実存と構造 の商品レビュー
実存と構造について説得的な解説がなされているというよりはどちらかというと文学の本で、前半は面白かったが、後半はノーベル賞作家の話ばかりぐだぐだしているいわゆる文学にありがちな権威主義の生き写しのような本だった。この本に限らず、「そろそろ、やめませんか。ノーベル賞の話するの。」と私...
実存と構造について説得的な解説がなされているというよりはどちらかというと文学の本で、前半は面白かったが、後半はノーベル賞作家の話ばかりぐだぐだしているいわゆる文学にありがちな権威主義の生き写しのような本だった。この本に限らず、「そろそろ、やめませんか。ノーベル賞の話するの。」と私はずっと思っている。この手の構造主義と実存主義に関する論考はもうほぼほぼ出尽くしていて、やり尽くされているので、ブッカー賞作家の話とか、もっと独特の権威主義の匂いのない文学観が読みたかったなぁ。文学や実存主義・構造主義の入門書としては申し分ないと思う。ただ、中世の農民受けしたファンタジー主流の文学観についてちらっと触れているので、こんにちのナーロッパ趨勢の文学観やトルーキンの存在などを絡めた包括的な話との関連で読むと、また新しい視点にはなると思う。そういう意味では「つまらない本」だが取りようによってはなろうと実存主義の歴史をも包括し得る可能性を秘めたポテンシャルのある本のように感じた。加えて、志賀直哉の『暗夜行路』に構造主義を見出していたのは面白いと思った。
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終盤は様々な文学に実存と構造を説明しており、そのあたりの知識の乏しい自分としては実感は薄かった。 この前提を持った上で色々な文学や歴史に触れてみると、楽しめるかもしれない。
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20世紀の思想界を席巻した実存主義と構造主義の考え方を平易に紹介するとともに、戦後の日本文学のなかでこれらの思想がどのように受容されているのかを論じた本です。 著者は、実存の病に苦しんでいる人間にとって、みずからの抱えている問題がこれまでいくどとなく繰り返されてきた構造の反復で...
20世紀の思想界を席巻した実存主義と構造主義の考え方を平易に紹介するとともに、戦後の日本文学のなかでこれらの思想がどのように受容されているのかを論じた本です。 著者は、実存の病に苦しんでいる人間にとって、みずからの抱えている問題がこれまでいくどとなく繰り返されてきた構造の反復であることが「救済」になりうると主張します。そのうえで、大江健三郎と中上健次の作品をとりあげ、彼らが戦後の日本文学にもたらしたものについて考察が展開されています。とくに著者は、大江の『万延元年のフットボール』や中上の『枯木灘』『千年の愉楽』に注目し、そこで反復する物語の構造を自覚的に作品のうちに取り入れることで、戦後の日本文学が直面していた「実存」という袋小路からの解放が示されていると論じています。
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※このレビューにはネタバレを含みます
20世紀文学を実存と構造という概念で読み取いている。選ばれたのが大江健三郎と中上健次だ。大江健三郎は実存主義文学の旗手である。その彼が万延元年のフットボールでは構造主義を取り入れているという解説はなるほどと思えるほど鮮やかな解説だ。同時に中上健次の文学作品を解析して実はこういう構造となっているのだという論旨も鮮やかである。 三田を見直した。その彼があとがきでこう書いている。 「文学はただのひまつぶしでもなければ、気晴らしの娯楽でもない。時として文学は、読者を悲しませ、嘆かせ、思い課題を背負わせることもある。 むしろ作者(および主人公)と読者とが、苦悩を共有するために、文学というものは存在しているのかもしれない」
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構造主義と実存主義のからみについて。実存の”孤独”を断ち切る手段は構造によって孤独を一般化することである。 ...であれば構造の”不毛さ”を脱却するのにも実存によって夢を与えることが効くのか? この二つの分け方ではちょっと納得いかないところもあるけど、面白い。そして今の自分の...
