戦前昭和の社会 の商品レビュー
「戦前昭和」と言うと経済恐慌や太平洋戦争といった歴史をどうしても想起してしまう。歴史的事実としてはその通りだが、その前段として本書で書かれている内容を踏まえないと、結局歴史を立体的に掴めないのだろうと思った。 というのも、あくまで本書が描くのは(しばしばドキュメンタリーやドラマで...
「戦前昭和」と言うと経済恐慌や太平洋戦争といった歴史をどうしても想起してしまう。歴史的事実としてはその通りだが、その前段として本書で書かれている内容を踏まえないと、結局歴史を立体的に掴めないのだろうと思った。 というのも、あくまで本書が描くのは(しばしばドキュメンタリーやドラマで見るような)終戦間際の状況ではなく、大衆がアメリカ化して消費社会になり、格差が拡大し一方で是正運動もあり、女性参政権を求める運動が多層的にあり……といった姿である。 確かにこれらはよく語られることかもしれないが、どこか頭を素通りしてしまう気がする。戦後との連続性を含め、改めて認識しておきたい。
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アメリカ化、格差社会、大衆民主主義の3つの観点から、現代と類似性のある戦前昭和の社会を再構成。1941年になっても日米友好を演出していたのはイガイだった。他方、ドチツ・ナチ的ファシズムへの共感も生まれてくる。ただし決定的な違いは植民地の有無であり、アーリア人の純粋性と至高性を唱え...
アメリカ化、格差社会、大衆民主主義の3つの観点から、現代と類似性のある戦前昭和の社会を再構成。1941年になっても日米友好を演出していたのはイガイだった。他方、ドチツ・ナチ的ファシズムへの共感も生まれてくる。ただし決定的な違いは植民地の有無であり、アーリア人の純粋性と至高性を唱えるドイツに対し、「五族協和」を唱えていた日本は異民族との結婚を推奨する他民族国家であり、大和民族の優越性を強調するわけにはいかなかったというのは盲点であり参考になった。
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戦前の日本は銀座あたりをモボ・モガが闊歩し、地下鉄やデパートや浅草の映画・見世物が大盛況で、「コドモノクニ」など児童向けも含めた出版も活況を呈し、豊かな時代だったことを紹介してくれる本かと期待して読み始めたんだけど、そういう面は前半1/3くらいだった。 選挙権や労働状況の改善を求...
戦前の日本は銀座あたりをモボ・モガが闊歩し、地下鉄やデパートや浅草の映画・見世物が大盛況で、「コドモノクニ」など児童向けも含めた出版も活況を呈し、豊かな時代だったことを紹介してくれる本かと期待して読み始めたんだけど、そういう面は前半1/3くらいだった。 選挙権や労働状況の改善を求める市民運動、「家の光」誌をとおした農村改善運動、新興宗教の隆盛など、さまざまな運動に関してだいぶ紙幅を割いていて、いまとなっては言論や運動が統制され不自由な時代と平板にとらえられてしまっている感がある戦前昭和が、実は人々が意識的に活発によりよい社会を目指して活動していた時代だったということを知った。それこそ現代をしのぐほどに。
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タイトルに「1945」とあるが、実際に書かれているのは「1941」まで。この点を除けば新書としての出来は抜群によかった。 宮崎駿が『風立ちぬ』の公開時に「戦前の美しい日本の姿を」的なことを話しており、どこがどう美しいのかを確認したい気持ちも手伝って一気に読んだが、戦前の昭和史に...
