子どもに語るアラビアンナイト の商品レビュー

西尾哲夫【訳・再話】,茨木啓子【再話】

2024/01/03

千一夜物語がベースとなっている森見登美彦「熱帯」を読み、関連で本書を手に取った。
子どもにもわかりやすく伝わりやすく、しかし実際の書の内容を損なわない配慮がされて書かれている。巻末に、千一夜物語の成り立ち、それぞれの話について語る際のヒントがあり、子どもと一緒に読む際のイメージに役だった。
“お話を聞き慣れた子なら3年生頃から”などとあるように、中高学年向きで、2年の娘には少しわかりにくい部分もあったが、30分ほどの長さになる「アリババ」もよく聞いていて、「黒檀の馬」は連日読んだ。シェヘラザードの一文から始まる各章が、寝る前の想像の世界にとても心地よい。
ただ、1話が長いので私にとって今まで読んだ寝る前の物語の中で1番口が乾いて何度かつったえた。これを覚えて語る人がいるなんてすごい。

2022/12/27

どうにもエグい話が多い印象があるアラビアンナイトですが、これは子供向けなので、安心して読めました。侍女のモルジアナ、賢いですね。こんな配偶者が欲しいものです。

2019/08/17

子どもの頃に見聞きした覚えのあるお話も出てきて、懐かしい気持ちになりました。
子どもの頃に絵本で知った話もあるので、本当の長さで読むとこういう話だったのか、と発見や驚きもあって楽しかったです。
他の本を読んだことがないから、比較は出来ませんが、古さも感じずとても読みやすかったです。
あと、ついでな気持ちで読んだ巻末の「あとがき」と「お話について 語る人のために」がとても良かったです！
アラビアンナイトの成り立ちが思ってたより詳しく書かれていたし、中東文化について触れています。やっぱりその国の文化を少しでも知っていると、より物語を楽しめるんだなと感じました。
「お話について 語る人のために」では、実際に読み聞かせをした時の子どもたちの反応なども書かれていて面白かったです。

2015/11/09

子どもに読み聞かせる用のアラビアンナイト。なぜ「千夜一夜物語」ともよばれているのかも理解できます。小学生低学年～高学年まで。
大人がサラッと読むにも丁度いい。
「シェヘラザード」
「空飛ぶじゅうたん」
「猟師と魔人」
「船乗りシンドバードの冒険（クジラの島）」
「船乗りシンドバードの冒険（ダイヤモンドの谷）」
「背中にコブのある男」
「黒檀の馬」
「星のさだめ」
「バグダードの妖怪屋敷」
「ものいう鳥」
読み聞かせると、１話につき１５～１８分くらいかかる。

2015/09/21

2015.9.19
アラビアンナイト、千夜一夜物語の本はちゃんとしたのがなかったので、これはうれしい一冊。

2015/06/08

アラビアンナイトというものが何なのか今までよくわかってなかった私。ディズニー映画の影響でアラジンの話＝アラビアンナイトかと思っていました。
どの物語も魅力的で、大人でもわくわくしてしまいます。「ものいう鳥」が好きだったかな。
世界中にある民話や昔話って結構パターンが似ていると思う。お互いが影響を与えあっているのはもちろん、人間が面白いと感じる話ってある程度普遍的なんでしょうね。

2013/11/04

子どもの頃に読んだのを懐かしく思い出した。

基本スタンスが、“子どもにアラビアンナイトを語ること”(素話、ストーリーテリング)を目的として編集されているので、耳馴染みの良いようなわかりやすい文体で書かれている。
そして、シンドバッドの冒険が2話だけの収録となっているので、「アラビアンナイトを読みたい」という人はこの本ではない本をあたった方が良いでしょう。

あとがきでアラビアンナイトの成り立ちについて触れられていて、興味深かった。

2012/06/27

小６の読み聞かせに「背中にコブのある男」だけ朗読。９分。
人に死体を押しつけあう、なんだか落語にあったような話。そのせいか語り口も、気の強いおかみさんが出てきたりしてなんだか落語っぽい。いっそのこと落語のつもりで読んでみてはどうか。声色を変えたり、上手下手を向き変えたり、扇子で身振り手振りを加えたり。扇子こそは使わなかったけれど身振りを加えると子どもたち、面白がってくれてました。
にしても君島和子にしろ上橋菜穂子にしろグインにしろ、人類学者は児童文学に手を染めやすいのだろうか。西尾先生はいかに。

