檸檬 の商品レビュー
『桜の樹の下には』が一番印象に残った。綺麗なもの、見事なものに不安や焦燥を感じる、その精神はよく分からないけれど、なぜか心惹かれた。 驚くべきはその発想や思考ではなく、言い回し。 『桜の樹の下には屍体が埋まってゐる! これは信じていいことなんだよ。何故つて、桜の花があんなにも見...
『桜の樹の下には』が一番印象に残った。綺麗なもの、見事なものに不安や焦燥を感じる、その精神はよく分からないけれど、なぜか心惹かれた。 驚くべきはその発想や思考ではなく、言い回し。 『桜の樹の下には屍体が埋まってゐる! これは信じていいことなんだよ。何故つて、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじやないか。俺は あの美しさが信じられないので、この二三日不安だつた。しかしいま、やつとわかるときがきた。桜の樹の下には屍体が埋まってゐる。これは信じていいことだ。』 美しく繊細な言葉をあえて使おうとせず、誰もが使えるような無骨な言葉を好んで選んでいるのだ、と一冊読み終えたとき思った。 美しいものに不安を覚える、梶井基次郎ならでは。
Posted by
表題作の檸檬も好きだけど、 「冬の日」が特に好きだと思った。 じわりじわりと病に飲み込まれていく主人公の様が、冬の日の切なさと相まってたまらない気持ちになる。 声に出して読み上げたくなるほど、日本語が研ぎ澄まされていた。
Posted by
始めはすこし読みにくい文章だな、と読了せず手放しそうになったけれど、風景や描写の美しさに惹かれて全て読み終えられました。 表題作品よりも、Kの昇天が印象的でした。影に魅せられたK君の心理と同調して、K君の見た景色を紐解いてみたい気もするけれど、それは危ういことで、しかし得体の知れ...
始めはすこし読みにくい文章だな、と読了せず手放しそうになったけれど、風景や描写の美しさに惹かれて全て読み終えられました。 表題作品よりも、Kの昇天が印象的でした。影に魅せられたK君の心理と同調して、K君の見た景色を紐解いてみたい気もするけれど、それは危ういことで、しかし得体の知れないものに惹かれてしまうのは人間の性なのかもしれないとも思ったり。
Posted by
収録作品は以下のとおりです。 「檸檬」「城のある町にて」「Kの昇天」「冬の日」「桜の樹の下には」 著者が若くして病で亡くなったこともあってか、 作中の主人公(?)は皆病を得て生きる気力を失いかけています。 全作品を通して暗めのテーマですが、 見たもの聞いたものを描写しながら心の...
収録作品は以下のとおりです。 「檸檬」「城のある町にて」「Kの昇天」「冬の日」「桜の樹の下には」 著者が若くして病で亡くなったこともあってか、 作中の主人公(?)は皆病を得て生きる気力を失いかけています。 全作品を通して暗めのテーマですが、 見たもの聞いたものを描写しながら心の中の鬱屈を表現していて、 割り合い穏やかな文体です。 人は誰しも生活する中で精神的に好不調の波があると思いますが、 自分自身が好調だと、さらっと読み流してしまいそうなので、 敢えてブルーな気分の時に引っ掛かりながら読むことをお奨めします。 それぞれの作品は短いです。 でもあまり使われなくなった言い回しを読み直したり、 分からない単語を巻末の語註で確認したり、 時間をかけてゆっくり読みました。 その所為か映像が浮かびました。 文字を追っているというよりは目の前の映像を読んでいる感じです。 昔の映画のように画面全体がセピア色で、 その中にときどきハッとする様な鮮やかな色彩が飛び込んできます。 手当たり次第に積み上げられた画集とその上に置かれた檸檬とか、 道端に吐き捨てた痰(たん)の赤い色とか。
Posted by
胸を病み憂鬱な心をかかえて街を浮浪していた私はふと果物屋で檸檬を買う。その冷たさと香りは、突然私を幸福感で満たし…。 前半の陰鬱さと後半のさわやかさの対比がすばらしいです。 余談ですが作者が丸善に置いた檸檬がオークションで億単位の値がついたって本当かしら?
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
美しい日本語のオンパレード。 こういう美しい言葉の連なりは、この時代の人しか書けない。 「肺病にならないといい文章は書けない」 肺病を罹患したことによって、 大成する彼の文学は、常に寄り添う死が、 なぜか美しく書かれていて、本当にそれが魅力的。 『檸檬』 『城のある町にて』 『Kの昇天―あるいはKの溺死』 『冬の日』 『桜の樹の下には』 『冬の日』の4章以降が美しい描写が多かった。 脳裏に画が想像しやすい。 その点では『Kの昇天』で思い浮かぶ、 月と闇夜と影のコントラストも美しい。 そんでもって、はかない。 好きだなぁ(笑)
Posted by
読んでて結構難しかった。しばらくしたらまた読み返そう。個人的にはKの昇天、が印象的だった。発想がなんかすごい。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
純文学を読もうと手に取った一冊。昨今の小説を読みなれている身としては何かすんなりと入ってこない。 言葉の使い方、筋の進め方、これでいいのかと疑問に思う。 谷崎とか、三島とかは確かに天才だが、それ以外の作家は、今の方が優れているのかなとも感じている。 口語文学の歴史の差かな。
Posted by
日本語での表現力と妄想力。私がもってないものでできている小説。残念なのは漢字にふりかなが無用に多く、想像がそがれる気がする←実際は関係ないだろけど。
Posted by
檸檬。ひんやりスッと、なんか抜けていく感じがして、パリッとした黄色が酸っぱくて。なんだか、不思議な癒され方をしたかもしれない。
Posted by