海賊の経済学 の商品レビュー
無法者たちの利己的な利益の追求が、(18世紀の船上では)民主的で平等で効率的なコミュニティを作る。便益と費用という単純な指標で、一見めちゃくちゃな海賊の社会が、実は自然の摂理に従って形成される当然の結果である事が説明されていくのが面白かった。
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海賊における経済学というのは、恐怖のイメージ戦略とか、恐怖のマーケティングとか、意外と規律のある組織とか、そういうことなのね。 ドクロの旗やフックの手で怖いイメージを植え付けていたのは、戦わずして金品を強奪するため。 いつもドンパチやっていたわけじゃない、っていうのには納得。いつ...
海賊における経済学というのは、恐怖のイメージ戦略とか、恐怖のマーケティングとか、意外と規律のある組織とか、そういうことなのね。 ドクロの旗やフックの手で怖いイメージを植え付けていたのは、戦わずして金品を強奪するため。 いつもドンパチやっていたわけじゃない、っていうのには納得。いつもドンパチでは、出費も多いし人員も不足してしまう。
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一見破茶滅茶に見える海賊の行為が、経済学の見方をすると合意性があることを、報酬・所有・ガバナンス・規則・意思決定コスト・ブランド等あらゆる観点から論証する本。 詳細は下記 https://note.com/t06901ky/n/n61538b273fb7
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海賊が経済学に基づいて行動しているという大変興味深いテーマである。 海賊という略奪を生業とするチーム戦略にはVisionが重要である。 自由市場であっても略奪に近いパワープレーがある。海賊はこの原則を堅実に守った規定に基づき、合理的に行動しているという事が良くわかる。 ガバメント:自発的に動かない人を動かすことで効率的な仕組みを作る(=全体最適化)。全員が自発的に全体最適に動くのであればガバメントは不要となる。 脅し、強制がガバメントの背後にある。
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漫画やアニメ、小説、映画などフィクションの世界では、たびたび海賊について描かれることがある。フィクションの中の海賊から想像する海賊像は、実際の海賊とは随分印象が異なっていることが本書で紹介されている。フィクションの中の海賊像と異なる点を紹介し、さらに経済的利潤からなぜそのような海...
漫画やアニメ、小説、映画などフィクションの世界では、たびたび海賊について描かれることがある。フィクションの中の海賊から想像する海賊像は、実際の海賊とは随分印象が異なっていることが本書で紹介されている。フィクションの中の海賊像と異なる点を紹介し、さらに経済的利潤からなぜそのような海賊社会が運営されていたのかを追求していく。 経済学的視点から、海賊の行動原理や組織運営について見解を述べているが、難しい経済用語が分からない者でも、経済用語を易しく解説してあるので読むのに苦労することはない。文章も、全体を通してかなりカジュアルな口調で書かれており(非常に砕けた、ブログのような文体)、一般大衆に向けて書かれた本だろう。 目次を読んでも本書の全体を把握することは難しいので、30ページの本書の構成について書かれた部分から目を通すと読みやすいだろう。また、章の最後に「海賊マーク」(陽気なロジャー)があり、章をまとめる文章となっているので、本書の要点だけ急いで読みたい人は、海賊マークを探して読むのがおすすめである。 第8章は、海賊の船長にマネジメントの講義をしてもらうという設定の章となっており、海賊の経済学を現代に落とし込んで説明されている。ここは特に海賊について書かれてあるわけではないので、読み飛ばしても問題はないだろう。 p274~の訳者あとがきにある「使用上の注意」の項目は、ぜひ読んでおく必要がある。訳者なりの本書に対する注意点が書かれてあり、本書の内容をそのまま鵜呑みにすることのないようにとある。海賊という歴史に、経済的視点を入れて考察したことには、本書は大変面白いといえるが、訳者の指摘通りかなり大衆向けに単純化しているので、あくまでも一視点の考察ということを忘れてはならない。
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海賊の行為を経済学の観点から説き明かしていくもの。 リクルートや民主主義の根付いた理由など、当時の商船との比較を交えつつ分かり易く説明がなされている。 なかでも興味深かったのがジョリーロジャーと海賊としてのブランドに非常に気を遣っていたという観点。また、それと拷問のバランス。 海に限った話では当然無いのだが、評判が立つこと(良くも悪くも)は、自分自身の分身として周囲に影響力を行使してくれる。ここでは、利益を得るための費用を最小化する方向へ働かせるものとして、利用されている。 確かに、「やばい奴」が来たということで降伏したほうが早いのだろう。そこも度が過ぎるとさらなるスーパーパワーに狙われるのだろうが、そういった勝負前に勝負が付いている状態に持っていくことは経済学の観点でも重要だと思われる。
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マクロな視点で世界史について学ぶなかで、海賊という存在が少し前から気になっていた。というのも、以前なら一般書の類で取り上げられていた話題が、真面目な学術本のテーマとして書店に並んでいるのを見ていたからだ。 今回、思い切ってそんななかから一冊を選んで読むことにした。決め手は訳者の存...
