こころと脳の対話 の商品レビュー
いやあ、やっぱりおもしろい。さすが河合隼雄だ。茂木健一郎は40歳代。20年近く前の対談である。河合先生が亡くなる直前のものでもある。本当にたくさんの示唆的な話がある1冊である。何度も読んできた内容でもある。心理療法が科学であろうとして行動療法を取り入れていったりするが、結局は人と...
いやあ、やっぱりおもしろい。さすが河合隼雄だ。茂木健一郎は40歳代。20年近く前の対談である。河合先生が亡くなる直前のものでもある。本当にたくさんの示唆的な話がある1冊である。何度も読んできた内容でもある。心理療法が科学であろうとして行動療法を取り入れていったりするが、結局は人と人の関係性の上に成り立つことであって、その関係性抜きにはうまくいかない。具体的な事例を深く掘り下げていくことで、普遍性に近付いていく。複雑系の科学のように、一回性が強く再現性に乏しいものもある。あいまいだけれども確実なもの。他人にはあいまいなように見えても、自分にとってはこれしかないと言えるもの。シンクロニシティ。偶然のようでありながらも、自分とっては必然であったという出来事。私自身の仕事も、いわゆるカウンセリングに近い部分がある。その中で、相手の魂と向かい合うことができていただろうか。時間がない、そこまでの責任がないなどと言い訳をしていなかったか。大いに反省である。箱庭もいつか作ってみたい。夢日記は継続してつけているので、数年後、数十年後に見直して、振り返りの材料にしてみてもおもしろそうである。まあとにかく、うすくて、通勤途中3日ほどで読んだのだが、中身の濃い1冊であった。河合先生、まだまだやり残したことがあったようで、いまさらながら本当に残念である。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
茂木健一郎さんと河合隼雄さんの対談本。河合隼雄さんは2023年時点で日本人で取得している人はわずか51人という『ユング派分析家国家資格』を日本人で初めて取得し、箱庭療法を日本に導入した人だ。 この本を読んで「箱庭やってみたい」と思ったの覚えている。 何かを作り上げて、自分のイメージを形にするという重要性を感じた。 ①仕事が楽しい時、これは自分の考えを形にして、顧客の必要としているものを作っているといえる。 だが仕事である以上、顧客が求めているものと自分のイメージが一緒になるとはいえないし、例え好きなことでも長時間飽きるほどやらされれば、苦痛に感じる。 ②Minecraftのようなサンドボックスゲームが根強い人気があるのも創り出す楽しみがあるからだ。 サンドボックスを直訳すると「砂場」まさに箱庭のデジタルバージョンだが、本の内容には箱庭療法には土に触れることが重要なことだとあるので、決定的に違う部分がある。 ③ブログ作成は自分の興味ある事、好きなことを自由に書ける。作成していくと文章だけでなく、ロゴや挿絵などデザインする場面も多い。文章は推敲を重ねると自分でライティングスキルが上がっていることに気付くし、文章の構造や展開を考えることで、自分の意思や思考がクリアになる。 記事を書くと心が落ち着いていることがはっきりと感じられる。 箱庭療法に興味ある人はブログ作成はお勧め。今はNoteブクログがユーザーインターフェイスが綺麗なので良いと思う。 このレビューも読みやすくすることを考えて後て推敲するつもり。トレーニングだ。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
うーん、とっても興味深かった。短い本なのに気になる要素がたくさん詰まってる。難しいけど比較的わかりやすくて書かれているし。 気になった箇所をいくつかピックアップ。それぞれ時間をかけて考えてみたい。 ・シンクロニシティ 外のものと外のものがシンクロするのではなく、自分の無意識と外のものが呼応する。 ・関係性も生命現象が重要。 不登校の生徒の例。行動が切れたのではなく、関係性が切れた。 ・普通の話をして帰ったのに、ものすごく疲れている時は病状が深い。関係性をもつのに苦労するから。 ・脳科学が進むことと、心がわかることとは違う。 ・割り切れなかった方を科学することが足りてない ・答えをすぐに求めがち。 ・カウンセリングで重要なのは「中心を外さず」にいること。 ・夢の話も面白かった。意識・無意識を整理するための夢。夢=現実はありえない。
Posted by
相手をわかるためには、職業・性格・学歴などのプロファイリングに引きずられずに、「魂」を見るべし。分析するのではなく、「中心ははずさずに」ただそこにいて見ていれば良い。 人間の不思議を「心」と「脳」で考えるという深いテーマのお話です。基礎知識がない自分にはちょっと理解が難しい部分...
