平成猿蟹合戦図 の商品レビュー
猿蟹合戦といえば復讐劇なんだろうか。賢い猿が蟹を騙して殺し、殺された蟹の子供達に仕返しされるという。田舎から出てきた歌舞伎町ホストだけでなく、ホストの夫を追いかけてきた子連れの美月、音楽家として活動する湊、みんなが主役。歌舞伎町ホストがのし上がっていく展開はエンターテイメント作品...
猿蟹合戦といえば復讐劇なんだろうか。賢い猿が蟹を騙して殺し、殺された蟹の子供達に仕返しされるという。田舎から出てきた歌舞伎町ホストだけでなく、ホストの夫を追いかけてきた子連れの美月、音楽家として活動する湊、みんなが主役。歌舞伎町ホストがのし上がっていく展開はエンターテイメント作品にはよくあるものだけど、違うところは、そこにひき逃げだったり殺人だったり脅迫だったりが絡んでくるところ。猿蟹合戦の話に対して、「・・・・スカっどする話さは毒っこ入ってらど」 と言うように、この話は心からスカっとできる話では、無いと思う。あくまでもスカっとした話になるように、「敵」はとことん悪く書かれているし、「主人公側」はなんだかんだ「いい人」に書かれている。それでもスカっとする話には毒があるように、「主人公側」だって殺人事件や汚職事件を隠蔽している。舞台の一つに歌舞伎町が出てくるのでやはりヤクザも絡んでくるのだが、あくまでも「主人公側」にしたら都合のいいヤクザになっているけれど、実際やはりヤクザはヤクザ。そのことも吉田氏もわかっているからこそ、「・・・・スカっどする話さは毒っこ入ってらど」と、サワに言わせている。そのあたりは『悪人』の吉田修一らしいなぁと思う。
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吉田修一は静かな文章もいいけど こういうエネルギッシュな文章もイイ…! イチオシの作家・吉田修一の 現代版昔ばなし?? 矛盾した表現だけどそんな感想 前半斜度ゆるめに入っといて だんだん傾斜がキツくなってスピードついて 後半は連続でグッとくる そいで、ラストの語りはウマイ...
吉田修一は静かな文章もいいけど こういうエネルギッシュな文章もイイ…! イチオシの作家・吉田修一の 現代版昔ばなし?? 矛盾した表現だけどそんな感想 前半斜度ゆるめに入っといて だんだん傾斜がキツくなってスピードついて 後半は連続でグッとくる そいで、ラストの語りはウマイなとオモウ どこにケチつけようか考えたけど 思いつかなかったので 星は初の5つ 秋田弁ってほんとにこんな感じなのかな ほんとならキュートだな
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4・高坂さんかっこいい(^_^)前半はゆっくりしたテンポやったけど、ちょっとずつのってきて面白くなってきた。猿蟹合戦みたいにスカッとするエンディングいいね(^_^)
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これだけ多くの登場人物をそれぞれ十分な深みや魅力で描いて、気持ちよく最後まで導いていってくれたことに感謝。 このかたの作品は最近実写化されることが多くて、どれもが「イメージとちがう・・・」とか勝手に落胆していたのだけど(原作好きなだけに)これはそれを逆手にとって、実写化前提に作っ...
これだけ多くの登場人物をそれぞれ十分な深みや魅力で描いて、気持ちよく最後まで導いていってくれたことに感謝。 このかたの作品は最近実写化されることが多くて、どれもが「イメージとちがう・・・」とか勝手に落胆していたのだけど(原作好きなだけに)これはそれを逆手にとって、実写化前提に作ったんじゃないかという感じがした。 ドラマ化よりやっぱり映画化されちゃうかな。 世之介は「いやあああ!」だったけど、これはいいや。割り切って楽しめそう。 それにしても読んでるさなかに、自分でもよくわからないところで涙が出てくるのはなんでかしら。 悲しいとかでないのに、涙につながるカタルシスがあるのか。 最後の章もうまくって、何かもう本当に吉田先生、これからもたくさん書いて楽しませて下さいという気持ちです。 すかっとした!
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夫を追って、長崎から東京・歌舞伎町へやってきた女の子。 赤ん坊を連れて。 夫の友達のバーテンダーと出会い、夫とも再会。 最後に、猿蟹合戦の意味がつながる、 傷を負わされた人の、立ち直って羽ばたいてく姿(^-^)
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何人もの登場人物が出てきて、それぞれの展開を見せていたと思っていると、最終的には全てが繋がる、そんな話だった。 九州の田舎から夫である朋生を歌舞伎町まで探しに来た美月と赤ん坊の瑛太。 歌舞伎町のバーでバーテンをしている純平とホストをしている朋生は、目撃した轢き逃げ事件で恐喝を...