マクロな視点で世界史について学ぶなかで、海賊という存在が少し前から気になっていた。というのも、以前なら一般書の類で取り上げられていた話題が、真面目な学術本のテーマとして書店に並んでいるのを見ていたからだ。 今回、思い切ってそんななかから一冊を選んで読むことにした。決め手は訳者の存在だった。山形さんの訳書をきちんと読んだことはないが、最近でもトマ・ピケティの『21世紀の資本』を原著フランス語からではなく、話題性による緊急性から、山形さんが英訳から日本語訳していたりする。まあ、社会的には信頼のおける翻訳者だといえるからだ。 読み終わると、目次は非常に単純明快。ともかく、不可解だと思われている無法者の海賊たちの性質を、経済学という切り口ですっきり理解するというのが本書の目的。各章のタイトルにもその軽さが伝わるが、なんでも著者は需要供給曲線の刺青を17歳の時に右手に入れるという、ある意味イカレタ経済学者であるらしい。そんな軽い文章の翻訳を訳者も楽しんでいるようだ。 第1章 見えざるフック 第2章 黒ヒゲに清き一票を――海賊民主制の経済学 第3章 アナーキー――海賊の掟の経済学 第4章 髑髏と骨のぶっちがい――海賊旗の経済学 第5章 船板を歩け――海賊拷問の経済学 第6章 仲間になるか、それとも死ぬか?――海賊リクルートの経済学 第7章 獲物が同じなら払いも同じ――海賊は平等主義者? 第8章 海賊に教わるマネジメントの秘訣 エピローグ 経済学の普遍性 後記 海賊は永遠に不滅です――海賊の没落と再興 情報の出所 本書のみつけたお宝のありか 読後の感想は、ちょっと「?」。まあ、楽しい読書体験ではあったが、期待していたものはあまり得られなかった。私の疑問は訳者のあとがきにも丁寧に書かれているが、まずもって著者のいう経済学は近代経済学。社会は利潤最大化の合理的行動によってうまくいくということを信じていて(なんといっても、経済学は普遍性の追求だから!)、第1章の「見えざる」というのはアダム・スミスの「見えざる手」からきている。 海賊の活躍した年代は明確に示されているが、彼らの行動範囲については断片的な情報しかない。18世紀前半がそのピークというが、その世界史的位置づけ、重商主義や資本主義との関係性についてもあまり議論はされない。まあ、普遍的に通用する経済学による解釈だから、世界における場所の問題はあまり重要ではないのかもしれない。
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人間社会の合理的行動をインセンティブをキーワードに抜き出せば、そこに存在する社会学的見地が、即ち経済学である。この人間社会を海賊組織で追求したのが本著であり、無論、その組織にも経済学は成立する。つまり、彼ら海賊の尺度での合理性が成り立つからだ。例えば、重要な起点として、海賊が国家...
