チェルノブイリの祈り の商品レビュー
あの原発事故の後、事故を処理した人たち、その家族、高濃度汚染された土地に住んでいた住民たち、そして子どもたち。丹念な聞き書きから事故の実相が暴かれる。 -------------- 「戦争は女の顔をしていない」のウヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによる聞き書きシリーズ、チョルノー...
あの原発事故の後、事故を処理した人たち、その家族、高濃度汚染された土地に住んでいた住民たち、そして子どもたち。丹念な聞き書きから事故の実相が暴かれる。 -------------- 「戦争は女の顔をしていない」のウヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによる聞き書きシリーズ、チョルノービリ原発事故版です。これはもう初っ端から読むのをやめたくなるような話でした。 あの事故から実に40年が経過して今なお事故処理中のチョルノービリ原発ですが、当時、ソ連当局から公表された情報は驚くほど少なかった記憶があります。しかしソビエト末期の腐敗した体制の下で何が起きたのか、この聞き書きは図らずも浮き彫りにしていて、その(主に当局の情報操作によってもたらされた)惨状には目を覆いたくなります。 ところで本書でも言及されていますが、チョルノービリには「赤い森」と名付けられた一角があります。高濃度の汚染で木々が枯れ、また、汚染された機材や土壌をそこに集めたことで深刻な汚染が残る場所ですが、今般のウクライナ戦争の初期、ロシア軍が「赤い森」に塹壕を掘ったことで多くの兵士が深刻な放射線障害を負って後送されたという出来事がありました。つまり、チョルノービリ原発事故の情報は、今だに秘匿されていて一般の兵士や人々には知らされていないのです。本書で描かれたような、人を人ではなく、ロボットのように扱うソ連仕草はウクライナ戦争を見ていれば一目瞭然ではありますが、それはソ連がスターリン時代から綿々と受け継いできた独裁のメンタリティで、その発露こそチョルノービリであり、ウクライナ戦争なのだな、と納得させられます。 それにしてもアレクシエーヴィチの手腕はうなるものがあります。聞き書きによって「被害者」という数字でしか残らない事象を一人の人間として浮き上がらせる。そこに紛れも無い人があったことを確実に伝えてくれます。読んでいて幾度となく涙が出ましたが、いつだって戦争やこうした大きな事故で真相を知らされずに被害に遭うのは市井の「数字」でしか表現されない人々なのだな、と思いました。そして日本のフクシマで、同じようなことがなかっとは、きっと誰も言えないのです。
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言わずと知れた名著!まあ、そういうのがいいでしょうか(笑)。独特の聞き書きが、このノーベル賞作家の持ち味ですが、原発事故という大惨事を、俯瞰的に上からではなくて、下から、あるいは、中から描いていくリアルはほかにありませんね。 戦争とか、原発とか、アホな政治家がかっこいいことを...
言わずと知れた名著!まあ、そういうのがいいでしょうか(笑)。独特の聞き書きが、このノーベル賞作家の持ち味ですが、原発事故という大惨事を、俯瞰的に上からではなくて、下から、あるいは、中から描いていくリアルはほかにありませんね。 戦争とか、原発とか、アホな政治家がかっこいいことをいいますが、彼らにないのは著者の視点だと、つくづく思います。
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「チェルノブイリの祈り」を読みました。 「戦争は女の顔をしていない」の著者さんの本。 昨年日本語で出版されてました。 チェルノブイリ原発事故が起きた頃、自分は10代。 「そういえばあの事故の事、全然知ろうとしてなかったな。」と思い読んでみました。 爆発した時に消火活動に行って被...
「チェルノブイリの祈り」を読みました。 「戦争は女の顔をしていない」の著者さんの本。 昨年日本語で出版されてました。 チェルノブイリ原発事故が起きた頃、自分は10代。 「そういえばあの事故の事、全然知ろうとしてなかったな。」と思い読んでみました。 爆発した時に消火活動に行って被被曝した消防士の奥さんの話(壮絶) 事故処理作業員の奥さんの話(壮絶) 内戦から逃げてきて汚染地に住む人々の話。 政府に対策を訴える科学者の話、 チェルノブイリから逃れた人々が差別される話。 西側からの援助に慣れっこになっていったチェルノブイリ被災者の話。 事故後もテレビで「西側からの攻撃。万事上手くいっている」と流れていた話。 やっぱりロシアなんだなと。今もそんなに変わってないんだろうな。 やっぱり人間の手に余るものは扱ってはいけないと思いました。脱原発 森林伐採して太陽光設置するのではなくて、 日本に合った発電方法を推進してほしいなと。 地熱とか?水力とか? 私にできる事はなんだろう・・・。 私の知人でも、群馬から九州に引っ越した方いたりする。 違う知人は色々敏感で、 放射能が飛んできた辺りの県内の野菜を食べるとヒリヒリすると言ってました。 私はさっぱり感じませんでした
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チェルノービリの放射能被害を最も受けたのはベラルーシであった 戦争は女の顔をしていない の作者 亜鉛の少年たち も
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著者はこの事故に関わるひとりひとりの声を丁寧に聴いていきます。歴史という大きなくくりにおいては失われてしまう個々の声。それをこの作品では聴くことができます。 あの当時、あそこで何が起こっていたのか、人々はそれに対し何を思い、何を語るのだろうか。 それを知れるのがこの本の最大の...
