風花 の商品レビュー
2024年8月11日、グラビティより。「夫に浮気されても怒れない主人公の女性のおっとりした感じ」と聞いて、母みたいだったのでイラついて。
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ストーリーだけを追うならば、これは不倫小説になるのだろうけれど、そういうくくりで読みたくないな、と思う。川上弘美の小説は。 のゆりは、おとなしくて、流されやすくて、出来るだけ決断を先送りして、変わらない日常を送ろうとする。そういうゆっくりとした人間だ。 でも、何も考えていないわけではなく、ちゃんと現状に向き合わなければいけない、とは思っていて、思いつつも足踏みしているような感じだ。 その歩みは遅くて、てきぱきした里美とは、実に対照的だ。(多分、里美に比べれば、卓哉も遅くて、そしてフラれる) それでものゆりは、自分はどうしたいのかなって、時間をかけて自分自身と向き合っていく。 結局、別れたのか寄りを戻したのか、明確には書かれていないけれども、言葉にしてみて初めて分かることもあるし、離れてみて気付くこともある。 のゆりは、卓哉のことが好きだと思っていたかもしれないし、一人では生きていけないと思っていたかもしれないけれども、そうではない可能性もある。 その可能性に気付けることも、大切なことだ。 だから、答えを出すのも、自分のペースで良いと思うのだ。 誰かの歩調に合わせる必要はない。
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自分の世界の中心だったものが、 手もとから離れそうになったら、 わたしものゆりのように為す術なくぼんやりとしてしまうかもなぁ。 ハッピーエンドではないけれど、 赤信号を駆け抜けていく光景、 すごく綺麗だった。
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川上弘美著『風花 (集英社文庫 ; か58-1)』(集英社) 2011.4発行 2022.2.22読了 風花(かぜはな)とは、青空ながらちらつく雪のことを言う。風に舞い散る花のような雪という意味がある。本書では、風花を「まるで空気よりも軽いものであるかのように、なかなか地面には落ちずに中空をただよっている」雪と表現して、夫の浮気をただ傍観しているのゆり自身の諷喩として用いられている。一見して、ただ問題解決を先延ばしにしているだけのように思えてしまうのゆりだが、一年以上、夫の浮気を放任できるのゆりの胆力は、ある意味で女性の生きる技と言えるかもしれない。のゆりは、最初こそどうすればいいのか分からないと言った様子だったが、自分でも無意識のうちに、医療事務のアルバイトを始め、資格を取得し、新しい人間関係の中で、自分の生きる道を模索しているように見受けられる。そうして時間をかけて自分の本当の気持ちを見極め、夫を冷静に観察しているのゆりがいる。最初にのゆりの心の中に沸き起こった感情は「かなしさ」(p51)。次に「別れたくない」(p111)という気持ち。ところが、姫路への転勤の道中、夫が「ふつうの大人の男」(p193)だと悟り、そこから一気に夫への気持ちが冷めてゆく。この一貫性のなさは、男性にとって女性を難解なものとさせる恐怖そのものだろう。太宰治著『人間失格』を読んだ後だから、殊更強くそう思うのかもしれないが、同時期に二人も愛人を作って(しかも、そのうち一人は本気だった)、許されるわけがないのも頷ける。ラスト、のゆりは赤信号の道路で「止まらずに、このまま渡っちゃえばいいんだ」(p301)と思う。赤信号は、前途に危険が迫っている比喩だと思われるが、その赤信号を無視して道路を渡りきるとはどういう意味があるのだろうか。おそらくは筆者自身も結論を持っていないのだろう。この先二人がどういう運命を辿るのかは、読者の捉え方次第だが、どんなに辛い日常でも、生活し続ける女性の逞しさが、本書の大きなテーゼになっていることは間違いない。逆に、男なしでは生きていけないような恋愛依存症の女性にとっては、本書はとてつもなく辛い読書経験となり得るかもしれない。 URL:https://id.ndl.go.jp/bib/000011174897
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この本は、家人がBookOffだかで入手した本らしく本人も読んでいないけど、手元に未読の本がなくなっちゃったので読んでみた。 川上弘美、多分初めて読む作家だと思うけど、娯楽小説の部類ではなく、文学的で文字を追う作業そのものを楽しむ感じか。 好き嫌いが別れるところだろうが、私は意...
