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楡家の人びと(第三部) の商品レビュー

4.6

23件のお客様レビュー

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2025/12/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

10章のうち8章までが戦争中を描き、残りの2章も終戦直後の物語である。 戦争に翻弄される楡家とその周辺の人々の群像劇が描かれていく。 第一部からここまでかなり長かったが、読み終わってみると多くの人々の人生を実際に体験したような感覚が残っている。その「長さ」そのものに意味と重みが宿っている、そんな小説だったように思う。 桃子と藍子の人生は幼少期と成長してからの落差があまり大きくなんともやりきれない。 龍子は強い。常に我道を行き、負けない。基一郎の血の濃さが感じられる。 中でも周二の戦時中と敗戦後の黙示録的・虚無的な考え方は非常に印象的であり、もし自分が同じ時代に生きていたなら、似たような考えに囚われていたかもしれないと想像させられた。 少し引用してみる。 ・戦時中の思考 「いずれはこの内地に敵の上陸軍を迎え討たなくてはならず(中略)そこでは勝敗は別としてありとあらゆるものが轟然と音を立てて崩壊し、敵味方の別なく絢爛たる破壊と祝祭に似た死が訪れるはずであった。そしてそう思い信じるとき、周二の心は不安や絶望から解き放たれた。なぜなら、それは自分一人の死ではなく、すべてのものの上にあやまたず降ってくる巨大な神聖な死であったから。」(p.212) 「死は日常茶飯事のことであり、取るに足らぬおびただしい小石ほどそこらにころがっているものなのだ。もしかすると、基本的な生の涯に死があるという考えが、そもそもの誤りであり欺瞞なのではあるまいか。死が根本であり土台であり、生がその上に薄くかぶさっているというのが真相なのではないか。(中略)生は仮の姿であり、死が本来の姿なのだ。たまたま戦争という偶発事によって、それまで怠惰にたれこめていた引幕が開かれ、死はようやく暗い蔭の領土から足を踏み出し、おおっぴらな天日の下、白昼の中にまで歩みを進めるようになったまでだ。」(p.226) ・終戦後の思考 「敵の本土上陸に備えて地下陣地を構築していたときは、確かにいきいきとしていたその顔は、今はいつも投げやりに、陰気に曇っていた。なにより彼は、『死に遅れた!』という感情から離れることができなかった。あの豪華な、絢爛とした、壮大な『死』への幻想、それはとうに灰のように崩れ落ちてしまっていた。」(p.372) 「『人間を一人くらい殺してそれがどうしたというんだ。莫迦々々しい。何にもないのだ。実際この世には何にもないのだ……』」(p.373)

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2025/11/01

四十数年ぶりに読了。昔新潮文庫で上下巻だった時に上巻の途中で投げ出してしまったのをやっと読み終えた。読み終えるの惜しい感じは久方ぶりに味わった。終わり方がこんな『風と共に去りぬ(映画)』みたいだと思わなかったが、たぶんあまり終わり方はそれほど重要ではないんだな。登場人物にそれぞれ...

四十数年ぶりに読了。昔新潮文庫で上下巻だった時に上巻の途中で投げ出してしまったのをやっと読み終えた。読み終えるの惜しい感じは久方ぶりに味わった。終わり方がこんな『風と共に去りぬ(映画)』みたいだと思わなかったが、たぶんあまり終わり方はそれほど重要ではないんだな。登場人物にそれぞれ、今も生きている日本人的なものの元型がある。

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2025/09/02

戦時中の楡家の人びとの話。 何だか皆んな、可哀想。 あの熊五郎ですら可哀想。 それであって龍子だけはずっと、太々しい。 この先ももっと読みたかったな。 この小説みたいな小説があったら教えてほしいです。

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2023/09/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

すべては戦争により、灰燼と帰してしまうのです。 戦争の業火で。 楡家も例にもれず、戦争へと召集されていき 時に帰ってこない人もいます。 一人その安否がわからない人がいますが 恐らくな… 私は経験上あの女性は嫌いです。 プライドばかり高い人はね。 まあこういう人はきっとしぶとく残るんでしょうよ。 実際に実話では…

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2023/05/09

国家も家族も共同体の体裁を優先して個人の尊厳を踏みにじる。国家は反逆という手段を選択できても血縁という事実は逆らえない。そこに懐柔するかのごとく戦争へと闊歩した政府の罪は戦犯を罰するだけで解決したのだろうか。世間の空気を読むことを有益だと判断する家族に恐怖する。コロナ5類になった...

