男の絆 の商品レビュー
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大学の学部1年の頃、ほんの軽い気持ちで触った本でしたが、新しい視点を与えてくれました。昨今、ジェンダー論や「男の生きづらさ」がネットで話題になっていますが、その「生きづらさ」の答えが凝縮されているように思います。
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本書は、ヘテロセクシズムが歴史的にどのように構成されたかの分析を行う。その中で、江戸時代の男色にまつわる文学作品、明治時代の学生男色、大正時代の新しい家庭像や、恋愛=結婚=家庭という捉え方、女性の専業主婦化、性科学による同性愛概念の普及、ボーイズラブなどを取り上げ、現代日本に存在...
本書は、ヘテロセクシズムが歴史的にどのように構成されたかの分析を行う。その中で、江戸時代の男色にまつわる文学作品、明治時代の学生男色、大正時代の新しい家庭像や、恋愛=結婚=家庭という捉え方、女性の専業主婦化、性科学による同性愛概念の普及、ボーイズラブなどを取り上げ、現代日本に存在するヘテロセクシズムを歴史的産物として捉え直す。 ヘテロセクシズムでは異性愛が当然視される。その帰結として、同性愛は排除される。さらに、男性の優位性、特に、男性による公的領域の独占は女性の公的領域からの排除につながる。結果として、男性同性愛排除と女性排除が「男の絆」を守ることに貢献するという構図になる。 タイトルは、サブカル論だと思ったが、実際は社会における捉えられ方を分析する。そのために、同性愛者や男の絆・同性愛にまつわる法律やジャーナリズム、文学作品やその受容のされ方をさまざまな資料から紐解いていく。 著者は意図的に、主流ではないことを分析するのではなく、そもそもの当然視されているヘテロセクシズムの側の 分析を行ない、それを通じて非主流の分析をも行なっている。その意図は成功していると思う。 本書では扱われていないが、女性同性愛そのものやそれを扱う文学作品の捉えられ方の分析を本書の内容につなげられるとより面白いと思った。たとえば、「といちはいち」の歴史などが考えられる。
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主にビジネス世界の男性社会の成り立ちを理解したく、読んでみた。 男同士のあこがれや尊敬は、一般にあるものなのだろう。 ホモソーシャル=ホモフォビア(同性愛嫌悪)+ミソジニー(女性嫌悪) ホモフォビア(Homophobia)とは、同性愛、または同性愛者に対する恐怖感・嫌悪感...
主にビジネス世界の男性社会の成り立ちを理解したく、読んでみた。 男同士のあこがれや尊敬は、一般にあるものなのだろう。 ホモソーシャル=ホモフォビア(同性愛嫌悪)+ミソジニー(女性嫌悪) ホモフォビア(Homophobia)とは、同性愛、または同性愛者に対する恐怖感・嫌悪感・拒絶・偏見 ーーーーーーーーー ●江戸時代 ・陰間:男性が男性にセックスを提供する職業 ・幕末には、男色文化は絶滅の危機 ●明治初期 ・硬派学生、男色は魂を高めあうもの ・美少年+若武者の男色関係、大流行 ●明治中期 ・男色学生が眉目秀麗な美少年を誘拐 ●明治後期 ・福沢諭吉、恋愛という概念の普及 ・女学生増加 ・女学生との恋愛+結婚が正統性を獲得 ・肉交・情交か(やったかやってないか)という価値観台頭 ・男色(男性同士の肉交)の排除 ・男同士の(恋・恋愛ではなく)”友情”の強調 ●大正 ・性や性欲に関する科学的な物言いが一気に世の中にあふれる ●男性による公的な空間の独占 ・社員・主婦システム ・男女の 2 極ではなく,企業を含めた 3 極構造 (企業が、家族手当などによって、積極的に主婦化を支援) ・現状でも、ワークライフバランスを実現させる下地が整ってない ●概念 ・恋・色 ⇔恋愛:清くて正しい、価値の高いもの、おそろしく情熱的なもの、危険な香りのするもの?(輸入時) ・結婚を前提とした恋愛―ヘテロセクシズム(異性愛主義)の制度化 ・「日本男児たるもの」と大上段に構えつつ、読者のプライドをくすぐるような文章が人気を博す→今も同じ ・ソドミー:「不自然」な性行動を意味する法学において使われる用語で、具体的にはオーラルセックス、肛門性交など非生殖器と生殖器での性交 ・女性=本来は、人格をもった一人の人間として女性を尊重し、男性と同じように社会を構成し、つっくり挙げていく存在。 ⇔恋愛や性の対象としてしか見ない、モノにした女の数を誇る、男性同士の絆を深めるための道具として扱う態度
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男社会への疑問、「ホモソーシャル」について学びたくなる中で、本書に辿り着いた。 深みある内容が、平易に書かれていて読みやすい。 図4-1 明治時代の「学生男色」解体モデルは秀逸。 著者の職業が高校教師だからってのもあるだろうか…。稀有なレベル。読んでて大変助かる。有り難い。 ...
