誰にも書ける一冊の本 の商品レビュー
危篤の知らせで故郷の父親の入院する病院へ向かう。そこで、母親から父親が書き遺したノートを見せられる。自分が聞いていた、知っていた父と違う父の生い立ち記。フィクションなのか、真実なのか。 誰でも、その人にしかわからない一生がある。本人が亡くなってしまえば、誰も知らない物語がエン...
危篤の知らせで故郷の父親の入院する病院へ向かう。そこで、母親から父親が書き遺したノートを見せられる。自分が聞いていた、知っていた父と違う父の生い立ち記。フィクションなのか、真実なのか。 誰でも、その人にしかわからない一生がある。本人が亡くなってしまえば、誰も知らない物語がエンディングを迎えるわけだ。自分の親が亡くなった時にも、ノートこそ無かったけれど、お悔やみに来てくださった方々から、自分の知らない親の姿を聞かされ、本当に一人一人にドラマがあるのだなあと感じたのを思い出す。 これは、そういう気持ちを表した小説。
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私は娘であり、家庭の事情から父とは疎遠になっているので、父と息子という男同士の不器用な距離感というものはよく分からない。 でも、「誰にでも書ける一冊の本」というものはよく分かる。 そんな本を出そうとしているわが身には、何だか身につまされる描写が多々ありました。 荻原さんは、本当に...
私は娘であり、家庭の事情から父とは疎遠になっているので、父と息子という男同士の不器用な距離感というものはよく分からない。 でも、「誰にでも書ける一冊の本」というものはよく分かる。 そんな本を出そうとしているわが身には、何だか身につまされる描写が多々ありました。 荻原さんは、本当にこういう「普通の人」「よくありそうな話」を書くのがうまい。 「嘘も詳細に書けばもっともらしくなる」 主人公のそんな言葉は、荻原さん自身の言葉でもあるのだろうか。 荻原さんのエッセイを読んでみたい。出してくれないかな。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
字が大きくてとても読みやすい。「いたましい(もったいない)」が口癖の父が書いた自分史を読む息子。知らなかった父の生い立ちを知り、そして父は逝ってしまう。親のことを聞ける時間はなかなかないものです。母と娘ならそんな話をする機会もあるでしょう。私も父のことはよく知りません。まさか高校の時に父を亡くすなんて思ってもいなかったから。母も亡くなってしまった今となっては、誰にも聞くこともできない。祖父母、両親がいる人は、できるだけたくさん話をして、いっぱい会話して…子供や孫がいる人は、自分のことをいっぱい話して、語り継いでいくって素敵なことだと、今の年齢だからか、そう強く感じました。
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「明日の記憶」有名な萩原浩。あ、最近だと「愛しの座敷わらし」かな? 座敷わらしのほんわか路線ではなく、明日の記憶寄りの作品。 父の書き遺した原稿用紙を読む主人公が、生前には知ることのなかった父の姿を見つめ返していく物語。 うーん、さらっと読める。字が大きいし短いし。 ちょっと最後...
「明日の記憶」有名な萩原浩。あ、最近だと「愛しの座敷わらし」かな? 座敷わらしのほんわか路線ではなく、明日の記憶寄りの作品。 父の書き遺した原稿用紙を読む主人公が、生前には知ることのなかった父の姿を見つめ返していく物語。 うーん、さらっと読める。字が大きいし短いし。 ちょっと最後がきれいごとで終わりすぎている感がぬぐえず。 「死様」をテーマにした6人の作家の競作の一つなんだからもうちょっと頑張ってほしかったなぁ・・・。これは2作品目。全作品読破できるか!?
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薄いし字は大きいし、なんじゃこれ??って感じで読み始めたが。。。 読む手が止まらないという内容ではないが、こころにシンと響く文章だった。 図書館戦争のあとだったせいか、綺麗な文体が気持ちよかった。
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もっと息子が思い出す父の姿が知りたいと思わされました。そう思うとこの物語では物足りなく感じ、浸るまでにはいかなかったのが残念です。でもそれがこの父と息子の関係だと言われると、余計にピンとこなくなるので、それで片付けて欲しくないとも思いました。 しかし、父と息子の距離ってどう...
もっと息子が思い出す父の姿が知りたいと思わされました。そう思うとこの物語では物足りなく感じ、浸るまでにはいかなかったのが残念です。でもそれがこの父と息子の関係だと言われると、余計にピンとこなくなるので、それで片付けて欲しくないとも思いました。 しかし、父と息子の距離ってどういうものなのでしょう。付かず離れずでしょうか?それともあいまみえない関係でしょうか?ずっとそればかりを考えていましたよ。 この本は、テーマ競作小説「死様」ということで、6人の作家それぞれが単行本を出版されているうちの一冊ということです。 死様というと、感覚的には濃いイメージがあったけれど、この作品は淡く静かに進んでいきます。でも、その意図は考えれば考えるほど、本当は中身が濃いのではないかと思うんですが。。。読解力不足ですね。 この本を読んで、主人公である四十代の息子の姿に、自分自身と親との距離感はどうだろうかと考えてしまいました。
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母親から手渡された分厚い原稿用紙。 孫である娘が誕生日に贈った万年筆で、病床にいる父親が自分の人生を書き綴った原稿…。 父親のストーリーを読みつつ、父の死を見送る息子を描いています。 両親にもそれぞれのストーリーがあるんですよね。 改めて一個人としての親を考えました。 どんな...