相手をわかるためには、職業・性格・学歴などのプロファイリングに引きずられずに、「魂」を見るべし。分析するのではなく、「中心ははずさずに」ただそこにいて見ていれば良い。 人間の不思議を「心」と「脳」で考えるという深いテーマのお話です。基礎知識がない自分にはちょっと理解が難しい部分が多かったですが、少し勉強したら再読してみたいです。
Posted by
達人の自慢話にも聞こえなくはないが、そこまで語らせる茂木さんもすごいな。 中心を外さない。 達人って実際にいるんだな。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
二人の科学者の対談集 精神は関係性、精神病の人、統合失調症の人などの治療を、アメリカでは他との関係性を考えず、独立したケースとして考えるが、周囲との関係性を考えて直す、というのが河合さんのやり方のよう。箱庭つくりの話が興味深かった。私もやってみたい。
Posted by
シンクロ二シティや夢の話など、すごく面白かった。何かと効率よく、無駄のないように…と進めてしまっていたところを、大きく構えて偶然のセレンディピティを大事にしていけたらいいな、と思った。こんな対談集が400円てすごい。 2016.4.25
Posted by
それぞれの分野の達人同士がレベルの高い会話を繰り広げるかと思いきや、前半で茂木健一郎が河合隼雄に降伏し、河合隼雄の独壇場。河合隼雄の話に対し、脳科学的な解説を茂木健一郎がいれているという程度。 全体として無意識の心について語られており、夢がなぜ意識と無関係なものを見るかなどにつ...
それぞれの分野の達人同士がレベルの高い会話を繰り広げるかと思いきや、前半で茂木健一郎が河合隼雄に降伏し、河合隼雄の独壇場。河合隼雄の話に対し、脳科学的な解説を茂木健一郎がいれているという程度。 全体として無意識の心について語られており、夢がなぜ意識と無関係なものを見るかなどについて語られている。個人的に最も印象に残ったのはシンクロニティについての箇所。私がこの本を読んだ上でのシンクロ二ティの解釈は「自分の無意識がその時に物凄く気にかけていること」であり、例えば楽器に関心があったとすると楽器のCMなどがこれまでより多く自分の前で流れてくるように感じてくる現象と似ている。 河合隼雄はその無意識による選別を意識して楽しむようにしていると言う。 現代人は意識に力を使いすぎている。(その事にすら気付いている人はいない)偶然の巡り合わせや無意識がもたらす出来事について気づき、それを行動に影響させることが人生を楽しくさせるかもしれない。
Posted by
2005年から2006年にかけて、3回にわたって臨床心理学者河合隼雄と脳科学者茂木健一郎が行った対談の本。易しい語り口で、知的刺激に富んだやり取りがなされる。 茂木が河合に心理療法とはどういうものか尋ねている。 普通の近代科学が分析し、「明らかにする」「分かる...
2005年から2006年にかけて、3回にわたって臨床心理学者河合隼雄と脳科学者茂木健一郎が行った対談の本。易しい語り口で、知的刺激に富んだやり取りがなされる。 茂木が河合に心理療法とはどういうものか尋ねている。 普通の近代科学が分析し、「明らかにする」「分かる」ことを目指しているのに対して、心理療法では、クライアントが「治っていく」ことが目標で、そこではセラピストとの人間関係が重要であると言っている。 で、河合は何をするかというと、何もしない。「相手の苦しみを正面から受け止める」、「中心を外さずに」・・・これが難しい・・・相手の話をただ聞き、相づちをうつ。 この相づちが、達人のそれで、タクシーに乗ると運転手が身の上話を始めて、どんどん話が進んで、道を間違えたことが何度もあるぐらいの、絶妙な相づちなのです。 あと茂木が実際に箱庭を作ったりする。 読み易いお薦めの一冊です。
Posted by
・その人は一生懸命話をされるし、こっちも一生懸命聞いて、それでもその人が話しだすとどうしても僕が眠くなる、という人がいたんです(笑)。疲れていたら眠くなるのは当たり前だけど、疲れてないしね、僕、一生懸命仕事してるのに。 で、とうとう、「もう本当に申し訳ないんだけれど、あなたの話し...
・その人は一生懸命話をされるし、こっちも一生懸命聞いて、それでもその人が話しだすとどうしても僕が眠くなる、という人がいたんです(笑)。疲れていたら眠くなるのは当たり前だけど、疲れてないしね、僕、一生懸命仕事してるのに。 で、とうとう、「もう本当に申し訳ないんだけれど、あなたの話しを聞いていると僕は眠くなってしまう。なにか思い当りますか」といったんです。そしたら、「わかります」といわれた。「いちばん大事なことをいっていません」って。 ・「私が部屋に入ってきたとき、先生は、私の顔にも服装にも、全然関心を示されなかった」 というのは、ものすごく美人ですから、服もきれいなのを着ておられるんだけれど、その服も見てないし、顔も見てない。おそらく、二日後に道で会っても絶対わからないだろうと思うぐらい、なにも見ておられなかった、と。 「ああ、そうですか」 「それだけじゃありません。先生は私の話しの内容に、全然、注意しておられませんでした」(笑) 「僕、何をしてましたか」 「何をしておられたかというのは、すごくむずかしいんだけれども、あえていうなら、もし人間に『魂』というものがあるとしたら、そこだけ見ておられました」 …それが、僕がいまいっている、僕がやりたがってることなんですよ。その人を本当に動かしている根本の「魂」―これと僕は勝負している。だから、そぉっと聞いてないとだめなんですよ。言葉で、ワーッと動いていったりしないで。また、相手の言葉に動かされてもいけない。
Posted by