著者はこの事故に関わるひとりひとりの声を丁寧に聴いていきます。歴史という大きなくくりにおいては失われてしまう個々の声。それをこの作品では聴くことができます。 あの当時、あそこで何が起こっていたのか、人々はそれに対し何を思い、何を語るのだろうか。 それを知れるのがこの本の最大の特徴です。 特に、この本の最初に出てくる、事故で亡くなった消防士の妻リュドミーラ・イグナチェンコの物語は何度読んでも凄まじいです・・・私はいつも涙が出そうになります。
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スベトラーナ・アレクシエービッチのチェルノブイリの聞き書きの記録である。スベトラーナ・アレクシエービッチは2011年のあとがきでは知られていないと書かれていた。しかし、戦争は女の顔をしていない、という記録で一躍有名になった女性であり、日本で最もよく知られるロシア人である。 今な亡...
スベトラーナ・アレクシエービッチのチェルノブイリの聞き書きの記録である。スベトラーナ・アレクシエービッチは2011年のあとがきでは知られていないと書かれていた。しかし、戦争は女の顔をしていない、という記録で一躍有名になった女性であり、日本で最もよく知られるロシア人である。 今な亡き米原万里によって紹介されていたのは1998年の岩波の単行本の版である。 今は、ロシアが侵略しているウクライナの戦場になっているので、石棺になっていても行くことはできないが、日本の福島原発も石棺にならざるを得ないのかもしれない。
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1986年に起きたチェルノブイリ原発事故。これに遭遇したベラルーシの人々を中心に、その当時の状況、そして彼らの現在に至るまでの思いを、丁寧に聞き取り、伝え、問う。 簡単に、すらすらと読める内容では、決してない。この悲劇がもたらした傷跡を、痛み、苦しみを伴いながら追体験する。読了...
1986年に起きたチェルノブイリ原発事故。これに遭遇したベラルーシの人々を中心に、その当時の状況、そして彼らの現在に至るまでの思いを、丁寧に聞き取り、伝え、問う。 簡単に、すらすらと読める内容では、決してない。この悲劇がもたらした傷跡を、痛み、苦しみを伴いながら追体験する。読了後にカタルシスを得られるものでもない。 それでも、多くの原発を抱える国に住む我々にとって、大きな示唆を与えてくれる。もちろん、そのような環境にいなくとも、この「人災」とも言うべき事故が引き起こした出来事、それにより言うなれば人生の方向をねじ曲げられた人々の叫びは、接した者の意識に、何らかの作用をもたらすだろう。 個人的に感じたのは、人類が自らの手で止められない暴走を引き起こし、多くの人の人生を蹂躙してしまうものを、我々は扱っていていいものか、という疑いである。
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原発事故、戦争、共産主義(旧ソ連)、これらを経験した様々な立場の老若男女の本音が書かれており、衝撃のある一冊。
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オーラルヒストリーの持つ力と、それぞれの語り手の内側から耳を澄ますような著者の感覚があってこそ生まれた一冊なのだと思う。 有無を言わさずかき集められ、国家のためと疑うことをしないソビエト的作業員たちは線量計も与えられないまま原発内の汚染された黒鉛やがれきを生きたロボットとして拾い...
オーラルヒストリーの持つ力と、それぞれの語り手の内側から耳を澄ますような著者の感覚があってこそ生まれた一冊なのだと思う。 有無を言わさずかき集められ、国家のためと疑うことをしないソビエト的作業員たちは線量計も与えられないまま原発内の汚染された黒鉛やがれきを生きたロボットとして拾い集め、屋根の上を長靴で歩いて作業をする。近隣の村人も何も知らされないまま、供出量を確保するため今まで通り穀物を収穫し、牛乳や肉を出荷して行く。子供たちは砂場で遊び、作業員の父親が帰ればその帽子を嬉しそうにかぶる。数年後にはそんな皆がバタバタ死んでいき、障害のある子供が生まれてくる。想像などなんと生やさしいものだったかと思う現実。しかも、そんな土地でさえ、自分たちの最後の棲家だと移り住んでくる内戦で何もかも失った人たちがいる。難民でさえ自己責任とはねつける冷淡な日本の一部の人たちにこそ読んでほしい。村人みんなで日頃から支えていた障害のある女性が原発事故後政府にどこかに連れていかれてしまい、「彼女は寂しくて死んでしまうのではないか」と心配する人の話も忘れられない。
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言葉を失った。これはチェルノブイリ事故を語る本ではない。復興が進んだロシアやウクライナではなく媒体も取り上げないあの後黒い雨が降ったベラルーシ。あの時、何も知らされず復旧作業にあたって死んでいった兵士や作業員の家族、その後もそこに住まざるを得ない人たちの声を集めたドキュメンタリー...
言葉を失った。これはチェルノブイリ事故を語る本ではない。復興が進んだロシアやウクライナではなく媒体も取り上げないあの後黒い雨が降ったベラルーシ。あの時、何も知らされず復旧作業にあたって死んでいった兵士や作業員の家族、その後もそこに住まざるを得ない人たちの声を集めたドキュメンタリーである。文字も読めない農民たちは状況を理解しない。貧しい者たちは疎開もできない。アフガンの戦禍を逃れた難民たちが来れる場所はここしかない。その街で暮らすなら汚染されたその街の農産物を食べるしかない。復興に関わったすべての人が発症し死んでいく。身体中が膨れ上がって黒ずんで。事故後もクラスメイトが日に日に死んでいく学校に通う子供たちの考えていること。自分が奇形であることを知らずに病院にいる子どもとその親。大災害なら過ぎれば終わる。感染病なら予防やワクチンがある。しかしこの事故は、その瞬間からその後も人を殺め続ける。対策も打てないまま何が起きるかわからない不安と諦めの中で人々が暮らしている。そして核の防御壁にヒビが入り放射能は10年後も漏れ続けている。ここに神はいない。
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