子操作に絡むSFだと勝手に思い込んでいて、数ページ読んでビックリ!全く違うお話みたい。 ただお話し自体はストレートで分かりやすく、類型的ではあるが楽しめます。 もっともらしく書けば戦争の悲惨さやら、人間の業の深さやらとシリアスなことも書けると思うが、レフとコーリャとヴィカの個性満載3人組の青春ロードノベルとして正に一気読みの楽しさでした。
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※このレビューにはネタバレを含みます
歴史が苦手な私が第一次世界大戦から第二次世界大戦の背景をちょっぴり齧った状態で読むのにちょうど良い具合の本でした。 ストーリー自体に複雑な点はないからです。司令を受けて、道行く先で色んな体験をする。ラストもきっちり収まります。 そのシンプルな展開の中に順番に陳列されているかのようなエピソードたちが、戦争の残忍さ、愚かさ、理不尽さを伝えています。 それが全編とおして生活感や肌感覚を用いた表現で描かれている点が重要だったと思います。 戦争中に軍の司令を受けたところから始まる話とはいえ、主人公が戦闘経験がほぼゼロの思春期の少年なので、人種やイデオロギーの話も出てくるけどほとんど下ネタとか生活の目線だからめちゃくちゃ気持ちがわかる。敵のホクロを見て、こいつ普段どんな感じなんやろ?って想像してるとことか。 人物や風景の細かい描写が随所にシンプルに折り込まれてて脳内の映像化が気持ち良く出来、一本映画を見たようなかんじでした。 著者の祖父へのインタビューという形で始まったのでノンフィクションかと思いきやまったくのフィクションということで、映画っぽい収まりには後書きを読んで納得。 不満な点は、翻訳に関して。ほぼ全部おじいちゃんの回想なんですが17歳の少年なのに一人称が「わし」だったことです。回想という設定に忠実だったからなのか、何か狙いがあったのか分からないけど、「私」でよくないかなぁ、、
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