ラブレス の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
こんなに古い昔のことだったろうか。。。 確かに平成も23年ともなれば、「昭和」は昔のことには違いない。メールや携帯電話などの機器の発達以前は、もう現代と言うには色褪せて見えるほど遠い昔なのかもしれない。 なんだかとても古くさい。 でも、親子関係や貧困や、地方の閉鎖的な環境から出て行こうとする気持ちなども、平成23年の今から振り返ってみた時、そんなに昔のことになっているのだろうか?今はもうないものなのだろうか? なんだか、とても遠い別世界の話のように感じる。 最初のほうは、「嫌われ松子の一生」を思い出されるような展開で、ジェットコースターノベルでいくのかな、と思ったけれど(そして事実一気読みさせられることになったけれど)、それだけではなかったようだ。 姉妹関係が3組と、従姉妹という擬姉妹が1組、かつ母娘が3組、かつ異母姉妹、異父姉妹…と複雑な家族関係で、関係を把握し続けるのがしんどかった。何度も立ち止まり、ええっと彼女と彼女の関係は…と、思い出し確認しないとならなかった。 多重構造による効果を狙ったのだろうけれど、もう少し整理して絞ってもよかったような気もする。名前がまた輪をかけて覚えづらく難儀した。 時系列も、複雑にしている一因ではあり、こうする必要があったのかな?と疑問。 また小夜子の妊娠という設定もあまり生かされておらず、不要だったのでは?と思う。 舞台のシーン、歌のシーンはエキサイティングで、筆も活き活き滑るように書いていたのではないかと感じた。”けれん”がよく出ていると思う。 しかし登場人物に作家としての心情を語らせるのは、あまり必要性を感じなかった。むしろ興ざめる。 少々の不合理と(最後に現れるあの人は、なぜ居場所を知っていたの?)、少々の文章上のひっかかり(これはひらかないで漢字のままでいいのでは?)。 まあ確かに力強く、後味は決してわるいものではないけれど、演歌的な感じが残る。 いずれにせよ、”女の人生”の1パターンでしかなく、これだけじゃないよと言いたい。 普遍性までは掘り下がってはいない、と思います。
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泣きながら、一気に読んだ。女の哀しみが全て詰まったような、姉妹の話。それなのに、最後は幸せな気持ちになる。
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著者が生まれた釧路が舞台となった書き下ろし作品。 主人公が置かれるやるせない状況に重い気分にもなるが、「幸せも不幸も長続きはしない」と言って、その時その時を生き抜く姿に、じんわりと感じるものがある。 作者が投影されていると思われる、小説家としてデビューした理恵が、疎遠になっ...
著者が生まれた釧路が舞台となった書き下ろし作品。 主人公が置かれるやるせない状況に重い気分にもなるが、「幸せも不幸も長続きはしない」と言って、その時その時を生き抜く姿に、じんわりと感じるものがある。 作者が投影されていると思われる、小説家としてデビューした理恵が、疎遠になっていた釧路の母百合江の所に来てみると、老衰で瀕死の状態だった。最後にわかるのだが、理恵は母百合江と母の妹のことを書きたいと思って、母の波乱に満ちた生涯について聞こうとしていた。 昭和14年に夕張の炭鉱から標茶の中知安別に入植した貧しい開拓農家の長女百合江は、飲んだくれの父の借金の形のように薬屋に住み込みで働くが、旅回りの一座の歌手に弟子入りし、町を捨てる。 数年して座長が死に歌手が病に倒れて一座は解散となり、百合江は女形でギターを弾ける宗太郎と組んで盛り場を流すうちに、妊娠して理容師になった妹里美のいる釧路に行き、洋裁をしながら綾子を生むが、宗太郎は出奔する。 妹が嫁に入った理容店の遠戚に当たる弟子屈の役場職員に望まれて、子連れで嫁にいったものの、早々に夫の借金の形に旅館の中居として無給で働かされるが、旅回りの歌手だったと知らてれ団体客の宴会で歌って重宝された。 