楡家の人びと(第三部) の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
すべては戦争により、灰燼と帰してしまうのです。 戦争の業火で。 楡家も例にもれず、戦争へと召集されていき 時に帰ってこない人もいます。 一人その安否がわからない人がいますが 恐らくな… 私は経験上あの女性は嫌いです。 プライドばかり高い人はね。 まあこういう人はきっとしぶとく残るんでしょうよ。 実際に実話では…
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国家も家族も共同体の体裁を優先して個人の尊厳を踏みにじる。国家は反逆という手段を選択できても血縁という事実は逆らえない。そこに懐柔するかのごとく戦争へと闊歩した政府の罪は戦犯を罰するだけで解決したのだろうか。世間の空気を読むことを有益だと判断する家族に恐怖する。コロナ5類になった...
国家も家族も共同体の体裁を優先して個人の尊厳を踏みにじる。国家は反逆という手段を選択できても血縁という事実は逆らえない。そこに懐柔するかのごとく戦争へと闊歩した政府の罪は戦犯を罰するだけで解決したのだろうか。世間の空気を読むことを有益だと判断する家族に恐怖する。コロナ5類になったから安心だという根拠なき日常に訝しむ。なぜなら虐げられるのは常に弱者だから。そこにも皆と同等の命がある。それは誰も否定できない、看過してはならない。
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戦争に翻弄される楡家の人々の個人史とも言うべきものだ。自分にはこの第3部が最もリアリティのある優れた文章に思える。各人戦争に呑み込まれ、いずれも悲惨な状況を迎えるが、きっと楡家は復活するのだろうと思えた。
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作中で経過した30年弱を、最後にずっしりと実感できる構造でしんみりした。 第三部は戦争文学と言っても差し支えないシビアな内容だったが、時代と国のうねりに飲まれる市井の年代記として、迫力と厚みを加える内容だったと思う。時間を費やすに足る大作。
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平和だった大正時代から震災、戦争へ。戦艦、南の島、中国で戦争した人々、東京で被災した人々、疎開先で過ごした人々。どれも実際に体験したのかと思うようなリアリティで書かれている。当時の様子を知ることができるのも貴重であるし、長い物語を通してすっかり馴染みとなった人物たちがどう考えどう...
平和だった大正時代から震災、戦争へ。戦艦、南の島、中国で戦争した人々、東京で被災した人々、疎開先で過ごした人々。どれも実際に体験したのかと思うようなリアリティで書かれている。当時の様子を知ることができるのも貴重であるし、長い物語を通してすっかり馴染みとなった人物たちがどう考えどう行動しどうなっていったのかも興味深かった。
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「小説を飲食物にたとえると」『楡家の人々』は「山海の珍味が入った豪華な鍋料理に当たります。」 評したのは倉橋由美子(『偏愛文学館』)さん。 そう 豪華な食事、いえ読み応えのある小説でした。 歌人斎藤茂吉の息子北杜夫がご自分の実家「青山脳病院」をモデルにして 祖父母、叔父叔母...
「小説を飲食物にたとえると」『楡家の人々』は「山海の珍味が入った豪華な鍋料理に当たります。」 評したのは倉橋由美子(『偏愛文学館』)さん。 そう 豪華な食事、いえ読み応えのある小説でした。 歌人斎藤茂吉の息子北杜夫がご自分の実家「青山脳病院」をモデルにして 祖父母、叔父叔母、父母の生き生きした姿を明治大正昭和と描き切ったのですから。 脳病院!これだけでも尋常じゃありませんよ。 呼称は時代的でもちろん、今や精神科病院でしょうけど。 個人医師の経営するそういう病院・入院者もいろいろありそうですが、 明治期「脳病院」を創設する祖父基一郎(きいちろう!)さんをはじめ 経営する家族・人々の模様も尋常でなく、悩ましいというわけで なんでこんなに楽しく面白く描けるのか、ユーモアの秘訣とはこれか、です。 こうなると人間、尋常の人とはどういう人なのか、案外つまらない人なのに違いありませんよ。 時代経過にそったストーリーは知らず知らずのうちに戦前史を辿ります。 例えば1941年(わたしの生まれた年ですが)真珠湾攻撃に至る生々しい経過が迫真。 「ああ、そうだったのか!」と、とても興奮しました。 倉橋さんは「無人島に持っていく一冊の有力候補」「何度食べても飽きない」 だそうです。
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第三部の舞台は第二次世界大戦である。登場人物のそれぞれが戦争の波の中で翻弄されていく。そして、ある人は死に、ある人は戦後を大きく生きていく。楡家もまた新しい時代にのって話も終わりになる。実に深い話であった。
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アパートの図書コーナーに「楡家の人びと」を見つけました。たまたま、12月24日の日経に紹介記事があり、これも出会いだと思って読み始めたところ、夢中になってしまいました。 本書は楡脳病院を舞台に、大正7年から昭和22年までの約30年の中で、市井の人びとが何を考え、何を食べ、何に喜...
アパートの図書コーナーに「楡家の人びと」を見つけました。たまたま、12月24日の日経に紹介記事があり、これも出会いだと思って読み始めたところ、夢中になってしまいました。 本書は楡脳病院を舞台に、大正7年から昭和22年までの約30年の中で、市井の人びとが何を考え、何を食べ、何に喜び、何で生計を立て、何を娯楽として、何に期待し、何に落胆したのかを、生き生きと描きます。 この30年は、軍縮会議、昭和恐慌、関東大震災、226事件、日中戦争、太平洋戦争、そして敗戦と激動の時代です。読み終わった後、本書の扱っているのがたった30年であることを不思議に思いました。それだけ、この作品の扱う時代は変化の激しい時代であることが実感できます。 苦難の時代を描きますが、ユーモアに溢れた描写もあります。特に楡脳病院を創設した前半の主人公である楡基一郎の俗物ぶりには、笑えます。また、当時の都市伝説もちらほらと紹介されています。「赤いマント」は東洋英和がルーツであると、初めて知りました。 三島由紀夫は本書を「戦後に書かれたもっとも重要な小説のひとつ」と評価しています。そんなことよりも、苦難の中で日本人はどうやって生きてきたかを知るために、本書は必読と思います。★★★★★
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難しい小説でした。成人間近な息子達を自分のモノサシのみで測っていたこてに気付かされたことが収穫。ただ気付いたから少し気楽になったが、人生が暗澹とした五里霧中であることには変わりはなさそう。
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勝手な人々が生き生きと生活し、そして、戦争に飲み込まれていく。 感動ではない。何か真実のようなものが含まれている。 三部作といっても、短い作品なのに、北杜夫は「長すぎはないだろうか」とたずねたそうだ。でも、この内容をこの短さで書くというのは今の時代にはありえないかもしれない。 何...
勝手な人々が生き生きと生活し、そして、戦争に飲み込まれていく。 感動ではない。何か真実のようなものが含まれている。 三部作といっても、短い作品なのに、北杜夫は「長すぎはないだろうか」とたずねたそうだ。でも、この内容をこの短さで書くというのは今の時代にはありえないかもしれない。 何かを伝えるのには長ければいいわけじゃない。当たり前のことを再確認した。
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