国家も家族も共同体の体裁を優先して個人の尊厳を踏みにじる。国家は反逆という手段を選択できても血縁という事実は逆らえない。そこに懐柔するかのごとく戦争へと闊歩した政府の罪は戦犯を罰するだけで解決したのだろうか。世間の空気を読むことを有益だと判断する家族に恐怖する。コロナ5類になったから安心だという根拠なき日常に訝しむ。なぜなら虐げられるのは常に弱者だから。そこにも皆と同等の命がある。それは誰も否定できない、看過してはならない。

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2023/03/04

戦争に翻弄される楡家の人々の個人史とも言うべきものだ。自分にはこの第3部が最もリアリティのある優れた文章に思える。各人戦争に呑み込まれ、いずれも悲惨な状況を迎えるが、きっと楡家は復活するのだろうと思えた。

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2023/02/10

作中で経過した30年弱を、最後にずっしりと実感できる構造でしんみりした。 第三部は戦争文学と言っても差し支えないシビアな内容だったが、時代と国のうねりに飲まれる市井の年代記として、迫力と厚みを加える内容だったと思う。時間を費やすに足る大作。

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2022/09/12

平和だった大正時代から震災、戦争へ。戦艦、南の島、中国で戦争した人々、東京で被災した人々、疎開先で過ごした人々。どれも実際に体験したのかと思うようなリアリティで書かれている。当時の様子を知ることができるのも貴重であるし、長い物語を通してすっかり馴染みとなった人物たちがどう考えどう...

平和だった大正時代から震災、戦争へ。戦艦、南の島、中国で戦争した人々、東京で被災した人々、疎開先で過ごした人々。どれも実際に体験したのかと思うようなリアリティで書かれている。当時の様子を知ることができるのも貴重であるし、長い物語を通してすっかり馴染みとなった人物たちがどう考えどう行動しどうなっていったのかも興味深かった。

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2019/03/13

「小説を飲食物にたとえると」『楡家の人々』は「山海の珍味が入った豪華な鍋料理に当たります。」 評したのは倉橋由美子(『偏愛文学館』)さん。 そう 豪華な食事、いえ読み応えのある小説でした。 歌人斎藤茂吉の息子北杜夫がご自分の実家「青山脳病院」をモデルにして 祖父母、叔父叔母...

「小説を飲食物にたとえると」『楡家の人々』は「山海の珍味が入った豪華な鍋料理に当たります。」 評したのは倉橋由美子(『偏愛文学館』)さん。 そう 豪華な食事、いえ読み応えのある小説でした。 歌人斎藤茂吉の息子北杜夫がご自分の実家「青山脳病院」をモデルにして 祖父母、叔父叔母、父母の生き生きした姿を明治大正昭和と描き切ったのですから。 脳病院!これだけでも尋常じゃありませんよ。 呼称は時代的でもちろん、今や精神科病院でしょうけど。 個人医師の経営するそういう病院・入院者もいろいろありそうですが、 明治期「脳病院」を創設する祖父基一郎(きいちろう!)さんをはじめ 経営する家族・人々の模様も尋常でなく、悩ましいというわけで なんでこんなに楽しく面白く描けるのか、ユーモアの秘訣とはこれか、です。 こうなると人間、尋常の人とはどういう人なのか、案外つまらない人なのに違いありませんよ。 時代経過にそったストーリーは知らず知らずのうちに戦前史を辿ります。 例えば1941年(わたしの生まれた年ですが)真珠湾攻撃に至る生々しい経過が迫真。 「ああ、そうだったのか!」と、とても興奮しました。 倉橋さんは「無人島に持っていく一冊の有力候補」「何度食べても飽きない」 だそうです。

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2019/03/01

第三部の舞台は第二次世界大戦である。登場人物のそれぞれが戦争の波の中で翻弄されていく。そして、ある人は死に、ある人は戦後を大きく生きていく。楡家もまた新しい時代にのって話も終わりになる。実に深い話であった。

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