母親から手渡された分厚い原稿用紙。 孫である娘が誕生日に贈った万年筆で、病床にいる父親が自分の人生を書き綴った原稿…。 父親のストーリーを読みつつ、父の死を見送る息子を描いています。 両親にもそれぞれのストーリーがあるんですよね。 改めて一個人としての親を考えました。 どんな一冊ができるのでしょう…。幸せであってほしいです。 『死様』をテーマにした競作小説の2冊目でした。 死様…。 如何に生きてきたか、その生き様が最後に見えてくるように思います。
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+++ 「私」は、アルバイトと自分を含めて五人の広告制作会社を営んでいる。広告業のかたわら小説を書き、二冊の本を出している。会議中に、母親から電話があった。入院している父親の容態が悪くなり、医者から、会わせたい人は今のうち呼ぶように言われたという。函館に飛ぶ。父は、生体情報モニタ...
+++ 「私」は、アルバイトと自分を含めて五人の広告制作会社を営んでいる。広告業のかたわら小説を書き、二冊の本を出している。会議中に、母親から電話があった。入院している父親の容態が悪くなり、医者から、会わせたい人は今のうち呼ぶように言われたという。函館に飛ぶ。父は、生体情報モニタという機械に繋がれていた。父とは不仲だったわけではないが、男同士で腹を割った話をした経験も、二人きりの親密な体験をした記憶もない。母から原稿用紙の束を渡された。父が書いていたものだという。本にしたくて、専門家のお前に意見を聞きたいんじゃないかと。父は八十年間、北海道で暮らしていた。出世したとは言い難い会社員、見合い結婚、子どもは「私」と妹の二人。平凡な人生を綴ったであろう厚さ四、五センチの原稿を息子以外の誰が読みたがるだろう。読み始めた。少年時代に羆の一撃を食らい、祖父とのニシン漁で学資を稼ぎ、北大文学部の英文科を目指すところまで読んだ時点で、父は事切れた。すべて初めて知ることばかりであった。最初は、素人が陥りやすい自慢話と思ったが、その後創作と思うようになる。葬儀まで暦の関係で日にちが空き、物言わぬ父の傍らで読み終えた。そして葬儀の日、すべては明らかになった……。 一人の人間が死した後に厳然と残り、鮮やかに浮かび上がってくるものとは。 +++ 「死様」というテーマの競作のなかの一冊のようである。ほかには、佐藤正午、白石一文、土居伸光、藤岡陽子、盛田隆二各氏が参加している。 父の死に接し、父が残した自伝のような原稿を読む息子である「私」は、生きているころには聞けなかった、聞こうともしなかった父の生き様をじっくりと知っていくことになる。戦争を体験し、北海道に移民として入植して並々ならぬ苦労をしてきたひとりの男の人生の重みが胸にずっしりと訴えかけてくるようである。校正しながら読み進み、自費出版でもしてやろうというつもりで読み始めた「私」も、いつしか惹き込まれ、読み終える頃にはそんな気持ちはなくなっていたのだった。これは、自分と母と妹が読めばそれでいい。そう思えるようになったのである。そして迎えた葬儀当日は、雪に降り込められ一面白い世界であった。争議会場となる自宅へ向かってやってくる人々の顔を見たとき、「私」は父の人生の宝を目の当たりにしたような心地だったのだろう。ひとりの人間の歴史を感じさせられる一冊である。
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テーマ死様シリーズの一冊。父の遺した私小説のような原稿を読みながら、全く知らなかった父の人生と自分の人生を重ね合わせて振り返る。誰の人生にもドラマがあるのだと再認識した。
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タイトルが面白そうだったので、 何気なく手にしてしまった本だ。 意外や意外、と書いたら、作者に 失礼だが、面白かった。 主人公と父親の関係、距離感に 何か懐かしさを覚えた。 それと、「戦争」が生きている人、 一人一人に与えた「残酷」さも 感じられ、戦時中、南方で戦った (戦...
タイトルが面白そうだったので、 何気なく手にしてしまった本だ。 意外や意外、と書いたら、作者に 失礼だが、面白かった。 主人公と父親の関係、距離感に 何か懐かしさを覚えた。 それと、「戦争」が生きている人、 一人一人に与えた「残酷」さも 感じられ、戦時中、南方で戦った (戦わされた)、今は亡き父のことを思った。
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