よろずのことに気をつけよ の商品レビュー
祖父を殺された少女真由が縁の下から禍々しい呪術符を見つける.それは50〜60年を経たものであった.文化人類学者の中澤とともに祖父の死の謎を解く.昔から存在する呪術集団などが出てきたり横溝正史風のおどろおどろしさも感じさせるが主人公二人のキャラクターで読みやすくなっている.
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あまりミステリーは読まないのですが、「呪いが絡んだ事件」、「文化人類学」というキーワード、そしてやはり江戸川乱歩賞受賞ということで興味を引かれました。 そして、タイトルが魅力的。 全体として、なかなか面白かったです。 選評の言葉、「文章は今風で軽い筆法」というのが実にしっくりきました。 読みにくいことはないし、面白い表現もありましたが、文章にはもっと熟成が必要だと感じました。 また、会話が軽妙で、テンポよく進むのが快感でもあるのですが、「こんな会話するかな…」というウソっぽさがついて回ります。 文章や登場人物の性質などからして、装丁を若い世代向けに変えれば10代から20代前半くらいの読者にもっと人気がでるのではないかと思います。 呪術に関する描写が具体的で、非常に興味深いです。 人を呪い殺すという行為に対する考え方も共感できました。 時折ぞくっとさせられ、作者の術中にはまってしまったことがなんだか悔しいような嬉しいような。 就寝前に部屋を暗くして手元ランプだけで読んでいたので、一層不気味さを満喫できたようです。 ラストが近づくと、「あとこれだけしかページ数がないのに、真相解明から解決までいけるのか」とはらはらしたり、急展開に惹きこまれてどんどんページを繰ってしまいました。 多少納得できない所もありましたが、巧みな展開で飽きさせません。 それにしても、”別々の部屋を予約した男女が、手違いで同じ部屋に泊まることになる”…という、マンガなどでは使い古されたシナリオが出てきて可笑しかったです。 ハプニングでそういう展開になることが、現実によくあるのでしょうか? どうもそこだけマンガのようで、苦笑いしてしまいました。 それから、なぜか主人公ふたりが好きになれません。 作られすぎていて、不自然に感じるのです。 でもこれは個人的好みですので、一般には受け入れられると思います。 魅力的な登場人物が揃っているので、中澤先生と真由のふたりで事件を解決する、シリーズものにして続けられそうです。 内容とは関係ないのですが、巻末の選評が実に興味深かったです。 なるほど、よくできた優等生な作品より、荒削りでも魅力のある作品が選ばれるとうことらしいです。 若い世代に圧倒的に支持されながら、一般には酷評されている某作家も、この「魅力」が突出しているのだろうと納得しました。 この選評が面白くて、非常に参考になります。 委員すべてが推したわけではなく、強く推薦する方がいる作品が選ばれたり、各々の筆力について具体的に批評してあったり、受賞の裏側が覗けて面白いのです。 選評だけ読み返したいくらいです。
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江戸川乱歩賞受賞作。 呪術が絡む殺人事件、ということで、ややホラー的な雰囲気も醸し出されています。呪術に関するレクチャー部分も、とっつきやすい印象。そのぶん、おどろおどろ具合は案外と控えめかもしれません。ホラーが苦手という方でも、おそらく大丈夫。 秘められた過去の罪、延々続けられ...
江戸川乱歩賞受賞作。 呪術が絡む殺人事件、ということで、ややホラー的な雰囲気も醸し出されています。呪術に関するレクチャー部分も、とっつきやすい印象。そのぶん、おどろおどろ具合は案外と控えめかもしれません。ホラーが苦手という方でも、おそらく大丈夫。 秘められた過去の罪、延々続けられた呪い、という事件の背景は、恐ろしいというよりも悲しいもの。これだけ長い間呪い続けた執念は凄まじいけれど。それでも人としての心を失えなかった彼らはあまりにも悲しくて。この結末はやや意外ながらも、納得できました。 タイトルも魅力的。「師走の月に雪なくば よろずのことに気をつけよ」。この言葉、真相が分かってからはなおさら印象に残りました。
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乱歩賞受賞作です。 恒例により、手にとりました。 呪術と殺人。事件の添え物ではなく呪術がメイン。面白くて、3時間ほどで読了。 いろんなパーツの接続はイマイチな感じがあったけれど、今後の作品に期待しよう。やっぱり、受賞後の作品の継続が重要です。 このテイストがこなれて来れば、お...
乱歩賞受賞作です。 恒例により、手にとりました。 呪術と殺人。事件の添え物ではなく呪術がメイン。面白くて、3時間ほどで読了。 いろんなパーツの接続はイマイチな感じがあったけれど、今後の作品に期待しよう。やっぱり、受賞後の作品の継続が重要です。 このテイストがこなれて来れば、お気に入り作家になりそうです。
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同時受賞の「完盗オンサイト」より面白そうだったので購入。 確かに文章は読みやすく、展開も早くて飽きないのだが、その分いきなり話が「呪い」に限定されてしまうので若干戸惑う。もちろん主人公がそれ専門の学者という設定だから仕方ないのだが、あまりにも呪術の存在が当然とされてしまっているの...
同時受賞の「完盗オンサイト」より面白そうだったので購入。 確かに文章は読みやすく、展開も早くて飽きないのだが、その分いきなり話が「呪い」に限定されてしまうので若干戸惑う。もちろん主人公がそれ専門の学者という設定だから仕方ないのだが、あまりにも呪術の存在が当然とされてしまっているので、大変絵空事に感じてしまう。 山奥や田舎というのはそれだけで閉鎖的であり因習が色濃く残っていると思われがちだが、やはりちょっとありきたりかなあとも思う。よくできた設定で、「そういう世界の話」だと思って読めばいいのだろうが、なんとなく呪術師の集団がただの狂人に見えてしまう。ちらちらと見え隠れする虐待のほうがよほど怖かった。 虐待というモチーフを呪いと絡めた必然性はどこにあるんだろう。
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読みながらゾクゾクぞわぞわしていた。何度も本を閉じて周りを見回し誰もいないことを確認したり… だって途中で電気が突然消えたり、感想を書いてる途中でいきなりPCがフリーズしたり、 読後頭痛が止まらなかったり… 行間から呪いが染み出してきているようで怖かった。 人から呪われていると...
読みながらゾクゾクぞわぞわしていた。何度も本を閉じて周りを見回し誰もいないことを確認したり… だって途中で電気が突然消えたり、感想を書いてる途中でいきなりPCがフリーズしたり、 読後頭痛が止まらなかったり… 行間から呪いが染み出してきているようで怖かった。 人から呪われているということの想像を絶するほどの恐怖と 人を呪わざるを得ないほどの激しい苦しみと哀しみが圧倒的な力で迫ってきた。 今もこの町のどこかで誰かが呪いの念仏を唱えているかもしれない… そう思うと背筋を冷たいものが走る。 真夏の夜にぴったりの小説。
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