アブサロム、アブサロム!(上) の商品レビュー
すごく難しい。上下巻、読了するのに2カ月かかった。 すごく面白いかというと、難しいところだ。専門家が批評する素材としては素晴らしいのだろう。 大江健三郎のあの名作を思い出しながら読んだ(もろ下敷きにしているね)。サトペンには、トランプ前大統領を重ねた。
Posted by
そもそも、フォークナーについてであるが、1982年にノーベル文学賞を受賞したガルシア・マルケス、93年のトニ・モリソン、94年の大江健三郎らもまた、フォークナーからの影響を受けている。2012年に初の中国人ノーベル文学賞受賞者となった莫言さんもまた、フォークナーの影響を受けている...
そもそも、フォークナーについてであるが、1982年にノーベル文学賞を受賞したガルシア・マルケス、93年のトニ・モリソン、94年の大江健三郎らもまた、フォークナーからの影響を受けている。2012年に初の中国人ノーベル文学賞受賞者となった莫言さんもまた、フォークナーの影響を受けているということを公言している。 まず表紙が素敵で、ページ見開きにはサトペン家の系図がまとめられていて、内容と関係ない部分でも、本を読むモチベーションが高まる工夫がなされている。 舞台をあくまで「架空」の世界として設定し、『アブサロム、アブサロム!』だけでなく、他の作品でも同じ土地を舞台に物語を作るというフォークナー独自の世界観が多くの読者を魅了したのだろう。
Posted by
解説より「アブサロムは、イスラエルの王ダヴィデの三男で父親に最も愛されたが、妹タマルを陵辱し捨てた異母兄弟のアムノンを殺害し逃亡する。」 割とそのまんまだね。
Posted by
難書を読み終えたという種類の読後感と達成感。著者独特の語りのテクニックに、なんとかついていくので必死。しかしアメリカ南部の物語に触れることができたのは大きな収穫だった。
Posted by
■本書を選んだきっかけ ・福永武彦氏の「風土」を、読みかけにしてしまっているが、その巻末で、池澤夏樹氏が「風土」に関連して、フォークナーとヴァージニア・ウルフに言及していたので、本書を手に取った。 ・しかし実際には、池澤氏が言っていたのはフォークナーの「響きと怒り」であり、本書で...
■本書を選んだきっかけ ・福永武彦氏の「風土」を、読みかけにしてしまっているが、その巻末で、池澤夏樹氏が「風土」に関連して、フォークナーとヴァージニア・ウルフに言及していたので、本書を手に取った。 ・しかし実際には、池澤氏が言っていたのはフォークナーの「響きと怒り」であり、本書ではなかった。 ■上巻までの感想 ・率直に言って、読むのが苦痛ですらあったというのが正直なところ。→下巻でそれは覆るけれど ・本書は、ある一族の発生から終焉までを描いている小説である。1861年から65年ごろまでのアメリカ南北戦争が大きな要素になっており、その前後で物語が動いていくが、小説の中での「現在」は1910年ごろであり、戦争終結からかなりの年月が経った後である。つまり、出来事を同時代的に(時間をおって)記述していくのではなく、過去に起こったものとして、現在に生きている登場人物たちの口を借りて物語っていく形式である。 ・もちろん、そのような小説の表現の手法(過去の出来事を思い出して物語っていくこと)自体は珍しいものではないが、本書の場合、その語りの手法が独特かつ複雑であり、また最大の魅力ではないかと思う。この点が本書の感想の核心になるので詳細は後述するが、上巻を読み始めた時点では、それぞれの語り手が話す内容が、かなり断片的であり、時系列もそれほど整理されていないような印象を受け、さらには、語り手が知り得ない内容は当然、話されることはないし、もしくは故意に語られていないのではないかという内容すらある(ローザが侮辱を受けたとする内容の詳細など)。 ・またその一方で、読者の私からするとそれほど重要性を感じない、細部と思われるような箇所がかなり紙片を割いて説明されているような印象も受けた。そもそも、本書の全体を通して、語り手が全ての出来事や過去に生きていた物語の登場人物たちの心情などを全てその場で見聞きしていたとは限らないのに、何かこう得々として語っているような語り口なのである。本書はサトペンという男の築いた財産と、広大な屋敷と、何人もの息子・娘をめぐる物語だが、例えば上巻では、主要な語り手の一人はミスター・コンプソンであり、それは彼の父が、そのサトペンと友人の間柄であり、父から伝え聞いた話をさらにその息子に聞かせている、という舞台設定である。だからミスター・コンプソンの父がいくらサトペンと親しくても、起こったことの全てを見聞きできているわけではないし、しかもそれにもかかわらず、彼は語りの中で、それぞれの「登場人物」がどんな感情で、どんな動機からどのような行動をとったのかまで(推測と前置きしていることもあるが)言及することがある。そのように、推測や断片的な伝聞に基づいて話している割には、それぞれの人物の行動の背景にまで入り込んで話そうとしているから、かえって実態を分かりにくくしているようで、それが上巻の読みにくさの要因であると思われる。 ・過去に何があったのか分かりそうでつかみきれない、そうした「語り」はこれが推理小説であれば話を面白くさせることにもなりそうだが、本書の上巻の時点では、続きが気になって仕方がないという風にも感じなかった。
Posted by
老女ミス・ローザが語り出す半世紀前に起きたサトペン一族の悲劇。 まるでギリシア悲劇を読んでいるかのよう。 父やミス・ローザの語りのなかで浮かび上がるトマス・サトペンの悪魔的な像が、読む者を否応なく魅了する。 息継ぎまでの長い、時に混濁したようなセンテンスは中毒性が多いにあり!...
老女ミス・ローザが語り出す半世紀前に起きたサトペン一族の悲劇。 まるでギリシア悲劇を読んでいるかのよう。 父やミス・ローザの語りのなかで浮かび上がるトマス・サトペンの悪魔的な像が、読む者を否応なく魅了する。 息継ぎまでの長い、時に混濁したようなセンテンスは中毒性が多いにあり!! さて、続きが気になる。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『響きと怒り』といい、意識の流れ描写がすごい好き。いろいろごっちゃごちゃで正直わけわかんないけど、だからこそ間にある一言が刺さるというか。 『響きと怒り』と同じく妹が中心かと思いきやまさかの“虚ろないれもの”。理想化するってことは、生身の人間を無視するのに等しいんだなあ。でもだからこそ危うくって美しいんだよね、ボンとヘンリーの関係性が好き。
Posted by
八月の光、響と怒りも読んだ上で、個人的には一番おすすめ。人間の思想や感情や意識そのものをセンセーショナルに描けるのがフォークナーの凄まじいところだと思う
Posted by
うわー、面白い。難しい。サトペン一族の興亡を描くことで、南部アメリカの歴史を描く。何層にも積み重ねられた言説から、サトペンたちの姿が浮かび上がる。こういうの読んじゃうと、小説ってやめられなくなるよなあ。もっと若い時にもっと読んでおくべきだったな。
Posted by
- 1
- 2