タイトルに「1945」とあるが、実際に書かれているのは「1941」まで。この点を除けば新書としての出来は抜群によかった。 宮崎駿が『風立ちぬ』の公開時に「戦前の美しい日本の姿を」的なことを話しており、どこがどう美しいのかを確認したい気持ちも手伝って一気に読んだが、戦前の昭和史については、まだまだ知らないことや、ステレオタイプなイメージに凝り固まっている部分が自分の中に存在することがよくわかってよかった。 ヒトラーユーゲントの来日が日米開戦に一定の役割を果たしたという評価は良く理解できるし、この箇所の記述のボリュームは少ないものの綺麗にまとめて書いてくれたと思う。ただ原節子と絡めて書かれているといかにも昭和史という感じがしてもっとよかった気もしないでもないけど。 https://twitter.com/prigt23/status/1043468364163637248
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
戦前昭和時代を現代社会と類似するものとして、アメリカ化・格差社会・大衆民主主義の観点から素描する。終戦により制度・ルールは大きく変貌したとの見方に対し、アンチテーゼとして類似点を強調する書籍の一。説明を明快にするため前記3点を解釈指針とするようだ。が、この意図は余りうまくいっていない気がする。例えば、本書に書かれた中では、ドイツ賛美から説明しやすいヒトラー・ユーゲント来日や、戦争による社会の下方平準化や女子の地位向上などがそれ。なお、ひとのみち教の栄枯盛衰や近衛の国民的支持の実相は興味深い。2011年刊。
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今の日本が“戦前”に似ているといわれる。 いったい戦前の日本はどのようだったのか? 暗いイメージがあるが、実はアメリカ化・消費社会化が進んだ「明るい」時代だった。だが同時に格差の拡大、若者の就職難などの社会の矛盾が出るなど現代と通じる時代であった。 昭和の社会を知ることが現代を考...
今の日本が“戦前”に似ているといわれる。 いったい戦前の日本はどのようだったのか? 暗いイメージがあるが、実はアメリカ化・消費社会化が進んだ「明るい」時代だった。だが同時に格差の拡大、若者の就職難などの社会の矛盾が出るなど現代と通じる時代であった。 昭和の社会を知ることが現代を考えることになる…そう思わせてくれる1冊。
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現在を見据えつつの新たな視点の獲得という意気込みは買いますが、昔の日本資本主義分析の焼き直しと思えなくもない。つまり断絶か継続かという議論の一形態で、時間の流れは一方向であるという「常識」の枠組みを無自覚のうちに是としている主張の展開は本質的に感心の域を超えないのでは? さらに戦...
現在を見据えつつの新たな視点の獲得という意気込みは買いますが、昔の日本資本主義分析の焼き直しと思えなくもない。つまり断絶か継続かという議論の一形態で、時間の流れは一方向であるという「常識」の枠組みを無自覚のうちに是としている主張の展開は本質的に感心の域を超えないのでは? さらに戦争の当事者という厳然たる事実を遠くで起きた他人事として著者が無意識のうちに把握しているように見受けられるのは当方の気のせいかな?正直に言って本作には違和感を覚えますな。共産党の捉え方とか面白いものもあるけれど。 姿勢を正す意味で『野火』を久しぶりに手に取ってみるとしますかね。
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本書は主に戦前昭和の社会史を扱っている。特に、3つの視点「アメリカ化」・「格差社会」・「大衆民主主義」から戦前昭和から戦後への連関に新たな評価を与えた。 というのも、本書で紹介された戦前昭和の3つの視点は現在の我々にも通じる問題でもある。これら現代的な問題は戦後昭和からの一連の...
本書は主に戦前昭和の社会史を扱っている。特に、3つの視点「アメリカ化」・「格差社会」・「大衆民主主義」から戦前昭和から戦後への連関に新たな評価を与えた。 というのも、本書で紹介された戦前昭和の3つの視点は現在の我々にも通じる問題でもある。これら現代的な問題は戦後昭和からの一連の流れの延長線上の問題と解釈できる。 では戦後昭和(例えば親米保守など)はどこに起源があるかというと、井上氏は戦前昭和に求めているのだ。 つまり、戦前昭和と戦後昭和の連続面を本書で示した。従来は断絶面のみが注目されてきた訳だが、戦前との連続面を改めて見直すことで、現代的な課題を克服する鍵があるのではないか。 以上が研究史上における本書の評価である。 付たり、 連続面について世代の違いによる心性的な考察をすると面白いかもしれない。ちょうど、この1945年に幼少~児童期を過ごした人達が日本の高度経済成長期の担い手となる。彼らの心性を連続面・断絶面から考察してみると、また変わった戦後昭和が描かれるかもしれない。
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昭和初期にもアメリカ化、消費社会化が進んでいたとは。いままでの常識を裏切られる内容にひきつけられた。だからこその鬼畜米英なのですね。だからこその贅沢は敵だなのですね。 妙に納得しました。 この本にて、本年、100冊達成!
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国民の多数がファシズムに傾倒していくようになるのに、数年しかかからなかったというのが驚き。それまでは多様性のある豊かな社会だった。大きくあった格差を、東条政権が埋めた、というところにダイナミックな動きを感じる。
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