何人もの登場人物が出てきて、それぞれの展開を見せていたと思っていると、最終的には全てが繋がる、そんな話だった。 九州の田舎から夫である朋生を歌舞伎町まで探しに来た美月と赤ん坊の瑛太。 歌舞伎町のバーでバーテンをしている純平とホストをしている朋生は、目撃した轢き逃げ事件で恐喝を企てようとする。 その被害者である世界的に有名なチェロ演奏者と身代わりとなり刑務所に入った父を持つ友香。 息子夫婦を自殺で亡くし、孫までもが刑務所に入り、毎朝念仏を唱える90過ぎのサワ。 すべてが別々のところで始まり、やがて大きな渦となるかんじ。 読み終わったあとは、最初の心配は心配で終わり、爽快感というか、あぁ良かったなとホッとする、昔読んだ猿がに合戦のよう。
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吉田修一だから図書館で迷わず手にとってみた。話がどう転がっていくのか、なにが猿蟹合戦なのかと思うけど、3幕に入って納得。平成の行き詰まった世相が舞台だけどあり得る設定、どこかにこういう議員タレントいたな、ご都合主義だけどカラリと明るくて楽しく読める。
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猿蟹合戦ってどんな話だか思い出せなくて 全部読み終わってから検索したけど なるほど、そういうことね 水商売とヤクザと政治っていう ドロドロの世界を「復讐」を中心に描いているのに 重くなりすぎていないのは、 やっぱり出てくる人たちの心根が優しくて 情に厚かったりするからでしょう ...
猿蟹合戦ってどんな話だか思い出せなくて 全部読み終わってから検索したけど なるほど、そういうことね 水商売とヤクザと政治っていう ドロドロの世界を「復讐」を中心に描いているのに 重くなりすぎていないのは、 やっぱり出てくる人たちの心根が優しくて 情に厚かったりするからでしょう 長崎と秋田の訛りのせりふも 歌舞伎町のシーンを和ませている 最初の方の今にもくずれそうなそれぞれの生き方が 選挙というひとつの方向にだんだん導かれていく それぞれに訳ありな人たちどうしの シンパシーが鍵だったりして、それにも少しグッときたり 最後までハラハラさせられましたが、 「悪人」に続く読み応えに大満足です
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
そもそも猿蟹合戦ってどうゆう話だった?と思い検索してみて。 なるほどたしかにそれが平成ということかと思う内容でした。 五島からホストの夫を探しに赤ちゃんを連れて、東京までくるという書き出しに不安でした。 登場人物がすごく多い、広く浅く話がテンポ良く進んで行く感じがしました。 ひき逃げ。ヤクザ。脅迫。ホスト。ママ。音楽家。大学生。選挙。 ひき逃げから政治家とは驚きの展開でした。 なんだろうなぁ。はじめ湊のマネージャーをしていた園がすごくやり手という話でいいんだろうか。
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タイトルに惹かれて手に取った本。 吉田修一さんの本は2冊目。 小説のラスト、瑛太くんはお猿さんと蟹さんの出てくる話のスカッとするところが好きだとサワさんに言う。 サワさんは、「……スカッどする話さは毒っこ入ってらど」と答える。 この小説はこの会話の通りの物語だと思う。 物語の...
タイトルに惹かれて手に取った本。 吉田修一さんの本は2冊目。 小説のラスト、瑛太くんはお猿さんと蟹さんの出てくる話のスカッとするところが好きだとサワさんに言う。 サワさんは、「……スカッどする話さは毒っこ入ってらど」と答える。 この小説はこの会話の通りの物語だと思う。 物語の最初、歌舞伎町の路地で座り込む美月は騙された女性にしか思えず、ディズニーランドのことなんて考えてる場合じゃないよとハラハラした。 朋生と純平は早々に痛い目を見るとしか思えず、こちらはこちらでハラハラした。 この物語の主だった登場人物はどこかのんびりしていて、人が良くて、なんか心配になるタイプが多い。 夕子さん、美姫ママ、高坂さんのなんと頼もしいことか。彼らがいなければ今頃何人かは東京湾に沈んでいたのかも‥。 そんな風にハラハラしながらも、ある時は可愛い瑛太くんに癒やされ、ある時は美姫ママと高坂さんのプロポーズシーンにときめき、あれよあれよという間に大団円。 あぁ…、良かった。皆さんお幸せに。 めでたし、めでたし。 猿蟹合戦ほどスカッとはしなかったけれど、ほっとするラストだった。
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