FBI美術捜査官 の商品レビュー
人類の魂の財産を盗む犯罪。但し、目的はカネ 著者は元FBI捜査官で美術犯罪摘発に長年携わってきた人物。 ハリウッド・アクション映画的派手さはないが、非常にスリリングである。 潜入捜査と一言でいうが、実際に何をしているのか、外部からはなかなかイメージしにくい。捜査官がどのように犯...
人類の魂の財産を盗む犯罪。但し、目的はカネ 著者は元FBI捜査官で美術犯罪摘発に長年携わってきた人物。 ハリウッド・アクション映画的派手さはないが、非常にスリリングである。 潜入捜査と一言でいうが、実際に何をしているのか、外部からはなかなかイメージしにくい。捜査官がどのように犯人と接触し、どうやって盗品を押収するのか、かなり突っ込んだ描写がされている。著者はFBIをすでに退職しているのだが、こんなに手の内を明かしてしまって、後進達の今後の捜査に差し支えたりしないのか、心配になるほどだ。 長年、美術犯罪捜査に携わってきた著者ならではの美術犯罪に関する解説もまた興味深い。 多くの人に愛される美術品。しかしそれを狙う犯人は芸術を愛しているのではなく、カネを欲している。だからきまって強欲である。 美術犯罪に対する対策はどの国でも一様に取られているわけではなく、各国間での温度差が大きい。そのため、統計的に美術犯罪が多いかどうかは実はあてにならない。統計を満足に取っていない国すらあるからだ。結果、熱心に犯罪検挙に取り組んでいる国で表にでる数字が大きくなり、大して犯罪数が多くないはずの国で強盗団が暗躍していることもありうる。 蒐集家であったアルバート・C・バーンズやイザベラ・スチュワート・ガードナーについてもやや詳しく紹介されている。個人の力で多くの名品を集め、そしてそれを人々の美術教育に当てる。アメリカの篤志家のケタの違いに驚く。理念の面ももちろんあるのだろうが、それにしても個人が莫大な金額を手にしうる、アメリカ経済ならではの面もあるのでは、との思いもよぎる。 著者が体得した捜査官心得は別の職種にも役立ちそうだ。著者はきっと営業マンとしても辣腕であることだろう。 数々の名品はどのような来歴で再び白日のものに戻るのか。実際にそれらを手に取り、間近で手にした著者とともに、心震える瞬間を読者も味わう。 冒頭、尻切れトンボな印象だったプロローグが終盤に浮上し、盛り上がりを見せる。 犯罪者とのやり取りもさることながら、国をまたいだ犯罪に、各国捜査機関の思惑やFBI内部の駆け引き・腹の探り合い・権力抗争が加わり、複雑で着地点の見えない闘いが繰り広げられる。組織で働くことの困難さを見せつけられる。 著者写真を見て「アジアっぽい・・?」と思っていたらお母さんが日本人とのこと。 巻末には、日系人である著者から、震災後の日本に向けた言葉もある。 *著者の転機となった交通事故についてはちょっとだけ違和感があった。著者が飲酒運転であったかどうかが争われたものなのだが、いかに少量でも(いや、個人的には決して少ない量ではないと思うのだが)アルコールはやっぱりいかんのでは・・・? そもそも法律的基準も日米で違うのかもしれないが。 *現代の遺跡盗掘団は、GPSを駆使するんだそうだ。ハイテク! *おもしろかったのだが、意外と読むのに時間が掛かった。純粋に字数が多かったのか、出てくる事件が多すぎたのか・・・?
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「美術品泥棒はその美しい物体だけではなく、その記憶とアイデンティティをも盗む。歴史を盗む。」美術品泥棒の悪質さを表すのにぴったりな表現。目が覚めた。そして、「社内政治」に明け暮れるFBIの内情を読むと、どの組織体もこれらのことで生産性を下げていることがよく分かる。
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結局、美術捜査班はFBIでは評価されず、縮小されてしまうなんて。 FBIもその程度の組織ということなんですね。
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捜査官の自叙伝。最初は面白いが中盤からパターンが似てきて飽きる。公開できる経緯や捜査方法は限られるので盗難された美術品についてもっと掘り下げてほしかった。
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最後が必ずしもすっきり終わらないのは、これがげんじつだからしょうがない。後は、それ程意外な裏話的なエピソードが少ないのも、少し残念。
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FBIに美術捜査班が設立されたのが90年代以降というのが意外。 元FBI捜査官の回顧録なので、自伝は多いし、ドラマっぽいし。もっとボストンの事件とか取り上げてるかと思いきやそうでもなかった。
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事実は小説より…の典型。面白かった。美術犯罪者というのは映画に出てくるような華麗な怪盗ではない、欲深くて狡猾な存在であること、FBIは決してクールでスマートな組織ではないことetcが、リアリティをもって描かれている。潜入捜査のノウハウなどは、「24」なども思い出しながら興味深く読...
事実は小説より…の典型。面白かった。美術犯罪者というのは映画に出てくるような華麗な怪盗ではない、欲深くて狡猾な存在であること、FBIは決してクールでスマートな組織ではないことetcが、リアリティをもって描かれている。潜入捜査のノウハウなどは、「24」なども思い出しながら興味深く読んだ。そして「美術犯罪が罪深いのは、単にモノを盗むのではなく、人類の歴史や文化を奪うことだから」という発想には共感した。
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潜入捜査官の大変さが分かるのと、美術品が案外簡単に盗まれるのがよく分かりました。盗まれた物を取り戻すのは、サスペンス映画を見ているような感じで面白かったです。
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FBIの美術捜査は潜入捜査で行われる.誰かが盗品を売ろうとしているという情報が入れば密売人に成り済ました犯人に近づき、取引現場で合図を送り警官隊を突入させる.と言うほぼワンパターン.もっと失われた美術品の数奇な運命に触れてほしかった.アメリカでは建国記念や南北戦争ものが大切にされ...
FBIの美術捜査は潜入捜査で行われる.誰かが盗品を売ろうとしているという情報が入れば密売人に成り済ました犯人に近づき、取引現場で合図を送り警官隊を突入させる.と言うほぼワンパターン.もっと失われた美術品の数奇な運命に触れてほしかった.アメリカでは建国記念や南北戦争ものが大切にされていることがよくわかった.
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元FBI捜査官の回顧録。 美術犯罪を専門とする人の回顧録なので、そこまで読むのに思いとは感じない。楽しく読むことができた。 美術犯罪が問題なのは、美術品を盗む行為よりも、人々の記憶、歴史、経験、アイデンティティ・・・を奪い去ることである。というのは、これまで考えたことはなかった。...
元FBI捜査官の回顧録。 美術犯罪を専門とする人の回顧録なので、そこまで読むのに思いとは感じない。楽しく読むことができた。 美術犯罪が問題なのは、美術品を盗む行為よりも、人々の記憶、歴史、経験、アイデンティティ・・・を奪い去ることである。というのは、これまで考えたことはなかった。 素直になるほどと思った。
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