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あなたのための物語 の商品レビュー

3.9

72件のお客様レビュー

  1. 5つ

    18

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2026/01/15

そして、サマンサ・ウォーカーは、動物のように尊厳なく死んだ。 この一文の攻撃力が高すぎる。 今まで読んできた美しさも切なさも恋しさも、死を前にしたら0に戻る。 「目の前に死が迫っている」ということの切迫感、焦燥感、嫌悪感がもう、嫌になるぐらい迫ってきて苦しい。 死ぬということ...

そして、サマンサ・ウォーカーは、動物のように尊厳なく死んだ。 この一文の攻撃力が高すぎる。 今まで読んできた美しさも切なさも恋しさも、死を前にしたら0に戻る。 「目の前に死が迫っている」ということの切迫感、焦燥感、嫌悪感がもう、嫌になるぐらい迫ってきて苦しい。 死ぬということはこういう事だよな。愛する人に囲まれて眠るように。。なんておとぎ話の世界で、実際はもっと目を背けたくなるような汚物に包まれることだと思う。 それでも彼女が物語に捧げたあの時間は、ただの逃避でなく価値あるものだったと。最期にサマンサの心を救う記憶だったと信じたい。

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2026/01/13

肉体が滅ぶということ。己が死ぬということ。 崩れゆく身体と剥がれ落ちていく尊厳。それらに喘ぎ苦しみ肉体という不完全な入れ物を憎みながらも、誰にでも共有可能なテキストとなった人格を前に肉体という特権に気付かされる。"死"の無情さ、冷たさ、その先にある灰色の世界。...

肉体が滅ぶということ。己が死ぬということ。 崩れゆく身体と剥がれ落ちていく尊厳。それらに喘ぎ苦しみ肉体という不完全な入れ物を憎みながらも、誰にでも共有可能なテキストとなった人格を前に肉体という特権に気付かされる。"死"の無情さ、冷たさ、その先にある灰色の世界。フィクションの中で死がこれほどまでに無情に容赦なく描かれることに衝撃を受けた作品。

Posted byブクログ

2025/11/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

死についてのお話。 死に近づいていく主人公の肉体的な苦しみ、精神的な葛藤が克明に描かれていて、考えさせられた。 読むのに1週間かかった。いい読書体験だった。

Posted byブクログ

2025/11/30

実はこの本をはじめて読んだのは2年以上前なのだけど、あまりにも考えを迫られる衝撃が大きくて、何度もくりかえし引き戻されてきた。 小説の舞台である近未来では、革新的技術によって、失われた脳神経が復元可能になっているだけでなく、同じ技術を使って社会に蓄積されたデータベースを利用するこ...

実はこの本をはじめて読んだのは2年以上前なのだけど、あまりにも考えを迫られる衝撃が大きくて、何度もくりかえし引き戻されてきた。 小説の舞台である近未来では、革新的技術によって、失われた脳神経が復元可能になっているだけでなく、同じ技術を使って社会に蓄積されたデータベースを利用することが可能になり、人の能力の飛躍的な拡大が可能になろうとしている。だがそれは、個々の人間の神聖さがはぎとられて、他と置き換え可能な・また編集可能なひとつのテキスト、データベースの一部になるということをも示唆している。その可能性をすでにはっきりと見てとっている存在にとって、ひとつのテキストにすぎない己の死をどう受け止めうるのか、ままならぬ肉体の苦しみに意味など見出しうるのか? これは、ただひたすらにこの問いをめぐって格闘する小説だ。そしてこの恐るべき可能性を示されてしまった読者もまた、この問いを自らの問題として考えることから逃れられなくなる。なぜなら、主人公と同じようにままならぬ世界への抵抗を糧に生きる者も、主人公の母と同じように信仰に生きる者も、いずれも自身のための物語を紡ぎ続けるテキストであることに変わりがないということもまた、この小説は突きつけるからだ。 だからこそ、他者のために物語を紡ぐべく生み出された人工人格の存在が驚くべき結論にたどり着くことを、主人公の格闘とともに、読み終わった後も何度もくりかえし考えずにはいられなくなる。 読むのは難しくないが、楽な小説でもない。にもかかわらずこれは、読む人にとっては、忘れられない本になる。誰のものでもあり、あなたのためだけのものでも物語に。

