大学教育について の商品レビュー
大学教育には,教養教育や専門的教育,職業教育など様々な側面がありますが,皆さんは大学教育の意味について考えたことはあるでしょうか? 日々,大学生として大学に通いつつも,意外にそのような機会は少ないのではないかと思います.本書は,一昨年に話題になった『これからの正義の話をしよう』で...
大学教育には,教養教育や専門的教育,職業教育など様々な側面がありますが,皆さんは大学教育の意味について考えたことはあるでしょうか? 日々,大学生として大学に通いつつも,意外にそのような機会は少ないのではないかと思います.本書は,一昨年に話題になった『これからの正義の話をしよう』で,功利主義者として取り上げられたJ.S.ミルが大学の名誉学長に就任した際の講演で,学生らに対して大学教育の目的や任務について語った講演録です.同氏は,大学の目的は,職業教育ではなく,有能で教養ある人間を育成すること,と一般教養教育を重視し,その他にも大学における文学教育や科学教育,道徳教育等の役割について語っています.当時とは,社会背景等が大きく異なってはいるものの,大学で学ぶ意味や目的についてとても示唆に富んだ一冊です.コンパクトで文量も多くないので,気軽に読めるでしょう. (2012ラーニング・アドバイザー/図情 NAGAMI) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1409229&lang=ja&charset=utf8
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文系と理系、実学と教養など、現代にも通じる大学教育のあり方についての講演記録。 当時の実学は理系分野だが、学生の役に立つ教育としてのキャリア教育、社会人基礎力・学士力育成、「何ができるようになったか」に応えられる教育などに置き換えれば、同じような二者択一論は、古くからあったことが...
文系と理系、実学と教養など、現代にも通じる大学教育のあり方についての講演記録。 当時の実学は理系分野だが、学生の役に立つ教育としてのキャリア教育、社会人基礎力・学士力育成、「何ができるようになったか」に応えられる教育などに置き換えれば、同じような二者択一論は、古くからあったことが理解できる。
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『学問ノススメ』と合わせて読むことで、明治期に開国間もない日本も含めたグローバルな大学教育関係者が「学問」になにを目指していたのかがよくわかる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
----- 人間が獲得しうる最高の知性は、単に一つの事柄のみを知るということではなくて、一つの事柄あるいは数種の事柄についての詳細な知識を多種の事柄についての一般的知識と結合させるところまで至ります。(中略)広範囲にわたるさまざまな主題についてその程度まで知ることと、何か一つの主題をそのことを主として研究している人々に要求される完全さをもって知ることは、決して両立し得ないことではありません。この両立によってこそ、啓発された人々、教養有る知識人が生まれるのであります。 --J.S.ミル(竹内一誠訳)『大学教育について』岩波文庫、2011年、28頁。 ----- 19世紀中葉、専門知と教養知の大論争を背景に、両者の有機的統合を示唆したミルの講演を収録したもので、小著ながら大学教育、教養教育、科学教育(専門教育)の関係と意味、真理に基づく行動の意義を説く。学生だけでなく教養教員、専門教員も読むべき一冊。 古典教育がなぜ必要なのか。ギリシア、ラテン語を通じて歴史を原典で学ぶことで、古代を学ぶだけでなく、今生きている社会に掛けさせられている「眼鏡」への自覚がもたらされるからだ。たえず自身を相対化させ、賢明な思想と考察を得ることが古典教育の神髄としつつも、当時の訓詁的学習スタイルには批判的でもある。 教養教育は「包括的な見方」と「結合の仕方」「(諸科学の)体型化」を促す。この原理を身につけることで、全体人間として専門知が生きてくる。加えて「美学。芸術教育」、「道徳教育」がそれを補完する。 さて、全体知としての「詩的教養」を毀損するのものは何か。「商業面での金儲け主義」とミルは言う。世界の工場・イギリスの東インド会社の審査部長をつとめたミルのこの指摘は重く受けるべきであろう。これこそ人間性を破壊するものに他ならない。 ※経済学の否定ではないので念のため 訳者解説には次の指摘がある。 ----- いまや大学改革のキーワードが「アカウンタビリティ」(説明責任)や「ステークホルダー」(利害関係者)など市場経済用語になっているように、大学自体がビジネス文化に浸食されはじめている。覆いつくさんばかりの商業文化の「自浄作用を担うのは教養教育をおいてほかにないはずである。 --ミル、前掲書、173頁。 ----- ミルは、高等学校の『倫理』の教材で「功利主義」というレッテルで張られて「はい、おしまい」という感がありますが、『自由論』にせよ『自伝』にせよ、先の講演にせよその「枠」に収まらない脈々さがあります。読んでから判断すべき先達の一人だと思います。本書は御茶の水書房より1983年に刊行された『ミルの大学教育論』のうち、講演を文庫化した一冊。手軽な小著ですが、最初に言及した通りおすすめです。ベンサムとミルでは断絶があるし、キーワードで対象化できない「横溢」が存在します。
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大学での教育について、古典文学、自然科学、芸術などに分けて語られています。 自分はなぜ大学で勉強しているのかということを見つめ直すには、 本書を読むと有効かもしれません。 大変読みやすく、おもしろく、勉学意欲が湧いてきます。 また、訳者の解説では、ミルの生涯について簡単紹介されて...