2012/06/05

語りのテキストなのでとてもイメージしやすく、読んでいるだけでわくわくと楽しかったです。語るのには長いお話もありますがぜひ読んであげたり語ってあげたり、子どもたちに届けたいお話がつまっています。有名なお話もこういうお話だったのかと改めて知りました。地図や解説も参考になる本です。
・シェヘラザード
長い長いお話「アラビアンナイト」が始まったいきさつの物語。新しいお妃を次々に殺してしまう王さまに物語を語り、一番面白いところでやめるという賢いシェヘラザード。アラビアンナイトの導入として興味を引く短いお話。
・空飛ぶじゅうたん
3人の王子が美しい王女ヌールンナハールの婿になるため一番珍しい宝を探しに行く物語。空飛ぶじゅうたんのほかに見たいと思うものを見ることができる望遠鏡や病気を治す命のりんごという不思議な宝も出てきます。宝を探す際の市場の描写が細やかで異国情緒漂う雰囲気が伝わってきます。最後の結末にはあれ？と驚き。
・猟師と魔人
貧しい猟師が拾った壺から煙と共に現れた魔人。願いを叶えてくれると思いきや殺してやると言い出した。猟師は知恵を絞って…「こいつは魔人で、悪い根性やたくらみを持っている。だが、おれは人間で神さまから知恵を授かっている。ここはおれの知恵と工夫で…」という台詞が好き。不思議な4色の魚と宗教の関係がヨーロッパらしい。
・船乗りシンドバードの冒険（クジラの島）
航海の途中、上陸した島はクジラの背中だった！クジラがもぐり始め、シンドバードは漂流。幸い打ち上げられた島で助けられ、都で暮らしているうち以前の仲間らしき人に再会し…クジラの島というのが面白くひきつけられます。
・乗りシンドバードの冒険（ダイヤモンドの谷）
再び航海に出たシンドバード。ところがうたた寝が原因で島に取り残されてしまいます。そこで見たのは大きなロック鳥と大蛇のいる深い谷底。そこにはたくさんのダイヤモンドが輝いています。すると空から大きな生肉が降ってきて…アラビアンナイトの中でも有名なお話。次々と起こる危機と不思議にわくわくします。冒険好きの男の子に好かれそうなお話です。
・背中にコブのある男
仕立て屋とその妻が出会った背中にコブのある男。一緒に楽しくご馳走を食べていましたが、のどに魚の骨が刺さったらしく男はばったり倒れて動かなくなってしまいます。慌てた二人は医者の家にその男をおきざりに。事情を知らない医者は自分が男を死なせてしまったと思います…男が次々にあっちへこっちへとたらいまわしにされるのがおかしい、落語のようなお話。最後には裁判にまでなりますがハッピーエンドでほっとします。
・黒檀の馬
王宮で珍しい品物を披露していた時のこと、黒檀の象牙で出来た馬に試し乗りをしたまま空を飛んで行ってしまった王子。王様は嘆き悲しみ作った男を牢屋に入れます。一方王子は美しい王女に出会い一目惚れ。結婚を約束しますが、牢屋に入れられ逆恨みした男などに阻まれ思うようにいきません…恋と冒険と不思議がつまった物語。
・星のさだめ
片目をなくした男がカリフ（イスラム信者の長）に語る身の上話。誤って少年を殺してしまったこと、見てはいけない黄金の扉を開き黒馬に目をうばわれたこと、すべて星のさだめ。イスラム教の教えや考え方が垣間見える不思議なお話。
・バグダードの妖怪屋敷
忠告を聞かずお金を使い果たしてしまった男アリー。なんとかしようと妻と子供を残して旅をし、生きて出てきたもののいないという妖怪屋敷に泊まることに。寝床に入ろうとするとどこからか「おまえの上に金貨の雨を降らせてやろうか！」という声が…ここでもアッラーという言葉が出てくるので語る前に説明が必要かな。タイトルから子どもが好きそうなお話。
・ものいう鳥
王さまと結婚した三人姉妹の末っ子が姉に妬まれ、生まれた2人の王子と末の王女を川に流されてしまう。3人は運よく庭番にひろわれ我が子のように育てられる。大人になったある日、3人はあるおばあさんに3つの大切なもの（ものいう鳥、歌う木、黄金の水）を教えてもらい、旅をすることに…美しい情景が浮かんでくる印象深いお話。あらすじもドラマチックでひきつけられます。
・アリババと召し使いのモルジアナに殺された四十人の盗賊
盗賊が不思議な岩山に隠した財宝を見つけ富を得たアリババ。義兄のカシムも真似をしますが合言葉を忘れ、殺されてしまいます。盗賊たちは秘密を知っているアリババのことも見つけ出そうとしますが、アリババの召し使い女モルジアナが知恵を働かせます…有名なお話ですが、このお話ではアリババよりもモルジアナの知恵と勇気にひきつけられます。殺されたり殺したりぎょっとしますが、あまり気にならずさらりと聞ける描写です。

2012/04/16

アラビアンナイトをすばなしのテキストに使うという発想にびっくり。うまくいけば、すごくおもしろくなりそう！ただし難易度は高い。
読みものとしてもおもしろい。が、かなり削ってあるので、アラビアンナイトを知っている人にはものたりないと思う。子どもが初めて出会うアラビアンナイトとしておすすめ。
あとがきも勉強になりました。