約束の期間が過ぎても夫は借金を続けたため、百合江は妊娠しても働き続け、出産時には子宮摘出せざるを得なくなった。 理恵を産んで入院中、綾子は歌の才能に目を付けた借金取りに売り渡され、夫が職権を利用して戸籍を偽造して、行方がわからなくなっていた。百合江は遠戚に預けたとごまかす夫の母の首を締めるが、手術した腹を蹴られて再入院する。夫の母によって嫁は出産のショックで気が触れたと言いふらされ、警察にも相手にされず、離婚して赤ん坊を連れて釧路に帰る。 妹が建てたマンションの1階に洋裁店を開き、キャバレーで歌う仕事が入り、百合江にはおだやかな時となったが、父親が事故死し、残された酒びたりの母を引き取り酒を減らさせて仕事を手伝わせるるものの、酒をやめられず出て行く。 娘の理恵が高校を卒業して勤めると母子は疎遠になっていった。土地を買おうとして全財産を騙し取られて、生活保護を受けるようになった。 百合江は綾子の位牌を握ったまま最後を迎えるが、理恵はある人物に会って知らなかった真相を教えられる。
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昭和14年夏、道東の開拓団へ加わった杉山卯一一家。 家庭は卯一の酒と暴力に支配されていた。 そして昭和25年、そこへ離れて暮らしていた娘・里実が加わることに。 街で暮らしていた里実は開拓村の現状になかなかなじめずにいたが、次第に姉・百合江と心を通わせるようになる。 が、翌年百合江...
昭和14年夏、道東の開拓団へ加わった杉山卯一一家。 家庭は卯一の酒と暴力に支配されていた。 そして昭和25年、そこへ離れて暮らしていた娘・里実が加わることに。 街で暮らしていた里実は開拓村の現状になかなかなじめずにいたが、次第に姉・百合江と心を通わせるようになる。 が、翌年百合江は奉公へ出されてしまう。そこで旅の一座と運命的な出会いをした百合江はそのまま一座へと飛び込んでしまう。 そして現代。百合江の娘・杉山理恵と里実の娘・清水小夜子は老衰状態の百合江を見つける。 一体、百合江の人生とはどのようなものだったのか・・・。 というようなお話。初・桜木作品です。 装丁だけ見ると、現代の恋愛小説かとおもっちゃいますけどね。なにがなにが。 いい意味で裏切ってくれちゃってます。 非常に過酷な人生が描かれています。 里実のほうは自ら激流に突っ込むというか、激流をまき起こすという感じですが、百合江のほうは流れに身を任す感じ。 でも二人とも強い。というのかな?しなやかな強さ。とにかく折れない女たちの物語。 娘目線もあったのがよかったですね。 母と娘というのは女同士、批判的になったりすることもあるものです。 どっぷり浸らない、客観的な視点がちょうどよかったです。 そしてラスト。不覚にも涙が・・・。 このセリフは反則でしょう。 個人的にはもう少し歴史小説っぽい重さが欲しかったのですが。 昭和の戦後だからこういう雰囲気でいいのかな? とはいえ、惹きこまれて読みました。面白かったです。
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内容(「BOOK」データベースより) 馬鹿にしたければ笑えばいい。あたしは、とっても「しあわせ」だった。風呂は週に一度だけ。電気も、ない。酒に溺れる父の暴力による支配。北海道、極貧の、愛のない家。昭和26年。百合江は、奉公先から逃げ出して旅の一座に飛び込む。「歌」が自分の人生を変...
内容(「BOOK」データベースより) 馬鹿にしたければ笑えばいい。あたしは、とっても「しあわせ」だった。風呂は週に一度だけ。電気も、ない。酒に溺れる父の暴力による支配。北海道、極貧の、愛のない家。昭和26年。百合江は、奉公先から逃げ出して旅の一座に飛び込む。「歌」が自分の人生を変えてくれると信じて。それが儚い夢であることを知りながら―。他人の価値観では決して計れない、ひとりの女の「幸福な生」。「愛」に裏切られ続けた百合江を支えたものは、何だったのか?今年の小説界、最高の収穫。書き下ろし長編。
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