オーダーメイド殺人クラブ の商品レビュー
『赤毛のアン』が好きだという母親がつけたアンという名について、アン・ブーリンが由来かと聞く徳川に、心の秘密を打ち明ける。リア充(リアル世界では充実している)ではあるが、女の子同士の人間関係の駆け引きや、重たい「ママ」やアンをひいきにする佐方への嫌悪など、現実世界の苦しみを死によっ...
『赤毛のアン』が好きだという母親がつけたアンという名について、アン・ブーリンが由来かと聞く徳川に、心の秘密を打ち明ける。リア充(リアル世界では充実している)ではあるが、女の子同士の人間関係の駆け引きや、重たい「ママ」やアンをひいきにする佐方への嫌悪など、現実世界の苦しみを死によって清算することに強く惹かれる。「自分に何もなく終わっていくのなんか、嫌なんだ」と自分を殺すようにもちかけると、徳川はあっさり「いいよ」と了解する。席は隣同士ながら教室ではほとんど口をきかない2人だが、接近し、計画ノートはどんどん埋まっていく……。 タイトルで引いてしまい読むのにためらいがあったが、結末はよかった。直木賞候補作品。
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2011.07.25読了。久しぶりのグロい人間関係の話。中学生の頃を鮮明に思い出した。やっぱりそういう話を書かせたら辻村深月さんはぴかいちだと思う。
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リア充から転落していくシーンは正にリアル。アンの悩みも徳川の悩みも大人になれば割り切れるものですが、中二という多感期に抱えるには重い。予想はしてましたが、最後はああなって良かったと思います。
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辻村さんの学生ものの話はやっぱりいいですね! 中学生の人間関係のえげつなさにちょっとげんなりしてしまい冒頭で頁をめくる手がなかなか進まず、読むの挫折しそうになったのですが、1/5程度読んだところから急に面白くなって一気に読んでしまいました。 中学2年生、本来の意味合いとは違いま...
辻村さんの学生ものの話はやっぱりいいですね! 中学生の人間関係のえげつなさにちょっとげんなりしてしまい冒頭で頁をめくる手がなかなか進まず、読むの挫折しそうになったのですが、1/5程度読んだところから急に面白くなって一気に読んでしまいました。 中学2年生、本来の意味合いとは違いますがまさに中2病という言葉が相応しい作品だと思います。 タイトルロゴの「オ」の文字だけ微妙に曲がってるんですね。
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是非、映像化して欲しい! 絶対美しい作品になる! 吐きたくなるほど切実な、14歳のリアルが詰まってる。
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自分だけは他人と違う。 でも、他人と違って見られたくない。 思春期の、中学生の、矛盾した気持ちが赤裸々に綴られている小説。 私は、いわゆる”アン側”でもなく”徳川側”でもない中学生だったけれど、何だか両方の感情や行動が理解できるような、気がした。 そして、彼らを取り巻く大人たち...
自分だけは他人と違う。 でも、他人と違って見られたくない。 思春期の、中学生の、矛盾した気持ちが赤裸々に綴られている小説。 私は、いわゆる”アン側”でもなく”徳川側”でもない中学生だったけれど、何だか両方の感情や行動が理解できるような、気がした。 そして、彼らを取り巻く大人たちのことも、もちろん。 確かに、賛否両論ある内容だとは思うけれど、私は良かったと思う。 ラストも、感動した。
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クラスでも『イケてる』方に入る少女アンは、『昆虫系少年』徳川に、「私を殺して?」とお願いする。 そこから 少年と少女は『今までにない、歴史に残るような事件』について相談しあっていく。 中学生という 特殊で、小さな、でも残酷な社会を背景に アンは『事件』の日へと日々過ごし...