この本は、家人がBookOffだかで入手した本らしく本人も読んでいないけど、手元に未読の本がなくなっちゃったので読んでみた。 川上弘美、多分初めて読む作家だと思うけど、娯楽小説の部類ではなく、文学的で文字を追う作業そのものを楽しむ感じか。 好き嫌いが別れるところだろうが、私は意外とこういうの好きです。 内容は、不倫された女性の気持ちを淡々と綴っている・・・ような感じ。 物語の展開が面白い訳ではない。 主人公のふらついた気持ちが、時にあぁ判るなぁ、えぇ?そうかなぁ・・・と読み解く事になるので、小中学校の国語でよくある「登場人物の気持ちを察してみよう。」みたいな。 特にお勧めはしませんが。
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・自分の意見をうまく言えない、変化が怖くて、浮気相手に喧嘩を売られても喧嘩すらできない主人公が、少しずつ変わっていき、前に進んでいく様子から勇気をもらえる作品。月並みだけど、自分も頑張ろうと思える。 ・「この人をずっと好きでいることができるのは、きっと、わたしだけなのに。」 そ...
・自分の意見をうまく言えない、変化が怖くて、浮気相手に喧嘩を売られても喧嘩すらできない主人公が、少しずつ変わっていき、前に進んでいく様子から勇気をもらえる作品。月並みだけど、自分も頑張ろうと思える。 ・「この人をずっと好きでいることができるのは、きっと、わたしだけなのに。」 その通りだとはっとした。里美も栗原も心から卓哉を愛しているわけじゃない。何も知らなかったのゆりへの優越感や他人のモノを手に入れた興奮で形成されてる。愚かな面を知っても彼を愛せるのはのゆりだけだし、そうしたいと最初は思っていた。それでも「好きでいること」をできなくしたのは他でもない卓哉のせいなんだよな。
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離婚を通じて、主人公、のゆりの変化を丁寧に描く。 ドラマチックな事は起きず、ただ淡々と、ゆっくりと、様々な人との出会いの中で、自らの人生を見つめ直す。 よい本であると思う。
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若い頃に読んだらきっと 主人公にイライラしていたと思う。 でも歳を重ねて白と黒だけで割り切れない部分があって、自分がどうしたいかが分からなく、どうしようも出来ない時がある。 妙にリアルな小説だった。 不倫ものだけど読み終えて悪い感じはしなかった。 逆になんか爽やかささえ感じた。
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こういう感じの本久しぶりに読んだ。 (ぼーっとした主人公。全体的に現実感は薄めだけど妙にリアルな描写もあり。) 一見淡々とした表現が多くて人物に感情移入しづらいけど、いつのまにか主人公や夫が身近な人に感じる。 江國香織のホリーガーデンやウエハースの椅子が好きな人は好きかも。 誰か...
こういう感じの本久しぶりに読んだ。 (ぼーっとした主人公。全体的に現実感は薄めだけど妙にリアルな描写もあり。) 一見淡々とした表現が多くて人物に感情移入しづらいけど、いつのまにか主人公や夫が身近な人に感じる。 江國香織のホリーガーデンやウエハースの椅子が好きな人は好きかも。 誰かに傷つけられた時、自分もこうしてのゆりのように静かに乗り越えていきたい。
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なんだかんだと一気読みさせてくれた一冊。 川上弘美は大好きだけど、この主人公は少し好きになれなかった。でも、自分と重なって見えるところがあったりしてズキズキした。 文体は柔らかく美しい川上弘美そのもの!なので良いんですが、なにせお題が不倫絡みなので、鬱々としながら読みました。でも...
なんだかんだと一気読みさせてくれた一冊。 川上弘美は大好きだけど、この主人公は少し好きになれなかった。でも、自分と重なって見えるところがあったりしてズキズキした。 文体は柔らかく美しい川上弘美そのもの!なので良いんですが、なにせお題が不倫絡みなので、鬱々としながら読みました。でも最終的には読み終わった後に良い余韻に浸れたのでなにはともあれオッケー。
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