動きが心をつくる の商品レビュー
身体心理学の専門家が、“身体・動き”との関連の上で“心”を捉えようとする「身体心理学」の研究について説明したものである。 現代においては、“心”とは知と同じもので、脳のことがわかれば心のことはすべて解明できるという考え方(「唯脳主義」)が主流で、だからこそ脳科学にも注目が集まって...
身体心理学の専門家が、“身体・動き”との関連の上で“心”を捉えようとする「身体心理学」の研究について説明したものである。 現代においては、“心”とは知と同じもので、脳のことがわかれば心のことはすべて解明できるという考え方(「唯脳主義」)が主流で、だからこそ脳科学にも注目が集まっているが、著者は「人間を心のみの存在とは考えない。身体があって心が成り立つと考える。しかもその身体とは、従来から無視されてきた身体の動き(行動)に焦点を当てるのである。・・・本書ではいままでの身体心理学の研究を明らかにすることで、脳一元主義が中心となっている現代において、身体の動き、感覚といったものが、私たちの気分や感情に大きな影響を与えていることを再発見してもらえれば」と語る。 ◆進化の過程を見ると、動物は大脳によって環境に働きかけて適応したのではなく、環境が動物に働きかけて行動を引き起こし、適応してきた。つまり、環境に対応する行動が大脳を発達させてきたのである。即ち、「始めに動きありき」で、そこから心が発生したと考えられる。 ◆20世紀の行動分析学の大家であるスキナーは、動物の行動を、環境からの刺激によって誘発される「生理的・反射的反応(respondent反応)」と、行動する主体が環境に働きかける「意志的反応(operant反応)」の2つに大別した。 ◆実際の行動の中には、respondent反応とoperant反応の両方の反応ができるものがあり、それは合成語で「resperant反応」とも呼ぶべきものである。具体的には、呼吸反応、筋反応、表情、発声、姿勢反応、歩行反応、対人距離反応、対人接触反応である。 ◆resperant反応(行動)と心(心理)と体(生理)の関係はトライアングルの関係にあり、相互に影響を及ぼしている。呼吸反応が心や体に影響を与えることは多くの人が実感していることであり、昔から推奨されてきた「丹田呼吸法」もその経験から生まれたものである。また、野口三千三氏の「野口体操」、野口晴哉氏の独自の整体法も、筋反応(筋弛緩)に関わるものである。 ◆行動の次元、身体の次元、精神の次元の3つを統一した、或いは包含した概念が「気」であるが、心身一元論的な考え方に馴染みのある東洋社会では古来より心身統一的な健康法が採用され、well-being(心身の健康・安寧)に役立ってきた。 そして最後には、well-beingを実現するためのresperant work(身体の動かし方)がイラスト入りで紹介されている。 大変興味深いテーマであり、かつ実感として理解できる部分は少なくないとはいえ、全体を貫く強固なロジックが見られない点が少々残念ではあるが、著者が自ら「現代人の常識に反する」と言う、身体(行動)と心の関わりに焦点を当てた論考として、唯脳主義中心の潮流に一石を投じたものとは言えるだろう。 人間についての幅広い理解の一助になり得る一冊と思う。 (2015年11月了)
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よく嬉しいから笑うのではなく、笑うから嬉しいのだ、つまり、感情より表情が先に来る、とか聞くことがある。本書はそれをもっともっと掘り下げて、ひとつひとつ検証した本。 まずは、もともとの動きとは何かから始まる。下等生物では動きはなんのためにあるのか、走性とか反射とか。それから中枢神経のある動物ではどうか、とか。で、じゃあ人間ではどうかとか。 次に、反射や不随意運動・随意運動と呼吸などの関係について記載する。呼吸は反射である側面もあるし、随意運動である側面もあって、これを制御することにより、動きからメンタルに影響をおよぼすことができる。 簡単に読めて、この分野のまるっと全体像がつかめる本。
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これは面白い。著者の造語ではあるが、「レスペラント反応」というのが独創的かつ画期的な定義であり、これは柔術、いや身体に直接携わる人にとってはぜひとも読んでおいて損はない内容です。
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embodied cognitionに関連する日本語の本。非言語コミュニケーションの解説にもちょっと使えるかも(表情とか姿勢とかの話のあたり)。後半は著者の考える大理論て感じで,ヨガとか太極拳とか,社会的認知のガチな実験云々という話とはだいぶ違ってくる。わかってて読む分にはいいの...