クラスでも『イケてる』方に入る少女アンは、『昆虫系少年』徳川に、「私を殺して?」とお願いする。 そこから 少年と少女は『今までにない、歴史に残るような事件』について相談しあっていく。 中学生という 特殊で、小さな、でも残酷な社会を背景に アンは『事件』の日へと日々過ごしていく。 最後は 展開が読めがちだったけれど、私としては落ちるとこにストンと落ちた感じで良かった。 ツナグも良かったし 他の作品も読んでみたい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
辻村嬢は本当に上手くなったなあ。 直木章は残念だったけれど、私的には吉川英治文学新人賞はこちらが獲れたら良かったのにー、と思わずにはいられなかった。 気持ちのいいくらい人の放って置いて欲しい、あの女子の絶対的ヒエラルキーの中で生きていかねばならなかった日常の空気と、そんな日常から隠れて育てたイタイイタイ中二病の記憶を引っ掻き回してくれる小説だった。 これだけの分量を読んだというような感覚は全く起きないほど、サクサク読めてしまうのだが、その反面、こんなに枚数は必要だったか? と思わされることが時々あった。 アンが自分の命を駆けた自分だけの特別な伝説的事件を創り上げる過程には、確かにそれなりの理由となる閉塞感が必要だし、それを辻村嬢は本当に美しく丁寧に描いているのだけれど、だからこそどこかたがが外れた危うさがもう少し欲しかったと思ってしまう。 言葉を繋げて物語を作って、アンを、あの頃では耐えられないようなことでどんどん追い込んでいるのだけれど、緊張感があまりにもなかったように感じたからだった。 ラストは恐らく本当には死なないのだろう、という憶測がどうしても出来てしまうので、では(特に辻村嬢の場合)どんな仕掛けが待っているのかな? と期待値を上げて読んでしまったのがいけなかったか。 アンが、徳川もまた十四歳の、等身大の自分を投影した影である、ということに気付く辺りの疾走感は、さすが辻村嬢! といった青春キラキラっぷりなんだが、最後に今度は退廃的なお願いではなく、生きるための明日へのお願いだっただけということが、どうしてもちょっと物足りない感があるのだった。 それでも最後のあっけらかんとした終わりはとても良かった。 時間が経って、あんなに思いつめずとも生きていけるのだということがすんなり分かってしまう空虚さや、もう手には入らない、あの濃密でヒリヒリした時間や思いが腹の底に沈んでいくのを感じながら、毎日を凌いでいく感じがよく出ていた。 しかし、クラスに一人はいる面倒臭い女を書かせたら、辻村嬢はピカいちだな! 造語やネットスラング的な言葉も積極的に使っていて、これは中二くらいの子が出会えたら嬉しい小説だろうなあ、と思った。 おれのような過去の厨二を未だに引き摺って、ひん曲がったままきちゃった大人が読むから「物足りない」とかいっちゃう系なんだと思う。 この本に中学生時にでも会えたら、割とずっと覚えている本になるんじゃないだろうか。 澁澤とか読んじゃう系女子も生まれて欲しい。 とにかく、これだけの刊行ペースの中でこんなにもきちんと「小説」たるものが書けるのは凄いなあといつも思う。 特に辻村嬢の作品は、脳内に残る映像の再現度(再現、というのはおかしいが)が半端ない。 短い期間の中で、情景や背景の情報量の取捨選択を行い、主人公の気持ちに向き合い、だが突き放しながらじっくりと組み立てられたのだろう彼女の小説は、とても映像にしやすくて、後に残る自分だけの世界がまるで自分の体験した記憶のようになるのだ。 本を読むことで得られる、これ以上とない宝物を今作も頂きました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
第145回直木賞候補作品。 先日発表があり、残念ながら受賞ならず。 中学2年生の女子とその女子から殺人依頼を受けた同級生男子のお話。 クラスも部活も同じ、仲良しの芹香と倖からある日突然無視されてしまい、混乱する小林アン。 女子にはグループが出来ていて、新しく仲間を作るむずかしさ。 女子とは違い、幼稚な馬鹿ふざけをしている男子。 でもその中にもグループができていて、活発なモテな男子とオタクな昆虫系男子がいる。 その昆虫系男子で親が英語教師の徳川勝利。ショーグンJr.と呼ばれている。 この徳川が描く絵画に感銘を受けるが、徳川の秘密を知り、ショックも受ける。 友達との関係や母親との関係に悩み、リア充じゃない自分と 彼氏がいて、毎日楽しげなリア充女子との差を感じ、 やがてこんなに苦しい自分を昆虫系男子、徳川に殺してくれと持ちかけ、承諾される。 まわりとは違う「特別な存在」になるべく、 殺人方法・衣装・場所・決行日等をノートに書き、実現に向かっていくふたり。 殺し、殺されるふたりがどんな風に殺人を実行するか時間をかけて相談するという設定が 普通じゃなくて、最初はとても違和感があった。 でも読んでいくうちに理解とまではいかなくても、このふたりの気持ちの持って行きようが 私のなかにある不安定さとか、生きていくことへの怖さ・不安な部分に触れて、 切なくて、悲しくて、鳥肌が立って、どうしようもない感覚に陥った。 でも最終章でのふたりに心が震えて、しばらくの間、気のぬけたような、頭も心も真っ白状態になった。 主人公アンの視点で語られるので、徳川の気持ちがいまいちよくわからない部分も多いのだが、 それがかえってラストシーンを際立たせているのではと思った。 毎日の生活の描写がとても良かった。 いつ洗ったかわからないような教室のカーテンでぐるぐる巻きになって遊ぶ男子の様子とか、 無視される順番がいつ自分に来るかわからないなど、女子同士のいじめの理由・やり方、 恋愛やそれを見る周りの眼、赤毛のアン好きな母親がつけた名前に対する嫌悪感、 子ども扱いする母親への反感。 河沿いや山の風景。 これらの描写がとても細かい。 以前読んだ「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」は第142回直木賞候補だった。 この作品も複雑な女友達・母娘関係がテーマ。 こういうのを書かせたら、今、この人がいちばんかもしれないなあ。
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