ラジ&ピース の商品レビュー
「ラジ&ピース」もっとも好きな絲山秋子の小説である。 女同士の友情の話だ。そして場所が移えば壊れてしまうような簡単な。 しかし,女性同士も,男とも,一目で「友人だ」とわかることがある。不思議なその思い込みが,世界を広げることもあるとのこと。
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「世の中には、狂人と変態以外いません」な話。 絲山さんの本を読むとそんな気もしてくる。 東京に近い中途半端な田舎では ラジオはNHK以外満足に聴けなかった。
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東京で生まれ育ちながら東京嫌いのラジオDJ、野枝。仙台でDJをした後、思い立って群馬のラジオDJに。医者らしくない医者の沢音、リスナーである「恐妻センター前橋」、群馬・高崎でのいくつかの出会いの中で美丈夫(本当の名前は忘れたらしいが)という過去にいた唯一の彼氏の存在も徐々に薄まり...
東京で生まれ育ちながら東京嫌いのラジオDJ、野枝。仙台でDJをした後、思い立って群馬のラジオDJに。医者らしくない医者の沢音、リスナーである「恐妻センター前橋」、群馬・高崎でのいくつかの出会いの中で美丈夫(本当の名前は忘れたらしいが)という過去にいた唯一の彼氏の存在も徐々に薄まり、今の自分を受け入れられるようになっていく…。 何かに雁字搦めにされたように精神の殻に閉じこもっていた野枝が、群馬の街(高崎だったり前橋だったり)や群馬の人々の等身大の姿に感化され、次第に凝り固まったものが溶けていく感じ、なんだかスゥーっとする。 絲山作品には妙な男っぽさがある。この小説の主人公は女なんだけど、とことん無愛想。どこか荒っぽい登場人物、だけども読後感がなんとも優しい気持ちになるのは、主人公は所謂"ダメ"な人、そしてその"ダメさ"を全否定しないところかもしれない。
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人と人の距離感がいい感じ。読んでて心地良いのは、作者と登場人物との距離感も同じように保たれているから、かな?
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ラジオ好きで、毎日ラジオを聴いている私のようなヤツには、よく響く作品。頷けるところ多し。率直。何ということもなく過ぎていく日常のひとこまを、気まぐれに切り取って、ほいっと目の前に差し出されたような作品。
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なんか心が痛くなる『ラジ&ピース』。それは思い当たるところがあるからなのか、頑なな不器用さに共感出来ないからなのか。 走り屋さんの女医と出会って前向きになっていく姿を友達のように応援。 それとは対極にスカッとした『うつくすま ふぐすま』 こっちは男なぞ待たぬよ。育てそこなった男...
なんか心が痛くなる『ラジ&ピース』。それは思い当たるところがあるからなのか、頑なな不器用さに共感出来ないからなのか。 走り屋さんの女医と出会って前向きになっていく姿を友達のように応援。 それとは対極にスカッとした『うつくすま ふぐすま』 こっちは男なぞ待たぬよ。育てそこなった男なんて、寝て起きたらポイです。爽快。 『えび学の人びと』が実在することに笑ってしまった。
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「うつくすま ふぐすま」の「なかのかな」が可愛い。微笑ましく心癒される。他方、もう一人の「なかのかな」は正反対だ。「男と別れるっていい気持ちだ。雲がみるみる晴れてきて日が差し込んできて、一斉に蝉が泣き出したような嬉しさだ。別れたらエネルギーは自分のことだけに使える。全部前向きに使...