embodied cognitionに関連する日本語の本。非言語コミュニケーションの解説にもちょっと使えるかも(表情とか姿勢とかの話のあたり)。後半は著者の考える大理論て感じで,ヨガとか太極拳とか,社会的認知のガチな実験云々という話とはだいぶ違ってくる。わかってて読む分にはいいのだけど,後半も含めて心理学界で王道として広く認められている話だと,学生さんに誤解されやしないかとちょっと(いらん)心配。
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著者がなぜ、このような身体心理学を研究したかというと、身体心理学で得られた結果を参考に、呼吸法や筋弛緩運動などで心や体をよい状態に----体に生気をみなぎらせ、心は気力に満ちさせる、そのことによって、健康でいようよっていうのが大目標なのです。本書のまとめに近い章では、「気」の概念...
著者がなぜ、このような身体心理学を研究したかというと、身体心理学で得られた結果を参考に、呼吸法や筋弛緩運動などで心や体をよい状態に----体に生気をみなぎらせ、心は気力に満ちさせる、そのことによって、健康でいようよっていうのが大目標なのです。本書のまとめに近い章では、「気」の概念まででてきて、東洋思想を取り入れているなあという印象を受けます。人によっては、それって非科学的なものだと感じるかもしれません。しかし、きっとそこには、ヨーガや禅や指圧など、いろいろな東洋的なものを試してきた経験がある著者だからこその、見抜きがあるような気がしています。ただ、東洋思想的な東洋科学が受け入れない人でも、レスペラント行動についての論説はおもしろく読めることでしょう。
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行動が心に与える影響等についての概要が述べられている 呼吸、姿勢などヨガとかでもよく取り上げられる行動についての考察は面白い あとその考察に基づく実践法は試してみたくなった 呼吸、筋反応、表情、発声、姿勢、歩行、対人空間、対人接触は無意識の行動でもあり意識的な行動でもある
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全般的に小難しい。しかし,第9章からだ言葉,第11章生活を豊かにする心身統一ワークは興味を持って読めた。
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著者は早大教授。この道の権威、野口晴哉や高岡英夫の名前も出てきて期待したが、ー体系的ではあるがー内容はよく言われていること(背筋を伸長や微笑みの効能等)に終始。ナンパと身体を考察をされている高石さん(@lesyeuxx)の方がいいものを書けるのでは。
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身体心理学,聞きなれない言葉だと思います。本書での説明を引用しますと,身体心理学とは,「身体の動きやそこから生ずる感覚や気分・感情という心の根元に立ち戻り,単なる観念ではなく,現実に密着したリアルな心の動きを明らかにしようとするもの」です。本書では,従来の身体心理学の研究に触れつ...
身体心理学,聞きなれない言葉だと思います。本書での説明を引用しますと,身体心理学とは,「身体の動きやそこから生ずる感覚や気分・感情という心の根元に立ち戻り,単なる観念ではなく,現実に密着したリアルな心の動きを明らかにしようとするもの」です。本書では,従来の身体心理学の研究に触れつつ,人の心は身体の動きから生まれてきた,という筆者の考えが論じられています。筆者の春木豊氏は,この領域の第一人者です。本書は,春木氏の著書の中でも比較的新しく,新書として簡潔にまとめられているため,非常に読みやすくなっています。身体心理学の初学者に勧めたい一冊です。また,後半には,「生活を豊かにする心身統一ワーク」として,筋弛緩法や呼吸法などの実践的なやり方が図解つきで紹介されています。身体を通して行う心身の健康増進に興味がある方にも勧めたい一冊です。 (ラーニング・アドバイザー/心理 KANAI) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1574994
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大変興味深い本であった。頭脳中心主義といった空気感が強い中で、こういった書籍は貴重なように思われる。
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