大学での教育について、古典文学、自然科学、芸術などに分けて語られています。 自分はなぜ大学で勉強しているのかということを見つめ直すには、 本書を読むと有効かもしれません。 大変読みやすく、おもしろく、勉学意欲が湧いてきます。 また、訳者の解説では、ミルの生涯について簡単紹介されています。 短い解説ですが、大変興味深く、ミル自伝も読んで見たくなりました。 薄い本なので、大学生は買って読むことをオススメします。
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読むべき本。 p.178迄(6/17) p.108迄(6/16) p.58迄(6/15)文学教育について.古典と近代文学の対比.普遍性を感じる.今まで師事してきた人たちが各々異なる機会にのたまっていたことがすべて繋がっていくのが分かる. p.22迄(6/14) 読み始め(6/1...
読むべき本。 p.178迄(6/17) p.108迄(6/16) p.58迄(6/15)文学教育について.古典と近代文学の対比.普遍性を感じる.今まで師事してきた人たちが各々異なる機会にのたまっていたことがすべて繋がっていくのが分かる. p.22迄(6/14) 読み始め(6/14)
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「真に教養ある人間は、すべて(everything)について何事か(something)を知り、何事かについてはすべてを知る人間だ」と述べ、その体現者であったと言われるJ.S.ミルのセント・アンドルーズ大学名誉学長就任講演。 歯切れよく語られる150年前の教養養育論と大学論は現代...
「真に教養ある人間は、すべて(everything)について何事か(something)を知り、何事かについてはすべてを知る人間だ」と述べ、その体現者であったと言われるJ.S.ミルのセント・アンドルーズ大学名誉学長就任講演。 歯切れよく語られる150年前の教養養育論と大学論は現代でも少しも色あせない。 「知識と知的能力」と「良心と道徳的能力」の教養の主要2要素を補助する第3の分野として「美学・美術教育」をあげてる点は、ダニエル・ピンク『ハイコンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』を思い起こした。
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薄い本だけれど、目が覚めるような言葉が各所にあって、一度ではなく何度も読みたい。 ・「文系教育と理系教育、どっちを取るか」と語られることがあるが、どうして両方ではいけないのか。 ・「言葉」は思考を決定してしまうおそれがあり、より客観的に物事を見るために、多くの言葉を学ぶ必要があ...
薄い本だけれど、目が覚めるような言葉が各所にあって、一度ではなく何度も読みたい。 ・「文系教育と理系教育、どっちを取るか」と語られることがあるが、どうして両方ではいけないのか。 ・「言葉」は思考を決定してしまうおそれがあり、より客観的に物事を見るために、多くの言葉を学ぶ必要がある。そのために古典の学習は有効である。 ・実験科学を学んで、物事を正しく推測、検証する方法を学ぶ。 ・人に物事を語るときのために、論理学に触れておくことは有効。 ・好奇心は人生の最高のパートナー 大学で教養をつける重要性を語るが、ミルの話を聞いていると、彼自身が教養ある知識人を体現しているように思える。
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1867年に行われたミルの名誉学長就任演説. 大学教育の目的と役割が古典教育と科学教育を両立させた教養教育にあると説き,個々の学問の意義を簡潔に説く.考え抜かれた言葉が読むものの心にまっすぐ届く. 教養と大学が結びつかなくなり,教養が良き社会人の必須科目でなくなった現代であるにも...
1867年に行われたミルの名誉学長就任演説. 大学教育の目的と役割が古典教育と科学教育を両立させた教養教育にあると説き,個々の学問の意義を簡潔に説く.考え抜かれた言葉が読むものの心にまっすぐ届く. 教養と大学が結びつかなくなり,教養が良き社会人の必須科目でなくなった現代であるにもかかわらず,ミルの言葉は古びることなく,いろいろなことに気づかせてくれる.
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素晴らしい名著でした。 J.S.ミルといえば自由論で有名だが、本書でもその適格かつ教養深い彼の思考、哲学が遺憾なく生きていて、それが凄まじい。 約150年も前になされた演説の内容だというのに、 その教育論は今日でも変わらず鮮烈であり、真理に通じている。 とても勉強になりました...
素晴らしい名著でした。 J.S.ミルといえば自由論で有名だが、本書でもその適格かつ教養深い彼の思考、哲学が遺憾なく生きていて、それが凄まじい。 約150年も前になされた演説の内容だというのに、 その教育論は今日でも変わらず鮮烈であり、真理に通じている。 とても勉強になりました。
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