人間社会の合理的行動をインセンティブをキーワードに抜き出せば、そこに存在する社会学的見地が、即ち経済学である。この人間社会を海賊組織で追求したのが本著であり、無論、その組織にも経済学は成立する。つまり、彼ら海賊の尺度での合理性が成り立つからだ。例えば、重要な起点として、海賊が国家や法律に縛られない、自営自治組織という点に特異性がある。そのような集団における経済活動とは?物資、食糧、労働、分配、刑罰、組織運営はどのように?中々興味深い一冊である。
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アダム・スミスはかく語りき。人は利己的であればあるほど、他人と協力をするものである。じゃあ、利己的な集団はいったいどこまでの社会を作れるのか。スーパー利己的な連中が集まるところである海賊船は、政府の枷のないアナキーな状態の中、民主主義を!分権制を!立法を!福祉を!その他諸々を!達...
アダム・スミスはかく語りき。人は利己的であればあるほど、他人と協力をするものである。じゃあ、利己的な集団はいったいどこまでの社会を作れるのか。スーパー利己的な連中が集まるところである海賊船は、政府の枷のないアナキーな状態の中、民主主義を!分権制を!立法を!福祉を!その他諸々を!達成してしまったのだ。 どうしてそこまでできたのか。全ては経済的な理由があるのだが、詳しくは本書をご覧あれ。 政府なしに、海賊はここまで立派な社会が築いてしまった。むしろ、海賊社会は当時の各国政府よりずっと先進的だった。それは、海賊船に乗っていた荒くれがみんな利己的だったから!海賊船を企業に置き換えてしまうと、なんだかとても市場主義的というかリバタリアンな主張に聞こえてくるし、これは訳者の山形氏も指摘するところ。政府の影響力がなくなって、企業がみんな海賊みたいになったら、いやだよねえ。
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訳者あとがきなんて、本文の内容を再度言い換えるだけのおまけでしかないと思って、時には読み飛ばしてきたが、まさか本文を超える出来の本に出会うとは。本書は17,18世紀の海賊の生態の経済学的な解説。物語の材料としてわかりやすい悪役の座を与えられがちな海賊を、インセンティブ、プリンシパ...
訳者あとがきなんて、本文の内容を再度言い換えるだけのおまけでしかないと思って、時には読み飛ばしてきたが、まさか本文を超える出来の本に出会うとは。本書は17,18世紀の海賊の生態の経済学的な解説。物語の材料としてわかりやすい悪役の座を与えられがちな海賊を、インセンティブ、プリンシパル・エージェント問題、ガバナンス問題、フリーライダー問題、意思決定コスト、規制緩和、シグナリング&ブランディングなどなど現代の経済用語を用いて、合理的な行動をした組織であったと評価する。 確かに着眼点は素晴らしいのだが、経済論の中身自体には特に新しい要素はなく、切り込みさえ与えられれば誰でも同じ道を辿れるであろう内容。この本文のみで終わっていれば☆3程度の評価だが、本書の本質は訳者あとがきで指摘される。それは、システムの維持・構築に善悪の概念など必要ないということ。 例えばリーマン・ショックの際、金融・投資・証券系企業が自身の利益のみを考えた結果だとその倫理性が叩かれたが、本当に考えるべきは特定の企業の悪辣ではなく、システムの不備だ。現在の金融システムは、人々が利己性や強欲さを抑えた善人ばかりだから上手くいってるわけではないし、道徳性や倫理の道に外れた悪者がいたから事故が起こったわけでもない。システムと善悪に関連性はない。犯罪者集団の海賊であっても上手く回る経済的なシステムを構築できるし、聖職者の集団だから合理的なシステムを構築できるわけではない。 そして、それが適用されるのは経済システムだけではない。マスコミが偏向報道するのも、ツイッターで犯罪自慢が続くのも、政治家が不祥事を繰り返すのも、ただ悪い人、バカな人達が存在するということではなく、それが利するシステムの中にいるということだ。そして、この世の中には人の数だけ、いや、人の中にさえ多数のシステムが関係しあっているため、完璧なシステムなど存在しえない動的平衡の中にいる。 何かと敵を見つけては叩きたがるというのもまたシステムのうち。せめてそれが、特定の個人・団体・企業・政党・国家ではなく、構造の是正に向かうことを望みたい。
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