「うつくすま ふぐすま」の「なかのかな」が可愛い。微笑ましく心癒される。他方、もう一人の「なかのかな」は正反対だ。「男と別れるっていい気持ちだ。雲がみるみる晴れてきて日が差し込んできて、一斉に蝉が泣き出したような嬉しさだ。別れたらエネルギーは自分のことだけに使える。全部前向きに使える。」冷徹で容赦がない。別れて「どこまでも爽快」だなんて言われないようにしたい。
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装丁の爽やかさをあっさりと裏切るエッジの効き具合。 一見冷めている様でいて、どこか温かい独特の雰囲気。 突き抜けた突き放し加減?に思わず噴き出してしまったり。 人との距離感てほんと難しい。 業界の裏話やリスナーとのやりとり、ローカルネタも面白かったです。 読後感よろしいです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
自分で捨てておいて、 それなのに気づけば焦がれて 奪われていたりする。 我を通すのも、力むのも大変。 とじこもるのは簡単。 でも少しだけひらいてみると、 なんだか気持ち良い。 昨日と同じ景色なのに、晴々していたりする。 「ラジ&ピース」 「うつくすま ふぐすま」 の二編が収められています。 自意識とコンプレックスを盾に、 世界とフィルターを通して向き合う野枝。 ラジオのパーソナリティを田舎でしている野枝。 そこに優しい姉さんみたいな女医の沢音が加わり。 あいつもこいつも厭になる。 触らないで、近寄らないで、悪意や打算しかないから。 そーゆーの面倒だから。 誰でも持っている感情を少し強めに押し出す野枝が、 ラジオをしているのは やっぱり繋がりたいからなんだろうなあ。 なんか繋がって 届けて、届けてもらって。 日常が少しだけ変化する時間を描いている「ラジ&ピース」 そして、 パンチの効いている「うつくすま ふぐすま」 同姓同名の友情。 女の友情。 ちょっとだけ恋心に近いもの。 狂人と変態ばかりの世界なんだもの。 男に対してバッサリいく感じは、 たぶん女なら少なからず共感すると思います。 だから男性にはおすすめ出来ません。苦笑 男に脳味噌はいらない。なんて、ちょっと憧れちゃいます。笑 装丁は綺麗で可愛いのに、内容はピリっとスパイシーで 読後は良いです。
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絲山秋子の文体や作品の中に充満している空気感、曇り空からほんの少し覗く太陽の光のような、好転の兆しが本当に好きだ。 大きな波が岩肌にぶつかって割れて散るような激しさはないけれど、密閉容器に煙がどんどん立ち込めていくような、静かな圧迫感が凄い。 本の薄さからも分かる通り、言葉は少...
絲山秋子の文体や作品の中に充満している空気感、曇り空からほんの少し覗く太陽の光のような、好転の兆しが本当に好きだ。 大きな波が岩肌にぶつかって割れて散るような激しさはないけれど、密閉容器に煙がどんどん立ち込めていくような、静かな圧迫感が凄い。 本の薄さからも分かる通り、言葉は少ない。 けれども、こちらに投げられる野枝という女の、世界に対する期待感の無さや虚無感は計り知れないものがある。 だからこそラストに訪れる、決して派手な大団円ではない、喉に刺さった小骨が抜けるような小さな解放が沁みる。 これからずっと幸せだろうという予感ではなく、とりあえず明日は大丈夫だろうというくらいの幸福感を描くのが、絲山秋子は天才的に上手いと思う。 そしてそんな幸福が、野枝のような不器用で、人との距離も上手くつかめない人間を一番豊かにしてくれると知っている。 今作でも、ラストに近づくごとに自分がいかに身体に力を入れて生きていたか、思い知らせてもらった。 肩に食い込む煩わしい荷物を下ろせても、それでもやっぱり日々の孤独は変わらない。 けれど、このままでいい、何も無理に分かってもらおうとしなくてもよい、ここにいたらいい、怯えることはない、誰に命を取られるわけでもない、とそんな風に思えるだけで、そこは住みやすくなるし、リラックスできる場所になる。 そうしたらまた明日を迎えてやればいい。 絲山秋子の小説は、負のものでいっぱいに膨れて、少しでも激しく動いたり突き飛ばされたりしたら破裂しそうな私の身体に、いつも細い針で穴を開けてくれる。 悪いガスが抜けていく速度はとてもゆっくりだが、いつか確実に抜けるだろう。 そんな予感を、この本もまた私に与えてくれた。
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