Posted byブクログ

2025/08/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

人間の人格や脳に触れ、それを改変することができるというのは、人間の神聖さを犯すことであり、その価値を著しく下げるだろう。今、実際にこのような技術が開発されているのかどうかわからないが、もしやするとこの世界はすぐそこまで迫っているかもしれない。 人工知能的な「wanna be」に小説を書かせる。現在のAIに人間がやらせていることとほぼ同じだが、「wanna be」が違うのは人工ではあるものの、知能だけではないことだ。体は立体映像で実態はないが、感覚センサーで見たり触れたりすることができる。サマンサのために役立てることはないか常に尋ね、あくまでも道具としてしか接しない彼女にいつのまにか愛情を持つようにもなる。そして、彼女ですら想像のつかない自死を選び、その目的もまた彼女であるという。簡単に愛とはいうものの、そこには人間の真理を追求するかのような思いが込められていた。 あなたのための物語。サマンサのために彼が書き上げる物語であり、彼自身のための物語でもある。

Posted byブクログ

2024/10/20

AIが実用化されてきたので、自分の声を残して生きているフリができるとラジオパーソナリティが言っていた。 本作でSFの世界足らしめているITP(Image Transfer Protocol)も、脳内の神経の動きをそのまま伝えることができるというもので、知識や感情が可視化され、伝...

AIが実用化されてきたので、自分の声を残して生きているフリができるとラジオパーソナリティが言っていた。 本作でSFの世界足らしめているITP(Image Transfer Protocol)も、脳内の神経の動きをそのまま伝えることができるというもので、知識や感情が可視化され、伝達可能になるというもの。 その開発者が死に直面して、人間とは何かを考え、ITPで出来ることできない事を考える。 難解だったが、現在だからこそ考えさせられる話だった。

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2024/07/28

SF作品としては派手で分かりやすい展開がなく、地味である。 でもこの物語から目が離せない。 テクノロジーの進歩と決して逃れられない一人の人間の「死」。それを見つめるように物語は進んでいく。死に向かう者の肉体や精神が苛まれていく様は悲しく、息が詰まりそうだがどうしてかこの物語からは...

SF作品としては派手で分かりやすい展開がなく、地味である。 でもこの物語から目が離せない。 テクノロジーの進歩と決して逃れられない一人の人間の「死」。それを見つめるように物語は進んでいく。死に向かう者の肉体や精神が苛まれていく様は悲しく、息が詰まりそうだがどうしてかこの物語からはそんな風に見えない。文体のなせる技だろうか。 仮想人格である《wanna be》との絆には切なさがあるし、静かな物語なのに迸る感情がある。

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2024/05/26

ナノマシンに神経の代役をさせる技術を流用したITP(イメージ トランスファ プロトコル)。 脳の中で擬似神経を操りあらゆる経験/感情をダイレクトに伝達できる。 不治の病に侵されたサマンサの肉体的苦痛の描写。 ITPで作られ人間の感情を与えられた仮想人格。 その人格が創造性を示す為...

ナノマシンに神経の代役をさせる技術を流用したITP(イメージ トランスファ プロトコル)。 脳の中で擬似神経を操りあらゆる経験/感情をダイレクトに伝達できる。 不治の病に侵されたサマンサの肉体的苦痛の描写。 ITPで作られ人間の感情を与えられた仮想人格。 その人格が創造性を示す為に書かれ続ける物語。 悲劇それ自体と美しいものを一緒くたにしていない。 読んでいる間、世界が精確に描かれているんじゃないかという実感が確かにあった。 設定や世界観のユニークさだけじゃない、文章自体にSFのおもしろさが詰まってた。 ずっと読んでいて、今月はもう一つ分、人生に触れた気分。 『彼女の仕事にも、経済活動以上の意味などない。ITPも、新しい可能性を与えるものではない。新しいサービスの代価を払える人間と、そうでない貧しい人間とを振りわけただけだ。大学の学費をパートタイムで稼いでいたかつての彼女自身のような経済弱者が、これからはITPを買えない不利を背負うのだ。』 『それが伝統だから?人間にとって、死ぬことが伝統だから、死ななければいけないの』 『ひとつひとつのできごとに、つながりはないわ。シークエンスを作っているから“物語”性を感じるだけよ』 『未来を、現在の人間たちがゴミ箱にするのは、それでも公平じゃないわ。形而上学のつもりで二十年後の未来へ希望を託したら、二十年後には現実になった問題を受け取らないといけないのよ。年数を曖味にして“未来”って呼び続けたって、いつか現実になるってことは変わらない。今の世界だって、過去の誤答を、自分たちの身を守るために修正してるじゃない。“未来”に余計な期待をすることは、理性的だと思わないわ』

Posted byブクログ

2023/02/25

#あなたのための物語 #読了 今日、AIが生活を便利にしているけれど、人間の感情と肉体をAIが真に理解する日はこないだろうなと思った。 だからこそ人間は人間らしく生きることが大事だ。 #長谷敏司 #早川書房 #読書

Posted byブクログ

2022/12/04

うーん、面白いは面白いのだけれど、どうしても理屈が先に立つというか、その理屈がややくどくて物語に入り込めない

Posted byブクログ