構造主義と実存主義のからみについて。実存の”孤独”を断ち切る手段は構造によって孤独を一般化することである。 ...であれば構造の”不毛さ”を脱却するのにも実存によって夢を与えることが効くのか? この二つの分け方ではちょっと納得いかないところもあるけど、面白い。そして今の自分の趣味としては....いや、昔からあまり実存の方が得意でない。どの自分以外の実存にも完全には共感しきれないからである。わかり合えない、というところのみがわかり合える部分というか...
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実存主義や構造主義を論じた本ではなく、それらが文学作品の中でどのような役割を担っているか、分かりやすく解説した文学論。平易で読みやすく面白い。個人的な感想として、実存と構造の結合という点では、実存を包み込む構造という結論で終わらせるには少々物足りない感もあり、ひとつの疑問提起にな...
実存主義や構造主義を論じた本ではなく、それらが文学作品の中でどのような役割を担っているか、分かりやすく解説した文学論。平易で読みやすく面白い。個人的な感想として、実存と構造の結合という点では、実存を包み込む構造という結論で終わらせるには少々物足りない感もあり、ひとつの疑問提起になった。
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実存主義と構造主義について、文学的な観点から分かりやすく説明してくれる本です。 個の存在として、世界(神)と一対一で対峙する実存主義の概念は理解しやすかったのですが、その実存の苦悩を、綿々と繰り返される歴史(構造)の中に組み込んで癒すという構造主義の説明はぴんときませんでした。 ...
実存主義と構造主義について、文学的な観点から分かりやすく説明してくれる本です。 個の存在として、世界(神)と一対一で対峙する実存主義の概念は理解しやすかったのですが、その実存の苦悩を、綿々と繰り返される歴史(構造)の中に組み込んで癒すという構造主義の説明はぴんときませんでした。 しかし、これからの読書体験が一味違ってくるような、分析のツールを学べたことは大変貴重でした。
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実存/構造を文学作品から読み解くという斬新さには非常に関心をもちました。が、テーマのごとく、もともと実存と構造の哲学的比較/思想的探究を期待していたので、少し首をかしげてしまったのが感想です。冒頭、哲学についてかたるものではない…とかいてあったので、心づもりはしていたのですが、な...
実存/構造を文学作品から読み解くという斬新さには非常に関心をもちました。が、テーマのごとく、もともと実存と構造の哲学的比較/思想的探究を期待していたので、少し首をかしげてしまったのが感想です。冒頭、哲学についてかたるものではない…とかいてあったので、心づもりはしていたのですが、なんとなくしこりが解消されないまま、本を読み終えてしまったという感じがしました。
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実存主義と構造主義について、主にフランス文学と南米文学と日本文学を絡めて紹介した文学論の本。 上記思想の定義や論考について期待すると、ちょっとがっかりだと思われるが、本書冒頭にそのことが述べられているので、リアル書店で手にした方は冒頭を読んでから購入することをお薦めします(私...
実存主義と構造主義について、主にフランス文学と南米文学と日本文学を絡めて紹介した文学論の本。 上記思想の定義や論考について期待すると、ちょっとがっかりだと思われるが、本書冒頭にそのことが述べられているので、リアル書店で手にした方は冒頭を読んでから購入することをお薦めします(私はリアル書店で文学論であると予め読んで購入しました)。 個人的には、南米文学というものについて初めて知り、これが非常に面白かった(構造主義の章で登場)。また、実存主義に最近関心を持ち始めた矢先、大岡昇平や永井荷風らには注目していたものの、大江健三郎が実存文学であることを本書で初めて知った。まだまだ教養が足りない自分を痛感したのであった。。。 以下、結論の簡単なネタバレ。 本書を簡単(非常に荒っぽく)まとめると、実存とは孤独の文学であり、構造とは、孤独や怒りや喜びや哀しみや感動といった人間の営みを古今東西の中から類型パターンで集めたものであり、苦しいのは自分一人ではないということを知ることで救われるという内容である。ネタバレ、ごめんなさい。
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構造主義がどうにもしっくりこない。何回もきいたり読んだりしたけどやっぱりなんかなー。この本でもしっくりこなかったです…
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