男社会への疑問、「ホモソーシャル」について学びたくなる中で、本書に辿り着いた。 深みある内容が、平易に書かれていて読みやすい。 図4-1 明治時代の「学生男色」解体モデルは秀逸。 著者の職業が高校教師だからってのもあるだろうか…。稀有なレベル。読んでて大変助かる。有り難い。 日本近代史好き、日本で生まれ育った日本人男性として、身近な案件について興味深く学ぶ事ができたと思う。
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※このレビューにはネタバレを含みます
「男同士」に隠された日本社会。 結構軽い気持ちで(ヲタク的な興味で)読んでみたけど、ジェンダー論とか踏み込む社会系の本でした。なるほどと思うこともいくつか。男性が書いているってところが、ひとつポイントかと。
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「色」と「情」がないまぜだった江戸時代の「男色」が明治になって「同性愛」と「男の絆(ホモソーシャリティ)」に分離して、前者が後者によって駆逐されていくというような内容。「同性愛」もヘテロ同士の「恋愛」概念が流行するにつれて、男を女に見立てた代理恋愛に変容してゆくそうだが、戦前の旧...
「色」と「情」がないまぜだった江戸時代の「男色」が明治になって「同性愛」と「男の絆(ホモソーシャリティ)」に分離して、前者が後者によって駆逐されていくというような内容。「同性愛」もヘテロ同士の「恋愛」概念が流行するにつれて、男を女に見立てた代理恋愛に変容してゆくそうだが、戦前の旧制高校や陸軍(自衛隊では今もなお)で見られたのはまさしくこれだろう。時代因か状況因かというところ。
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男色・同性愛から男同士いや人々の絆を捉える。「偉い方」が唱えた理論が浸透して当たり前になってしまう・隠蔽されてしまうってのが具体的にわかった。だから、性の抑圧うんぬんいっているんだろうなあ。 男子校シンドロームと呼ばれる「女友達という存在が理解できないこと」ってのは言われてみれ...
男色・同性愛から男同士いや人々の絆を捉える。「偉い方」が唱えた理論が浸透して当たり前になってしまう・隠蔽されてしまうってのが具体的にわかった。だから、性の抑圧うんぬんいっているんだろうなあ。 男子校シンドロームと呼ばれる「女友達という存在が理解できないこと」ってのは言われてみれば、まあ確かにそうなのかなという気がしました。 「女友達」ってなにかね?って多少は考えたことはあるけれども、「女友達という存在が理解できる」と呼ばれる状態については全く考えたことがなかったし、まあそうなのかなあとは思います。たぶん。 蛇足的な話でしたが、示唆に富んでいると思いました。
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タイトルに興味を持ち図書館で借りた本。 『男の絆』というタイトルであるが、扱っているのは男同士の友情とかではなく男同士の同性愛の歴史についてだ。 江戸や明治の男同士の性的関係が、対等に結ばれるのではなく年上男性が年下男性を誘うという形で行われていたというのは初めて知った。 明治か...
タイトルに興味を持ち図書館で借りた本。 『男の絆』というタイトルであるが、扱っているのは男同士の友情とかではなく男同士の同性愛の歴史についてだ。 江戸や明治の男同士の性的関係が、対等に結ばれるのではなく年上男性が年下男性を誘うという形で行われていたというのは初めて知った。 明治から現代までの「男色」についての意識の変化というものを当時の資料から明らかにし、その意識の変化から男の世界として形作られた現在の日本社会の女性やセクシャルマイノリティの抱える問題、意識についても話はつながっていく。 ところどころで、「?」と思ったり考えたりする場面もあったが、日本社会や自分の認識する「性」の問題を考えるにはいい材料になった。
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明治時代の「男色」から現代の「同性愛」に至る流れが分かった。 「家庭」の役割、「男女の役割分担」など今は常識に近いことも明治~大正時代にできあがった概念なのですね。刷り込まれてしまって抗うことすら難しいけれど「生きづらい」と感じる人が少ない世の中にならないものかと思ってしまいます...
明治時代の「男色」から現代の「同性愛」に至る流れが分かった。 「家庭」の役割、「男女の役割分担」など今は常識に近いことも明治~大正時代にできあがった概念なのですね。刷り込まれてしまって抗うことすら難しいけれど「生きづらい」と感じる人が少ない世の中にならないものかと思ってしまいます。
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面白かったです。 結構冒頭で登場する「年下攻め」という用語にどれだけの読者がついてこれるのだろうか、心配になってしまったほどです。説明があるので分かるのだけど、字面だけだと、どっちだっけと考えてしまいました。 第5章以降が言いたい放題な感じで、特に刺激的でした。 「なぜ腐女子は男...
面白かったです。 結構冒頭で登場する「年下攻め」という用語にどれだけの読者がついてこれるのだろうか、心配になってしまったほどです。説明があるので分かるのだけど、字面だけだと、どっちだっけと考えてしまいました。 第5章以降が言いたい放題な感じで、特に刺激的でした。 「なぜ腐女子は男同士の恋愛に魅かれるのか」は誤った問いであり、問われるべきは「男同士同士の恋愛を描いた作品を愛読するだけで、なぜ「腐女子」などという蔑称で呼ばれなければならないか」との下りは、目からウロコが落ちたようです。もっと大学で勉強しておけばよかった。とはいえ、ボーイズ・ラブ作品は、「男の絆」がもろい「お約束」の上に成り立っている作りごとでしかないことを、白日の下にさらしてしまった、という下りは若干説得力が無いように思いました。 総じて、研究の喜びが感じられました。ま、こういう、言説を過去の新聞雑誌から掻き集めて分析する研究って役に立つの、という気も一方でしますが。 面白くて、男女共同参画について、新たな視点が得られました。
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